*

「鉄旅日記」2012年夏 初日(東京-富山)-大垣、田村、近江塩津、敦賀、越前花堂、美山、九頭竜湖、越前大野、福井、美川、金沢、津幡(東海道本線、北陸本線、越美北線) 【青春18きっぷで、福井・石川途中下車旅】

公開日: : 最終更新日:2025/06/19 旅話, 旅話 2012年

鉄旅日記2012年8月25日・・・大垣駅、田村駅、近江塩津駅、敦賀駅、越前花堂駅、美山駅、九頭竜湖駅、越前大野駅、福井駅、美川駅、金沢駅、津幡駅(東海道本線、北陸本線、越美北線)

2012・8・25 12:40 大垣(おおがき)駅(東海道本線/美濃赤坂支線/樽見鉄道/養老鉄道 岐阜県)
星空の保谷。

車内は混んでいたけど東京までは順調だったんだ。
そこからはすべてが想定外だった。

24時間を有効に使おうと画策する人々の多さに驚き、朝飯は中途半端な状態で収束させねばならず、さらに沼津の手前でダイヤが狂い、やってきた浜松行に乗り込めば毎朝の山手線のような乗車率。
そのまま2時間。
あの時は恨んだな。
東京からやってきて座席を占めている腹の出た眼鏡顔の電車男たちを。

ダイヤの乱れは続いている。
従って福井までの予定が乱れた。
とても残念で心も震えた。

大垣駅前は夏の日差しに照らされ、お城に続く街並が華やいで見えた。
一度じっくり歩いてみたいと思っているが、それはすべての旅の計画が終了する頃になりそうだ。

それまでは、もっと遠くの街に行かなきゃならない。

14:02 田村(たむら)駅(北陸本線 滋賀県)
長浜ドーム。
長浜バイオ大学。
伊吹山脈の抉り取られた山肌。
見渡すと江北名所に囲まれている。

商業施設は一切なく途方に暮れるべき駅だ。
ただ駅前から水面が放つ輝きが見えたんだ。

長浜と琵琶湖は距離的にも密接だ。

かつて車を走らせた湖岸道路。
恋の記憶が蘇る。
真夏の湖東にたたずむは初めてだろう。

浸かりたいと思える水じゃなかったが、琵琶湖と子供たちが戯れていた。
西日本の強烈な日差しを浴びるのもまた久し振りだ。

駅前の喫煙所でビールと汗と共に吸った煙草の味は、もう20年も前に江ノ島の海水浴場で吸ったのと同じ味がして、しばし茫々と。


14:54 近江塩津(おうみしおつ)駅(北陸本線/湖西線 滋賀県)
江北最北端西浅井。

地下道のような通路を通って改札口に下りると追憶の8号国道。
おそらく冷たいビールを売っていたであろう商店は廃墟になって久しく、土建屋の看板も掲げている「ひさご旅館」はどうやら営業を続けているようだ。

8号国道を渡って人里へ。
日陰では犬が吠えるという行為をまるで放棄したかのように力なく寝そべっている。
そして懐かしい農村の風景を歩いた。

駅には軽喫茶店が入っていた。

3年前の11月18時過ぎ。
この駅に降りたが、あたりは真っ暗だったよ。

15:38 敦賀(つるが)駅(北陸本線/小浜線/湖西線 福井県)
敦賀について浮かぶこと。
金ヶ崎、天狗党末路、民謡番組流れる待合室。

さすがのオレもこの暑さに一歩引いた格好だが、柔い細麺の肉うどん。
美味かったよ。

敦賀駅は開業130年だという。

オレが初めてこの駅に下りてから21年。
それから何度訪れたことだろう。

そしてこの街での過去は遠い昔のことになった。

16:57 越前花堂(えちぜんはなんどう)駅(北陸本線/越美北線 福井県)
若者満載のワンマン車、九頭竜線に乗り換え。

友人Sさんが暮らす大野へと続く道。
夏の日に焼かれた花堂の町はくたびれて見えた。

九頭竜線専用ホームへ草の道を通る。

17:27 美山(みやま)駅(越美北線 福井県)
足羽川と絡み合うように進む越美北線。
いつぞやの大雨であの橋が落ちて存続が危ぶまれた。
あの時はオレも心を痛めたよ。

この道を友人Sさんの運転する車で走り、また勝山に入院していた彼に会い行くためにひとりでも走った。

手動で操らなければならない北陸最強ローカル線の道に駅舎はなく、花堂以来駅舎が建つ美山で3分の交換待ち。

運動する女子高生の一団が下り、幼子を連れた出迎えの母親が大声で呼ぶ。

谷間を走っているのだな。
足羽川が姿を消し、左右から山塊が迫ってきた。

そろそろ大野の街が見える頃か。
そして視界が開けた。

平野だ。

18:28 九頭竜湖(くずりゅうこ)駅(越美北線 福井県)
飛騨から恐竜街道に至り、九頭竜湖の脇を抜け辿り着いた終着駅。

あの時の感動を覚えている。
九州へと繋がった壮大ツアー2日目のことだ。

そして大野へ。

駅前の風情に変化はなく、道の駅では屋台が出て森閑とした夕暮れに笑い声が聞こえてくる。

あの湖を抜けて郡上八幡へと至る鉄道ルートが完成していたらと思わざるを得ない。
日常の利用者確保は保証できないが、鉄道マニアのみならず垂涎の路線になったことだろう。
計画の壮大さは県境に立ちはだかるあの山を越えた者なら理解できる。

霧の立つ九頭竜湖駅は深く心に残る終着駅だ。

19:17 越前大野(えちぜんおおの)駅(越美北線 福井県)
北陸の小京都。
名水の街。
金森長近築城のライトアップされた大野城が七間朝市の先に見える。

ごくこじんまりとしているが繁華街も一緒に七間朝市の光の中にあった。

緑濃い名水の街。
あらためて大野を訪ねて美しきたたずまいに心を打たれた。
こざっぱりとした旅館も数軒灯を残している。

友人Sさんの夢はあの大野で店を出すこと。
一緒にBARをやならいかと半分真面目に話したりしてた。

当時の彼女と別れて病を患い東京を去った元サッカー福井県選抜の伊達男。
今も大野にいるのだろう。
彼がいるならまた訪れることもあるだろう。

大野を離れて浮かんできた希望がある。

今すぐ戻って宿をとり、彼に連絡をつけて互いに四十路を辿る今の夢を聞いてみたい。

オレたちはずっとそんな話をしながらやってた。
そう、そんな頃があったんだよ。


20:36 福井(ふくい)駅(北陸本線/越美北線/えちぜん鉄道 福井県)
そうか4年振りになるんだな。

つい最近のことだとも思えたが、それだけの歳月が流れ、オレももう43歳。

そうだった。
いろいろ工事中だったよ。

今はすべてが完成し、見覚えのない商業ビルが建ち、高架駅は床から何からピカピカに磨かれ光を跳ね返していた。

とても美味かった今庄そばの営業は23:30まで。
ひっきりなしに客を迎え、福井駅の夜は遅くなった。

新しい街に着いた心地でわくわくしたよ。
すれ違いにケータイを落とした女性をはじめ越前娘は素敵だった。

恋がしたくなったよ。
この街で。

22:02 美川(みかわ)駅(北陸本線 石川県)
白山市という市制が敷かれたのはいつのことだろう。

友人Sさんを見舞った帰り、あの勝山からの長い道のりを経て辿り着いた海辺がちょうどこの辺りだったのだろう。
手取川沿いの道の駅が懐かしい。

美術館のようなとてもきれいな駅に下りると町があった。
ふれあいモニュメントへの赤い橋を渡る。
不思議な駅を作ったものだが、何らかの町の意思は感じる。

上品な灯で飾った割烹を左手に見て、中央商店街を突き抜けると日本海に出るのだろう。
美川温泉観光ホテル跡のところで引き返して駅への道を再び。

オレンジ色の灯に彩られた町だった。

北陸の夜には明かりがある。
秋田あたりじゃ窓は真っ暗だったよ。

22:37 金沢(かなざわ)駅(北陸本線/七尾線/北陸鉄道 石川県)
金沢に下りると真っ先に思い出すのは20年近く前に焦がれた女性との再会劇。
死ぬまでそのままだろう。
それで構わない。

永遠の古都の外では多くの旅人がベンチで眠り、その脇で夢見るような瞳の女性が酔いでも覚ますように両手にもたれて座っていた。

七尾行に酔客の声が響いている。

22:58 津幡(つばた)駅(北陸本線/七尾線 石川県)
会社の時報と同じメロディが富山行最終の到着を告げた。

能登半島の入口にあたる津幡で多くが下りたが、駅前の灯に町の灯が交じることはなく、寂れた風景は冷たい北陸の季節を思わせた。

今乗り合わせているのはみんな越中人なのだろうか。

関連記事

「鉄旅日記」2009年初夏【上信越ひとり旅】2日目(十日町-長岡)-十日町、戸狩野沢温泉、長野、松本、信濃大町、南小谷、直江津、柿崎、長岡(飯山線/篠ノ井線/大糸線/北陸本線/信越本線)

鉄旅日記2009年7月19日・・・十日町駅、戸狩野沢温泉駅、長野駅、松本駅、信濃大町駅、南小谷駅、直

記事を読む

「車旅日記」2005年冬 2日目(都城-人吉)走行距離284㎞ その2-伊集院駅、串木野駅、川内駅、薩摩高城駅、大隅横川駅、吉松駅、人吉駅前ホテル 【どこへ行こうか。まっさきに浮かんだのが、昨夏に旅した南九州でございました。】

車旅日記2005年2月12日・・・伊集院駅、串木野駅、川内駅、薩摩高城駅、大隅横川駅、吉松駅、人吉駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走 初日(東京-酒田)その3‐新潟、村上、羽後本荘(信越本線/白新線/羽越本線) 【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】

鉄旅日記2019年12月7日・・・新潟駅、村上駅、羽後本荘駅(信越本線/白新線/羽越本線) 11:

記事を読む

「鉄旅日記」2005年秋 初日(東京-名古屋)-根府川、島田、豊橋、岡崎、名古屋(東海道本線) 【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。】

鉄旅日記2005年11月5日・・・根府川駅、島田駅、豊橋駅、岡崎駅、名古屋駅(東海道本線) 200

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 最終日(速星-東京)その4‐藤枝、静岡、熱海、上野、北千住(東海道本線/常磐線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月22日・・・藤枝駅、静岡駅、熱海駅、上野駅、北千住駅(東海道本線/常磐線)

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】初日(東京-三ノ宮)-金町、東京、静岡、浜松、弁天島、大垣、美濃赤坂、石山寺、膳所、尼崎、西宮、芦屋、三ノ宮(東海道本線、美濃赤坂支線、京阪石山坂本線)

鉄旅日記2009年5月1日・・・金町駅、東京駅、静岡駅、浜松駅、弁天島駅、大垣駅、美濃赤坂駅、石山寺

記事を読む

「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、甲信越途中下車旅】最終日(長野-東京)その1-長野、信州中野、湯田中、安茂里、戸倉、上田、別所温泉、西上田、田中(長野電鉄、信越本線、しなの鉄道、上田交通)

鉄旅日記2012年12月9日その1・・・長野駅、信州中野駅、湯田中駅、安茂里駅、戸倉駅、上田駅、別所

記事を読む

「鉄旅日記」2018年春 最終日(飯田-東京)その3-日出塩、贄川、村井、上諏訪、日野春、西国分寺、新松戸(中央本線/武蔵野線) 【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】

鉄旅日記2018年4月8日・・・日出塩駅、贄川駅、村井駅、上諏訪駅、日野春駅、西国分寺駅、新松戸駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 初日(東京-香住)その3‐米原、京都、梅小路京都西、丹波口、花園(東海道本線/山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月23日・・・米原駅、京都駅、梅小路京都西駅、丹波口駅、花園駅(東海道本線/山

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 最終日(上田-東京)その3 ‐十日町、越後川口、渋川、敷島(飯山線/上越線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月11日・・・十日町駅、越後川口駅、渋川駅、敷島駅(飯山線/上越線) 1

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その3 ‐川部、五所川原、木造(五能線)/神武食堂 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・川部駅、五所川原駅、木造駅(五能線)

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その3 ‐盛岡、渋民、八幡平、湯瀬温泉(IGRいわて銀河鉄道/花輪線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日 盛岡駅、渋民駅、八幡平駅、湯瀬温泉駅(I

「鉄旅日記」2022年新春 初日(東京-湯瀬温泉)その2 ‐竜田、原ノ町、鹿島、仙台、小牛田、一ノ関(常磐線/東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月8日・・・竜田駅、原ノ町駅、鹿島駅、仙台駅、小

→もっと見る

    PAGE TOP ↑