*

「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】2日目(倉敷-伯耆大山-鳥取-姫路-和田山)その2-郡家、若桜、郡家、智頭、京口、福崎、寺前、和田山(因美線/智頭急行/播但線)

公開日: : 旅話 2009年

鉄旅日記2009年11月22日
12:28 郡家(こおげ)駅(因美線/若桜鉄道 鳥取県)
ここは八頭町か。
今年春のセンバツでこの町の少年たちを甲子園で見ている。

安徳の里とは、壇ノ浦で海底の都へと飛び込まれた幼帝、安徳天皇のことなのだろう。

実は生き延びられたという伝説は聞いたことがある。
ここもそのひとつなのだろう。

かつての幼帝と見紛うような幼子が滑り台で遊んでいる。

因幡の白兎もこの町が舞台らしい。

駅員の姿はないが、ここには町がある。
これから乗る若桜鉄道は古い駅舎を売り物にして健闘していると、最近何かで読んだ。

13:16 若桜(わかさ)駅(若桜鉄道 鳥取県)
素敵な終着駅だった。

若桜宿として古い歴史を持っているのだろう。
柿の里の先に蔵通り、寺通りといった名所を持つ風情のある町があった。

鬼ヶ城も近くにある。
車窓からはゴリラの頭部を連想させる剥き出た岩肌が見えた。

あるいは鬼がいたのはあの山なのだろう。
険しい表情をした山で、さらに周囲は完全に山に囲まれている。

若桜からは姫路につながると、29号国道こと因幡街道が教えている。

13:25丹比駅着。
とても貴重な駅舎が望めた。

水辺では鴨が群れている。
心地いい眺めだ。

14:22 郡家(こおげ)駅(因美線/若桜鉄道 鳥取県)
駅のホームにただひとりで立っている。
車寅次郎のように。
風が冷たい。

寅次郎は安部駅にいたよ。
ぬいぐるみに姿を変えて。
あるいは映画の冒頭シーンの撮影にでも使われたのだろうか。
味のある駅舎が見えた。

鳥取行は郡家に着くとずいぶん空いた。

14:29川原駅着。
背後に立つ美しい因州娘から素敵な香りが漂ってくる。

15:13 智頭(ちず)駅(因美線/智頭急行 鳥取県)
駅前風景は覚えている。
あの日、気持ちをあたためてくれた駅灯をまず最初に確認した。

何年前のことだったか忘れたが、確か同じような頃だ。
このクリスマスのイルミネーションも、そう言えば目にしている。

車中一緒だった中国人女性が降りて、土師川を渡す智頭橋を越えて、国道先の小さな町に消えていった。

智頭は杉の町。
そして川の町、山の町。
あれから智頭を忘れることなく生きてきた。

懐かしい杉山が紅い。
思わずケータイのシャッターを押す。

智頭急行の切符を購入する。
これから「スーパーはくと」10号に乗って姫路に出る。

16:51 京口(きょうぐち)駅(播但線 兵庫県)
智頭は近かった。
「スーパーはくと」の威力は凄まじい。
鳥取は遠いと言ってきたが、そうに違いはないが、若干トーンを弱めようと思う。

姫路に着いて播但線に乗り換える。
そして1駅目で途中下車する。

「ICOCA」の圏外となり無人駅。
高架駅でもあり都会の風景とも言えるが、飲食店などはほぼ見当たらない。

昨日の円町駅でもそうだった。
地方都市の郊外にはかくも早く夜が訪れる。

静まりかえった都会に雨の音が聞こえる。

17:24 福崎(ふくさき)駅(播但線 兵庫県)
夕暮れ雨の福崎駅頭に迎えの家族の姿が多く見られた。
激しい雨が降る風景だった。

数分の停車後に発車する。
どうやら雨雲は勢力を弱めている。

播但線沿線に明かりはなく、暗闇の中に街灯だけが続いていく。

17:50 寺前(てらまえ)駅(播但線 兵庫県)
人懐こい車掌が切符の確認に回ってきた。
ああした人には関西に来ると必ずひとりは会う。

また雨雲は勢力を増した。
どうやら今夜はこのままだろう。

駅前ではたった1軒のラーメン屋が煌々とあたりを照らし、あとは一面の闇。
左手にはホームセンターを見る。

寺前は西日本有数のススキの大草原という砥峰高原の玄関口とのこと。

姫路を出ても、和田山を出ても、播但線はここ寺前で一旦終点を迎える。
この先は未電化区間となるのだろう。

明るければ但馬の鄙びた風景が見られるはずだ。

20:42 道の宿すてーしょん但馬320号室
和田山駅前に居酒屋の類は見られず、目についた食堂で寿司とビール。

ご主人もおかみさんも好人物で、しきりに「気ぃつけて」とくちにしてくれる。

土産でも購入できればと思っていたが、雨上がりのターミナル駅の一日はすでに終わっていた。

希望では福知山に宿をとりたかったが、明日は福知山でマラソン大会があり、宿は満杯。
仕方なく和田山にしたという経緯がある。

この館内には居酒屋があり、出石そばが食べられるが、どうしよう。
エアコンがすごい音をたて始めた。
宿泊客はそう多くなさそうだが、カラオケを楽しむ声は漏れて、居酒屋にはスリッパが並んでいた。
自販機のビールだが、今どきこの値段はないだろう。

一旦ベッドに横になったが、結局下の居酒屋で一杯やってきた。
ちょっと高かったけど、これでいい。

たいして稼いでいる身じゃないが、酒飲みには金を落とさなきゃいけない場所がある。

出石そばを食べて、この季節に味のいいイカも注文した。
おかみさんは目を合わすたびに愛想がよくなる。

たいした話はしていないがお人柄は分かった。
むこうも分かっただろう。

朝が早いと聞いて、おかみさんはオレを福知山ランナーと思ったかもしれないが、違うんだ。
ただの旅人。

但馬の素敵な人情を感じて、和田山の夜は完結した。

関連記事

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】5日目(宇和島-観音寺)-宇和島、卯之町、八幡浜、千丈、伊予大洲、伊予市、松山、伊予北条、今治、伊予小松、伊予西条、新居浜、関川、伊予土居、箕浦、観音寺(予讃本線)

鉄旅日記2009年5月5日 2009・5・5 6:53 宇和島(うわじま)駅(予讃本線/予

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】初日(東京-福知山-播州赤穂-倉敷)その2-北条町、姫路、播州赤穂、日生、備前片上、西片上、倉敷(北条鉄道/加古川線/山陽本線/赤穂線)

鉄旅日記2009年11月21日 13:38 北条町(ほうじょうまち)駅(北条鉄道 兵庫県)

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】最終日(新庄-女川-仙台-東京)その2-女川、渡波、松島海岸、本塩釜、仙台、駒ヶ嶺、原ノ町、桃内、いわき、石岡(石巻線/仙石線/常磐線)

鉄旅日記2009年10月11日 2009・10・11 11:10 女川(おながわ)駅(石巻

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】2日目(三ノ宮-琴電琴平)-三ノ宮、元町、和田岬、兵庫、須磨、西明石、加古川、網干、上郡、和気、高松、志度、屋島、瓦町、一宮、琴平(山陽本線、山陽本線和田岬支線、瀬戸大橋線、予讃本線、高徳本線、琴平電鉄志度線、琴平電鉄琴平線)

鉄旅日記2009年5月2日 三ノ宮にて 2009・5・2 8:08 元町(も

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】初日(東京-新山口)その2-廿日市、広電廿日市、宮島口、広電宮島口、大竹、岩国、徳山、新山口(山陽本線/岩徳線)

鉄旅日記2009年9月18日 2009・9・18 15:46 廿日市(はつかいち)駅(山陽

記事を読む

「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】2日目(十日町-長岡)-十日町、戸狩野沢温泉、長野、松本、信濃大町、南小谷、直江津、柿崎、長岡(飯山線/篠ノ井線/大糸線/北陸本線/信越本線)

鉄旅日記2009年7月19日 2009・7・19 十日町(とおかまち)駅(飯山線/北越急行

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【関東ぶらぶら旅その3-武蔵国で遊ぶ日。7つの交差点へ。】-越生、坂戸、小川町、寄居、羽生、久喜、新越谷、南越谷(東武越生線/東武東上線/秩父鉄道/東武伊勢崎線/武蔵野線)

鉄旅日記2009年11月3日 2009・11・3 11:27 越生(おごせ)駅(八高線/東

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】5日目(松浦-伊万里-唐津-若松)その1-松浦、有田、伊万里、唐津、筑前前原、姪浜、天神、西鉄福岡、博多(松浦鉄道/筑肥線/福岡市地下鉄空港線)

鉄旅日記2009年9月22日 2009・9・22 6:44 松浦(まつうら)駅(松浦鉄

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】2日目(倉敷-伯耆大山-鳥取-姫路-和田山)その1-倉敷、足立、生山、上菅、伯耆溝口、伯耆大山、赤碕、浦安、松崎、浜村、末恒、湖山、鳥取(伯備線/山陰本線)

鉄旅日記2009年11月22日 2009・11・22 5:32 倉敷(くらしき)駅(山陽本

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】初日(東京-福知山-播州赤穂-倉敷)その1-東京、円町、園部、安栖里、山家、市島、柏原、谷川、西脇市、粟生(東海道新幹線/山陰本線/福知山線/加古川線)

鉄旅日記2009年11月21日 2009・11・21 6:04 東京(とうきょう)駅(東海

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】2日目(新潟豊栄‐象潟)道の駅豊栄、道の駅神林、瀬波温泉龍泉、道の駅温海、立岩海底温泉、酒田南郊、象潟駅、象潟松籟館

車旅日記2000年5月4日 2000・5・4 8:09 7号

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄

車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その1‐葛飾金町、幸手駅、古河駅、渡良瀬遊水地北エントランス、藤岡駅、佐野厄除け大師、足利駅

車旅日記2000年5月3日 2000・5・2 東京葛飾金町 

2019年如月【SNSへの投稿より】ごく個人的な内容で恐縮でございます。。

【2019・2・3 Facebookへの投稿より】 出会いか

「鉄旅日記」2019年如月【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】最終日(安中-小諸-小淵沢-東京)その3-海尻城址、海尻、八千穂、信濃川上、佐久海ノ口、甲斐小泉、小淵沢(小海線)

鉄旅日記2019年2月10日 14:08 海尻(うみじり)駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑