*

「鉄旅日記」2018年エイプリルフール【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】その2-猪苗代、磐梯町、安子ヶ島、磐梯熱海、郡山(磐越西線)

公開日: : 最終更新日:2023/04/29 旅話, 旅話 2018年

鉄旅日記2018年4月1日
12:28 猪苗代(いなわしろ)駅(磐越西線 福島県)
黒磯、新白河で乗り継ぎ、郡山で乗り換え。
黒磯を出ると大好きな車窓風景にスマホを向ける。

新白河では線路が一度途絶え、その先に郡山行が止まっていた。
事情は知らないし、知らなくて構わないが、その光景はオレを切なくさせた。

左手に見える猪苗代湖、右手に見える磐梯山。
閑散とした駅にとつとつと止まっては会津若松を目指す磐越西線。

車内アナウンスが入り、磐梯山の説明が始まる。
明治の頃に大噴火を起こして、裏磐梯からの山容は荒々しいものに変わり、五色沼をはじめいくつかの湖沼を作ったと。

オレは表磐梯しか知らないわけで、幕末会津藩が見ていた磐梯山は今の姿をしていない。

猪苗代駅前は何台もの大型バスが止まり活気に満ちていて、駅舎はかつて寄った際のものとは変わっていた。
行き違いで4分の停車。


13:36 磐梯町(ばんだいまち)駅(磐越西線 福島県)
車窓に現れる磐梯山を何度も写す。






今日の旅で一番遠い町に降りた。
雪解け水が水路を伝う音が静かな町に響く。

姿の見えない駅員室からはくしゃみの声が響く。

小さな少女が待合室の姉に「40分」と繰り返す。
父親はスマホに夢中。

オレならそんなことはしない。
だけどこの様だ。
霞み空の下で、その事実が鈍痛のように苛んでくる。

町へと下る坂の途中にある酒屋のご主人の対応はとても丁寧だった。

磐梯山を眺めること以外にやることが見つからない町で1時間。
心の支えでもある女性が投稿したfacebooKの写真に、「時間よ止まれ」と書き込む。

猪苗代湖からはだいぶ離れてしまった。

14:57 安子ヶ島(あこがしま)駅(磐越西線 福島県)
郡山方面に9駅戻る。
由緒を知りたくなる駅名を持つ地に降りる。


何代目かであろう鉄筋の駅舎は、高校生に向けて「自分を愛せ」と訴える。

甲子園ではセンバツベスト8。
あの世代が抱える「死にたくなるような現実」を知るべきだと思う。

用を終えた電信柱の脇に古木がたたずむ姿に打たれた。

桜は見かけないが、もうあたりに雪はなく、吹く風に身をすくめることもない。

東京じゃ散ってしまった桜。
開花の遅い白河以北も、こんなに暖かければ今年は早いだろう。

15:57 磐梯熱海(ばんだいあたみ)駅(磐越西線 福島県)
下りホームで会津行きの列車を待つ紳士がふいにハーモニカを吹き始める。

昭和歌謡には哀愁がある。
戦争があって、この国も軍隊が支配していて、多くの悲しい別れがあった時代の曲だ。
人は悲しみもうまく表現できる。

若い父親が息子を抱いて、電車を見せにやってきた。
どこの町でも見かける微笑ましい光景。

安子ヶ島から下りでひと駅。
出歩く者もない曇天の下の温泉街はひどく侘しく見えた。

でも大きな旅館の入口では従業員が雑草を抜き、ビールを買いに入った酒屋では腰の低いご主人がとても丁寧な対応をしてくれる。
店を出るまで彼の感謝の声は聞こえ、恐縮しながら背中を見せる。

味のある廃墟を写して帰ろうかと思ったけどやめた。
ちょうど彼女から返信があった。
不愉快な感情は置いていく。

駅前の足湯場に居場所はなかった。
それでいい。
立ち位置はわきまえている。

訛りを隠さない福島の若者たち。
堪らない愛情を感じながら、聞こえてくる会話に耳を傾けている。


16:50 郡山(こおりやま)駅(東北新幹線/山形新幹線/東北本線/磐越東線/磐越西線/水郡線 福島県)
彼女からの指摘にあるとおり酒が進む。
でも金曜日のような酔いはない。

磐梯山をはじめ、無意識的に接したかった風景はオレに6本のビールを飲ませ、替えがたい安らぎをくれた。

在来線ホームのベンチに座って新幹線ホームの壁を眺めていた。

そうだった。
ここは郡山。

今じゃどこに暮らしているのか知らないが、この街のどこかに大切に思う友人が暮らしている。
彼はオレの事情を知らない。
知れば誰よりも心配してくれるだろう。

そんな彼とも、この先に会える機会があるとすれば、1、2度だろうと思いながら腰を上げ、水郡線ホームに歩いていく。


関連記事

「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】3日目(柳井-岡山-高松-鳴門-徳島)-柳井、大畠、西条、岡山、高松、高松築港、オレンジタウン、引田、池谷、鳴門、徳島(山陽本線/瀬戸大橋線/高徳本線/鳴門線)

鉄旅日記2008年5月4日 2008・5・4 8:55 柳井(やない)駅(山陽本線 山口県) 麗

記事を読む

「鉄旅日記」2018年神無月【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】最終日(松本-辰野-天竜峡-岡谷-東京)その1-松本、辰野、北殿、伊那市、伊那福岡、伊那本郷、上片桐、飯田、天竜峡(篠ノ井線/中央本線辰野支線/飯田線)

鉄旅日記2018年10月8日 2018・10・8  5:45  松本(まつもと)駅(篠ノ井線/大糸

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その3-関駅、その後

車旅日記1996年5月3日 16:36 関駅 あれから2時間経ってようやくここに戻ってき

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】4日目(隼人-岩国)その2-熊本、久留米、鳥栖、吉塚、長者原、古賀、東郷、赤間、幡生(鹿児島本線、山陽本線)

鉄旅日記2013年8月13日その2 13:00 熊本(くまもと)駅(九州新幹線/鹿児島本線/豊肥本

記事を読む

「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、甲信越途中下車旅】最終日(長野-東京)その1-長野、信州中野、湯田中、安茂里、戸倉、上田、別所温泉、西上田、田中(長野電鉄、信越本線、しなの鉄道、上田交通)

鉄旅日記2012年12月9日その1 2012・12・9 6:10 長野(ながの)駅(長野新幹線/信

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.2【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】その1-天王台、植田、泉、いわき、富岡(常磐線)

鉄旅日記2019年3月10日 2019・3・10 5:47 天王台(てんのうだい)駅(常磐線 千葉

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】初日(東京-伊豆急下田-茅ヶ崎-橋本-高崎-安中)その1-金町、熱海、城ヶ崎海岸、伊豆熱川、伊豆稲取、今井浜海岸、河津(常磐線/東海道本線/伊東線/伊豆急行線)

鉄旅日記2019年2月9日 2019・2・9 4:30 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都) 本

記事を読む

「鉄旅日記」2018年秋【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】初日(松戸-流山-潮来-銚子-東金-松戸)その2-湖北、下総松崎、成田、香取、延方、北浦、佐原、大戸(我孫子支線/成田線/鹿島線)

鉄旅日記2018年9月22日 8:55 湖北(こほく)駅(成田線我孫子支線 千葉県) 成田で長い

記事を読む

「車旅日記」2005年春【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】初日(松本-飯山-富山)走行距離317㎞ その2-妙高高原駅、親不知駅、アパホテル富山駅前

車旅日記2005年4月29日 16:44 妙高高原駅(松本駅より156㎞) このあたりには懐かし

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、房総途中下車旅】その2-上総興津、安房小湊、安房天津、安房鴨川、和田浦、九重、若井、竹岡、上総湊、佐貫町、青堀、稲毛海岸、新習志野(外房線、内房線、京葉線)

鉄旅日記2013年3月9日その2 15:51 上総興津(かずさおきつ)駅(外房線 千葉県) 数分

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、青春18きっぷで東海道を下っていったのでございます。】初日その2-西小坂井、三河三谷、愛知御津、三河安城、共和(東海道本線)

鉄旅日記2019年3月23日 13:07 西小坂井(にしこざかい)駅

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、青春18きっぷで東海道を下っていったのでございます。】初日その1-金町、三島、修善寺、蒲原、島田(常磐線/東海道本線/伊豆箱根鉄道駿豆線)

鉄旅日記2019年3月23日 2019・3・23 4:29 金町(か

「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】最終日(小千谷-桐生-下妻-東京)道の駅おぢや、塩沢らーめんショップ、月夜野情報サービスセンター、旅の駅桐生、道の駅しもつま、柏市あけぼの2丁目、葛飾金町

車旅日記2000年7月23日 2000・7・23 2:09 17号国

「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】3日目(能登島-氷見-小千谷)能登島、道の駅いおり、氷見港、道の駅ウェーブパークなめりかわ、朝日町栄食堂、親不知ピア・パーク、道の駅能生、長岡市宮本、道の駅おぢや

車旅日記2000年7月22日 2000・7・22 9:00 能登島某

「車旅日記」2000年夏Part.1【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】2日目(諏訪-飯田-飛騨古川-能登島)上諏訪、辰野駅、駒ヶ根駅、飯田駅、道の駅賤母、ドライブイン飛騨花工場、道の駅飛騨古川、能登島

車旅日記2000年7月21日 2000・7・21 7:55 上諏訪某

→もっと見る

    PAGE TOP ↑