*

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その3-関駅、その後

公開日: : 最終更新日:2025/05/14 旅話, 旅話 1996年

車旅日記1996年5月3日

16:36 関駅
あれから2時間経ってようやくここに戻ってきた。

美味いきしめんを食わせてくれた前回の店には寄れず、上品さとはかけ離れたラーメン屋で、マニュアル対応の店員にうんざりしながら熱いラーメンを黙々と口に運んだ。
渋滞の合間だった。

その後、暗然とした気持ちで木曽川、長良川、揖斐川を渡った。

そして渋滞は解消した。
擦り切れていたオレはレーサーになった。

次の休息地は決まっている。
視界が埃っぽくなっていく。

テープはストーンズの「アンプラグド」アルバム。
キース・リチャーズが歌う「Slipping Away」に気持ちが合わさる。

大都会を抜けると、人が正常な状態で暮らす町がある。
人はそこで電車を待ち、待っている人に電話を入れ、あるいは人と約束を交わす。

妙に尖ったヤツなどいない。
オレに話しかけてくる人はいないけど、なぜかそこでは善意の中に身を置いているような気持でいられた。

去年は秋だったけど、今見てきた風景と記憶との間に差がないんだ。
ススキが何百本と風に揺れている。
例え夏に訪ねても、あのススキたちはオレに涼風をくれるだろう。

なんか好きでね。
それに何だか懐かしい。
なぜか少年だった頃に温かみを覚えた光景を漠然と思い出す。

そこには大勢の人がいた。
大人は酒を飲み、子どもは甘いジュースをいつまでもせがんでいる。
その中にオレがいる。
そんな光景。

時刻表を見る。
この駅に止まる列車が一体どこまで人を運ぶのか知りたかった。

どこの駅でも列車の行方が気になる。
旅先のオレは駅の存在にこだわる。

理由。
その駅からどこかへ行こうとしている人々を見たかったんだろう。
それがなぜなのかは分からないけど。

思えば、この駅に寄りたくて今回もこのルートを選んだんだよな。
ようやくここに来て笑ったよ。
そのあたりも前回と同じだな。

大阪で待つ友に電話を入れた。
彼の方の準備はもう整っているようだった。

缶コーヒーを買い求める。
立ち去りがたい思いでいる。

ここにはまた来るだろう。
そんな気がするよ。

1996年5月3日の記憶
その後、記録はない。

一体オレはどこで休息したのか、それすらよくは覚えていない。

1号国道の行く末は見えるところまで来ていた。
秋もそうだったが、反対車線はなぜか混みあっている。
昔、お伊勢参りに向かう人々の列とはあんな具合だったんだろうか。

鈴鹿越え。
1号国道はこれまでに走ってきたどの地域よりもよく舗装されていて、遥かな山並の中をたんたんと進む。

しばらく行くと水口に出る。
地図を眺めると必然的にそこらあたりが休息場所だと思う。
だけど疲れていた。

やがて瀬田へ向かう車線も混み始めた。
空が暗くなり始めている。
ここらで国道から離れなければならないと思い始める。

1号国道を東京から大阪まで一日で走破することはできない。
去年の秋に分かってもよかったが、どうやらそういうことらしい。

一刻も早く友が待つ街まで急ぐべきだと思う。
栗東近く、その先に名神自動車道の入口がある。

渋滞表示はわずかだが出ていた。
しかし道は流れた。

ブルースをかける。
渋滞は表示場所に着く前に始まり、当初の表示より規模は壮大なものになり始めていた。

確かにオレはブルースを聞いていた。
しかしその時オレは視界に広がる渋滞の列とは違う映像を見ていた。

目はしっかりと開いてはいた。
でも脳は走り続けることに耐えられなくなっていたんだろう。
そして体を動かしているオレに睡眠時の夢を見させた。
よくは覚えていないが、それは日常の一コマだった。

しばらくしてオレは自分が異常な状態でいることに気づいた。
顔をひっぱたき、汗を拭き、どうにか正気を取り戻した。
友が待つ街に着けば終わる。

渋滞は解消しない。
京都から大阪への道は長い下り坂だった。
テールランプの連なりがとてもきれいだった。

友の家に行くには吹田ジャンクションで下りればいい。
そしてどうにかたどり着く。
必要な金を払って、再度一般道に放り出された。

中央環状線。
友が教えてくれたルートに乗り大阪に分け入り始めた時、心から安心したことを覚えている。

友が待つ街はすぐだった。
この街には去年の秋にもきていて、微弱ながらオレの中ですでに故郷化していたんだろう。

友に居場所を伝えた地は、約束の場所じゃなかった。
電話で彼はそこに行くにはどうすればいいかを正確に指示して、そこで待つと告げる。

車を反転させて中央環状線を逆走する。
千里中央駅では大阪人が日常の流れを作っている。
そんな何気ない大阪の風景を見ながら、自分の意志で東京から500㎞も離れたそんな場所にいることを心から楽しんだ。

そして約束の場所へ。
友は初めて会った時と同じ笑顔で待っていた。

抱き合って再会を喜んだ。
適当に空手チョップを互いの胸板に打ち込む。
それが昔ながらの2人の挨拶。

そんなことができる友人は、もう彼の他にはいない。
だからこうしてオレは大阪まで三度やってきた。

彼の家では、彼の愛する奥さんがオレたちを待っていた。
彼女は彼の愛妻であり、オレにとって大切な友人だった。

彼等はしきりにたくさん食べることを勧め、そうして箸をつけた彼女の手料理はとても美味かった。

心地よい安らぎを与えてくれてありがとう。
減らず口をたたきながら彼等の友情に心から感謝して、翌日は彼等の方針に従うことにした。

その夜、泥のように眠った。
その安らかな眠りがツラかった記憶をいい思い出に変えた。

関連記事

「鉄旅日記」2022年如月 初日(東京-常陸大子)その1 ‐金町、我孫子、新木、成田、佐原(常磐線/我孫子支線/成田線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】

鉄旅日記2022年2月5日・・・金町駅、我孫子駅、新木駅、成田駅、佐原駅(常磐線/我孫子支線/成田

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始 最終日(一ノ関-東京)その3-名取、岩沼、福島、郡山、新白河、上野(東北本線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月6日・・・名取駅、岩沼駅、福島駅、郡山駅、新白河駅、上野駅(東北本線) 15

記事を読む

「鉄旅日記」2019年霜月 2日目(五所川原-北上)その1‐五所川原、津軽五所川原、津軽中里、鯵ヶ沢、東能代(津軽鉄道/五能線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】

鉄旅日記2019年11月3日・・・五所川原駅、津軽五所川原駅、津軽中里駅、鯵ヶ沢駅、東能代駅(津軽鉄

記事を読む

「車旅日記」1998年春 3日目(津軽SA-十和田湖-酒田駅-鳴子温泉)-津軽SA、温川、十和田湖休屋、長木渓谷、道の駅鷹巣、道の駅琴丘、道の駅西目、象潟駅、酒田駅、道の駅戸沢、鳴子サンハイツ 【下北半島を目指した春。男の旅は北を目指すものと思っていた20代後半。高倉健さんの影響でございましょうか。】

車旅日記1998年5月3日 1998・5・3 5:45 東北自動車道-津軽SA 1087km 聞き

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月 4日目(徳島-善通寺)その2-海部、桑野、阿南、穴吹、佃、琴平、善通寺(牟岐線/徳島本線/土讃本線) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】

鉄旅日記2008年5月5日・・・海部駅、桑野駅、阿南駅、穴吹駅、佃駅、琴平駅、善通寺駅(牟岐線/徳島

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 2日目(高松)その1 ‐瀬戸大橋遠景、丸亀城、少林寺、津嶋神社参道、津島ノ宮駅、詫間海軍航空隊跡、箱浦(浦嶋伝説の地)、父母ヶ浜 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

車旅日記2020年9月20日・・・瀬戸大橋遠景、丸亀城、少林寺、津嶋神社参道、津島ノ宮駅、詫間海軍

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月 2日目(天王寺-奈良)その2-なんば、上本町、鶴橋、桃谷、寺田町、天王寺、恵美須町、新今宮、奈良(南海電鉄南海線/関西本線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】

鉄旅日記2007年2月11日・・・なんば駅、上本町駅、鶴橋駅、桃谷駅、寺田町駅、天王寺駅、恵美須町駅

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、房総途中下車旅】その2-上総興津、安房小湊、安房天津、安房鴨川、和田浦、九重、若井、竹岡、上総湊、佐貫町、青堀、稲毛海岸、新習志野(外房線、内房線、京葉線)

鉄旅日記2013年3月9日その2・・・上総興津駅、安房小湊駅、安房天津駅、安房鴨川駅、和田浦駅、九重

記事を読む

「車旅日記」2000年春 3日目(象潟‐秋田‐盛岡‐鳴子温泉)象潟海岸、秋田駅、角館花葉館、田沢湖駅、紫波SA、前沢SA、古川駅 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月5日 8:54 象潟海岸 636㎞ 朝、人気のない海もいい。 車を降りるつ

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋 最終日(和田山-東京)その2-大阪、桜島、西九条、阪神西九条、久宝寺、放出、京橋、京阪京橋、近江舞子、近江今津、近江塩津(大阪環状線/桜島線/関西本線/おおさか東線/学研都市線/湖西線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】

鉄旅日記2009年11月23日・・・大阪駅、桜島駅、西九条駅、阪神西九条駅、久宝寺駅、放出駅、京橋駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑