*

「鉄旅日記」2016年夏 最終日(大館-東京)-大館、十和田南、荒屋新町、前沢、一ノ関、愛宕、国府多賀城、陸前山王、北白川、東白石、蒲須坂、片岡(花輪線/東北本線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

公開日: : 最終更新日:2025/05/26 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年8月13日・・・大館駅、十和田南駅、荒屋新町駅、前沢駅、一ノ関駅、愛宕駅、国府多賀城駅、陸前山王駅、北白川駅、東白石駅、蒲須坂駅、片岡駅(花輪線/東北本線)

2016・8・14 6:27 大館(おおだて)駅(奥羽本線/花輪線 秋田県)
朝風呂に浸かり、今日もよく晴れた路上へ。

ホテルもよかったし、大館に対していいイメージを持って帰れる。

駅に着いてさっそく迎え酒。
どうしようもなくダメなヤツだが、無様ではないつもりだ。

花輪線で大館を出ると、奥羽本線と分かれて大きく右に迂回し、やがてまた奥羽本線を跨ぎ東大館へ。

ここらは商業施設も住宅も多い。

やはり街の中心はこちらか。

7:18 十和田南(とわだみなみ)駅(花輪線 秋田県)
だだっ広い駐車場。

お宮へつながる駅前通り。

酒屋は町を出ていき、角の家の爺さんは「どっこいしょ」と庭の畑に水を撒く。

気のいい駅長さんが迎えてくれたこの土地には、謡曲「綿木塚物語」という悲しい愛と死の話が伝わっている。

改札前には十和田南駅の詩が刻まれた碑がある。
内容は愛情にあふれた優しいものだ。

駅に着く前に右手から線路が現れた。
スイッチバッグ駅だったのか。

ここで数分の停車。

発車時刻を迎えると列車は後ろ向きに動き出し、さっき右手に現れた線路を走り始めた。

十和田南駅周辺風景

8:19 荒屋新町(あらやしんまち)駅(花輪線 岩手県)
5年前と同じようにここで行き違い停車。

駅長に愛想はなく、朝から顔に苦渋を浮かべている。

もっと穏やかな顔もできるだろうに、惜しいことだ。

自衛隊員募集の看板はおそらく5年前にもあったのだろう。

「日本の滝100選」に入る「不動の滝」への入口に大きな赤い鳥居が立っていた。

住人は代々そこに神を見てきたわけだ。

駅での別れの光景が見られた。

父親の腕に抱かれた小さな子供がきょとんとしていて愛らしい。

彼等が次に再会できるのはいつだろう。

11:17 前沢(まえさわ)駅(東北本線 岩手県)
盛岡駅で東北本線に乗り継ぐ。

岩手山がよく見えた。
快晴だ。

盛岡から豪華列車に乗って、岩手産「一番搾り」に喉を鳴らす。

列車の窓からきれいな田園を見ていた。
美しくて見飽きることはない。

たまに目を瞑ると心地よい眠りが訪れる。

右手には、3月には雪をまとっていた奥羽山脈。

夏とはこんなにも美しいものか。

かつてそう表現した記憶がない。

前沢駅は新しいが、一歩出れば由緒ありげな田舎町。

歩く。
わくわくする町歩きになった。

「本家」の木札を掲げた薬屋、明治天皇行在所跡にある旅館、前沢牛を売る店。

商店街は古く、夏が似合う。

懐かしく感じる。

毎年そんな瞬間があるが、ここにいられてうれしいと、気分が上がってくる。

そんな町だった。

坂上田村麻呂に率いられた遠征軍を迎え撃った蝦夷の大酋長「アテルイ」の里でもある。

前沢駅周辺風景

11:54 一ノ関(いちのせき)駅(東北新幹線/東北本線/大船渡線 岩手県)
夏を楽しむ人々に囲まれている。

今では珍しくなったホームに置かれた「駅そば」でラーメンを注文。

うどんそばに比べて出てくるのにほんの少し時間がかかる。

しかし美味かった。
求めていた味で、汁まで飲み干した。
覚えておこう。

小牛田行きに乗っている。

乗車率が急激に落ち込んだ。

13:13 愛宕(あたご)駅(東北本線 宮城県)
日を遮るもののない駅で焼かれる。

鮮やかな青のマンションが無人駅を見下ろしている。

近くにはコンビニのみ。

松島付近で線路に人が立ち入ったとかで計画にひびが入る。

最近は外国人観光客が増えている。
偏見に満ちているとの批判は承知の上だが、おそらくそういった手合だろう。

これといって特色のない駅で、こうして青信号に変わるのを待っている。

かわいらしい赤ちゃんが乗ってきて気持ちが和む。

13:41 国府多賀城(こくふたがじょう)駅(東北本線 宮城県)
東北歴史博物館が重厚な存在感を放っている。
休館なのか人の姿は見られない。

疎らな住宅街があたりを包んでいる。

歴史的な地名だが町は寂しい。

1,000年以上前の旧跡が、そのまま地名として残っている例は稀だろう。

当時みちのくは大和政権に組み込まれていなかった。

従って坂上田村麻呂の登場によって初めて東北は教科書に現れる。

この歴史は知っておくべきだ。

13:56 陸前山王(りくぜんさんのう)駅(東北本線 宮城県)
多賀城文化圏が続いている。

ここは明らかに仙台文化圏からは外れている。

駅前にはカフェが一軒あるのみであとは何もない。
コンビニもない。
ビールも売っていない。

史跡へと誘う案内に目を向ける人間がそもそもいない。

たまたまだが、さっき降りた前沢は「アテルイ」の里だった。

彼と征夷大将軍との間で戦われた最後の戦場はどこだったのだろう。

東北は負けてきた。
だから記念碑は乏しい。

多賀城は中央政権の前進拠点だったから地名として残ったのだろう。

仙台平野を風が吹き抜けていく。

15:27 北白川(きたしらかわ)駅(東北本線 宮城県)
仙台で白石行きに乗り継ぐ。

何もない場所でビール売場を探して県道を歩いていく。

風景はさらに鄙びて白石川に出る。

遠くに新幹線高架が見える。

視線を下に移せば犬を散歩させる男とひとり往く少年。

オレは蝉時雨の中を立ち止まった。

弱くなった日差しが、この暑い夏に無常を教えていた。

北白川駅周辺風景

15:44 東白石(ひがししろいし)駅(東北本線 宮城県)
「宮城蔵王36景」に数えられる東白石は無人駅。

この駅の存在を意識しだしてから、白石川に沿ったこの駅に降りる機会をずっと待っていた。

川向かうに村があるが、駅舎があるあたりはまるで秘境駅の風情だ。

降りていった若者3名には迎えの車が待っていた。

風景にケータイを向けた。

蝉の声に切なさを感じた今日。

明日が盆。

暑さには毎年苦しめられるが、夏とはやはり短い。



19:11 蒲須坂(かますさか)駅(東北本線 栃木県)
福島、黒磯で乗り継ぐ。

闇に紛れてしまった駅で、父親が迎えの車を待たせている。

浴衣を着た女子のほか女性2名が待合室に座っていた。
この列車に乗るでもなく、変わらず待っている。

ここから1駅戻って片岡に降りるオレの行動も謎だが、彼女たちの行動も読めない。
どうでもいい話だが。

関東野州は涼しかった。

今宵の東京はどうだろう。

19:22 片岡(かたおか)駅(東北本線 栃木県)
新しい駅舎を出ると小さなロータリーがあり、取り巻くのは菓子屋と、正面に片岡交通。

真ん中の植え込みに、この駅を詠んだ石碑がある。

古い家屋が隣り合っているせいか、暗いことも作用しているのだろうが、駅前通りは由緒ある宿場町のように見える。

おそらく住人はこの駅を気に入っているだろう。

ただ、冬場の風は冷たかろう。

新しい駅舎に旅情を感じて、この旅も終わる。

改札を入って左手にあるベンチに腰掛けて、「旅の終わりがここでよかった」としみじみとした気持ちになり、やがて正面のガラス窓に宇都宮行の光を見ると立ち上がり、オレはホームへと続く階段を下りていった。

関連記事

「鉄旅日記」2014年春 初日(東京-西舞鶴)その2-東雲、宮津、天橋立、豊岡、国府、和田山、梁瀬、福知山、西舞鶴(北近畿タンゴ鉄道宮津線/山陰本線) 【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】

鉄旅日記2014年3月21日その2・・・東雲駅、宮津駅、天橋立駅、豊岡駅、国府駅、和田山駅、梁瀬駅、

記事を読む

「車旅日記」1998年春 初日(東京-岩手山SA)-町田、蓮田SA、都賀西方PA、黒磯PA、阿武隈PA、吾妻PA、菅生PA、前沢PA、岩手山SA 【下北半島を目指した春。男の旅は北を目指すものと思っていた20代後半。高倉健さんの影響でございましょうか。】

車旅日記1998年5月1日 1998・5・1 11:53 東京町田 出発を前にして空が晴れてきた。

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】4日目(高知-宇和島)-高知、朝倉、伊野、斗賀野、須崎、窪川、中村、宿毛、宇和島(土讃本線、土佐くろしお鉄道中村線/宿毛線、予土線)

鉄旅日記2009年5月4日・・・高知駅、朝倉駅、伊野駅、斗賀野駅、須崎駅、窪川駅、中村駅、宿毛駅、宇

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 最終日(新津-東京)その3‐小野新町、要田、いわき(磐越東線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月5日・・・小野新町駅、要田駅、いわき駅(磐越東線) 12:33 小野新町(お

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、富山・岐阜途中下車旅】最終日(富山-東京)その2-美濃太田、可児、姫、下切、南木曽、田立、勝沼ぶどう郷(太多線、中央本線)

鉄旅日記2012年8月26日その2・・・美濃太田駅、可児駅、姫駅、下切駅、南木曽駅、田立駅、勝沼ぶど

記事を読む

「車旅日記」1997年1月【空しい日々を振り払い、28年目の人生もまた旅。そんな年頭の姿でございます。】-町田、愛甲石田駅、御殿場駅、岩波駅、熱海駅、西湘パーキング、奈良北

車旅日記1997年1月4日 1997・1・4 1:01 東京町田 明かりをつけた部屋にストーンズの

記事を読む

「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その1 ‐金町、東京、くりこま高原(常磐線/東北新幹線) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月4日・・・金町駅、東京駅、くりこま高原駅(常磐線/東北新幹線) 20

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 最終日(新津-東京)その4‐浪江、いわき、常陸多賀、石岡(常磐線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記20220年4月5日・・・浪江駅、いわき駅、常陸多賀駅、石岡駅(常磐線) 16:34 浪江

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月 2日目(天王寺-奈良)その1-南霞町、浜寺駅前、浜寺公園、羽衣、春木、和泉大宮、岸和田、和歌山市、和歌山港、堺(阪堺電気軌道/南海電鉄南海線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】

鉄旅日記2007年2月11日・・・南霞町駅、浜寺駅前駅、浜寺公園駅、羽衣駅、春木駅、和泉大宮駅、岸和

記事を読む

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-松本)その1 ‐金町、神田、吉祥寺、国立(常磐線/中央本線) 【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】

鉄旅日記2021年4月24日・・・金町駅、神田駅、吉祥寺駅、国立駅(常磐線/中央本線) 20

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その3 ‐川部、五所川原、木造(五能線)/神武食堂 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・川部駅、五所川原駅、木造駅(五能線)

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(I

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小

→もっと見る

    PAGE TOP ↑