*

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】初日(東京-新大宮)その1-近鉄富田、富田、近鉄四日市、湯の山温泉、伊勢若松、平田町、鈴鹿市、鳥羽、賢島(名古屋線/湯の山線/鈴鹿線/山田線/鳥羽線/志摩線)

公開日: : 最終更新日:2025/06/12 旅話, 旅話 2017年

鉄旅日記2017年3月18日・・・近鉄富田駅、富田駅、近鉄四日市駅、湯の山温泉駅、伊勢若松駅、平田町駅、鈴鹿市駅、鳥羽駅、賢島駅(近鉄名古屋線/湯の山線/鈴鹿線/山田線/鳥羽線/志摩線)

2017・3・18 12:06 近鉄富田(きんてつとみだ)駅(近鉄名古屋線/三岐鉄道三岐線 三重県)
鈴鹿山脈の雪は消えていない。

多くの洲が形成された水郷地帯を過ぎて伊勢の町に着く。

この駅から、かつて足跡を記した西藤原駅へと三岐鉄道が延びている。

場末のJR駅は錆び、広大な構内もまた時代から錆びて、与えられるものもなく放置されている。

どうしようもない斜陽に、どうしようもなく哀愁を感じて立ち尽くす。

そして、例えば海を眺める時のように離れがたい思いにとらわれる。

ただ、ここで起きている事態をオレは歓迎はしていない。

未来の姿を気にかけている。

商店街に位置する近鉄駅には人の姿がある。

四日市でも同じことが起きている。

近鉄とJR。
この地域の利便性、活用性、立地性などを考えると、その勝負は、永遠性を伴う切ない結果を世の中に晒し続けている。

車窓から見る長良川

富田(とみだ)駅(関西本線 三重県)にて

12:20 近鉄四日市(きんてつよっかいち)駅(近鉄名古屋線/近鉄湯の山線 三重県)
かつての公害都市の繁栄を初めて目にしている。

この賑わいは、名古屋を出てから見続けてきた風景の中では異質であり、不意打ちを食らわされたような気になる。

3年前にも、JR駅前から幅の広い道の先、遠くに見えた四日市繁華街。
駅には東京でも流行っているシュークリーム屋も入っている。

北勢人の何たるかを云々する間もなく、大急ぎでビールとフレンチトーストを腹に入れて、湯の山に向かう車中で揺られている。

前方に目を移すと鈴鹿山脈が壁のように塞がっている。

あの山々を越えた先は滋賀県。
2年前に乗った近江鉄道の線路が山並みに沿って敷かれている。

12:58 湯の山温泉(ゆのやまおんせん)駅(近鉄湯の山線 三重県)
この線路沿いの道を往き来したよ。

あまり思い出すこともない遠い過去のような気がする。

新橋で恋をしていた頃だ。
あの旅の最後には豪雨に遭い、湖岸を走り、長浜で想いは綴られた。

あの時代は、もはや現在とつながるいかなる物も持たず、かつて車寅次郎がこの湯の町で3度目の恋をしたことを語るように、今じゃ完全な歴史の一コマになった。

だから懐かしく思う。

駅前風景に変わりはない。
ただひとつ。
随分と小さく感じたよ。

四日市からここに至る途中、甲子園で見かけたことのある菰野という町を通る。

トレーニングウェアに身を包んだ多くの少年少女たちが、気怠げに午後の練習へと降りていった。

あるいはどこかの町で午前の練習を終えて、帰り着いたところなのかもしれない。
オレがあの時分だった頃から30年が経過している。

人生とはまるで冗談だ。

13:49 伊勢若松(いせわかまつ)駅(近鉄名古屋線/近鉄鈴鹿線 三重県)
住宅と畑の真ん中に、何らの必然性を漂わすこともなくターミナル駅がある。

駅構内を移動する姿は多く見られるが、改札の外へと向かう姿はない。

近くを幹線道路が通ることもなく、鈴鹿中心街に鉄路を伸ばすにあたり、最短な場所に駅を設けたというような印象を受ける。

従って、ここ若松に用はなく、ことごとくが鈴鹿に用を持ち、列車に乗っている。

その鈴鹿には現在何がある。

北勢人には、尾張人に見られる見栄を感じることはない。
以前この地域で車を走らせた際にも感じたが、とても親切な人種のようだ。

室町の名門、北畠氏の支配地域として登場する歴史のページ以外、あまり目にすることのない一帯だ。

14:04 平田町(ひらたちょう)駅(近鉄鈴鹿線 三重県)
ロータリーの先に商店街が見える。
規模は大きくないようだ。
ビジネスホテルも見られる。
ここが近鉄鈴鹿線の終着駅。

若松からの客はほとんどがここまで乗ってきた。

鉄路がここで止まったのは、まさか鈴鹿川が邪魔だったからじゃあるまい。

その川向うを関西本線が走っている。

悪いが、ここにいられる時間は3分しか設定できなかった。

14:27 鈴鹿市(すずかし)駅(近鉄鈴鹿線 三重県)
古代に鈴鹿関が置かれた地域は、今じゃサーキット場関連の他に聞くことのない街。
だけどサーキット好きには世界的な街。

古代の鈴鹿関とは関西本線の関宿を指すらしい。

そこには東海道の宿場町の風情が残っていて、かつてあの駅に寄ったからこそ、今に至るまで旅が続いていると言っても過言じゃない、とても大切な記憶がそこにはある。

3月の風は冷たい。
でも冬が終わったことも、同時にこの風は教えている。
だからオレは、この風に対して寒いとこぼしたりはしない。

年老いた男たちが、おそらく酒の出る何かの集まりから解放されて、ぞろぞろとやってきた。

駅に接した小料理屋を見つけて感嘆の声を挙げ、会話には「東京」という単語が聞こえる。
かつて東京にいた思い出話のようだ。

駅前を歩いていた身なりのよくない男が不意にビルの中に消えた。
そこは将棋会館で、中を除くと少年の姿もある。

なるほど。
あれがある一定の周期で天才を出す知的機関の土曜日の姿か。

ただ、あの建物を含めた風景には場末の侘びしさがある。
空きが目立つ周辺の佇まいは想像を外れていない。

市役所がある。
だからここが街中。
その街歩きは10分で終わった。

旧国鉄伊勢線、伊勢鉄道鈴鹿駅は外れに位置していて、高架は黒ずんでいた。

この街が車好きで賑わうのは9月か。
よくは知らないんだ。

さっき追憶した旅でこの駅を探したけど、なぜかその時はこの場所に辿り着けなかった。

そして40年以上前、テレビ放送はなかったけれど、この街で世界の強豪が集まる注目のプロレス興行が打たれ、豪華カードが並んだ。

そのシリーズで唯一客が埋まらなかったと聞いている。

16:30 鳥羽(とば)駅(参宮線/近鉄鳥羽線/近鉄志摩線 三重県)
8分だけここに戻ってきた。

さしたる用もなく、東京から3度鳥羽を訪ねた者はそうはいないことと思う。

伊勢は伊勢神宮、鳥羽は真珠島。

沖には人が暮らす島がいくつか浮かんでいる。
三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台、神島も含まれる。

街は潮にも時代にも錆びているけど、ここに来なきゃ揃わない物があるのだろう。
だからこうして人を集めている。

オレはどこの街でも物質的な物を求めたことはないが、また来たいと思う街だ。

伊勢は桓武平氏発祥の地ということで、最近まで長く「新・平家物語」を愛読していた身として何事かを思いたかったが、どの場所が相応しいのか。

具体的にこの地域が小説の舞台に表れることはなかった。


鳥羽湾景

17:15 賢島(かしこじま)駅(近鉄志摩線 三重県)
ここの記憶は曖昧なままだ。

ここが島だとは実感しづらいが、あの短い橋でつながっていることは事前に地図で見て知っていた。

立派な建物が島のどこからでも見える。
あれが、ドラマ「華麗なる一族」でも使用された志摩観光ホテルなのだろう。
伊勢エビ料理が有名で、去年「サミット」も開催されている。

鳥羽に泊まった何年も前の旅で、わざわざオレはここに寄ったことがる。

経緯は覚えていないが、手っ取り早く海に出たくて選んだ先に近鉄の終着駅がたまたまあって、特急に乗れば大阪まで一本で行けることに感嘆したことは覚えている。

駅前にいられる場所はなかった。

正確には、近鉄駅に入り込んだファミリーマートときれいな待合室があるから、そこでビールでも飲んでりゃいいが、海口を出ても英虞湾は臨めず、空いた時間は宇治山田に持っていくことにした。

名古屋からここまで、近鉄風景は概して平板だった。

関連記事

「車旅日記」2006年初夏 2日目(岐阜-近江八幡) その1-東横イン名鉄岐阜、大垣駅、養老駅、阿下喜駅、西藤原駅、湯の山温泉駅、四日市駅、鈴鹿サーキット稲生駅 【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】

車旅日記2006年7月16日・・・東横イン名鉄岐阜、大垣駅、養老駅、阿下喜駅、西藤原駅、湯の山温泉駅

記事を読む

「鉄旅日記」2021年皐月 最終日-勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線/いすみ鉄道/小湊鉄道)/養老渓谷2階建てトンネル 【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】

鉄旅日記2021年5月23日・・・勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、甲斐駿河途中下車旅】その2-源道寺、入山瀬、下部温泉、塩之沢、甲斐常葉、市川大門、甲府、新府、穴山、東山梨、東所沢(身延線、中央本線、武蔵野線)

鉄旅日記2013年3月3日その2・・・源道寺駅、入山瀬駅、下部温泉駅、塩之沢駅、甲斐常葉駅、市川大門

記事を読む

「車旅日記」1995年秋【恋に病んで・・・西へ。1号国道をひたすら、大阪の友に会いにいく。】その2-東寺、五条大橋、琵琶湖湖岸道路、米原、関ヶ原・・・・-

車旅日記1995年11月5日 1996・11・5 9:19 1号国道-東寺 京都乱入。 晴天。

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、関東途中下車旅】その2-結城、下館、川島、岩瀬、笠間、十王、小木津、磯原、湯本、内原、羽鳥、土浦、ひたち野うしく(水戸線、常磐線)

鉄旅日記2013年3月31日その2・・・結城駅、下館駅、川島駅、岩瀬駅、笠間駅、十王駅、小木津駅、磯

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その1-指宿、枕崎、入野、開聞、山川、喜入、瀬々串、慈眼寺、南鹿児島、郡元(指宿枕崎線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月14日その1・・・指宿駅、枕崎駅、入野駅、開聞駅、山川駅、喜入駅、瀬々串駅、慈

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏 3日目(姫路-十三)その2-新開地、湊川、鈴蘭台、三木上の丸、三木城址、三木、粟生、神鉄三田、ウッディタウン中央、横山、有馬口、有馬温泉、鵯越(神戸電鉄有馬線/粟生線/三田線/公園都市線) 【私鉄王国で過ごす夏】

鉄旅日記2017年8月13日・・・新開地駅、湊川駅、鈴蘭台駅、三木上の丸駅、三木駅、粟生駅、神鉄三田

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏 初日(東京-徳山)穂積、姫路、英賀保、金光、福山、天神川、徳山(東海道本線、山陽本線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】

鉄旅日記2013年8月10日・・・穂積駅、姫路駅、英賀保駅、金光駅、福山駅、天神川駅、徳山駅(東海道

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、みちのくひとり旅】最終日(羽後本荘-東京)-羽後本荘、古口、袖崎、天童、漆山、かみのやま温泉、山形、左沢、寒河江、長町、太子堂、南仙台、名取、館腰、船岡(羽越本線、陸羽西線、奥羽本線、左沢線、東北本線)

鉄旅日記2012年8月15日・・・羽後本荘駅、古口駅、袖崎駅、天童駅、漆山駅、かみのやま温泉駅、山形

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】最終日(松本-東京)その3 ‐南小谷、白馬大池、信濃森上、白馬(大糸線)

鉄旅日記2021年4月25日・・・南小谷駅、白馬大池駅、信濃森上駅、白馬駅(大糸線) 11:

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(I

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その1 ‐松戸、神立、友部、水戸、いわき(常磐線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・松戸駅、神立駅、友部駅、水戸駅、いわ

→もっと見る

    PAGE TOP ↑