「鉄旅日記」2018年エイプリルフール【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】その1-金町、上野、鹿沼、日光、東武日光、宇都宮、野崎(常磐線/東北本線/日光線)
鉄旅日記2018年4月1日
2018・4・1 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都)
4:30の町は24時間営業の飲食店がいくつか並び、一日の活動を始めた人々が音を発していた。
旅立ちの町はしばらくここになる。
いつまでもいるつもりはないんだ。
アパートの次の更新までには引き払うつもりで生きていく。
新しい暮らしが整い始めた昨日。
散らかっていた部屋が徐々に片付きだして、丸椅子にどっかりと腰を下ろしてテレビを眺めた時、ふいに寂しさが込み上げる。
とうとうこんなところでひとりになってしまって。
愛しきものは、オレがいなくなったことを悟って泣いていないだろうか。
甲子園での3回戦最後の試合、星稜×近江の熱戦にも身が入らずにいたよ。
あまり眠れなかった夜には姿が浮かぶ。
やはりこうすべきじゃなかった。
でももう戻れない。
この町で8年前まで、10年もの間ひとりで暮らしていた時に感じていた寂しさは、今感じている物に比べれば屁みたいなものだ。
一緒に暮らす人がいる集合体には、ひとりでいたんじゃ味わえない類いの幸せがある。
オレはそれを経験し続けていたんだな。
そんな幸せを写したものがある。
今あらためて眺めたら、また別種の感慨に包まれた。
幸福感だよ。
腹のあたりが温まるのを感じていた。
5:09 上野(うえの)駅(東北・北海道新幹線/秋田新幹線/山形新幹線/上越新幹線/北陸新幹線/東北本線/常磐線/高崎線/山手線/京浜東北線/東京メトロ銀座線/東京メトロ日比谷線 東京都)
入谷口から表に出る。
ジャイアントパンダの親子がショーケースに収まっている。
まるでオレたちのよう。
別れの翌日、心の支えでもある女性がfacebooKに寄せてくれた写真が思い出される。
そこには、大きな花が小さな花を後ろから見守るように添う様が写っている。
電車の中で深い感動に包まれ、本当の意味での孤独な状態でいるわけじゃないと安心できた。
上野駅は開け放たれ、明るくなり始めた空の下を人々が続々と改札を通る。
じきに浦和に着こうとする車内の席はほぼ埋まっている。
7:15 鹿沼(かぬま)駅(日光線 栃木県)
宇都宮で乗り換え。
日光線ホームは、歴史的遺産とも言える日光駅をあしらった小豆色の装飾が施され、東照宮の町に既に一歩踏み込んだ気持ちにさせてくれる。
かつて国道から眺めた鹿沼は、それなりに大きな町に見えた。
12月に東武線から眺めた鹿沼にも感慨は起きた。
鹿沼駅はどうやら町外れに位置しているようだ。
駅前は肌寒く、駅へと続いている道が町に向けて下っていく様が見えた。
7:51 東武日光(とうぶにっこう)駅(東武日光線 栃木県)にて
8:06 日光(にっこう)駅(日光線 栃木県)
日光線の各駅とも小豆色に装飾されていた。
このあたりじゃあの色を小豆色とは言わずに、何か地域性をうかがわせる表現を使っているのではないか。
町に人はなく、店は閉まり、観光客が発する外国語が聞こえてくる。
目の前に座っているのはフランス、イタリアといったラテン系カップルだろう。
春霞の日光の山々に清々とした凛気はなく、朧な朝。
まるで飲み疲れて眠り、目覚めた時の朝のよう。
駅前のベンチに座って、東武駅で買ったビールと買い置きのポテチを楽しむ。
「さてっ」と見上げた空が青かった。
次に会えるのがいつになるのか知らないが、土産の玩具と靴下も買った。
オレを見ると、「電車来るかなぁ」と寄ってくる別れの情景だった。
オレの未来はどうにかする。
愛しきものに損なわれた未来があるのなら、できるだけのことをすると誓う。
下りでも見かけたが、今市駅の発車音を鳴らすスピーカーに本格的なマイクを向ける集団がいて、さっきより人もマイクも増えていた。
9:05 宇都宮(うつのみや)駅(東北新幹線/山形新幹線/日光線/烏山線 栃木県)
日光線車窓風景は思っていたより退屈だった。
既視感があるからかもしれない。
今市で見えた例弊使街道に去年の12月に気持ちが戻る。
あの頃はひとりじゃなかったと。
宇都宮は降りるたびに大きくなっているような印象を受ける。
そして降りるたびに同じ場所を行き来して、駅を眺めるに止まる。
今週5日、この街で精鋭部隊を率いる女性社長に会う。
彼女ともfacebooKで知り合っている。
人生が新しい領域に踏み込みつつある。
10:06 野崎(のざき)駅(東北本線 栃木県)
那須連山が春霞みに靄っている。
那須与一の銅像が立つ駅前は、暖かな日差しの下で、列車の到着の際にはささやかな人の往来がある。
軽喫茶食堂、焼鳥屋、郵便局と通りすぎて、4号国道でコンビニを発見してお握りを買い込む。
ここは大田原市。
かつて車で通った大田原市中心部の夜の明かりはまぶしかった。
車じゃなきゃ行けない、オレにとっては幻のような町だ。
「新平家物語」によれば、屋島で見事に扇を射落とした与一のその後の人生は、男振りを誇る時代から妬まれ、浮かばれないものだったという。
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