「鉄旅日記」2018年エイプリルフール その3-谷田川、磐城石川、磐城塙、常陸大子、玉川村、常陸大宮、上菅谷、水戸(水郡線) 【8年振りに金町に帰ってまいりました。青春18きっぷはまだ3日分残っております。呼んでくれたのは会津でございました。】
鉄旅日記2018年4月1日・・・谷田川駅、磐城石川駅、磐城塙駅、常陸大子駅、玉川村駅、常陸大宮駅、上菅谷駅、水戸駅(水郡線)
17:09 谷田川(やたがわ)駅(水郡線 福島県)
行き違い4分の停車。
少年たちが田舎道、家路をたどる後ろ姿を見送る。
緑のない春の田園は侘しい。
でも季節が来れば、同じ場所でみずみずしいとため息を洩らすだろう。
何事も自然に拠っている。
出会いも別れも、たぶん必然の中にある。
あとは栄光の人生を信じることができるかどうか。
オレはそう思うんだよ。
明朝から筋トレ生活が再開される。
17:44 磐城石川(いわきいしかわ)駅(水郡線 福島県)
行き違い8分停車。
県下の名門、学法石川の姿を甲子園で見なくなって久しい。
長く続く聖光学院1強時代に風穴を開ける勢力は成長しているのだろうか。
多くの若者たちが降りていった石川。
地域の有力町であることに変わりはなく、駅前の県道が商店街の明かりに照らされている。
駅前を件の若者たちの声が埋め、駅員室では5、6人が立ち働いていた。
郡山で触れた友人の故郷でもある石川。
ずいぶんと時が経った。
オレに起こったことを、彼は驚きながらも理解を示してくれるだろう。
18:23 磐城塙(いわきはなわ)駅(水郡線 福島県)
行き違いで6分停車。
9年前の道を、同じ駅で上下線すれ違いつつ水戸への道をたどっている。
心の支えでもある女性とのやりとりに潤い、愛しきものを思えば時に泣きたくなる。
町立図書館を兼ねた古代的な駅舎は健在で、照明を落とした館内はどこか気品に満ちている。
列車の到着で迎えの車が集まり、静かな駅前にほんの少しの喧騒とヘッドライトの明かりが交差して、数分で収束する。
列車に戻り、気づけばあたりは夕闇。
矢祭山の景勝は見えず、たぶんうつらうつらと水戸へ向かう。
19:05 常陸大子(ひたちだいご)駅(水郡線 茨城県)
奥久慈景勝地で乗り換え。
水の気配を感じる。
何もないと記憶していた駅前の家並みに風情を感じ、旅館を見つけて感慨を持つ。
駅は旅情を損なうことなく生まれ変わっていた。
いられる時間は12分。
9年前はもう少しあったはずだけど、夏を感じたこと以外の感慨は特に持たなかった。
あれから金町を出て、今日はまた金町に帰る。
まるでちょっとした冗談だ。
ただあの頃より、今のオレの方が好きだよ。
心の支えでもある女性は明後日、2月22日にオレがそうしたように、人生において重要な決断が書かれたペラペラの用紙を役場に提出する。
お互いの今後の幸運を祈る。
19:49 川上村(かわかみむら)駅(水郡線 茨城県)
行き違いで9分停車。
9年前に闇に浮かんだ駅は、おそらくそのままの姿で、スマホにはあの夜より鮮やかな姿が写っている。
駅を出て突き当たりまで歩く。
酒屋とスナックの看板があったけど、営業だけ止めたのか撤退したのか明かりはなく、「バス停があるんだな」とぼんやりと思って駅へ戻る。
彼女から返信が届いていた。
19:59 常陸大宮(ひたちおおみや)駅(水郡線 茨城県)
行き違いで5分停車。
森喜郎元総理を思わせる無愛想な駅長さんに迎えられ9年振りの町へ。
若者が恋人を見送るところだった。
他に乗降はなく、ガラガラのまま列車は水戸に向かっている。
この町のテレビ塔を覚えていた。
明かりは少なく、歩くほどの時間もなく、「彼女に返信しなきゃ」と、列車に戻る。
20:22 上菅谷(かみすがや)駅(水郡線/常陸太田支線 茨城県)
あぁそうだった。
数年前に茨城を旅した時に駅が生まれ変わっていることに気づいていたんだ。
構内踏切を移動する構造は変わらず、常陸太田からの接続を待って7分の停車の後に発車。
居酒屋だかがあったはずだが、駅前ロータリーも一新されていて、当時の記憶は完璧なまでに上書きされた。
パパと呼ぶ声を聞いたよ。
20:55 水戸(みと)駅(常磐線/水郡線/常陸太田支線/水戸線/鹿島臨海鉄道 茨城県)
駅構内はとても静かだ。
東京じゃ終列車が出る頃を思わせる。
ただ通路を行き交う人々は多く、振り返った水戸駅もまた変貌を遂げていた。
あるいは夜の明かりがそう見せたのかもしれない。
偕楽園には一度行かなきゃならないと思っている。
常磐線沿線に越したんだ。
いつでもできるさ。
愛しきものと別れた苦しみを味わっている。
胸じゃなく腹のあたりが落ち着かない。
行くなと泣く4歳の幼児を蹴倒して、出家の道に走った西行法師をそうさせた思いとは、自由になることだったと説く。
不自由だったとも言える。
でも愛しきものへの愛は他に代えがたく、また比べるものでもない。
修行が始まる。
列車は動き始めて、かつて降りて何もなかった内原。
到着が近いことを知らせるアナウンスが流れる頃、一際明るい巨大なイオンタウンが現れた。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2018年師走 初日(東京-津)その2-西藤原、あすなろう四日市、内部、日永、西日野、泊、南四日市(三岐鉄道三岐線/四日市あすなろう鉄道内部線/四日市あすなろう鉄道八王子線) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】
鉄旅日記2018年12月22日・・・西藤原駅、あすなろう四日市駅、内部駅、日永駅、西日野駅、泊駅、南
-
-
「車旅日記」1998年春 2日目(岩手山SA-大間崎-青森駅)-岩手山SA、折爪PA、三沢市ドライブイン三陸、東通村レストラン潮騒、田名部駅、大間崎公営パーキング、大湊駅、陸奥横浜駅、青森駅 【下北半島を目指した春。男の旅は北を目指すものと思っていた20代後半。高倉健さんの影響でございましょうか。】
車旅日記1998年5月2日 1998・5・2 7:43 東北自動車道-岩手山SA 昨夜の強風が続い
-
-
「鉄旅日記」2018年師走 最終日(神島-鳥羽港-伊良湖岬-三河田原-豊橋-東京)その3-三河田原、新豊橋、豊橋、東静岡、沼津(豊橋鉄道渥美線/東海道本線) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】
鉄旅日記2018年12月24日・・・三河田原駅、新豊橋駅、豊橋駅、東静岡駅、沼津駅(豊橋鉄道渥美線/
-
-
「鉄旅日記」2019年年始 最終日(一ノ関-東京)その3-名取、岩沼、福島、郡山、新白河、上野(東北本線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】
鉄旅日記2019年1月6日・・・名取駅、岩沼駅、福島駅、郡山駅、新白河駅、上野駅(東北本線) 15
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏 初日(東京-防府)その1‐金町、東京、広島(常磐線/京浜東北線/東海道・山陽新幹線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月13日・・・金町駅、東京駅、広島駅(常磐線/京浜東北線/東海道・山陽新幹線)
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 最終日(紀伊田辺-東京)その3-奈良、加茂、伊賀上野、亀山、静岡、沼津(関西本線/東海道本線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】
鉄旅日記2019年3月3日・・・奈良駅、加茂駅、伊賀上野駅、亀山駅、静岡駅、沼津駅(関西本線/東海道
-
-
「鉄旅日記」2009年秋-川口、浦和、深谷、倉賀野、寄居、東飯能、飯能、寒川、茅ヶ崎、辻堂、新橋(京浜東北線/高崎線/八高線/相模線/東海道本線)【関東ぶらぶら旅その2-武蔵から相模へ】
鉄旅日記2009年10月27日・・・川口駅、浦和駅、深谷駅、倉賀野駅、寄居駅、東飯能駅、飯能駅、寒川
-
-
「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】2日目-友人夫婦と過ごした一日
車旅日記1996年5月4日 1996年5月4日の記憶 一夜明けた。 友人夫婦はそこでしっかりと生
-
-
「車旅日記」2005年冬 初日(熊本空港-都城)走行距離270㎞-羽田空港、熊本空港、立野駅、高森駅、湯前駅、小林駅、都城グリーンホテル 【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】
車旅日記2005年2月11日・・・羽田空港、熊本空港、立野駅、高森駅、湯前駅、小林駅、都城グリーンホ
-
-
「鉄旅日記」2009年晩秋 最終日(和田山-東京)その1-和田山、福知山、丹波竹田、石生、篠山口、三田、神鉄三田、宝塚、阪急宝塚、川西池田、川西能勢口、伊丹、阪急伊丹(山陰本線/福知山線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】
鉄旅日記2009年11月23日・・・和田山駅、福知山駅、丹波竹田駅、石生駅、篠山口駅、三田駅、神鉄三