*

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】最終日(魚津-東京)その1-魚津、生地、黒部、電鉄黒部、泊、親不知、越中宮崎、糸魚川、能生、梶屋敷、浦本(北陸本線)

公開日: : 最終更新日:2023/06/22 旅話, 旅話 2014年

鉄旅日記2014年3月23日その1・・・魚津駅、生地駅、黒部駅、電鉄黒部駅、泊駅、親不知駅、越中宮崎駅、糸魚川駅、能生駅、梶屋敷駅、浦本駅(北陸本線)
2014・3・23 6:02 魚津(うおづ)駅(北陸本線 富山県)
たいして眠れなかったけど、魚津でいい夢を見た。

寒さに敬意を表すべき朝だ。
駅に行ったら、雪景色の立山連山が幻のように見えている。
巨大な壁だ。
行く手は完全に遮られている。

魚津は蜃気楼の街でもある。

6:22 生地(いくじ)駅(北陸本線 富山県)
公民館だけがある駅前に4分の滞在。
ガランとした待合室に健全な少女たちが次々とやってきて笑顔を交わしている。
美しい朝の光景だ。

ホームでは鋼の肉体のような立山連山の彫刻美を飽かずに見つめていた。

ひと駅戻り黒部へ。
近寄りがたい神の懐に戻るべく黒部へ。

電鉄黒部(でんてつくろべ)駅(富山地方鉄道本線 富山県)にて


黒部~電鉄黒部間(徒歩)

6:54 黒部(くろべ)駅(北陸本線 富山県)
雪だった2007年1月。
駅前にたった一軒の中華食堂は健在だった。

ホテルアクア、中央病院を過ぎ、黒部の繁華街まで快足歩きで8分。
廃屋の目立つ寂れた街を貫くストリートが美しかった。
行く手はやはり立山連山が立ち塞がっている。

戦国の頃、佐々成政は富山城からあの景色の中へと消え、やがて浜松に姿を現す。
同盟関係にあった柴田勝家を滅ぼした豊臣秀吉からの圧力が迫り、自領を出ればすべて敵地という状況下で、彼はその苦境を打破するべく、こともあろうにあの幻を連想させる大山脈を越えて浜松に辿り着き、徳川家康を頼ることを思いつく。

厳冬期に行われた「さらさら越え」。
とてつもないことをやった男だ。
結局彼の行為が報われることはなかったが、彼以来伝え聞くことのない壮挙で、現代を生きるどんな冒険家もそんな真似はしないだろう。
彼は帰りもその険路を辿り富山に帰り着く。

そんなこんな、立山連山はずっと黒部の街を見てきた。
新幹線景気があるのなら、どうか黒部を潤してほしい。
過去2度の黒部行でも確かそう思った筈だ。

7:15 泊(とまり)駅(北陸本線 富山県)
特急の通過を見送るため5分の停車。

言ってみれば旧友との再会みたいなものだ。
大和屋旅館が右手にあって、駅前商店街が真っ直ぐに延びている。

何年前かは忘れたがオレは車でこの駅に立ち寄っている。

車窓からの立山連山

7:39 親不知(おやしらず)駅(北陸本線 新潟県)
8号国道沿いのかつて立ち寄ったピアパークがここから見えたと思っていたけど、記憶違いだったか。

北アルプスの先端、名勝親不知子不知。
承久の乱では鎌倉軍と後鳥羽上皇軍の壮絶な死闘が行われたという。

そんな天下の険に恐れを抱いた過去いく度かの北陸行。
ここを通る時はたいてい早朝で、急カーブに身を縮ませたものだ。

今回初めて電車に乗ってやってきた。
車と違って、穏やかなものだ。

北陸自動車道の高架と日本海に目を向けて、ここから2駅戻る。


7:58 越中宮崎(えっちゅうみやざき)駅(北陸本線 富山県)
かつて「たら汁」を食べた栄食堂は営業中だったよ。

この国をまだよく知らない頃、もっとも今もよく知ったとは言いがたいが、とにかく昔のことだ。
ここを通る度に何度も同じことを記してきた「旅と女と孤独」の話がある。
でも今日はよそう。
もう次はないかもしれないが、よしておこう。
オレはもはや孤独ではないのだから。

再生することはないであろう宮崎海岸の廃れた駅前風景。
あれからずっと無常を感じて生きてきたが、今回の再訪では角の釣具屋の亭主と偶然同じ列車に乗り合わせていて、その巨体を追い抜く際に何者だろうと思いつつ駅を出た。

海岸に出て美しい日本海を見た。
朝から楽しんでいる集団がいて、風が吹いて、帰り道に彼の正体を知った。

日々無常の中で生きる彼にとって、オレのようにふらふらしているように見える男はさぞ腹立たしい存在に違いない。



8:54 糸魚川(いといがわ)駅(北陸本線/大糸線 新潟県)
30分近く停車。

関西のオッサンに話しかけられる。
たぶん、魚津から乗った時に隣りの車両の長椅子で横になって寝ていた人だ。
陽気で精力的で、オレのどこを気に入ったのか、お握りをくれようとしたりする。
「あの山は何や?」と地元の少年に話しかけてくれたお陰で黒姫山の存在を知った。

翡翠の街、糸魚川の駅は新幹線開業に合わせて変貌していた。
8号国道まで歩き、展望台から日本海と北アルプスを望み、木造アーケードが残る古い街並を歩いた。

加賀前田公御用達の造り酒屋がおそらく当時のまま現存していた。
旅館、何かを商う店、商いをやめた家。
そんな古い建物が押し込まれるように連なり、場違いに見えるスナックの姿もある。

銭湯のような懐かしさを感じた。
語り尽くせない味わいを持った街だ。





9:58 能生(のう)駅(北陸本線 新潟県)
この町で60分を過ごす。

さっきから駅のホームでアンパンなんぞを食べているが、ここは日差しに満ちてあたたかく、北陸の長い冬ももう終わりだと感じている。

8号国道に沿う海岸線はテトラポットに埋め尽くされ進入を許さない。
やむなく引き返してスーパーに入った。
9:00過ぎだというのに駐車場は随分埋まっている。
レジですぐ前に並んでいたご婦人がたった一本のビールを持って立ち尽くしているオレに「お先にどうぞ」と声をかけてくる。
「気にしないでほしい」旨を感謝とともに告げ、外に出て気持よくビールを飲んでその場を離れた。
東京ではまず見られない人情だった。

能生駅には駅員がいる。
品のいい女性だ。
電話応対などそれなりに忙しそうだったが、ホームに上がろうとするオレに「寒いですよ」と気遣いをくれる。

ストーブの置かれた待合室には顔に深い皺を刻んだ爺さんが所在なげに座っていた。
おそらく飽きるまでずっといるつもりなのだろう。
自分がいることで、オレが入室を遠慮しているのじゃないかと気にする素振りを見せた。

だからオレはここで日を浴びているわけだ。

北風がやんだ。
とてもあたたかい。

2駅戻る。

梶屋敷(かじやしき)駅(北陸本線 新潟県)にて

梶屋敷~浦本間(徒歩)

11:04 浦本(うらもと)駅(北陸本線 新潟県)
ひとつ手前の梶屋敷駅から早川を越え、白峰を振り返り振り返り歩いた。
約40分の徒歩行。

すれ違ったオッサンは北朝鮮の故金正日将軍にとてもよく似ていた。
会釈をしたら愛嬌とともに返したくれた。

オレと誕生日が同じで、人民に対して圧政を敷いた故将軍も一皮むけば、これもオレと同じように「男はつらいよ」が大好きだったという。
故金大中元韓国大統領との会談の際に見せた笑顔を見て思ったことでもあるが、案外人のいい男だったのかもしれない。

快晴の日本海路を童心に戻って歩いた。
カモメの一団がV字に飛んでくる。
うれしく楽しく歩いた。

振り返ると北アルプスが親不知で断崖となり日本海に落ち込む姿が見えて、とても気高く感じた。
8号国道を走っていたドライバーもさぞ気持ちよかっただろう。
オレもかつてたった一度同じ方向に車を走らせたことがあったが、あの光景は覚えていない。

梶屋敷駅は村の中心にあって近くの旧道には旅館や割烹を謳う食堂がある。
浦本駅は村外れのトンネルの手前に位置していた。
目にしたものすべてが美しく愛おしかった。

関連記事

「鉄旅日記」2017年冬【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】初日(東京-下今市-会津高原尾瀬口-会津若松)その1-大泉学園、北千住、東武動物公園、上三依塩原温泉口、中三依温泉、会津高原尾瀬口、七ヶ岳登山口、会津山村道場(西武池袋線/東武伊勢崎線/東武鬼怒川線/野岩鉄道/会津鉄道)

鉄旅日記2017年12月2日・・・大泉学園駅、北千住駅、東武動物公園駅、上三依塩原温泉口駅、中三依温

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【ひらパーGo!Go!チケットで行く、京阪旅】初日その1(東京-宇治)-東福寺、祇園四条、伏見稲荷、稲荷、男山山上、八幡市、枚方市、私市、河内森、河内磐船、交野市(京阪本線/男山ケーブル/京阪交野線)

鉄旅日記2015年3月21日その1・・・東福寺駅、祇園四条駅、伏見稲荷駅、稲荷駅、男山山上駅、八幡市

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】初日(東京-三ノ宮)-金町、東京、静岡、浜松、弁天島、大垣、美濃赤坂、石山寺、膳所、尼崎、西宮、芦屋、三ノ宮(東海道本線、美濃赤坂支線、京阪石山坂本線)

鉄旅日記2009年5月1日・・・金町駅、東京駅、静岡駅、浜松駅、弁天島駅、大垣駅、美濃赤坂駅、石山寺

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】最終日(安中-東京)その2-屋代、坂城、小諸、三岡、中込、羽黒下、松原湖(しなの鉄道/小海線)

車旅日記2019年2月10日・・・屋代駅、坂城駅、小諸駅、三岡駅、中込駅、羽黒下駅、松原湖駅(しなの

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【浜名湖周辺で遊ぶ一日】その1-掛川、掛川市役所前、西掛川、天竜二俣、西気賀、寸座、浜名湖佐久米、三ケ日、新所原(天竜浜名湖鉄道)

鉄旅日記2015年3月28日その1・・・掛川駅、掛川市役所前駅、西掛川駅、天竜二俣駅、西気賀駅、寸座

記事を読む

「車旅日記」1998年夏【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】初日(東京-青森フェリー埠頭)-東京町田、加平PA、千代田PA、東海PA、差塩PA、福島松川PA、泉PA、金成PA、北上金ヶ崎PA、岩手山SA、湯瀬PA、津軽SA、青森フェリー埠頭

車旅日記1998年8月12日 1998・8・12 7:21 東京町田 夏の第1ラウンドのツアーか

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】初日その2(東京-岩倉)-三河高浜、碧南、高浜港、亀崎、半田、知多半田、内海、富貴、河和(名鉄三河線/武豊線/名鉄河和線/名鉄知多新線)

鉄旅日記2015年3月7日その2・・・三河高浜駅、碧南駅、高浜港駅、亀崎駅、半田駅、知多半田駅、内海

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】2日目(徳山-南宮崎)その2-津久見、日代、浅海井、狩生、佐伯、直見、宗太郎、南延岡、南日向、東都農、佐土原、南宮崎(日豊本線)

鉄旅日記2013年8月11日その2・・・津久見駅、日代駅、浅海井駅、狩生駅、佐伯駅、直見駅、宗太郎駅

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】3日目(柳井-徳島)-柳井、大畠、西条、岡山、高松、高松築港、オレンジタウン、引田、池谷、鳴門、徳島(山陽本線/瀬戸大橋線/高徳本線/鳴門線)

鉄旅日記2008年5月4日・・・柳井駅、大畠駅、西条駅、岡山駅、高松駅、高松築港駅、オレンジタウン駅

記事を読む

「車旅日記」2005年冬【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】2日目(都城-鹿児島-川内-人吉)走行距離284㎞ その2-伊集院駅、串木野駅、川内駅、薩摩高城駅、大隅横川駅、吉松駅、人吉駅前ホテル

車旅日記2005年2月12日 14:11 伊集院駅(2月11日の熊本空港より385㎞) 桜島フェ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その3‐多治見、金山、豊橋、御厨(太多線/中央本線/東海道本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・多治見駅、金山駅、豊橋駅、御厨駅(太

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その2‐猪谷、高山、久々野、古井、美濃川合(高山本線/太多線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・猪谷駅、高山駅、久々野駅、古井駅、美

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】最終日(速星-東京)その1‐速星、越中八尾、楡原(高山本線)

鉄旅日記2020年3月22日・・・速星駅、越中八尾駅、楡原駅(高山本線

「鉄旅日記」2020年弥生【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】2日目(高山-速星)その5‐府中鵜坂、西富山、速星(高山本線)

鉄旅日記2020年3月21日・・・府中鵜坂駅、西富山駅、速星駅(高山本

→もっと見る

    PAGE TOP ↑