*

「鉄旅日記」2018年エイプリルフール その2-猪苗代、磐梯町、安子ヶ島、磐梯熱海、郡山(磐越西線) 【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/12 旅話, 旅話 2018年

鉄旅日記2018年4月1日・・・猪苗代駅、磐梯町駅、安子ヶ島駅、磐梯熱海駅、郡山駅(磐越西線)

12:28 猪苗代(いなわしろ)駅(磐越西線 福島県)

黒磯、新白河で乗り継ぎ、郡山で乗り換え。
黒磯を出ると大好きな車窓風景にスマホを向ける。

新白河では線路が一度途絶え、その先に郡山行が止まっていた。
事情は知らないし、知らなくて構わないが、その光景はオレを切なくさせた。

左手に見える猪苗代湖、右手に見える磐梯山。
閑散とした駅にとつとつと止まっては会津若松を目指す磐越西線。

車内アナウンスが入り、磐梯山の説明が始まる。
明治の頃に大噴火を起こして、裏磐梯からの山容は荒々しいものに変わり、五色沼をはじめいくつかの湖沼を作ったと。

オレは表磐梯しか知らないわけで、幕末会津藩が見ていた磐梯山は今の姿をしていない。

猪苗代駅前は何台もの大型バスが止まり活気に満ちていて、駅舎はかつて寄った際のものとは変わっていた。
行き違いで4分の停車。


13:36 磐梯町(ばんだいまち)駅(磐越西線 福島県)

車窓に現れる磐梯山を何度も写す。






今日の旅で一番遠い町に降りた。
雪解け水が水路を伝う音が静かな町に響く。

姿の見えない駅員室からはくしゃみの声が響く。

小さな少女が待合室の姉に「40分」と繰り返す。
父親はスマホに夢中。

オレならそんなことはしない。
だけどこの様だ。
霞み空の下で、その事実が鈍痛のように苛んでくる。

町へと下る坂の途中にある酒屋のご主人の対応はとても丁寧だった。

磐梯山を眺めること以外にやることが見つからない町で1時間。
心の支えでもある女性が投稿したfacebooKの写真に、「時間よ止まれ」と書き込む。

猪苗代湖からはだいぶ離れてしまった。

14:57 安子ヶ島(あこがしま)駅(磐越西線 福島県)

郡山方面に9駅戻る。
由緒を知りたくなる駅名を持つ地に降りる。


何代目かであろう鉄筋の駅舎は、高校生に向けて「自分を愛せ」と訴える。

甲子園ではセンバツベスト8。
あの世代が抱える「死にたくなるような現実」を知るべきだと思う。

用を終えた電信柱の脇に古木がたたずむ姿に打たれた。

桜は見かけないが、もうあたりに雪はなく、吹く風に身をすくめることもない。

東京じゃ散ってしまった桜。
開花の遅い白河以北も、こんなに暖かければ今年は早いだろう。

15:57 磐梯熱海(ばんだいあたみ)駅(磐越西線 福島県)

下りホームで会津行きの列車を待つ紳士がふいにハーモニカを吹き始める。

昭和歌謡には哀愁がある。
戦争があって、この国も軍隊が支配していて、多くの悲しい別れがあった時代の曲だ。
人は悲しみもうまく表現できる。

若い父親が息子を抱いて、電車を見せにやってきた。
どこの町でも見かける微笑ましい光景。

安子ヶ島から下りでひと駅。
出歩く者もない曇天の下の温泉街はひどく侘しく見えた。

でも大きな旅館の入口では従業員が雑草を抜き、ビールを買いに入った酒屋では腰の低いご主人がとても丁寧な対応をしてくれる。
店を出るまで彼の感謝の声は聞こえ、恐縮しながら背中を見せる。

味のある廃墟を写して帰ろうかと思ったけどやめた。
ちょうど彼女から返信があった。
不愉快な感情は置いていく。

駅前の足湯場に居場所はなかった。
それでいい。
立ち位置はわきまえている。

訛りを隠さない福島の若者たち。
堪らない愛情を感じながら、聞こえてくる会話に耳を傾けている。


16:50 郡山(こおりやま)駅(東北新幹線/山形新幹線/東北本線/磐越東線/磐越西線/水郡線 福島県)

彼女からの指摘にあるとおり酒が進む。
でも金曜日のような酔いはない。

磐梯山をはじめ、無意識的に接したかった風景はオレに6本のビールを飲ませ、替えがたい安らぎをくれた。

在来線ホームのベンチに座って新幹線ホームの壁を眺めていた。

そうだった。
ここは郡山。

今じゃどこに暮らしているのか知らないが、この街のどこかに大切に思う友人が暮らしている。
彼はオレの事情を知らない。
知れば誰よりも心配してくれるだろう。

そんな彼とも、この先に会える機会があるとすれば、1、2度だろうと思いながら腰を上げ、水郡線ホームに歩いていく。


関連記事

「鉄旅日記」2019年長月 初日(東京-盛岡)その2-郡山、福島、曽根田、仙台、一ノ関(東北本線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月21日・・・郡山駅、福島駅、曽根田駅、仙台駅、一ノ関駅(東北本線) 11:0

記事を読む

「鉄旅日記」2021年秋 初日(東京-飯坂温泉)その1 ‐金町、高浜、友部、水戸、いわき(常磐線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月9日・・・金町駅、高浜駅、友部駅、水戸駅、いわき駅(常磐線) 202

記事を読む

「鉄旅日記」2008年皐月 初日(東京-出雲)-静岡、豊橋、京都、亀岡、福知山、上夜久野、豊岡、浜坂、鳥取、青谷、倉吉、米子、出雲市(東海道本線/山陰本線) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】

鉄旅日記2008年5月2日・・・静岡駅、豊橋駅、京都駅、亀岡駅、福知山駅、上夜久野駅、豊岡駅、浜坂駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その3‐仙台、北山、葛岡、山形(仙山線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月4日・・・仙台駅、北山駅、葛岡駅、山形駅(仙山線) 12:25 仙台(せんだ

記事を読む

「車旅日記」2004年秋【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】2日目(宇野-下津井-新見-津山-城崎)走行距離377㎞ その1-宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅

車旅日記2004年11月21日・・・宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅

記事を読む

「鉄旅日記」2018年神無月 初日(東京-米原-福井-越前大野)その2-越前花堂、花堂、越前大野(越美北線)/越前大野城【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】

鉄旅日記2018年10月6日・・・越前花堂駅、花堂駅、越前大野駅(越美北線)/越前大野城 16:3

記事を読む

「鉄旅日記」2020年如月 最終日(釜石-東京)その4‐安積永盛、鏡石、須賀川、新白河、黒磯、宇都宮(東北本線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】

鉄旅日記2020年2月24日・・・安積永盛駅、鏡石駅、須賀川駅、新白河駅、黒磯駅、宇都宮駅(東北本線

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 最終日(紀伊田辺-東京)その2-吉野口、高田、畝傍、桜井、柳本(和歌山線/桜井線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月3日・・・吉野口駅、高田駅、畝傍駅、桜井駅、柳本駅(和歌山線/桜井線) 10

記事を読む

「鉄旅日記」2006年晩秋【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】初日-掛川、尾奈、リステル浜名湖(東海道本線/天竜浜名湖鉄道)

鉄旅日記2006年11月3日・・・掛川駅、尾奈駅(東海道本線/天竜浜名湖鉄道) 2006・11・3

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】最終日(十三-東京)その2-野洲、米原、神領、定光寺、中津川、塩尻、岡谷、日野(東海道本線/中央本線)

鉄旅日記2017年8月14日・・・野洲駅、米原駅、神領駅、定光寺駅、中津川駅、塩尻駅、岡谷駅、日野駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その1 ‐金町、東京、くりこま高原(常磐線/東北新幹線) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月4日・・・金町駅、東京駅、くりこま高原駅(常

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その5 ‐仙台、鹿島、原ノ町、浪江、常陸多賀(常磐線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・仙台駅、鹿島駅、原ノ町駅、浪江駅

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その4 ‐山寺(仙山線)/立石寺山門売店/高砂屋本舗 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・山寺駅(仙山線)/立石寺山門売店

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その3 ‐米沢、赤湯、中川、山形、北山形(奥羽本線) 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・米沢駅、赤湯駅、中川駅、山形駅、

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その2 ‐峠(奥羽本線)/力餅商店/峠の力餅売り/峠駅今昔物語 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・峠駅(奥羽本線)/力餅商店/峠の

→もっと見る

    PAGE TOP ↑