「鉄旅日記」2020年盛夏 最終日(門司港-東京)その2‐若松渡場、戸畑渡場、戸畑、下関(若戸渡船/鹿児島本線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月16日・・・若松渡場、戸畑渡場、戸畑駅、下関駅(若戸渡船/鹿児島本線)
7:10 若松渡場(わかまつわたしば)(若戸渡船 福岡県)にて



7:21 戸畑渡場(とばたわたしば)(若戸渡船 福岡県)にて

7:38 戸畑(とばた)駅(鹿児島本線 福岡県)
6:49若松駅着。構内にジャズが流れる。駅により様々な音があるが、これからパレードでも始まりそうで、賑やかしい。
「駅そば」は健在で、7時営業とのこと。シャッターは開いた。でも時間がない。
若松駅は色を変えていた。ホームから階段を上がった先に改札があったように記憶していたが、地上駅だった。

駅横の広場には雨風にさらされ続けて古錆びたSLが木々や緑に同化しつつあった。


11年前に地図を見ていればすぐに海辺に行ったはずだ。朽ちたSLの先には洞海湾の青が覗いている。




若戸大橋のたもとは遠くないことが見てとれて、少しゆとりを得て町中に入る。そこには11年前の記憶から漏れたアーケード街があった。



あの晩の記憶も儚いが、素敵な時間だった。おでん屋の大将から伺った往時の若松の繁栄。炭鉱景気に沸き、洞海湾には外国船が列をなして、キャバレーが軒を連ねていた頃。
気持ちよく酔って店を出ると、隣のスナックから細身のママがちょうどドアを開けて目が合い、店内で流れていたエゴラッピンの「満ち汐のロマンス」が通り過ぎるオレの耳についた。
いいことも悪いことも、すべてそれまでの人生に例えられる。こうして若松の町とも再会できたオレには、これからもいいことがあるだろう。
再び洞海湾に出る。



若戸渡船は片道100円、約3分の航路。NHK日曜朝の旅番組でその存在を知った。
乗客はオレの他に一人の少年のみ。洞海湾の果ては見えず、渡船は若戸大橋の真下を往く。どこを眺めても絶景だ。




やがて船旅を思い立ちそうなほどの新しい航海。真下から若戸大橋の全容が見渡せる頃に船は戸畑に着くが、巨大な赤橋に龍の姿を見ていた。




着岸時に波をかぶる。これが海の旅。
戸畑の駅は真っ正面に見えている。駅に向かって歩いていく。何度か振り返る。振り返ればそこに若戸大橋があるから。

11年前に約束の橋と表現した。あの頃の約束はおそらく果たされて、こうしている。
人として生きれば出会いも別れもある。大切なことから、そうでもないことまで様々ある。
そしてまた新たな約束を探して、毎朝祈り、恋人とは愛し合い、時に旅に出る。
猫が寝そべる神社に詣る。北九州で、牧歌的で緩やかな時間を生きた。

戸畑駅に着くと、黒木行、潜竜行などもはや存在しない駅名が記された行き先表示が通路を飾っている。そうした駅が存在していた当時のことは知らないが、九州鉄道全盛時を想う。それはもう半世紀近く前の話し。



別れ際に若戸大橋をもう一度。

8:11 下関(しものせき)駅(山陽本線/山陰本線 山口県)
門司では一旦車内の電気が消える。本州上陸前に電力の切り替えが行われたようだ。
門司を出るとすぐに海底トンネルへと沈んでいく。トンネルの先には家並があった。
下関駅の改札は2日前にくぐっている。繁華な駅前に向かい、在りし日を思い起こす。様々な時代のオレがここに立ったことを想う。9分の滞在。



下関を出ると車窓からコリアンタウンなどディープな街並を見下ろす。宮脇俊三さんの本で知った戦前に走っていた東京発平壌行特急の存在。その特急列車は下関で列車を一度降りて連絡船で釜山に渡り、再び列車で朝鮮半島を北上して平壌に至るという壮大なものだった。
そうした時代が下関に運んだ文化と街並を見下ろす。
幡生では麦わら帽子をかぶった老紳士がゲートボールの特打ちを行っていた。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2017年夏 3日目(姫路-十三)その2-新開地、湊川、鈴蘭台、三木上の丸、三木城址、三木、粟生、神鉄三田、ウッディタウン中央、横山、有馬口、有馬温泉、鵯越(神戸電鉄有馬線/粟生線/三田線/公園都市線) 【私鉄王国で過ごす夏】
鉄旅日記2017年8月13日・・・新開地駅、湊川駅、鈴蘭台駅、三木上の丸駅、三木駅、粟生駅、神鉄三田
-
-
「鉄旅日記」2006年晩秋 2日目・最終日-尾奈、新所原、豊橋、本長篠、鳥居、三河槇原、中部天竜、佐久間、大嵐、伊那小沢、天竜峡、松本(天竜浜名湖鉄道/東海道本線/飯田線/中央本線) 【浜名湖へ。そして飯田線に乗って、友に会いにいったのでございます。】
鉄旅日記2006年11月4日/11月5日・・・尾奈駅、新所原駅、豊橋駅、本長篠駅、鳥居駅、三河槇原駅
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その4 ‐アプトいちしろ、川根小山、千頭、金谷、焼津(大井川鐡道井川線/大井川鐡道本線/東海道本線)/焼津温泉やいづマリンパレス 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】
鉄旅日記2022年3月19日・・・アプトいちしろ駅、川根小山駅、千頭駅、金谷駅、焼津駅(大井川鐡道
-
-
「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その3-陸中野田、久慈、陸中八木、八戸(三陸鉄道リアス線/八戸線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】
鉄旅日記2019年9月22日・・・陸中野田駅、久慈駅、陸中八木駅、八戸駅(三陸鉄道リアス線/八戸線)
-
-
「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その4 ‐山寺(仙山線)/立石寺山門売店/高砂屋本舗 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】
鉄旅日記2021年10月10日・・・山寺駅(仙山線)/立石寺山門売店/高砂屋本舗 12:10
-
-
「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、関東途中下車旅】その1-赤羽、岡本、烏山、大金、宝積寺、氏家、石橋、自治医大、小金井、小山(東北本線、烏山線)
鉄旅日記2013年3月31日その1・・・赤羽駅、岡本駅、烏山駅、大金駅、宝積寺駅、氏家駅、石橋駅、自
-
-
「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】
鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(IGRいわて銀河鉄道/花輪線)
-
-
「鉄旅日記」2020年如月 2日目(大船渡-釜石)その3‐宮古、蟇目、茂市(山田線)/蛇の目寿司 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】
鉄旅日記2020年2月23日・・・宮古駅、蟇目駅、茂市駅(山田線)/蛇の目寿司 13:25 宮古蛇
-
-
「鉄旅日記」2020年卯月 最終日(新津-東京)その1‐新津、馬下、津川、喜多方(磐越西線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】
鉄旅日記2020年4月5日・・・新津駅、馬下駅、津川駅、喜多方駅(磐越西線) 2020・4・5 5
-
-
「鉄旅日記」2012年晩秋【休日おでかけパスで、相模線途中下車旅】保土ヶ谷、大船、香川、北茅ヶ崎、厚木、社家、相武台下、原当麻、下溝、片倉、八王子、猿橋、西八王子、武蔵小金井、東小金井(横須賀線、東海道本線、相模線、横浜線、中央本線)
鉄旅日記2012年11月17日・・・保土ヶ谷駅、大船駅、香川駅、北茅ヶ崎駅、厚木駅、社家駅、相武台下
