*

「鉄旅日記」2009年晩秋 2日目(倉敷-和田山)その2-郡家、若桜、智頭、京口、福崎、寺前、和田山(因美線/智頭急行/播但線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/16 旅話, 旅話 2009年

鉄旅日記2009年11月22日・・・郡家駅、若桜駅、智頭駅、京口駅、福崎駅、寺前駅、和田山駅(因美線/智頭急行/播但線)

12:28 郡家(こおげ)駅(因美線/若桜鉄道 鳥取県)
ここは八頭町か。
今年春のセンバツでこの町の少年たちを甲子園で見ている。

安徳の里とは、壇ノ浦で海底の都へと飛び込まれた幼帝、安徳天皇のことなのだろう。

実は生き延びられたという伝説は聞いたことがある。
ここもそのひとつなのだろう。

かつての幼帝と見紛うような幼子が滑り台で遊んでいる。

因幡の白兎もこの町が舞台らしい。

駅員の姿はないが、ここには町がある。
これから乗る若桜鉄道は古い駅舎を売り物にして健闘していると、最近何かで読んだ。

13:16 若桜(わかさ)駅(若桜鉄道 鳥取県)
素敵な終着駅だった。

若桜宿として古い歴史を持っているのだろう。
柿の里の先に蔵通り、寺通りといった名所を持つ風情のある町があった。

鬼ヶ城も近くにある。
車窓からはゴリラの頭部を連想させる剥き出た岩肌が見えた。

あるいは鬼がいたのはあの山なのだろう。
険しい表情をした山で、さらに周囲は完全に山に囲まれている。

若桜からは姫路につながると、29号国道こと因幡街道が教えている。

13:25丹比駅着。
とても貴重な駅舎が望めた。

水辺では鴨が群れている。
心地いい眺めだ。

14:22 郡家(こおげ)駅(因美線/若桜鉄道 鳥取県)
駅のホームにただひとりで立っている。
車寅次郎のように。
風が冷たい。

寅次郎は安部駅にいたよ。
ぬいぐるみに姿を変えて。
あるいは映画の冒頭シーンの撮影にでも使われたのだろうか。
味のある駅舎が見えた。

鳥取行は郡家に着くとずいぶん空いた。

14:29川原駅着。
背後に立つ美しい因州娘から素敵な香りが漂ってくる。

15:13 智頭(ちず)駅(因美線/智頭急行 鳥取県)
駅前風景は覚えている。
あの日、気持ちをあたためてくれた駅灯をまず最初に確認した。

何年前のことだったか忘れたが、確か同じような頃だ。
このクリスマスのイルミネーションも、そう言えば目にしている。

車中一緒だった中国人女性が降りて、土師川を渡す智頭橋を越えて、国道先の小さな町に消えていった。

智頭は杉の町。
そして川の町、山の町。
あれから智頭を忘れることなく生きてきた。

懐かしい杉山が紅い。
思わずケータイのシャッターを押す。

智頭急行の切符を購入する。
これから「スーパーはくと」10号に乗って姫路に出る。

16:51 京口(きょうぐち)駅(播但線 兵庫県)
智頭は近かった。
「スーパーはくと」の威力は凄まじい。
鳥取は遠いと言ってきたが、そうに違いはないが、若干トーンを弱めようと思う。

姫路に着いて播但線に乗り換える。
そして1駅目で途中下車する。

「ICOCA」の圏外となり無人駅。
高架駅でもあり都会の風景とも言えるが、飲食店などはほぼ見当たらない。

昨日の円町駅でもそうだった。
地方都市の郊外にはかくも早く夜が訪れる。

静まりかえった都会に雨の音が聞こえる。

17:24 福崎(ふくさき)駅(播但線 兵庫県)
夕暮れ雨の福崎駅頭に迎えの家族の姿が多く見られた。
激しい雨が降る風景だった。

数分の停車後に発車する。
どうやら雨雲は勢力を弱めている。

播但線沿線に明かりはなく、暗闇の中に街灯だけが続いていく。

17:50 寺前(てらまえ)駅(播但線 兵庫県)
人懐こい車掌が切符の確認に回ってきた。
ああした人には関西に来ると必ずひとりは会う。

また雨雲は勢力を増した。
どうやら今夜はこのままだろう。

駅前ではたった1軒のラーメン屋が煌々とあたりを照らし、あとは一面の闇。
左手にはホームセンターを見る。

寺前は西日本有数のススキの大草原という砥峰高原の玄関口とのこと。

姫路を出ても、和田山を出ても、播但線はここ寺前で一旦終点を迎える。
この先は未電化区間となるのだろう。

明るければ但馬の鄙びた風景が見られるはずだ。

20:42 道の宿すてーしょん但馬320号室
和田山駅前に居酒屋の類は見られず、目についた食堂で寿司とビール。

ご主人もおかみさんも好人物で、しきりに「気ぃつけて」とくちにしてくれる。

土産でも購入できればと思っていたが、雨上がりのターミナル駅の一日はすでに終わっていた。

希望では福知山に宿をとりたかったが、明日は福知山でマラソン大会があり、宿は満杯。
仕方なく和田山にしたという経緯がある。

この館内には居酒屋があり、出石そばが食べられるが、どうしよう。
エアコンがすごい音をたて始めた。
宿泊客はそう多くなさそうだが、カラオケを楽しむ声は漏れて、居酒屋にはスリッパが並んでいた。
自販機のビールだが、今どきこの値段はないだろう。

一旦ベッドに横になったが、結局下の居酒屋で一杯やってきた。
ちょっと高かったけど、これでいい。

たいして稼いでいる身じゃないが、酒飲みには金を落とさなきゃいけない場所がある。

出石そばを食べて、この季節に味のいいイカも注文した。
おかみさんは目を合わすたびに愛想がよくなる。

たいした話はしていないがお人柄は分かった。
むこうも分かっただろう。

朝が早いと聞いて、おかみさんはオレを福知山ランナーと思ったかもしれないが、違うんだ。
ただの旅人。

但馬の素敵な人情を感じて、和田山の夜は完結した。

関連記事

「鉄旅日記」2019年長月 初日(東京-盛岡)その3-盛岡、上米内、区界(東北本線/山田線)/大正館 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月21日・・・盛岡駅、上米内駅、区界駅(東北本線/山田線)/大正館 17:39

記事を読む

「車旅日記」2006年初夏 2日目(岐阜-近江八幡)その2-津駅、伊勢奥津駅、名張駅、伊賀上野駅、信楽駅、紫香楽宮跡駅、ホテルはちまん【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】

車旅日記2006年7月16日・・・津駅、伊勢奥津駅、名張駅、伊賀上野駅、信楽駅、紫香楽宮跡駅、ホテル

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏 2日目(徳山-南宮崎)その2-津久見、日代、浅海井、狩生、佐伯、直見、宗太郎、南延岡、南日向、東都農、佐土原、南宮崎(日豊本線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】

鉄旅日記2013年8月11日その2・・・津久見駅、日代駅、浅海井駅、狩生駅、佐伯駅、直見駅、宗太郎駅

記事を読む

「車旅日記」2004年秋 番外編(京都で過ごす日)-四条大宮駅、嵯峨駅前駅、嵯峨嵐山駅、京福嵐山駅、阪急嵐山駅、京都駅 【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】

車旅日記番外編2004年11月23日・・・四条大宮駅、嵯峨駅前駅、嵯峨嵐山駅、京福嵐山駅、阪急嵐山駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月 2日目(五所川原-北上)その2‐大館、大鰐温泉、大鰐、中央弘前、弘前(奥羽本線/弘南鉄道大鰐線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】

鉄旅日記2019年11月3日・・・大館駅、大鰐温泉駅、大鰐駅、中央弘前駅、弘前駅(奥羽本線/弘南鉄道

記事を読む

「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】初日(東京-十日町)-上野、高崎、大前、渋川、沼田、水上、越後湯沢、六日町、越後川口、十日町(高崎線/吾妻線/上越線/飯山線)

鉄旅日記2009年7月18日・・・上野駅、高崎駅、大前駅、渋川駅、沼田駅、水上駅、越後湯沢駅、六日町

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 初日(東京-高松)その4 ‐姫路、相生、有年、三石(山陽本線) 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年9月19日・・・姫路駅、相生駅、有年駅、三石駅(山陽本線) 14:31&n

記事を読む

「車旅日記」2000年春 初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊外ポテチーノ 108㎞ 繁華街を抜ける

記事を読む

「鉄旅日記」2018年弥生 初日(東京-会津若松)その2-土合、越後湯沢、大沢、上越国際スキー場前、越後堀之内、小出(上越線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】

鉄旅日記2018年3月3日・・・土合駅、越後湯沢駅、大沢駅、上越国際スキー場前駅、越後堀之内駅、小出

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春 初日(東京-和歌山)その1-米原、弁天町、大正、芦原橋、今宮、杉本町、堺市、東羽衣、鳳(東海道本線、大阪環状線、阪和線、東羽衣支線) 【爆弾低気圧襲来日、青春18きっぷで西へ】

鉄旅日記2013年4月7日その1・・・米原駅、弁天町駅、大正駅、芦原橋駅、今宮駅、杉本町駅、堺市駅、

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その1 ‐松戸、神立、友部、水戸、いわき(常磐線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・松戸駅、神立駅、友部駅、水戸駅、いわ

2021年神無月~2022年如月【SNSへの投稿より】写真をお楽しみいただけますと幸いでございます。ー下高井戸商店街、辻清人先生、紅葉の頃、金町夕景、今年も暮れゆく東京、金町睦月如月、柴又

2021年10月30日 母校を訪ねるのは卒業以来30年振りでご

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その4 ‐立小路、赤倉温泉、村山、さくらんぼ東根(陸羽東線/奥羽本線/山形新幹線) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・立小路駅、赤倉温泉駅、村山駅、さく

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その3 ‐瀬見温泉(陸羽東線)/湯前神社/山神社 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月6日・・・瀬見温泉駅(陸羽東線)/湯前神社/

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その2 ‐川渡温泉、鳴子御殿湯、鳴子温泉(陸羽東線)/東鳴子温泉神社 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・川渡温泉駅、鳴子御殿湯駅、鳴子温泉

→もっと見る

    PAGE TOP ↑