「車旅日記」2004年夏 初日(佐賀空港-別府)走行距離254㎞その1-葛飾金町、羽田空港、佐賀空港、佐賀駅、神埼駅、鳥栖駅、筑前内野駅【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】
車旅日記2004年8月11日・・・葛飾金町、羽田空港、佐賀空港、佐賀駅、神埼駅、鳥栖駅、筑前内野駅
2004・8・11 4:42 東京葛飾金町
2度の安らかな眠りを越えて、起き上がる。
心配していた目覚まし時計は、きちんと仕事を果たした。
もっとも、目覚ましが鳴る前に起き上がっていた。
早いところ空港へ連れていってくれよ。
日はまだ昇っていない。
夜明け前の空は、今日がどんな天気になるのか、まだ教えてはくれない。
少し遠くで一番鶏が鳴き、それが引き金となり、方々から二番三番と、その声は広がりつつある。
これから真夏の国へ。
旅立ちは少し早まりそうだ。
フライトは7:55。
朝食は焼きそばにしたよ。
40分が経過した。
この5日間の配達を止めるように依頼していたのに、朝刊が配達され、新聞販売所に抗議の電話を入れる。
さっきまで耳に涼しさを届けてくれていた蝉の声は聞こえなくなり、車の音が多くなってきた。
今日も真夏日になれば、連続記録は史上に残る記録と並ぶという。
そして、今年は新記録が生まれる年になることを、誰も疑っていない。
とんでもない夏だ。
そんな夏に、オレが向かうのは真夏の王国。
土産を買ってこよう。
帰ってきたら、しっかりと生きていこう。
7:28 羽田空港33番ゲート
6時の街は、しっかりと起きていた。
家を出た時には涼しさを感じたけど、じきに汗が吹き出してくる。
空港への乗り継ぎ列車の席はどこも塞がり、ネクタイ姿を一人として見ない。
東京駅ではあふれるほどの人々が下りていき、京浜運河と空は、濁った色をしていた。
そして夏休みの空の玄関口は、5月ほどじゃないが、早くも混み合っている。
まだ旅が始まっていることを実感できていない。
それに、どこへ何をしに行くのかも定かじゃない。
ひとまず佐賀へ飛ぶ。
今、滑走路へとオレを連れていくバスの到着を待っている。
佐賀に着いたら、まずはタバコを買うよ。
9:45 佐賀空港
羽田では、あれから飛行機のタラップまでバスで運ばれ、大平原のようなグレーの広大な滑走路を、遠い目で眺めた。
まるで無限のように滑走路は広がり、地平線の先に、ぼんやりと大都会が見えた。
オレにとって、その風景は最高だったよ。
薄曇りの東京上空を抜けると青空の中に浮かび、下界に目を向けると、国土の8割以上が山だという国が見えた。
やがて機長のアナウンスで、九州上空にさしかかったことを知り、また下界に目をやる。
ANA機は高度を落として飛行しており、水田地帯や大河が見えて、そこにまるで根拠のない、オレの中にだけある九州を感じる。
どこかほったらかしのような印象を受ける荒々しさを、上空からの何気ない風景に感じていた。
やがて熊本県内の谷間を抜け、こじんまりとした佐賀空港に下りる。
空港ビルはとてもきれいだ。
レストランは3階にある。
郷土コーナーにひとり座り、今こうしている。
壁には、佐賀学園の甲子園出場を祝う、大きな懸垂幕が下がっている。
とても残念だが、彼等は今日ここに帰ってくるはずだ。
空はよく晴れている。
今夜は別府に泊まる。
どんなルートで行こうが自由だ。
さて、どこへ行こうか。
10:38 佐賀駅 (佐賀空港より24km)
水田地帯を空港道路が走り、やがて街中へ入る。
佐賀城址、県庁。
気温は34度。
人のいいトヨタレンタカーの店員の話じゃ、今日はまだマシな方で、昨日までが耐えがたいほどの猛暑だったという。
東京も十分に暑かったけど、暑さを楽しむには、より暑い国にいた方がいい。
そんな心持ちでいる。
なにせ夏なのだから。
かわいらしい少女が、白い帽子を頭に乗せて通りをいく。
高層ビルは見当たらないが、案外に現代的な街の造りだ。
県庁の置かれた街であることは実感できるが、ちょっと見渡しただけじゃ、繁華街の存在は見えない。
駅周辺にもそれは見られない。
佐賀空港と同じように駅もガラス張りで、線路は2階に敷かれている。
由緒を持ちそうな羊羮屋を一軒見つけた。
他に、現在の佐賀を映すものを探せない。
明治維新の頃には最先端の技術を誇った街は、駅じゃ博多まで最短30分強900円という土地柄を売りにしている。
オレの隣に車を止めた女性は、ラジオで高校野球中継を聞いていた。
佐賀弁は聞こえてこなかったけど、なんだか佐賀を感じたよ。
2009年9月21日撮影
11:14 神埼駅 (佐賀空港より34km)
34号国道の車の流れが滞ってきた。
肥前の道に九州の趣は見られず、暑いには暑いが、昨日までに比べればいくらか過ごしやすい。
まるで宇宙科学館のような未来型の駅に、鄙びた肥前山口行の列車が止まり、3名が降りる。
あたりは一面の田舎風景だ。
滑稽と言えなくもない。
駅前の乾物屋の前で、所在無げな若者がひとり座っている。
佐賀県出身のお笑い芸人が歌にしていたように、自転車に乗る少年少女はヘルメットをかぶり、通りは牧歌的だ。
駅にいる間に、得意先から電話が2件入っていた。
まだ佐賀にいることも旅が始まっていることも実感できず、日常的な気分のまま鳥栖方向に車を走らせている。
風はそれなりに心地いい。
12:17 鳥栖駅 (佐賀空港より51km)
通りから眺めた吉野ヶ里公園駅も、神埼駅と同じような未来型の姿をしていた。
ここにきて分かった。
オレは鄙びた駅が見たくて、こうして駅を訪ねているのだと。
鹿児島本線と長崎本線が合流する鳥栖は、鉄道でも車でも交通の要衝にあたる。
1985年に全日本プロレスは、この街で天龍源一郎vsキラー・カーンのUN王座戦を組んでいる。
注目の一戦は、はっきりとした決着を見なかった。
鳥栖駅は古く、狭い待合室は賑わい、「駅そば」があり、駅弁も売られている。
ここで昼めし。
かしわそば、美味かったよ。
それに東京に比べて安い。
駅の反対側に見える巨大な構造物は、鳥栖スタジアム。
この街は、サッカーJ2のサガン鳥栖を有している。
跨線橋から、古い街と広大な鉄道基地を眺める。
鳥栖スタジアムだけが、新たな歴史に参加しているように見えた。
駅前には、煤けた色をした鳥栖ビルが建っている。
流行っている様子はなく、隣のジョイフルタウンには数えきれないほどの車が止まっている。
鳥栖から佐賀にかけては、博多のベッドタウン。
沿道の風景をオレはそんな目で眺めていた。
2013年8月13日撮影
13:22 筑前内野駅 (佐賀空港より77km)
ログハウス風の駅前に、聡明そうな犬が繋がれている。
そんな彼が、いきなり鳴きだした。
悲しそうな声だ。
原因はオレなのだろうか。
鳥栖から3号国道を走り、基山を過ぎて、筑豊へ延びる200号国道へ。
冷水トンネルを抜けると、小さな村に着いた。
駅の案内によると、内野には関所跡が遺されているという。
日に焼かれた右腕が夏の症状を呈しはじめ、体は汗ばんでいる。
風の音と蝉の声を聞く、田舎の夏。
人の姿はなく、この村に駅があることが不思議に感じられるが、確かに一本の線路が、筑豊に向けて延びている。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2020年如月 初日(東京-大船渡)その1‐金町、北千住、上野、宇都宮、黒磯(常磐線/東北本線) 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】
鉄旅日記2020年2月22日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、宇都宮駅、黒磯駅(常磐線/東北本線)
-
-
「鉄旅日記」2016年夏 最終日(大館-東京)-大館、十和田南、荒屋新町、前沢、一ノ関、愛宕、国府多賀城、陸前山王、北白川、東白石、蒲須坂、片岡(花輪線/東北本線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】
鉄旅日記2016年8月13日・・・大館駅、十和田南駅、荒屋新町駅、前沢駅、一ノ関駅、愛宕駅、国府多賀
-
-
「鉄旅日記」2017年夏 3日目(姫路-十三)その2-新開地、湊川、鈴蘭台、三木上の丸、三木城址、三木、粟生、神鉄三田、ウッディタウン中央、横山、有馬口、有馬温泉、鵯越(神戸電鉄有馬線/粟生線/三田線/公園都市線) 【私鉄王国で過ごす夏】
鉄旅日記2017年8月13日・・・新開地駅、湊川駅、鈴蘭台駅、三木上の丸駅、三木駅、粟生駅、神鉄三田
-
-
「鉄旅日記」2020年睦月 2日目(湯沢-鷹ノ巣)その2‐鯉川、東能代、岩館、深浦(奥羽本線/五能線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】
鉄旅日記2020年1月12日・・・鯉川駅、東能代駅、岩館駅、深浦駅(奥羽本線/五能線) 10:19
-
-
「鉄旅日記」2018年師走 2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その1-津、阿漕、松阪、家城、伊勢奥津(紀勢本線/名松線) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】
鉄旅日記2018年12月23日・・・津駅、阿漕駅、松阪駅、家城駅、伊勢奥津駅(紀勢本線/名松線)
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その3‐上諏訪、塩尻、洗馬、中津川(中央本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月20日・・・上諏訪駅、塩尻駅、洗馬駅、中津川駅(中央本線) 10:27 上諏
-
-
「鉄旅日記」2018年弥生 初日(東京-会津若松)その2-土合、越後湯沢、大沢、上越国際スキー場前、越後堀之内、小出(上越線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】
鉄旅日記2018年3月3日・・・土合駅、越後湯沢駅、大沢駅、上越国際スキー場前駅、越後堀之内駅、小出
-
-
「鉄旅日記」2014年冬 初日(東京-桐生)-小菅、五反野、梅島、田島、渡瀬、県、東武和泉、福居、野州山辺、韮川、東小泉、藪塚、阿左美、岩宿、新桐生、下新田(東武スカイツリーライン/東武佐野線/東武伊勢崎線/東武桐生線) 【ふらっと両毛 東武フリーパスで、両毛ローカル旅】
鉄旅日記2014年12月28日・・・小菅駅、五反野駅、梅島駅、田島駅、渡瀬駅、県駅、東武和泉駅、福居
-
-
「鉄旅日記」2014年春 初日(東京-西舞鶴)その1-西岐阜、京都、二条、日吉、胡麻、下山、和知、綾部、高津(東海道本線/山陰本線) 【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】
鉄旅日記2014年3月21日その1・・・西岐阜駅、京都駅、二条駅、日吉駅、胡麻駅、下山駅、和知駅、綾
-
-
「鉄旅日記」2008年初秋 2日目(羽咋-福井)その2-松任、小松、あわら湯のまち、三国港、福大前西福井、田原町、福井(北陸本線/えちぜん鉄道三国芦原線/福井鉄道福武線) 【秋になると北陸に行きたくなるものでございます。能登半島をはじめ、いくつもの終着駅へと行き着いたのでございます。】
鉄旅日記2008年9月14日・・・松任駅、小松駅、あわら湯のまち駅、三国港駅、福大前西福井駅、田原町