「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、名古屋往復】その1-新宿、塩崎、韮崎、日野春、富士見、青柳、奈良井、木曽福島、須原、中津川(中央本線)
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最終更新日:2020/08/29
旅話 2012年
鉄旅日記2012年3月25日その1
2012・3・25 5:14 新宿(しんじゅく)駅(山手線/中央線/総武線/埼京線/小田急線/京王線/東京メトロ/都営地下鉄 東京都)
朝イチ、まだそう表現しても構わない時間だ。
やっぱり狂ってるな、この街は。
こんな時間にとんでもない人ごみだ。
そいつが駅のホームに整然と並んでいる。
呆れるより笑っちゃうよ。
笑ったといえば、地下通路に下りた時は本当に笑ったな。
微笑む程度だが。
こんな時間帯の新宿が何だか懐かしくなっちゃって。
学生の頃はよく酔っ払って歩いていた。
あの頃が最高だと思ってあれからしばらく生きていたけど、
でもさ、今の方が全然いいんじゃないか。
そう思える人生になってよかったと思っているよ。
8:09 塩崎(しおさき)駅(中央本線 山梨県)
甲斐市双葉町。
南アルプスの麓に戻ってきた。
コンビニみたいな駅舎だったよ。
近くに庁舎があって、2、3軒の居酒屋、スナック、タクシー会社。
地方の町の駅前風景だ。
高尾を過ぎてからの中央本線の車窓風景が好きだ。
桂川に沿って上りにかかる甲州街道の風情、笹子峠から眺める甲府盆地。
見飽きることはない。
8:27 韮崎(にらさき)駅(中央本線 山梨県)
駅前中央通りはとても静かだった。
あのたたずまい、好きだな。
初めて韮崎駅を通った時にその存在に驚いた大観音を知らせる表示は駅前案内板にはなかった。
ぜひ正式な名を知りたかったけれど。
奥の雪をかぶったのが八ヶ岳だから、あの姿のいいのが金峰山か。
かつてTさんとあの山に登った思い出は今も燦然としている。
ここ韮崎からバスで麓まで行ったんだ。
サッカーと、怪物ジャンボ鶴田がアブドーラ・ザ・ブッチャーからUN王座を奪還した町。
鶴田は故郷に錦を飾ったんだ。
31年前のことだ。
8:47 日野春(ひのはる)駅(中央本線 山梨県)
春風。
冷たい朝風に吹かれた小さな町で特急通過待ち下車。
理髪店しかない駅前風景。
甲斐駒ケ岳の山頂付近は煙って見えない。
9:51 富士見(ふじみ)駅(中央本線 長野県)
晴天に小雪が舞う。
たまらない風情に打たれ、大切な人にメールを打つ。
手がかじかんでいる。
本物の名残雪を見て、旅の素晴らしさを感じている。
生涯初の大雪被害に遭ったのがこの街だった。
富士見パノラマスキー場に向かったが、大雪でスキー場も中央自動車道が閉鎖され、呑気に構えているわけにもいかず、甲州街道を引き返したわけだが、どうにか自宅に帰り着けたのは24時間後のことだった。
車を運転しながら最悪の予測を立てるが、その予測がことごとく外れて最悪を更新していく。
耐え難い雪中行軍だった。
缶コーヒーを購入すべくコインを入れたら、自販機が「あったかくなってきましたね」と、明るい声で言い放つ。
そりゃ驚いたよ。
素敵な駅に降りた。
10:05 青柳(あおやぎ)駅(中央本線 長野県)
昨夜は雪だったのか。
ホームの日陰に未踏の残雪がある。
ドアは自動から手動になり、鉄道員の姿はなくなった。
二人の山ガールはどの峰を恋人にするのか。
11:17 奈良井(ならい)駅(中央本線 長野県)
塩尻駅で乗り換え。
中山道奈良井宿。
この国の春はかくも美しい。
童謡に謳われるような風情が残る街道筋。
木曽の大橋という名勝があるようだが、小雪舞う中山道はそこにいること、ただそれだけで何事かを完結させられる空気を身にまとっている。
横に流れる川は天竜川の支流か。
あとでオレは天竜川が海に流れこむ様を見に行くんだ。
東京じゃ春を味わえない。
だからここにいる。
雪の残る古街道には古人の足跡が今も残っている。
難解で結局途中で諦めてしまったが、島崎藤村の「夜明け前」で描かれた、破滅へと向かう水戸天狗党が粛々と木曽宿を通り過ぎていった様を思い浮かべている。
「男はつらいよ」の車寅次郎もここ奈良井の駅前旅館で弟分と一緒にいたことを覚えている。
11:47 木曽福島(きそふくしま)駅(中央本線 長野県)
景色から雪が消え、春めいた青空に時折雪が舞う。
きれいな町並みが見えると木曽福島。
街道で、かつて僅かながら天下を握った信州の精鋭が静かにそして今も形勢を窺っているようにも見える。
諏訪に祖を置く我がご先祖様は、京都まで一気呵成に突き進んだ木曽義仲率いる軍団の中にいたのだろうかなどと思う。
一度駅周辺を歩いたことがあるが、また時間を作ってそうしてみたいと心から思う一帯だ。
いつだったか土産に買った木曽の酒は辛くて美味かったよ。
12:11 須原(すはら)駅(中央本線 長野県)
福島あたりでは木曽駒ケ岳は見えていたのだろうか。
中津川に沿って進む中央本線。
ここらあたりじゃ朝雪の気配もなく、古くからの家並みが峡谷の間で、同じく古からの流れとともに生きている。
オレは流れ者に属しているが、ああいうのいいなって思うよ。
名残雪がまた舞った。
古い駅舎によく似合う。
13:01 中津川(なかつがわ)駅(中央本線 岐阜県)
電車旅に目覚めた頃、この駅に来たんだ。
あれは11月か。
今日と同じような冷たい風が吹いていた。
駅を降りて、思い出したよ。
ああ確かにこんな感じだったって。
あの日はわさわさと人がたくさんいたような気がしたけど、名古屋に向かう列車は思いのほか空いている。
あの日のことをもうひとつ。
従兄弟の結婚式が中軽井沢であって、雨の日だった。
同じく久しぶりに会う従姉妹がとてもきれいになっていたことに驚いた。
昔の話だ。
だいぶ昔の話だな。
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