*

「鉄旅日記」2020年盛夏 最終日(門司港-東京)その1‐門司港、小森江、折尾、若松(鹿児島本線/筑豊本線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/04 旅話, 旅話 2020年

鉄旅日記2020年8月16日・・・門司港駅、小森江駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本線/筑豊本線)

2020・8・16  5:26  門司港(もじこう)駅(鹿児島本線/日豊本線 福岡県)
レトロな街に下りた。

恋をするために宇部を訪ねて、そこで出会った女性に初めて連れてこられて以来、この駅の存在はオレの中で大きい。あの日の駅員さんは確か開業当時のレトロな制服をまとっていた。

昨夜は港で花火が上がった。関門海峡を挟んで打ち上がる壮大な規模の海峡花火大会は、残念ながら今年は中止とのこと。その花火大会の日にたまたま居合わせたことがあって、対岸の下関でひとり眺めた夏の夜が懐かしい。

夜の港町は静かな熱気にあふれ、ビヤホールには入れず、銀天街の焼鳥屋に入る。

夜の早い街だった。店主が話しかけてくる。

商売人には今年は苦労が多い。その事情はオレにも当てはまるが。

若者たちが大声を上げて飲み騒いでいる。ああした集団がコロナを広めてきたのだろう。彼等の危機感のなさは頼もしくも感じるが、愚かともとれる。

昼間の焼酎で頭を痛めていたが、ビール3杯に肉、厚揚げ、とうもろこし。

手ごろな値段で食べられる子フグのから揚げがオレにとっての福岡の味。あの夜に彼女が勧めてくれたメニュー。海峡をはさんだ山口でもきっと食べられるのだろう。ただし特別に美味しいわけじゃない。彼女もそう言っていた。

焼鳥屋さんだ。子フグのから揚げはメニューにはない。

お宿に行けば玄関の並びに神様がいる。一晩中明かりを絶やさず、小路を優しく照らす。お宿を運営されていらっしゃるご夫婦はとても素敵な方々だった。

観光列車の始発駅、港に出て海峡と関門橋、旧大阪商船をはじめとするレトロな構造群、そして九州を感じる峰々を眺める。昨夜も写したけど、飽きずにスマホを向ける。

儚い時が過ぎていった。

門司港駅のホームは映画で観たヨーロッパの駅を思い起こさせる。オリエント急行殺人事件は名作だった。あの作品をはじめ、映画に現れる広々とした駅のホーム。

海峡の始発駅だけが持つ旅情。そして歴史。何度でもここを目指したくなる。

5:43  小森江(こもりえ)駅(鹿児島本線/日豊本線 福岡県)
港から汽笛が聞こえてくる。砲塁跡の残る矢筈山が東を日に染めている。

初めて九州に上陸した日、車窓から見えるあの山々に濃厚なまでに九州を感じた。

明け放たれた8月16日。駅を出て鉄柵越しに海峡を往く大型船と巌流島を眺めた。

右手に小倉へと続く大操車場を眺め、左手には中腹まで家並が築かれた矢筈山から続く峰々。

これがオレにとっての九州の原風景。何度通っても胸の高まりは消えない。

6:31  折尾(おりお)駅(鹿児島本線/筑豊本線 福岡県)
スペースワールドが閉園したのは知っていたが、跡地はすっかり更地になっている。

夢の跡。あの場所で得がたい記憶が生まれた人を切なくさせる光景。

陣原駅の手前で2日前に乗った「ちくてつ」の線路が離れていった。

解体された折尾駅はまだ完成を見ておらず、真新しい高架ホームがよそよそしい。

名物とも言える「かしわ弁当」売のおじさんを探したが見当たらない。離れていく際、仮駅舎の背後に旧駅舎が隠れていた。

あの文化財的な駅舎は保存されるのかもしれない。元々複雑な構造の駅だったが、未完成の構内はさらに複雑を極めて、滞在8分は心許ない。

門司からずっと最愛の存在の笑顔が頭を離れない。そうした時はたいてい切なさを伴う。

6:49 若松(わかまつ)駅(筑豊本線 福岡県)にて

関連記事

「鉄旅日記」2017年冬 最終日(喜多方-東京)その1-会津若松、笈川、堂島、喜多方、会津若松(磐越西線) 【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】

鉄旅日記2017年12月3日・・・会津若松駅、笈川駅、堂島駅、喜多方駅(磐越西線) 2017・12

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏 4日目(隼人-岩国)その1-隼人、鹿児島、鹿児島中央、上伊集院、薩摩松元、川内、出水、新水俣、新八代(日豊本線、鹿児島本線、肥薩おれんじ鉄道) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】

鉄旅日記2013年8月13日その1・・・隼人駅、鹿児島駅、鹿児島中央駅、上伊集院駅、薩摩松元駅、川内

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 初日(東京-高松)その2 ‐石山、京阪石山、石場、膳所、京阪膳所(京阪石山坂本線)/今井兼平之墓/義仲寺 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年9月19日・・・石山、京阪石山、石場、膳所、京阪膳所(京阪石山坂本線)/今井兼平

記事を読む

「車旅日記」2004年春 4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その2-雄武町日の出岬、マリーンアイランド岡島、千畳岩、神威岬、クッチャロ湖、さるふつ公園、宗谷岬、稚内駅 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】

車旅日記2004年5月4日・・・雄武町日の出岬、マリーンアイランド岡島、千畳岩、神威岬、クッチャロ湖

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 2日目(防府-肥前鹿島)その5‐筑豊直方、直方、筑前大分、城戸南蔵院前、柚須(筑豊電気鉄道/筑豊本線/篠栗線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月14日・・・筑豊直方駅、直方駅、筑前大分駅、城戸南蔵院前駅、柚須駅(筑豊電気

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その1-町田、御殿場、道の駅富士川、静岡駅、掛川

車旅日記1996年5月3日 1996・5・3 0:36 東京町田 旅が始まる。 今はそれ以外の感慨

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その4‐太秦、撮影所前、帷子ノ辻、保津峡、千代川(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月23日・・・太秦駅、撮影所前駅、帷子ノ辻駅、保津峡駅、千代川駅(山陰本線)

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春 その1-新宿、塩崎、韮崎、日野春、富士見、青柳、奈良井、木曽福島、須原、中津川(中央本線) 【青春18きっぷで、名古屋往復】

鉄旅日記2012年3月25日その1・・・新宿駅、塩崎駅、韮崎駅、日野春駅、富士見駅、青柳駅、奈良井駅

記事を読む

「鉄旅日記」2007年新春 2日目(高岡-金沢)-高岡駅前、越ノ潟、高岡、氷見、高岡、城端、金沢(万葉線/氷見線/城端線/北陸本線) 【本格的に鉄旅が始まりまして、まずは冬の北陸を目指したのでございます。】

鉄旅日記2007年1月7日・・・高岡駅前駅、越ノ潟駅、高岡駅、氷見駅、高岡駅、城端駅、金沢駅(万葉線

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 最終日その3(岩倉-東京)-津島、須ヶ口、神宮前、豊明、岡崎公園前、中岡崎、東岡崎、国府、豊川稲荷、豊川(名鉄津島線/名鉄本線/名鉄豊川線) 【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】

鉄旅日記2015年3月8日その3・・・津島駅、須ヶ口駅、神宮前駅、豊明駅、岡崎公園前駅、中岡崎駅、東

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その3 ‐川部、五所川原、木造(五能線)/神武食堂 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・川部駅、五所川原駅、木造駅(五能線)

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(I

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小

→もっと見る

    PAGE TOP ↑