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「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】2日目(倉敷-和田山)その2-郡家、若桜、智頭、京口、福崎、寺前、和田山(因美線/智頭急行/播但線)

公開日: : 最終更新日:2024/05/09 旅話, 旅話 2009年

鉄旅日記2009年11月22日・・・郡家駅、若桜駅、智頭駅、京口駅、福崎駅、寺前駅、和田山駅(因美線/智頭急行/播但線)
12:28 郡家(こおげ)駅(因美線/若桜鉄道 鳥取県)
ここは八頭町か。
今年春のセンバツでこの町の少年たちを甲子園で見ている。

安徳の里とは、壇ノ浦で海底の都へと飛び込まれた幼帝、安徳天皇のことなのだろう。

実は生き延びられたという伝説は聞いたことがある。
ここもそのひとつなのだろう。

かつての幼帝と見紛うような幼子が滑り台で遊んでいる。

因幡の白兎もこの町が舞台らしい。

駅員の姿はないが、ここには町がある。
これから乗る若桜鉄道は古い駅舎を売り物にして健闘していると、最近何かで読んだ。

13:16 若桜(わかさ)駅(若桜鉄道 鳥取県)
素敵な終着駅だった。

若桜宿として古い歴史を持っているのだろう。
柿の里の先に蔵通り、寺通りといった名所を持つ風情のある町があった。

鬼ヶ城も近くにある。
車窓からはゴリラの頭部を連想させる剥き出た岩肌が見えた。

あるいは鬼がいたのはあの山なのだろう。
険しい表情をした山で、さらに周囲は完全に山に囲まれている。

若桜からは姫路につながると、29号国道こと因幡街道が教えている。

13:25丹比駅着。
とても貴重な駅舎が望めた。

水辺では鴨が群れている。
心地いい眺めだ。

14:22 郡家(こおげ)駅(因美線/若桜鉄道 鳥取県)
駅のホームにただひとりで立っている。
車寅次郎のように。
風が冷たい。

寅次郎は安部駅にいたよ。
ぬいぐるみに姿を変えて。
あるいは映画の冒頭シーンの撮影にでも使われたのだろうか。
味のある駅舎が見えた。

鳥取行は郡家に着くとずいぶん空いた。

14:29川原駅着。
背後に立つ美しい因州娘から素敵な香りが漂ってくる。

15:13 智頭(ちず)駅(因美線/智頭急行 鳥取県)
駅前風景は覚えている。
あの日、気持ちをあたためてくれた駅灯をまず最初に確認した。

何年前のことだったか忘れたが、確か同じような頃だ。
このクリスマスのイルミネーションも、そう言えば目にしている。

車中一緒だった中国人女性が降りて、土師川を渡す智頭橋を越えて、国道先の小さな町に消えていった。

智頭は杉の町。
そして川の町、山の町。
あれから智頭を忘れることなく生きてきた。

懐かしい杉山が紅い。
思わずケータイのシャッターを押す。

智頭急行の切符を購入する。
これから「スーパーはくと」10号に乗って姫路に出る。

16:51 京口(きょうぐち)駅(播但線 兵庫県)
智頭は近かった。
「スーパーはくと」の威力は凄まじい。
鳥取は遠いと言ってきたが、そうに違いはないが、若干トーンを弱めようと思う。

姫路に着いて播但線に乗り換える。
そして1駅目で途中下車する。

「ICOCA」の圏外となり無人駅。
高架駅でもあり都会の風景とも言えるが、飲食店などはほぼ見当たらない。

昨日の円町駅でもそうだった。
地方都市の郊外にはかくも早く夜が訪れる。

静まりかえった都会に雨の音が聞こえる。

17:24 福崎(ふくさき)駅(播但線 兵庫県)
夕暮れ雨の福崎駅頭に迎えの家族の姿が多く見られた。
激しい雨が降る風景だった。

数分の停車後に発車する。
どうやら雨雲は勢力を弱めている。

播但線沿線に明かりはなく、暗闇の中に街灯だけが続いていく。

17:50 寺前(てらまえ)駅(播但線 兵庫県)
人懐こい車掌が切符の確認に回ってきた。
ああした人には関西に来ると必ずひとりは会う。

また雨雲は勢力を増した。
どうやら今夜はこのままだろう。

駅前ではたった1軒のラーメン屋が煌々とあたりを照らし、あとは一面の闇。
左手にはホームセンターを見る。

寺前は西日本有数のススキの大草原という砥峰高原の玄関口とのこと。

姫路を出ても、和田山を出ても、播但線はここ寺前で一旦終点を迎える。
この先は未電化区間となるのだろう。

明るければ但馬の鄙びた風景が見られるはずだ。

20:42 道の宿すてーしょん但馬320号室
和田山駅前に居酒屋の類は見られず、目についた食堂で寿司とビール。

ご主人もおかみさんも好人物で、しきりに「気ぃつけて」とくちにしてくれる。

土産でも購入できればと思っていたが、雨上がりのターミナル駅の一日はすでに終わっていた。

希望では福知山に宿をとりたかったが、明日は福知山でマラソン大会があり、宿は満杯。
仕方なく和田山にしたという経緯がある。

この館内には居酒屋があり、出石そばが食べられるが、どうしよう。
エアコンがすごい音をたて始めた。
宿泊客はそう多くなさそうだが、カラオケを楽しむ声は漏れて、居酒屋にはスリッパが並んでいた。
自販機のビールだが、今どきこの値段はないだろう。

一旦ベッドに横になったが、結局下の居酒屋で一杯やってきた。
ちょっと高かったけど、これでいい。

たいして稼いでいる身じゃないが、酒飲みには金を落とさなきゃいけない場所がある。

出石そばを食べて、この季節に味のいいイカも注文した。
おかみさんは目を合わすたびに愛想がよくなる。

たいした話はしていないがお人柄は分かった。
むこうも分かっただろう。

朝が早いと聞いて、おかみさんはオレを福知山ランナーと思ったかもしれないが、違うんだ。
ただの旅人。

但馬の素敵な人情を感じて、和田山の夜は完結した。

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