「車旅日記」1997年梅雨明け【疲れきっていた若き日々。またしても向かうのは北でございました。】(東京-鳴子温泉-東京)2日目~最終日-いわき久ノ浜パーキング、亘理、名取、松山町、鳴子サンハイツ、町田
車旅日記1997年7月20日
7:03 6号国道‐いわき久ノ浜パーキング
太陽光線で目が覚める。
とてもいい朝だ。
最初の朝を迎えて思うことは、ことの良し悪しは置いておいて、なるべく寛大でいること。
どこへ行っても問題は多い。
例えばすぐ手前にはゴミが不法に投棄されている。
どこから来たヤツがそうしたのか知らないが、この世界にはそうした手合いがいる。
だけどそんなことまで心配する気持ちをこの2日間は持ちたくない。
それが束の間に東京を脱出した理由だから。
9:40 6号国道‐亘理
先を急いだわけじゃないが、先を急ぐように宮城入りした。
原ノ町、相馬といった福島の町は国道に対して控え目に存在して、オレの進入をやんわりと拒んでいるかのようだった。
エンジンを止めると、蝉をはじめ夏の虫の声が聞こえる。
他には桃を売る農作業者が流すラジオの音。
右手には広大な田園地帯が広がっている。
すべてが緑色で構成された目に優しい風景だ。
ここに来るまでに海が見たかった。
でもまだ満足に拝めていない。
ストーンズが「Street Fighting Man」の演奏を始めた。
6号が4号に吸収される前にルートを変更した方がよさそうだ。
11:10 宮城県道10号-名取
目的が定かじゃない。
海を求めてうろついたが、どこもそこにいたいと思わせる場所じゃなかった。
ここには地元民が冷たいものを求めて集まっている。
気温はかなり上がったのだろう。
日差しは強く、右半身を容赦なく焼いている。
今のオレには少し涼しい場所と、涼しい音楽が必要だ。
13:20 松山町
だいぶ疲れたよ。
このまま鳴子へ向かう。
景色もよくていいところだけど、欲しいと思っているものを常備している環境じゃないことだけは確かだ。
たった今のオレが欲しいもの。
たいしたものじゃない。
ほんの少しのものなのだけれど。
21:54 鳴子サンハイツ
初めから分かっていたよ。
ナイター中継の終わりがこの夜の終わりだと。
路上に出ればすべてOKというわけじゃないってことだ。
ナイターを見ていて何となくそれが分かって、それで少しだけ笑ったよ。
いいじゃないか。
早く寝れば。
それで疲れが少しでも抜けるのであれば、それでいいじゃないか。
思うところが一定しないから落ち着かないけど、あまりくよくよしないことだ。
昨日路上で眠る時。
そして道々。
いろんな想像が頭を掠めた。
すべて取るに足らない想像だけど、その中で彼女は神聖な存在として距離を置き、オレの生臭い想像に登場することはなかった。
それが彼女への愛の証。
明日、彼女にあてて手紙を書く。
そして駅前のポストに投げ入れたら東京に帰る。
結果として、残された旅の目的がそれだけであったとしても、それで十分だよ。
1997・7・21 朝、鳴子
暑中お見舞い申し上げます。
元気ですか?
オレはあれからずっと疲れていたよ。
それで今はまた北の方にいる。
今までは車で出かければ、それまでのことはある程度清算できたけど、今回は少し違うな。
ゆっくり眠って、緑色の景色を見ているけど、あまり調子はよくないんだ。
そういうわけで計画とは違うけど、これから急いで東京に帰ろうと思う。
まあ、こういうこともあるだろう。
君はもう夏の計画を立てたのかな?
素敵な夏になるといいな。
また、いずれ
7・21 東京町田
ひとつの旅が終わった。
旅を楽しむには少しコンディションが悪すぎた。
出かける前と一緒だ。
さしたる感慨も浮かばず、それでも何らかの記録が必要なのだと、こうして座っている。
クリアーになったものはひとつもない。
明日の仕事を迎える状態もいつもと変わらない。
むしろ出かける前に過ごした日々より冴えが悪い。
それでも日常へと戻らなければならない。
ただ失ったものは何もない。
失いそうになったもの。
それはこのオレという生命体だった。
あまりの精神薄弱さに身の危険を感じて、不本意な形でこの旅を打ち切った。
クリアーになったものは本当に何もない。
だから、すべてやり直し。
それでいい。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2014年夏 3日目(鳥取-米子)その2-電鉄出雲市、川跡、旧大社駅、出雲大社前、雲州平田、松江しんじ湖温泉、松江、乃木、東松江、玉造温泉、揖屋、荒島、米子(一畑電車北松江線/一畑電車大社線/山陰本線)【青春18きっぷで、中国ぶらぶら旅】
鉄旅日記2014年8月15日その2・・・電鉄出雲市駅、川跡駅、旧大社駅、出雲大社前駅、雲州平田駅、松
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その6‐渚、高山(高山本線)/うま宮 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月20日・・・渚駅、高山駅(高山本線)/うま宮 17:54 渚(なぎさ)駅(高
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 2日目(高山-速星)その1‐高山、打保、猪谷、富山、電鉄富山(高山本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月21日・・・高山駅、打保駅、猪谷駅、富山駅、電鉄富山駅(高山本線) 2020
-
-
「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その4-陸奥湊、白銀、鮫、久慈、宮古(八戸線/三陸鉄道リアス線) /蛇の目寿司【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】
鉄旅日記2019年9月22日・・・陸奥湊駅、白銀駅、鮫駅、久慈駅、宮古駅(八戸線/三陸鉄道リアス線)
-
-
「鉄旅日記」2021年春 最終日(米内沢-東京)その1 ‐米内沢、鷹巣、鷹ノ巣、早口、秋田(秋田内陸縦貫鉄道/奥羽本線) 【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】
鉄旅日記2021年4月18日・・・米内沢駅、鷹ノ巣駅、早口駅、秋田駅(秋田内陸縦貫鉄道/奥羽本線)
-
-
「鉄旅日記」2019年如月 初日(東京-安中)その2-伊豆急下田、伊豆高原、橋本、八王子、東福生、福生、拝島(伊豆急行線/横浜線/八高線/青梅線) 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】
鉄旅日記2019年2月9日・・・伊豆急下田駅、伊豆高原駅、橋本駅、八王子駅、東福生駅、福生駅、拝島駅
-
-
「車旅日記」2005年春 最終日(富山-松本)走行距離218㎞ その1-アパホテル富山駅前、城川原駅、岩瀬浜駅、東富山駅、中滑川駅、滑川駅、魚津駅、石田駅、電鉄黒部駅、入善駅【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】
車旅日記2005年4月30日・・・アパホテル富山駅前、城川原駅、岩瀬浜駅、東富山駅、中滑川駅、滑川駅
-
-
「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その2-掛川、磐田駅、浜松、音羽町、岡崎、知立、名古屋渋滞、佐屋町、弥冨町
車旅日記1996年5月3日 6:25 1号国道‐掛川 あれから1時間か。 始まるよ、これから。
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 2日目(高山-速星)その2‐中滑川、滑川、猪谷、宇奈月温泉、宇奈月、寺田(富山地方鉄道本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月21日・・・中滑川駅、滑川駅、宇奈月温泉駅、宇奈月駅、寺田駅(富山地方鉄道本線
-
-
「鉄旅日記」2020年睦月 初日(東京-湯沢)その1‐金町、北千住、上野、宇都宮、黒磯(常磐線/東北本線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】
鉄旅日記2020年1月11日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、宇都宮駅、黒磯駅(常磐線/東北本線)