*

「鉄旅日記」2016年春 2日目(下北-石巻)その2-金田一温泉、斗米、二戸、好摩、いわて沼宮内、厨川、矢幅、日詰、小牛田、涌谷、石巻(IGRいわて銀河鉄道、東北本線、石巻線) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】

公開日: : 最終更新日:2025/05/29 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年3月20日その2・・・金田一温泉駅、斗米駅、二戸駅、好摩駅、いわて沼宮内駅、厨川駅、矢幅駅、日詰駅、小牛田駅、涌谷駅、石巻駅(IGRいわて銀河鉄道、東北本線、石巻線)

13:13 金田一温泉(きんだいちおんせん)駅(IGRいわて銀河鉄道 岩手県)
座敷わらしの里だという。

なるほど、このあたりは冷害に苦しめられた地域だ。
悲しい話もあるだろう。

駅の写真を撮っていたら不意に背後に人の気配を感じた。
小さい人の気配だ。
聞き取れない声で何かを囁いている。

座敷わらしにちなんだ町のサービスでもあるのかと振り向いたら、ちっちゃくてしわくちゃなおばあちゃんが二人いて、南部言葉で時間を聞かれた。

スマホ、ケータイのご時世に時間を聞かれることがとても新鮮で、この地域が持つ民話性に唸った。

それから線路に沿って古い家並みが続く道を歩いている。

金田一温泉は南部藩御用達の秘湯だったらしい。

14:03 斗米(とまい)駅(IGRいわて銀河鉄道 岩手県)
金田一温泉駅から続く家並みはなかなか途切れることなく続いていた。

路傍には江戸時代の飢饉を伝える塚がある。

寒冷地に代々腰を落ち着けて暮らしていくことの困難を想う。
打ち捨てられたままの廃屋もまた多い。

馬渕川のムコウに新しい住宅街ができている。
田舎風景の中でそれはやけに美しく見えた。
秩序にはそんな一面がある。

新幹線高架に沿って見過ごされそうな小さな駅があった。
ただし、やはりというべきか、かつての東北本線のホームは長い。

九戸城跡の表示が出たあたりで川辺に出た。

豊臣秀吉に最後に歯向かった男の名は九戸政実。
抵抗は激しく、やがて一族もろとも討たれた。

東北本線と4号国道が東京へと続いていた。

斗米~二戸間(徒歩)


14:48 二戸(にのへ)駅(東北新幹線/IGRいわて銀河鉄道 岩手県)
駅横では岩手アームレスリング大会が開催されていた。
参加していた男たちの腕はさすがに太い。

昨夜この駅に街を見た気がしたが、明かりの主は駅前に2、3あるに過ぎない。

新幹線開業前は、盛岡以北の駅にしては大きいが、ごく普通の駅だったのだろう。

高台からテレビ塔があるあたりを眺めた。
役場も城跡もあのあたりにあるのだろう。

街中を歩きたかったけど道を変更している余裕はなく、また便意も容赦なかった。

いわて銀河鉄道は駅に近づくとほのぼのとしたメロディーが車内に流れる。
まるまるとした男の子がベビーカーでおとなしくしている。
あぁ、かわいいなあ。

15:38 好摩(こうま)駅(花輪線/IGRいわて銀河鉄道 岩手県)
石川啄木が俳句に残した町、そして駅。

啄木も岩手だったか。
東北出身の文学人には悲劇性が伴っている。

花輪線と分岐する駅で、宮脇俊三さんの本で知って以来、通るたびにずっと気になっていた駅だった。
3度目でようやくオレの足跡がついた。

姫神山は砂糖粉をまぶしたケーキのように雪をまばらに散らし、岩手山はどっしりとした偉容を曇り空の下に現した。

岩手県民にだけ限られた話じゃない。
あれは宝の山だ。

山頂が雲に隠れている。
いいさ。
後でもう一度通る。

空は青を覗かせ始めている。
ふと下を見れば渓流がある。

旅心を誘う駅名だが、駅舎はまるで冗談のように旅情を無視した新しい造りになっている。

好摩駅から眺める姫神山

好摩駅から眺める岩手山

16:02 いわて沼宮内(いわてぬまくない)駅(東北新幹線/IGRいわて銀河鉄道 岩手県)
下り列車で2駅戻る。

新幹線停車駅はどこにいっても清潔だ。
そんな理由で「乗り放題きっぷ」を利用し尽くしている。
ビールを飲みに降りたようなものだが、もちろんそれだけが理由じゃない。

新幹線が止まる町を眺めたかった。

ここは岩手町。
そして何もなかった。

1階は小ホールになっていて、子どもたちが集まっている。

舞台が見えた。

ラジオが「ももクロ」を流している。
子どもたちが楽しそうにしている。

それがこんなにも幸せな眺めだったのかと、オレは最近になって知ったよ。

16:56 厨川(くりやがわ)駅(IGRいわて銀河鉄道 岩手県)
再び上りへ。

岩手山を正面から見られる駅だ。
ただし新幹線高架が視界上半分を遮っている。

駅員が話す南部方言が聞こえる。

1000年の昔、北に追い詰められた安倍一族はこの地で滅び、前九年の役が終わったが、どこにも関連する表示はなく、4号国道を上下する車を見るのみの駅前風景だった。

安倍貞任は偉丈夫だったらしい。
盟友の藤原経清は大河ドラマの主役を張ったが、海音寺潮五郎さんは源頼義の章で彼のことをよくは言っていない。

表現者による評価は様々だ。
そもそも1000年の昔の話だ。

暖房の焚かれた待合室にいる。
この空間は皮膚感覚だけじゃなく、情緒的にもあたたかい。

17:56 矢幅(やはば)駅(東北本線 岩手県)
盛岡で東北本線に乗り継ぐ。

ヤマセが止まない。
さらに冷たさを増している。

奥羽山脈がきれいに見える。
昨日の車中で飽かずに眺めた北の壁だ。

ここは快速列車の停車駅で大勢が降りる。
駅前に一杯横丁があって、あたたかい今川焼きを買う。

寒い町の夕暮れに、明日帰る場所を想う。
この心情はとても理想的だ。

18:24 日詰(ひづめ)駅(東北本線 岩手県)
何もない駅に降りてしまった。

紫波の繁華街は北上川に沿うようにここから離れている。

風は冷たく強く、どんな経緯を辿って東北地方に春がやってくるのか理解した。

思えば春先に北の国へ出かけたことはなかった。
唯一、いわきの湯本まで足を延ばしたことがあるけど、あの日も震えた。

今はこのかわいらしい駅舎に収まって一ノ関行を待っている。
さっきの今川焼きは心強い。

不意に有線放送が流れてきた。

鉄道もいろいろやる。
やるべきだ。
試みるべきだ。

きれいな月が出ている。
こんな寒い日にはとても冴える。

20:54 小牛田(こごた)駅(東北本線/陸羽東線/石巻線 宮城県)
一ノ関で乗り継ぎ、ここで石巻線に乗り換える。

簡素な町に飲み屋がただ一軒盛大な明かりをつけている。
明るいうちにあの存在に気を止めることはなかった。

どういう理由か知らないが旅館の灯は消えていて、対面にビジネスホテルが出現している。

何もないこの駅になぜだか惹かれるのは、東京じゃ人の口に上ることのないこの駅が、大ターミナル駅という存在であるという冗談めいた事実による。

駅舎内は迷路じみていて巨大だが、プレハブの仮設めいた造りであることにも諧謔がある。

2週間前に降りた際は、10年近く前の記憶とのズレがあまりにも小さくて感動したよ。

21:16 涌谷(わくや)駅(石巻線 宮城県)
数分の停車。

バーの明かりがあった。
パチンコ屋の明かりがあった。
駅正面の壁が真っ青に光っていた。
駅前通りの街灯が先まで連なっていた。

ここは伊達の支藩があった城下町。
その誇りをあの明かりに表していたのだろうか。

オレにしてみれば、あれは確かに町へと誘う明かりだったよ。

石巻(いしのまき)駅(石巻線/仙石線 宮城県)にて

22:55 笑門館3号室
石巻は4度目になる。

初回は10数年前の黄金週間の最中のさる一日。
日付が変わる頃だった。

駅前は人で埋まり車の通行に支障をきたすほどだった。
あの日に何があったのだろうか。
当日の記録を探し出せば、そこには驚嘆した様子が短く記されているだろう。

2度目は10月の朝だった。
コーヒーを注文して女川行を待った。

それからしばらくしてあの5年前の震災があった。
被災した姿のままの学校が悲劇の象徴としてこの街のどこかにある。

たまたま新聞で読んだが、津波の犠牲者が乗ってきたことを語るタクシー運転手が少なからずいるという。

夏にもかかわらず冬の装いで乗ってきて、やがて消える。
彼等は恐怖よりもむしろ畏敬の念に打たれていると結んでいた。

そんな話にオレも頭を垂れる。
人間は醜くもまた美しい。

極限を体験した街が、いつの日か再生した時の美しさを、いつかきっと見に来よう。
物語を伝えていこう。

果てしない悲しみならオレも経験したことがあるが、
果てしのない喜びを知るのは、オレだってこれからだ。

関連記事

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3 最終日(多治見-東京)その2-中津川、坂下、落合川、南木曽、十二兼、洗馬、塩尻(中央本線) 【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月24日・・・中津川駅、坂下駅、落合川駅、南木曽駅、十二兼駅、洗馬駅、塩尻駅(中

記事を読む

「車旅日記」1997年夏 初日(東京-三国峠-新潟)-町田、東福生駅、山田うどん、前橋市田口町、月夜野道路情報ターミナル、奥平温泉遊神館、越後湯沢駅、堀之内パーキング、道の駅豊栄 【男鹿半島を目指した夏。友と過ごし、旧友と再会したみちのく旅でございます。】

車旅日記1997年8月13日 1997・8・13 10:30 東京町田 出発が遅れている。 急ぐべ

記事を読む

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日光線) 7:32&nbs

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】4日目(高知-宇和島)-高知、朝倉、伊野、斗賀野、須崎、窪川、中村、宿毛、宇和島(土讃本線、土佐くろしお鉄道中村線/宿毛線、予土線)

鉄旅日記2009年5月4日・・・高知駅、朝倉駅、伊野駅、斗賀野駅、須崎駅、窪川駅、中村駅、宿毛駅、宇

記事を読む

「鉄旅日記」2021年秋 初日(東京-飯坂温泉)その1 ‐金町、高浜、友部、水戸、いわき(常磐線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月9日・・・金町駅、高浜駅、友部駅、水戸駅、いわき駅(常磐線) 202

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 2日目(香住-東萩)その1‐香住、柴山、餘部(山陰本線)/余部鉄橋 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月24日・・・香住駅、柴山駅、餘部駅(山陰本線)/余部鉄橋 2020・7

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その3 ‐しんざ、十日町、越後鹿渡、津南、戸狩野沢温泉(北越急行ほくほく線/飯山線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月10日・・・しんざ駅、十日町駅、越後鹿渡駅、津南駅、戸狩野沢温泉駅(北越急行

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅、京王八王子駅(身延線/中央本

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 最終日(鷹ノ巣-東京)その1‐鷹ノ巣、二ツ井、鷹巣、阿仁合(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】最終日(鷹ノ巣-東京)

鉄旅日記2023年1月13日・・・鷹ノ巣駅、二ツ井駅、鷹巣駅、阿仁合駅(奥羽本線/秋田内陸縦貫鉄道)

記事を読む

鉄旅日記」2012年初冬 最終日(長野-東京)その2-小諸、岩村田、佐久平、中込、臼田、小海、野辺山、清里、大月(小海線、中央本線) 【週末パスで、甲信越途中下車旅】

鉄旅日記2012年12月9日その2・・・小諸駅、岩村田駅、佐久平駅、中込駅、臼田駅、小海駅、野辺山駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その4 ‐新井、和田山、下夜久野、上川口、石原(播但線/山陰本線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2025年8月14日・・・新井駅、和田山駅、下夜久野駅、上川

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その3 ‐野里、香呂、仁豊野、溝口、鶴居、寺前(播但線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月14日・・・野里駅、香呂駅、仁豊野駅、溝口駅、

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その2 ‐法界院、野々口、津山、佐用、播磨新宮、姫路(津山線/姫新線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

2022年8月14日・・・法界院駅、野々口駅、津山線、佐用駅、播磨新

「鉄旅日記」2022年盛夏 4日目(高松-大津)その1 ‐高松、鬼無、坂出、岡山(予讃本線/本四備讃線)【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月14日・・・高松駅、鬼無駅、坂出駅、岡山駅(予

「鉄旅日記」2022年盛夏 3日目-友と過ごす一日をFacebookへの投稿より振り返ります ‐東浜恵美須神社、北浜恵美須神社、片原町駅、三津浜駅、梅津寺駅、高浜駅、龍神社、三津駅【讃州高松に時空の友を訪ねて。小海線、津山線、播但線、山陰本線の駅旅も印象深い旅でございます。】

鉄旅日記2022年8月13日・・・東浜恵美須神社、北浜恵美須神社、片

→もっと見る

    PAGE TOP ↑