「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、福井・石川途中下車旅】初日(東京-富山)-大垣、田村、近江塩津、敦賀、越前花堂、美山、九頭竜湖、越前大野、福井、美川、金沢、津幡(東海道本線、北陸本線、越美北線)
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最終更新日:2020/08/27
旅話 * 結婚後2012年, 旅話*結婚後
鉄旅日記2012年8月25日
2012・8・25 12:40 大垣(おおがき)駅(東海道本線/美濃赤坂支線/樽見鉄道/養老鉄道 岐阜県)
星空の保谷。
車内は混んでいたけど東京までは順調だったんだ。
そこからはすべてが想定外だった。
24時間を有効に使おうと画策する人々の多さに驚き、朝飯は中途半端な状態で収束させねばならず、さらに沼津の手前でダイヤが狂い、やってきた浜松行に乗り込めば毎朝の山手線のような乗車率。
そのまま2時間。
あの時は恨んだな。
東京からやってきて座席を占めている腹の出た眼鏡顔の電車男たちを。
ダイヤの乱れは続いている。
従って福井までの予定が乱れた。
とても残念で心も震えた。
大垣駅前は夏の日差しに照らされ、お城に続く街並が華やいで見えた。
一度じっくり歩いてみたいと思っているが、それはすべての旅の計画が終了する頃になりそうだ。
それまでは、もっと遠くの街に行かなきゃならない。
14:02 田村(たむら)駅(北陸本線 滋賀県)
長浜ドーム。
長浜バイオ大学。
伊吹山脈の抉り取られた山肌。
見渡すと江北名所に囲まれている。
商業施設は一切なく途方に暮れるべき駅だ。
ただ駅前から水面が放つ輝きが見えたんだ。
長浜と琵琶湖は距離的にも密接だ。
かつて車を走らせた湖岸道路。
恋の記憶が蘇る。
真夏の湖東にたたずむは初めてだろう。
浸かりたいと思える水じゃなかったが、琵琶湖と子供たちが戯れていた。
西日本の強烈な日差しを浴びるのもまた久し振りだ。
駅前の喫煙所でビールと汗と共に吸った煙草の味は、もう20年も前に江ノ島の海水浴場で吸ったのと同じ味がして、しばし茫々と。
14:54 近江塩津(おうみしおつ)駅(北陸本線/湖西線 滋賀県)
江北最北端西浅井。
地下道のような通路を通って改札口に下りると追憶の8号国道。
おそらく冷たいビールを売っていたであろう商店は廃墟になって久しく、土建屋の看板も掲げている「ひさご旅館」はどうやら営業を続けているようだ。
8号国道を渡って人里へ。
日陰では犬が吠えるという行為をまるで放棄したかのように力なく寝そべっている。
そして懐かしい農村の風景を歩いた。
駅には軽喫茶店が入っていた。
3年前の11月18時過ぎ。
この駅に降りたが、あたりは真っ暗だったよ。
15:38 敦賀(つるが)駅(北陸本線/小浜線/湖西線 福井県)
敦賀について浮かぶこと。
金ヶ崎、天狗党末路、民謡番組流れる待合室。
さすがのオレもこの暑さに一歩引いた格好だが、柔い細麺の肉うどん。
美味かったよ。
敦賀駅は開業130年だという。
オレが初めてこの駅に下りてから21年。
それから何度訪れたことだろう。
そしてこの街での過去は遠い昔のことになった。
16:57 越前花堂(えちぜんはなんどう)駅(北陸本線/越美北線 福井県)
若者満載のワンマン車、九頭竜線に乗り換え。
友人Sさんが暮らす大野へと続く道。
夏の日に焼かれた花堂の町はくたびれて見えた。
九頭竜線専用ホームへ草の道を通る。
17:27 美山(みやま)駅(越美北線 福井県)
足羽川と絡み合うように進む越美北線。
いつぞやの大雨であの橋が落ちて存続が危ぶまれた。
あの時はオレも心を痛めたよ。
この道を友人Sさんの運転する車で走り、また勝山に入院していた彼に会い行くためにひとりでも走った。
手動で操らなければならない北陸最強ローカル線の道に駅舎はなく、花堂以来駅舎が建つ美山で3分の交換待ち。
運動する女子高生の一団が下り、幼子を連れた出迎えの母親が大声で呼ぶ。
谷間を走っているのだな。
足羽川が姿を消し、左右から山塊が迫ってきた。
そろそろ大野の街が見える頃か。
そして視界が開けた。
平野だ。
18:28 九頭竜湖(くずりゅうこ)駅(越美北線 福井県)
飛騨から恐竜街道に至り、九頭竜湖の脇を抜け辿り着いた終着駅。
あの時の感動を覚えている。
九州へと繋がった壮大ツアー2日目のことだ。
そして大野へ。
駅前の風情に変化はなく、道の駅では屋台が出て森閑とした夕暮れに笑い声が聞こえてくる。
あの湖を抜けて郡上八幡へと至る鉄道ルートが完成していたらと思わざるを得ない。
日常の利用者確保は保証できないが、鉄道マニアのみならず垂涎の路線になったことだろう。
計画の壮大さは県境に立ちはだかるあの山を越えた者なら理解できる。
霧の立つ九頭竜湖駅は深く心に残る終着駅だ。
19:17 越前大野(えちぜんおおの)駅(越美北線 福井県)
北陸の小京都。
名水の街。
金森長近築城のライトアップされた大野城が七間朝市の先に見える。
ごくこじんまりとしているが繁華街も一緒に七間朝市の光の中にあった。
緑濃い名水の街。
あらためて大野を訪ねて美しきたたずまいに心を打たれた。
こざっぱりとした旅館も数軒灯を残している。
友人Sさんの夢はあの大野で店を出すこと。
一緒にBARをやならいかと半分真面目に話したりしてた。
当時の彼女と別れて病を患い東京を去った元サッカー福井県選抜の伊達男。
今も大野にいるのだろう。
彼がいるならまた訪れることもあるだろう。
大野を離れて浮かんできた希望がある。
今すぐ戻って宿をとり、彼に連絡をつけて互いに四十路を辿る今の夢を聞いてみたい。
オレたちはずっとそんな話をしながらやってた。
そう、そんな頃があったんだよ。
20:36 福井(ふくい)駅(北陸本線/越美北線/えちぜん鉄道 福井県)
そうか4年振りになるんだな。
つい最近のことだとも思えたが、それだけの歳月が流れ、オレももう43歳。
そうだった。
いろいろ工事中だったよ。
今はすべてが完成し、見覚えのない商業ビルが建ち、高架駅は床から何からピカピカに磨かれ光を跳ね返していた。
とても美味かった今庄そばの営業は23:30まで。
ひっきりなしに客を迎え、福井駅の夜は遅くなった。
新しい街に着いた心地でわくわくしたよ。
すれ違いにケータイを落とした女性をはじめ越前娘は素敵だった。
恋がしたくなったよ。
この街で。
22:02 美川(みかわ)駅(北陸本線 石川県)
白山市という市制が敷かれたのはいつのことだろう。
友人Sさんを見舞った帰り、あの勝山からの長い道のりを経て辿り着いた海辺がちょうどこの辺りだったのだろう。
手取川沿いの道の駅が懐かしい。
美術館のようなとてもきれいな駅に下りると町があった。
ふれあいモニュメントへの赤い橋を渡る。
不思議な駅を作ったものだが、何らかの町の意思は感じる。
上品な灯で飾った割烹を左手に見て、中央商店街を突き抜けると日本海に出るのだろう。
美川温泉観光ホテル跡のところで引き返して駅への道を再び。
オレンジ色の灯に彩られた町だった。
北陸の夜には明かりがある。
秋田あたりじゃ窓は真っ暗だったよ。
22:37 金沢(かなざわ)駅(北陸本線/七尾線/北陸鉄道 石川県)
金沢に下りると真っ先に思い出すのは20年近く前に焦がれた女性との再会劇。
死ぬまでそのままだろう。
それで構わない。
永遠の古都の外では多くの旅人がベンチで眠り、その脇で夢見るような瞳の女性が酔いでも覚ますように両手にもたれて座っていた。
七尾行に酔客の声が響いている。
22:58 津幡(つばた)駅(北陸本線/七尾線 石川県)
会社の時報と同じメロディが富山行最終の到着を告げた。
能登半島の入口にあたる津幡で多くが下りたが、駅前の灯に町の灯が交じることはなく、寂れた風景は冷たい北陸の季節を思わせた。
今乗り合わせているのはみんな越中人なのだろうか。
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