「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その2‐静岡、浜松、豊橋、名古屋、大垣(東海道本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月23日・・・静岡駅、浜松駅、豊橋駅、名古屋駅、大垣駅(東海道本線)
8:29 静岡(しずおか)駅(東海道・山陽新幹線/東海道本線 静岡県)
時に書に眼を落とし、時に眠る。
富士川の姿は記憶にない。
蒲原から駿河湾が車窓に覗き始める。
由比では海に突き出るように車窓左手に現れる二つの峰を見る。
清水から寄り添っていた静岡鉄道もいつの間にか消えて、列車は静岡に着く。
真夏には席を奪うための熾烈な競争が行われていた2分の乗り換え。
その争いにオレが加わることはないが、今日はその必要もなく、向かいのホームに停車中の浜松行にゆうゆうと乗り込む。

8:30発。
ふとスマホを覗くと70通近いメールがたまっている。
鑑定師からの吉兆連絡は途絶えていたわけではなく、au側の都合によるらしい。
新たな日常を始めていこうとしていたけれど、安心はしたよ。
もっともオレが欲しい真の安心はこんなものじゃない。
金があれば足りるというものでもない。
昨夜は彼女にそんな問いを投げかけて眠りに就いた。
用宗を過ぎると、車窓に駿河湾がちらちらと覗く。
この事実を知らずに10年以上もの間を列車に揺られていたことになる。
焼津に着くと東京ではポツリポツリと聞こえていた蝉の声が、ここでは大合唱になっていた。
9:43 浜松(はままつ)駅(東海道・山陽新幹線/東海道本線 静岡県)
各地に水害を起こした7月豪雨。
九州、中国山地では鉄路は埋まり、あるいは流され、旅路の変更を強いられた。
大井川の水量はほぼ枯れかかっていた頃を思えば豊かだが、越すに越されぬと詠われた江戸の昔を想像はできない。
続く金谷の茶畑の緑は鮮やかで列車は粛々と西へ向かう。
天竜川は河川敷をいく筋も伝い豊富な水量を誇っていた。
浜松には2分遅れで到着。
9:43大垣行は1分遅れで発車。
10:19 豊橋(とよはし)駅(東海道・山陽新幹線/東海道本線/飯田線/名鉄名古屋本線 愛知県)
弁天島で浜名湖を見る。
車窓から写そうとするが、新幹線高架が邪魔をする。
豊橋で3分の停車。


先日の豪雨は岐阜、長野をも襲い、飯田線が被害に遭ったことを到着前のアナウンスで知った。
三河の空もまた曇り。
11:13 名古屋(なごや)駅(東海道・山陽新幹線/東海道本線/中央本線/関西本線/名古屋市営地下鉄桜通線/名古屋市営地下鉄東山線/あおなみ線 愛知県)
ボックス席に腰かけて吉兆報告に眼を落としていると何度も眠りに誘われる。
オレの前世は島原や天草にもあったと知った。
違う前世は京都にあり、伊勢にもある。
こうして旅を続けていることもきっと前世に由来するのだろう。
三河湾の対岸は伊勢なのだと、眠りに落ちる前に思ったかどうかは定かじゃない。
ここで3分の停車。

東海もまた今月雨に打たれた。
飛騨川があふれ下呂温泉が水に浸かり、41号国道は崩れ、高山本線もまた被害を受けたのだろう。
あの3月の旅が懐かしい。
あれから世界は、そしてこの国は大きく変わってしまった。
12:06 大垣(おおがき)駅(東海道本線/美濃赤坂支線/養老鉄道養老線/樽見鉄道 岐阜県)
長良川を越える際には斎藤道三の最期を想った。
NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で本木雅弘さんが演じた悪人道三。
彼の首を前に、息子の義辰は言ったという。
「身から出た錆でござる。拙者をお恨みあるな」。
内紛により命を落としたマムシの道三。
彼に付き従った軍勢はごくわずかだった。
その後に織田信長が完成させた岐阜。
稲葉山山上に天守閣が見える。
11:47着。大垣は涼しかった。
そして常なら席の奪い合いになる大垣乗り継ぎも騒ぎはなく、やすやすと米原行に乗り込んで寛いでいる。

12:12発。
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