「鉄旅日記」2008年初秋 初日(東京-羽咋)その2-新西金沢、野町、加賀一の宮、西金沢、羽咋(北陸本線/北陸鉄道石川線/七尾線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】
鉄旅日記2008年9月13日・・・新西金沢駅、野町駅、加賀一の宮駅、西金沢駅、羽咋駅(北陸本線/北陸鉄道石川線/七尾線)
15:19 新西金沢(しんにしかなざわ)駅(北陸鉄道石川線 石川県)
途中下車に疲れ、降りるつもりでいた小松、松任を抜かして眠りに落ちた。
北陸鉄道へ。
静かな駅頭で列車を待っている。

大都市金沢はすぐそこだが、そこには行かずに石川県の細部に入っていくことに対して喜びがある。
秋の虫の音を伴った涼しい風が吹いている。
どことなく鈍い青空に、季節が持つ哀愁を感じる。
秋は夏にはなれない。
15:54 野町(のまち)駅(北陸鉄道石川線 石川県)
金沢の外れ西茶屋町、九谷焼窯元。
季節を外れているのか、観光用の駐車場に車はなく、由緒を持つ茶屋町を歩く人の姿はまばら。
表通りの交通量は多かった。

金沢は大きいな。
ここからじゃ兼六園にも香林坊にも行けない。
そうした時間は持っていなかった。
時間が経つとともに、新しい町に下りるたびに、物悲しさが募っていく。
ほんの少しだけ途方に暮れている。

17:06 加賀一の宮(かがいちのみや)駅(北陸鉄道石川線 石川県)
変化のない風景の中を北陸鉄道石川線は往く。
沿線で町らしい姿をしていたのは鶴来のみで、他は駅周辺に町はなく、駅員の姿もない。
この歴史的建造物と言える駅舎を持つ終着駅も無人だった。

白山本宮への階段を上がる。
地元じゃ「しらやまさん」と呼ばれて崇拝されているとのこと。

ちょうど手取川に近づいたあたり。
晩夏を生きる蝉を従えて、ひっそりと加賀の神様はいた。
17:53 西金沢(にしかなざわ)駅(北陸本線 石川県)
次に来る七尾行に乗る。
じきに日も暮れて、今日はこれで仕舞いになる。
金沢の手前の駅で待っている。
大都市が近いことは予感できるが、ここに大都市の匂いはなく、金沢という街に収まりきらなかったものが無造作に置かれたような町。
特に目を引く物はないが、ここで北鉄とJRは交わる。

余所者が歩くことのない町をたどった一日だった。
活気はあまり見られなかった。
今年はおそらく選挙の秋。
森喜朗元首相と馳浩代議士のポスターを見かけた。
彼等は地元で一体何を喋っているのか。
プロレス界のスーパースター、馳先生には期待している。
つらつら思っているうちに、誰かの街頭演説の声が聞こえてきた。
21:54 羽咋グリーンホテル403号
これまでに着いたどこよりも街明かりは暗かった。
今度こそ途方に暮れた。
でも飲み屋はある。
どうにかなるだろう。
そんな居酒屋に落ち着き、今ここにいる。
どこから来た少年たちか知らないが、部屋のドアに剣道着が干してあって、オレの気配に気づいた少年が謝りに出てきた。
微笑ましい。
指導者もしっかりしているし、彼等もまたそうなのだろう。
汗の臭いが漂っているが、懐かしい。
あの時分、オレはあの臭いに囲まれて生きていた。
「気にしなくていい。」
笑顔で伝える。
この年齢まで生きてくれば、その程度の甲斐性なら持っている。
能登にいる。
暗くてあたりことはよく分からないが、街は祭の最中だった。
人々が川辺に出て涼んでいて、飲み屋で一杯やって出てきたら、その数は増えていた。
季節外れの送り盆なのか。
祭の輪には誇りと幸せがあった。
かつてこの街にプロレスがやってきて、ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田が持つインタータッグ王座に、ビル・ロビンソン、マリオ・ミラノの欧州コンビが挑んだ王座戦が組まれた。
冗談のように聞こえるかもしれないが、今夜この街を選んだ理由はその一点に尽きる。
街の灯はほんのりと美しかった。
ここは加賀じゃない。
能登という独立国。
爆竹が鳴った。
祭は大団円を迎えて、街の人々は来年のこの日に思いを馳せ、計画を練り始める。
人々の営みの中で最も正しく健気な行為だ。
オレも未来に希望をつなぐ。
祭の輪に紛れ込んだ時には、車寅次郎になった気分で歩いた。
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