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「車旅日記」1998年夏【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】2日目(青森-竜飛崎-秋田)-あおもり健康ランド、青森駅、青い海公園、蟹田、高野崎、竜飛崎、十三湖、五所川原駅、深浦、不老不死温泉、能代駅、秋田駅、道の駅西目

公開日: : 最終更新日:2023/04/29 旅話, 旅話 1998年

車旅日記1998年8月13日
1998・8・13 7:31 あおもり健康ランド 777㎞
昨日のことが夢のようだ。
気づくと人間界に紛れ込んでいた。

風呂に入りたかったし、だいいち眠かったのだろう。
何か月かぶりに酒を抜いた一日にもなった。

妙な理由だが、これで自信がついた。
オレはひとりでも十分にやっていける。

しかしこれからが問題。
どこへ行こうか。

空はどんより曇っている。
かなり涼しい朝を迎えた。

8:07 青森駅 784㎞
ベイブリッジを背にして立つこの小さな駅舎を気に入っている。
弁当屋の青年は口は重そうだったけど、なかなか良さそうな人間だった。

これから龍飛へ行こうと思う。

地元の人間かどうか知らないが、車座になってしゃがんでやる気のなさそうな連中がいる。
どこへ行っても人間が表現する風景に変化がなくなった。
こいつは少しばかり面白くない。

5月の雨を思い出した。

あれはひどい降りだった。

8:54 青い海公園 786㎞
公園ではカラス、鳩、その他あまり見たことのない特徴的なくちばしを持つ鳥を見かけた。
北の海では生きている動物も少しばかり違う。

カラスの態度は相変わらずだ。
連中とはもしかしたら東京で会っているかもしれない。

隣の物産館はまだ開いていない。
主にライダー系の男たちが落ち着いて座れる場所を求めて集まっていた。

おそらくこの物産館の受付嬢だろう。
最初に見かけた青森の女性はとても美しかったよ。

10:32 280号国道(松前街道)-蟹田 818㎞
灰色の海が正面に見える。

今日の行動はこういうことになった。
龍飛を北端として秋田方面に南下して、しかるべき時間に到着した町で眠る。

ここには少しばかり眠ることを目的に立ち寄った。

車が通らないと何の音もしない。
そんな場所だ。

11:11 280号国道(松前街道)-高野崎 840㎞
海を見下ろす丘に、アウトドア軍団がテントを張って楽しんでいる。

イカの丸焼きに誘われたけど、なぜか購入をためらった。
腹が減っていなかったからな。

道々、最近電子メールで文通している女友達に、帰り着いてから書く文面を考えていた。

言いたいことは決まっている。
今のオレはとてつもなく自由ということ。
ワハハって笑っていたよ、オレは。

正確には9年前のことになるだろうか。
ひととき想いを寄せたのは青森出身の女性だった。

彼女との別れは唐突で、とてもつらくて、そして怒りを覚えた。

噂では彼女はこっちに帰ってきているとのこと。
もうお嫁にいっただろうか。

通りを眺めていると、ふと美人が多いことに気づいた。

道々、海に育てられたような顔をしたジイさんが、路傍に腰かけて渋い表情で煙草を吸っていた。

人間がいる風景とは本来あのようなものだろう。

12:27 竜飛崎 867㎞
「拝啓、岬には今日も元気な風が吹いています。」
通りで見つけた気に入ったフレーズ。

今その風の岬にいる。
ぼんやりと北海道が見えた。

そう、ぼんやりと。
まるで今回の旅の目的のように。

ここが気に入ったよ。

5月の大間崎、去年の入道崎。
絵葉書を購入したが、大切な人への土産はそこでは選ばなかった。

だけど今回はここで決めよう。
いい置物がある。

だけどまだ旅は3日間もある。
まだまだ他の土地でいいのに出会うかもしれない。

あぁ、本当にオレは自由だ。

海に下りる階段国道で2人のご婦人と挨拶を交わした。
やはり旅はいいものだ。

13:45 十三湖 901㎞
古代伝説の地に雨が降りてきている。

観光地然としていないところに、この湖が持ち合わせている風情を感じる。
とても静かで心安らぐ風景だ。

上古に十三湊として栄えた港にその面影はなく、公営駐車場にいくつかの出店が出ている。

しじみラーメンは予想以上に美味かった。
この土地の名物とのこと。

店を出していたのは陽気な津軽娘。
アイスクリームを食べているところを見られて、照れくさそうに笑った。
いい笑顔だった。

オレも車寅次郎みたいになりたいよ。

これから津軽平野を経由して日本海に出る。

それにしても青森ではよく雨に降られる。

15:00 五所川原駅 941㎞
人を多く見かけることのない小さな街に、少し大粒の雨が落ちてきた。

これで一層人の出足は鈍るだろう。
この時期だと、今の雨は米にはあまりよくないのだろう。

さっきまで美しく黄金色に育った無数の稲が直立する津軽平野を突っ切っていた。

そこを過ぎて岩木川沿い。
とてもタフで見晴らしのいいロードだった。

吉幾三さんが歌った「津軽平野」は、どういう詞だったのだろう。

それにしても女性が美しい。
もしくは可愛らしい。

16:38 101号国道‐深浦 990㎞
日本海に出ると雨が上がった。

通ってきた道では、みんな海を見ていた。

老漁師が。
通りがかりの旅人が。
そして渡り鳥が。

ここらあたりは以前地図を見ていて是非一度走ってみたいと思っていたところだ。
海岸線に沿うように線路が敷かれ、道からは海とその線路だけが見える。

北陸にそうした場所があって、そこで道理も何もなく感動したが、ここは少しイメージとは違った。

海は素晴らしい。
心からそう思う。

ここでしばらく海を眺めた。

サングラス越しには雲間から漏れる日差しがやけに赤く見える。

18:00 不老不死温泉 1011㎞
こだわりを持たないオレだけど、ここの風呂はよかった。
視界180度がすべて日本海。
それにあの土色の湯はやけにあたたまる。

これから幸せな気持ちで車を走らすことができそうだ。

時折雨を降らせていた空は、ここにきてようやく晴れだした。
全体的にはまだ曇っているけど、雲の隙間から漏れてくる日の光が、夏の夕暮れに合う。

子供の頃、こんな空の下で夕暮れを迎え、間もなくプロ野球のオールスター・ゲームが始まった。
そんな情景がふと浮かんだ。

適度にだるくて、そしてとても楽しいよ。

19:17 能代駅 1068㎞
日本海が茜色に染まり、次第に闇に包まれ、やがて視界から消える一部始終を見る。

時折ストーンズのドラッグ・ソングを歌いながら、このきれいな街に着いた。

そろそろ今夜の処置について考えなければならない。
少し疲れた。

これから秋田、本荘。
遠いな。

今日はそこかしこで祭の法被姿や浴衣姿の人々を見かける。
大好きな夏の風景だ。

20:56 秋田駅 1139㎞
駅弁を探して秋田市内に深く分け入ったけど、駅にはすでに目ぼしいものは置いていなかった。

市内に入ると激しい雨。
またしても5月の青森を思い出す。

これから今夜の食料の確保に動かなければならない。

秋田駅はとても立派だった。
周辺は他の地方都市とさして変わらない。

でもこうして真っ直ぐに延びる道の果てに、駅がどっしりと構える街の造りが好きだ。

そこへ行けば賑やかで、心が和むような気持になれる。

22:35 7号国道‐西目(道の駅) 1185㎞
今日が終わったよ。
ビール2本で酔った。

これが昨日と今日の疲れ。

11年前の今日、オレは人生で初めてデートをした。

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