「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-米内沢)その5‐比立内、阿仁合、阿仁前田温泉、合川、米内沢(秋田内陸縦貫鉄道) 【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】
鉄旅日記2021年4月17日・・・比立内駅、阿仁合駅、阿仁前田温泉駅、合川駅、米内沢駅(秋田内陸縦貫鉄道)
17:56 比立内(ひたちない)駅(秋田内陸縦貫鉄道 秋田県)
雨を眺めている。買い置きの酒は2本とも空になった。
角館を出たたった1両の豪華列車は当初3名を乗せていたが、上桧木内で1名が降りた。


まるでパンダのようにまばらに雪を残した峡谷地帯を北へ向かっている。
「ここでしか出会えない食」と印刷されたPOPに目をやる。オレの場合、言ってみれば食はどうでもいい。酒も大関や松竹梅でいい。
ここでしか出会えない状況に内心歓喜しながら、原始の川が流れ、雨が狭い峡谷を濡らす風景を眺めている。
5分の停車。降りてみる。





峰峰から雲が湧き、雨がもたらす恵みを思う。


コロナ疲れをしていた昨日までのオレを思い返そうとしてもうまくいかない。
精一杯生きたのなら、過ぎた時は静かに振り返って、肯定できるものは肯定すればいい。
振り返らなくてもいいのかもしれない。でも振り返りたくなるのは、そこに2度と起こり得ないものがあるからなのだろう。
この閑散とした豪華列車の客になって、思うことはいくらもある。すべて幸せな気持ちに添う。
18:17 阿仁合(あにあい)駅(秋田内陸縦貫鉄道 秋田県)
3分の停車。暮色に染まった沿線中心駅でしばし。


高松に暮らす時空の友からの返信に、雨に癒されながら北へ向かうと書いた。

列車は相変わらず峡谷を往くが、徐々に谷は開け、沿線にちらほらと人里が現れる。
二人きりの乗客となったご婦人と会話。ご婦人は次の阿仁前田温泉で降りられる。
18:36 阿仁前田温泉(あにまえだおんせん)駅(秋田内陸縦貫鉄道 秋田県)
4分の停車。去年は阿仁前田駅だった。去年か今年のいずれかの春に改名したのだろう。


件のご婦人とはここでお別れ。これまでに由利高原鉄道や明知鉄道などに乗られてきたことを話してくれた。
駅舎は温泉館でもある。ご婦人は今夜ここの客になる。オレも考えないわけじゃなかったが、今夜は米内沢の温泉館に泊まる。

旅人はオレだけじゃない。そしてこの駅からまた乗客が1名加わった。

外は暮色を過ぎて、宵闇へと移りゆく。
19:06 合川(あいかわ)駅(秋田内陸縦貫鉄道 秋田県)
宿をとっている米内沢を通り越して2駅目。去年の1月に車窓から強い印象を残した駅に降り立つ。寒さに包まれた緑色の壁を覚えているよ。


すっかり宵闇の下りた駅前で陰影に富んだ村を写して、折り返しの列車を待つ。


ここまでオレを運んだ列車が、米内沢へ戻る列車が来るまで待っていてくれる。幸運にもここ合川駅で列車行き違いをするため、この駅に降りることができた。


今日の旅はじきに終わる。雨が印象づける素敵な一日だった。
19:22 米内沢(よないざわ)駅(秋田内陸縦貫鉄道 秋田県)



【facebookへの投稿より】
暮色から宵闇へ。
秋田内陸マタギの里の温泉地に到着いたしました。
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