「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】初日(東京-大垣)その2-郡上八幡、北濃、美濃白鳥、郡上八幡、関、美濃太田、岐阜(長良川鉄道/高山本線)
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最終更新日:2020/09/12
旅話 2017年
鉄旅日記2017年8月11日
16:53 郡上八幡(ぐじょうはちまん)駅(長良川鉄道 岐阜県)
ドアが開いたら蜩の声が聞こえてくる。
夏の充分条件だ。
オレの暮らしの中では石神井公園しか思いつかない。
駅前は閑散としている。
町の中心まで約2キロ。
中央通りを進み、中心に近づくにつれて通りは観光色を身につけ、やがて観光客に呑まれた。
郡上八幡旧庁舎記念館を左に曲がり吉田川を渡る。
郡上八幡城を見上げ、小駄良川に架かる清水橋で水と戯れる人々を見る。
中国人女性にシャッターを押してくれるよう頼まれた。
彼女は写真に満足して謝謝。
駅に戻ると人声は疎らになる。
駅前でビールを買って、涼しいし、気持ちも穏やか。
こんな風景の中で暮らしたことはないが、オレの頭の中にはいつもこんな風景があって、思い出す度に懐かしい気持ちになる。
夕暮れ前に雲間から陽射しが。
空にも青が戻って、いつしか心も上天気。
郡上八幡の町並
18:16 北濃(ほくのう)駅(長良川鉄道 岐阜県)
在りし日。
オレは鉄路と並走する156号国道を車を走らせて、九頭竜湖に向かったのだろう。
国鉄はこの鉄路を九頭竜湖に繋げて、福井へと抜ける壮大なルートを計画して、ここで頓挫した。
旧国鉄越美南線、長良川鉄道の終着駅、北濃。
美濃太田から72キロ。
ここまでトンネルを潜った記憶はない。
ここから先は必要になる。
そして集落は稀だ。
きっと他の地域に様々な計画が持ち上がって先を越されるうちに、国鉄は民営化されたのだろう。
同じような事情で開通が待たれ、実現した三江線が、来年だかに廃線が決まった。
皮肉な現実だ。
過去の記録を手繰る必要があるが、ビールを買いに歩いていった「道の駅白鳥」にも寄ったような気がする。
高山本線の風景とよく似た旧越美南線。
今年は仕事が思うようにいかない中で、ブログを立ち上げ、新たな関係性の構築に動き、様々な現実の中で、こうして懐かしげな風景に包まれて蝉の声を聞いていると、なんだか遠くを眺めている気分になる。
それが過去であれ、未来であれ、今見ている空と同じ色になる。
黒雲を連れてるけど、悪くない夕焼け空だ。
北濃駅前風景
18:51 美濃白鳥(みのしらとり)駅(長良川鉄道 岐阜県)
列車の交換待ちで外に出たら、またぱらっと降ってきた。
台風5号の進路にあたった当地の被害を心配した記憶が甦った。
何で最近はそうなる。
自然界がもたらす暴力になすすべのない人間が下らない政争にかまけている。
優先事項は連中とオレとじゃ決定的な違いがある。
たった今、天界に架けられたかと思わせる橋の下を通った。
美濃白鳥は町だった。
駅前を出て、そのまま歩きだしたくなったよ。
19:26 郡上八幡(ぐじょうはちまん)駅(長良川鉄道 岐阜県)
交換待ちで4分の停車。
夜になった町に戻ってきた。
今は郡上おどりの最中。
祭囃子でも聞こえるかと表に出てみれば花火の音が聞こえた。
ここも川上健一さんの「祭囃子が聞こえる」に描かれた町。
刈和野、越中八尾、西大寺・・・。
あの物語に登場する橋はどれだったのだろう。
またあの小説を手にとりたくなった。
20:25 関(せき)駅(長良川鉄道 岐阜県)
刃物の街は夜の明かりが少なかった。
今オレの頭を悩ませている仕事のクライアントがここ関を発祥の地としている。
今はこの様だが、良縁にしてみせると誓う。
ふと見た灯りは、小さな剣道場だった。
北濃からこうして戻ってきて、長良川はすでに姿を消し、時に民家の庭かと思うようなせせこましいところを通る。
街が近づいている。
富加でドアが開いたら、醤油の匂いが香った。
弱い雨が落ちている。
20:52 美濃太田(みのおおた)駅(高山本線/太多線/長良川鉄道 岐阜県)
随分と街が明るく見える。
夜の高山本線は初めてになる。
外に出たかったが乗り換えは6分。
ホームから確かあんな街だったと思い出しながら、5年ぶりになる街の灯を眺めた。
どこの国の青年だか知らないが、日本人ではなかなか見かけないマナーの持ち主がいて、しゃかしゃかうるさい。
東京じゃ目立たないだけなのだろうが、地方で空いた列車に乗ると目につく。
東北や北海道では見かけない。
東南アジア産まれの彼等には、寒さへの耐性が具わっていないからか。
次は鵜沼。
2年前の春に並走する名鉄線に乗った。
高山本線沿線に大雨が降ったらしい。
その影響で列車に遅れが出ている。
昼間のもそうか。
大雨はいつ降ったんだ?
21:34 岐阜(ぎふ)駅(東海道本線/高山本線 岐阜県)
東海道本線の遅れは解消していない。
区間が長いため致し方ないのかもしれないが、ひとりの愚か者がどれほどの人々に迷惑をかけたのか。
憤りは余計な感情や不安を連れてくる。
それらを押し込めるか、追い出すかして、少しでも明日をいい状態で迎えるためにいつも苦心している。
それは、ひとりじゃなきゃ磨けない。
何も今である必要はないけれど。
ところで今アナウンスで聞いた。
現在の遅れは愚か者のためじゃなく大雨のせいだという。
オレが通りすぎた後に、東海道は更なる混乱に見舞われていたのか。
今日の宿、大垣にはじきに着く。
大垣(おおがき)駅(東海道本線/美濃赤坂支線/養老鉄道養老線/樽見鉄道 岐阜県)にて
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