「鉄旅日記」2008年初秋【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】初日(東京-米原-野町-加賀一の宮-羽咋)その1-東京、大垣、米原、長浜、敦賀、鯖江、西鯖江、大聖寺、加賀温泉(東海道本線/北陸本線)
鉄旅日記2008年9月13日
2008・9・12 23:09 東京(とうきょう)駅(東海道山陽新幹線/東北新幹線/上越・長野新幹線/東海道本線/中央本線/山手線/京浜東北線/総武線快速/横須賀線/京葉線/東京メトロ丸の内線 東京都)
「ムーンライトながら」は満席。
宇都宮線が遅れているらしい。
今夜はインターンで8日間来ていた学生のお別れ会。
そんな場所にオレがいないのは珍しい。
仕方がない。
旅はすべてにおいて優先される。
前の座席に座る女性は熊のぬいぐるみを抱えている。
お友達も一緒。
彼女たちにとってはきっと特別な夜になるのだろう。
ようやく靴が足に馴染んだ。
恋人がくれた芝大明神の守り神。
有楽町駅のホームも満員。
きれいだった月が霞んだ。
2008・9・13 6:57 大垣(おおがき)駅(東海道本線/美濃赤坂支線/樽見鉄道/養老鉄道 岐阜県)
雲が重く垂れこめている。
濃尾平野はその空の下で目覚めの悪い朝を迎えた。
西の国は、東の国より秋色が濃かった。
7:41 米原(まいばら)駅(東海道新幹線/東海道本線/北陸本線/近江鉄道本線 滋賀県)
長浜行を待っている。
昨日の東京と違って涼しい朝。
このターミナル駅の風情に変化はない。
弱い雨が降り、近江鉄道はひとりの乗客を乗せることもなく発車した。
大勢の人間が通り過ぎて、騒々しい時間が定期的にやってくるが、その者たちが行ってしまえば、同じように定期的に静けさが訪れる。
北陸路へ足を踏み入れる者は少ない。
8:15 長浜(ながはま)駅(北陸本線 滋賀県)
顔を変えた長浜駅。
2年前の夏の喧騒はなく、今日は閑散としている。
大雨に打たれたあの日。
彼女に便りを送った待合室も今はない。
琵琶湖が見えて、街は濡れている。
能登川の中学生の一団が乗り込んできた。
9:49 敦賀(つるが)駅(北陸本線/小浜線 福井県)
木之元から余呉へと北陸路。
敦賀に着く頃には雨も上がり、薄日も差して蒸し暑くなってきた。
駅前は以前より小さくなったような気がする。
確かそんな感想を洩らすのは初めてじゃない。
この街での記憶はずいぶんと古いものになった。
10年以上前の恋人の故郷、港都敦賀。
街には銀河鉄道999の登場人物の像が立っている。
その後のオレにとっても大事な街になるはずだった。
でも遠い過去に置いておく街になった。
恋人のご両親に二人の結婚を許してもらおうと、敦賀駅に着いたのは16年前。
まるで冗談だ。
給水塔が残る敦賀駅の風格に、かつてとは違う価値観を見つけて、今は北陸トンネルを走行中。
11:15 鯖江(さばえ)駅(北陸本線 福井県)
西山公園にはレッサーパンダがいる。
本町通りに人は見られなかった。
福井鉄道福武線の西鯖江駅までを往復。
その背後に件の西山公園があり、目にすることはなかったが、日野川が街を東西に貫いている。
海の気配はない。
京都へとつながる鯖街道がどこかにあるはずだが。
ディズニーの軽快なメロディが流れて特急が通過していった。
鯖江駅に特急は止まらないのか。
敦賀行がやってきた時は「トトロ」のテーマ曲が流れた。
西鯖江(にしさばえ)駅(福井鉄道福武線 福井県)にて
13:01 大聖寺(だいしょうじ)駅(北陸本線 石川県)
10万石祭の最中。
詳しい話は忘れたが、大聖寺では戦国時代に激戦があり、眉目秀麗な若武者が自殺的な討死を遂げた町。
海音寺潮五郎さんの短編小説の舞台。
堀跡のような水路に囲まれた一角はそんな歴史の舞台に相応しい風情を残している。
そんな殺伐とした時代も過ぎて400年。
21世紀を生きる人類が受け継いだ町の姿として、ワルくはない。
古人が往来した町で、若者が駅を埋めている。
14:10 加賀温泉(かがおんせん)駅(北陸本線 石川県)
加賀市の中心は大聖寺。
この駅は山中温泉、山代温泉といった温泉街への玄関口。
金色の巨大な観音様があたりを睥睨している。
米原の涼しさはもはや消えて、北陸の残暑もまた厳しい。
ホームに流れている民謡が、駅一帯を長閑にも、また退廃的にも見せている。
加賀温泉慕情とでも表現すべきか。
温泉街の風情は見てみたいと思う。
このあたりじゃ空はどこも広い。
吹いている風は秋のもの。
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