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「鉄旅日記」2016年春【下北半島から東日本大震災被災地へ】2日目(下北-石巻)その1-大湊、野辺地、浅虫温泉、小湊、東青森、上北町、小川原湖、下田、八戸(大湊線、青い森鉄道)

公開日: : 最終更新日:2024/05/25 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年3月20日その1・・・大湊駅、野辺地駅、浅虫温泉駅、小湊駅、東青森駅、上北町駅、小川原湖駅、下田駅、八戸駅(大湊線、青い森鉄道)

下北~大湊間(徒歩)

2016・3・20 6:17 大湊(おおみなと)駅(大湊線 青森県)
大間崎からずっと回ってきたんだったな。

かつてここにいたことがある。
雨だったよ。
冷たい日だった。
長いこと車を止めておくことができずにすぐに離れた。

むつは乾いた町だという同僚の言葉を脳裏に浮かべながら辿り着いたけど、そうだった。
あの日はずっと雨だった。
当時はまだ営業していた下北交通の田名部駅に立ち寄った際も、土砂降りの中を車から降りて駆けていったんだ。

雪をまぶした釜臥山を見ながら荒涼とした北の街道を歩いた。
通る車は少なく、乾いた冷たい風が吹いている。

荒れ果てた番屋のような棟が続いていた。
先には常に釜臥山が立ちはだかっている。
恐山はあの山の背後に位置している。

何もない、まだ途中のような場所にある終着駅だった。
でもこの先に集落はないのだろう。

会津士族が開いた大湊。
強靭な男たちを慟哭へと導いた風に当たりたくて、また外へ出た。

津軽海峡を挟む両岸は同じ文化圏だという証明を景色の中に見た。



大湊線車窓風景

7:31 野辺地(のへじ)駅(大湊線/青い森鉄道 青森県)
雨が降っていたのか。

最果てのターミナル駅は寒く、春を予感するにはまだ早い。

大湊線に乗って野辺地が近づくにつれて、下北半島の特殊性が見えてきた。

まさに北海道と同じ風土で、海側に身を置いていれば大半の時間を防風林を眺めて過ごさなければならない。

反対側は実りのない荒れ地だった。
または原野だった。

菜の花畑が黄色く染まるにはまだ早く、かつて立ち寄った陸奥横浜駅の花壇に彩りはなく、親切だった駅長夫婦の気配もない。
越してしまったのだろうか。
それとも彼らの引退とともに無人駅になってしまったのだろうか。
20年も前の話だ。

今月廃校になる中学校には「ありがとう」の横断幕。
地域の絆を大切にとある。

随分遠くまできたという感慨が不意に浮かぶ。

ご婦人方の装いがかなり鄙びてきた。

野辺地駅前風景

8:05 浅虫温泉(あさむしおんせん)駅(青い森鉄道 青森県)
湯の島が浮かぶ海の先に見えた陸地は下北半島になるのか。
雪を被って白く浮かぶように存在していた。

日本中どこにでもオレの記憶は落ちていて、4号国道にそれを見つけた。

ここの駅長さんは爽やかな林檎美人だった。

青森の女性に恋をしたのは27年の昔。
積極的に思い出そうとは思えない別れだった。

最後に恵比寿ビール園で会った時はとてもキレイになっていて戸惑い、微笑みかける彼女にどう接していいのか分からず、もう戻れないという思いだけが頑固にオレの中に居座っているのを感じていた。

彼女が青森のどこの町の出身なのかは聞いていない。

観光ホテルが並び、ステキな展望台がある温泉街でいろいろ思ったよ。

浅虫温泉駅周辺風景


8:29 小湊(こみなと)駅(青い森鉄道 青森県)
上りで2駅戻る。

海が見えなくなった。
そこには夏泊半島が立ち塞がっていた。
ここはその基点にあたる。

南部藩と津軽藩の係争地で、近代を迎える頃は黒石藩領だったという。
当時を偲ばせる松が道の真中で永い時を生きている。

駅前から商店街が続いていて、床屋など地道な商売が続き、水商売の看板を掲げた建物はどれも無残な姿を晒していた。

小湊はかつての代官所で、青森の代替港として国策に上がったこともあったという。

ヤマセは止んだが、細雨が落ちてきた。
心配ない。
すぐに上がるさ。

小湊駅周辺風景

9:13 東青森(ひがしあおもり)駅(青い森鉄道 青森県)
長いホームに東北本線の歴史を感じる。

広い構内にこの駅が担ってきた役割を想う。

跨線橋が特徴的な駅で、駅舎は便所のみが開放されていて、待合室はホームへと降りる階段の途中にある。
いろいろな駅があるものだ。

雪捨場の山は汚れ、最盛期からすれば随分低くなったことだろう。
オレには分からないが、雪の気配はもう消えただろうか。

じきに東北本線の旅も終わる。

ここまでの感慨が去来するとはまったく思っていなかった。

青森は遠かった。


11:24 上北町(かみきたちょう)駅(青い森鉄道 青森県)
青森駅から上り列車で引き返す。

青森ではよく雨に降られる。

八戸ナンバーが走る町で1時間を過ごした。

小川原湖に着くと細雨。
この湖にまつわる悲しい伝説を知ったのは10数年前の三沢駅だった。

探しにきた父はすでに亡く、悲嘆にくれた姉妹が身を投げたという。

今日は訪れる者もなく、ヤマセが吹き、名物の佃煮屋やシジミを商う店に明かりはない。

旅館が一軒。
姉妹の名をとった玉勝温泉には出入りがあり、駅前の飲み屋とコンビニはたたんでいた。

小川原湖にて。




11:50 下田(しもだ)駅(青い森鉄道 青森県)
奥東北はやはり寒い。

例えば仙台あたりでは今日も昨日ほどの暖かさを記録していることだろう。

十和田湖を発した奥入瀬渓流はこの町に流れ込み、奥入瀬川と名を改めながら美しさを保っている。

下田家が支配していたこの一帯には元々の地名と呼べるものはそもそもなかったのかもしれない。

南部藩領とは広大なものだ。
南部候がいた盛岡は、とても遠い。

12:37 八戸(はちのへ)駅(東北新幹線/八戸線/青い森鉄道 青森県)
センバツは今日から始まるのか。

この街から常連の八戸学院光星が行っている。
春も夏も決勝まで進んだことのある強豪で、仙台育英や花巻東などと共に、出場すれば白河の関を越して東北に優勝旗を運ぶことを期待される有力校だ。

被害は少なかったが、八戸も5年前に津波に慄いた。

昨日は八戸への愛が足りなかったよ。
だから土産を求めた。

「駅そば」は出汁がきいた濃厚な味で、かつ量もあってとても満足した。

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