「鉄旅日記」2020年盛夏 最終日(門司港-東京)その1‐門司港、小森江、折尾、若松(鹿児島本線/筑豊本線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月16日・・・門司港駅、小森江駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本線/筑豊本線)
2020・8・16 5:26 門司港(もじこう)駅(鹿児島本線/日豊本線 福岡県)
レトロな街に下りた。











恋をするために宇部を訪ねて、そこで出会った女性に初めて連れてこられて以来、この駅の存在はオレの中で大きい。あの日の駅員さんは確か開業当時のレトロな制服をまとっていた。
昨夜は港で花火が上がった。関門海峡を挟んで打ち上がる壮大な規模の海峡花火大会は、残念ながら今年は中止とのこと。その花火大会の日にたまたま居合わせたことがあって、対岸の下関でひとり眺めた夏の夜が懐かしい。
夜の港町は静かな熱気にあふれ、ビヤホールには入れず、銀天街の焼鳥屋に入る。

夜の早い街だった。店主が話しかけてくる。
商売人には今年は苦労が多い。その事情はオレにも当てはまるが。
若者たちが大声を上げて飲み騒いでいる。ああした集団がコロナを広めてきたのだろう。彼等の危機感のなさは頼もしくも感じるが、愚かともとれる。
昼間の焼酎で頭を痛めていたが、ビール3杯に肉、厚揚げ、とうもろこし。
手ごろな値段で食べられる子フグのから揚げがオレにとっての福岡の味。あの夜に彼女が勧めてくれたメニュー。海峡をはさんだ山口でもきっと食べられるのだろう。ただし特別に美味しいわけじゃない。彼女もそう言っていた。
焼鳥屋さんだ。子フグのから揚げはメニューにはない。
お宿に行けば玄関の並びに神様がいる。一晩中明かりを絶やさず、小路を優しく照らす。お宿を運営されていらっしゃるご夫婦はとても素敵な方々だった。

観光列車の始発駅、港に出て海峡と関門橋、旧大阪商船をはじめとするレトロな構造群、そして九州を感じる峰々を眺める。昨夜も写したけど、飽きずにスマホを向ける。







儚い時が過ぎていった。
門司港駅のホームは映画で観たヨーロッパの駅を思い起こさせる。オリエント急行殺人事件は名作だった。あの作品をはじめ、映画に現れる広々とした駅のホーム。



海峡の始発駅だけが持つ旅情。そして歴史。何度でもここを目指したくなる。
5:43 小森江(こもりえ)駅(鹿児島本線/日豊本線 福岡県)
港から汽笛が聞こえてくる。砲塁跡の残る矢筈山が東を日に染めている。




初めて九州に上陸した日、車窓から見えるあの山々に濃厚なまでに九州を感じた。
明け放たれた8月16日。駅を出て鉄柵越しに海峡を往く大型船と巌流島を眺めた。

右手に小倉へと続く大操車場を眺め、左手には中腹まで家並が築かれた矢筈山から続く峰々。


これがオレにとっての九州の原風景。何度通っても胸の高まりは消えない。
6:31 折尾(おりお)駅(鹿児島本線/筑豊本線 福岡県)
スペースワールドが閉園したのは知っていたが、跡地はすっかり更地になっている。
夢の跡。あの場所で得がたい記憶が生まれた人を切なくさせる光景。
陣原駅の手前で2日前に乗った「ちくてつ」の線路が離れていった。
解体された折尾駅はまだ完成を見ておらず、真新しい高架ホームがよそよそしい。


名物とも言える「かしわ弁当」売のおじさんを探したが見当たらない。離れていく際、仮駅舎の背後に旧駅舎が隠れていた。
あの文化財的な駅舎は保存されるのかもしれない。元々複雑な構造の駅だったが、未完成の構内はさらに複雑を極めて、滞在8分は心許ない。
門司からずっと最愛の存在の笑顔が頭を離れない。そうした時はたいてい切なさを伴う。
6:49 若松(わかまつ)駅(筑豊本線 福岡県)にて




関連記事
-
-
「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】4日目(徳島-善通寺)その1-徳島、中田、旧小松島駅、南小松島、阿南、牟岐、海部、甲浦(牟岐線/安佐海岸鉄道)
鉄旅日記2008年5月5日・・・徳島駅、中田駅、旧小松島駅、南小松島駅、阿南駅、牟岐駅、海部駅、甲浦
-
-
「鉄旅日記」2019年霜月 最終日(北上-東京)その2‐新庄、鳴子温泉、小牛田(陸羽東線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】
鉄旅日記2019年11月4日・・・新庄駅、鳴子温泉駅、小牛田駅(陸羽東線) 11:19 新庄(しん
-
-
「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】3日目(仙台-山形-大曲)その2-羽前豊里駅、真室川駅、及位駅、院内駅、湯沢駅、横手駅、後三年駅、大曲グランドホテル
車旅日記2006年5月4日・・・羽前豊里駅、真室川駅、及位駅、院内駅、湯沢駅、横手駅、後三年駅、大曲
-
-
「鉄旅日記」2020年神無月【ツレと筑波山を訪ねたのでございます。関東に暮らす身にとりまして、高所に上がりますと平野の果てに浮かぶ筑波山はいつか登るべき山でございました。】-北千住駅、つつじヶ丘駅、女体山、男体山、筑波山頂駅、宮脇駅、筑波山神社、沼田バス停、つくば駅(つくばエクスプレス/筑波山シャトル/筑波山ロープウェイ/筑波山ケーブルカー)
鉄旅日記2020年10月4日・・・北千住駅、つつじヶ丘駅、女体山、男体山、筑波山頂駅、宮脇駅、筑波
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.3 初日(東京-多治見)その2-西小坂井、三河三谷、愛知御津、三河安城、共和(東海道本線) 【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】
鉄旅日記2019年3月23日・・・西小坂井駅、三河三谷駅、愛知御津駅、三河安城駅、共和駅(東海道本線
-
-
「鉄旅日記」2019年如月 最終日(安中-東京)その3-海尻、八千穂、信濃川上、佐久海ノ口、甲斐小泉、小淵沢(小海線)/海尻城址 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】
鉄旅日記2019年2月10日・・・海尻駅、八千穂駅、信濃川上駅、佐久海ノ口駅、甲斐小泉駅、小淵沢駅(
-
-
「鉄旅日記」2018年卯月 その1-取手、竜ケ崎、佐貫、岩間、赤塚、大洗、鹿島神宮(常磐線/関東鉄道竜ヶ崎線/鹿島臨海鉄道)【ときわ路パスでめぐる常陸旅でございます。】
鉄旅日記2018年4月25日・・・取手駅、竜ケ崎駅、佐貫駅、岩間駅、赤塚駅、大洗駅、鹿島神宮駅(常磐
-
-
「鉄旅日記」2014年夏【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】初日(東京-津山)-尾張一宮、播磨高岡、太市、余部、播磨新宮、三日月、西栗栖、美作江見、林野、上月、津山口、津山(東海道本線、山陽本線、姫新線)
鉄旅日記2014年8月13日・・・尾張一宮駅、播磨高岡駅、太市駅、余部駅、播磨新宮駅、三日月駅、西栗
-
-
「車旅日記」2000年春 4日目(鳴子温泉‐米沢‐猪苗代‐郡山)鳴子サンハイツ、道の駅むらやま、金渓ワイン、日布峠、こたかもりドライブイン、郡山スターホテル 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】
車旅日記2000年5月6日 2000・5・6 7:19 鳴子サンハイツ 1011㎞ 低調な朝だ。
-
-
「車旅日記」2005年冬【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】最終日(人吉-天草-熊本空港)走行距離240㎞ その1-人吉駅、一勝地駅、球泉洞駅、佐敷駅、上田浦駅、千丁駅、有佐駅、道の駅不知火
車旅日記2005年2月13日・・・人吉駅、一勝地駅、球泉洞駅、佐敷駅、上田浦駅、千丁駅、有佐駅、道の