*

「鉄旅日記」2016年春 初日(東京-下北)その2-村崎野、六原、盛岡、八戸、野辺地、下北(東北本線、IGRいわて銀河鉄道、大湊線) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】

公開日: : 最終更新日:2025/05/29 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年3月19日その2・・・村崎野駅、六原駅、盛岡駅、八戸駅、野辺地駅、下北駅(東北本線、IGRいわて銀河鉄道、大湊線)

16:41 村崎野(むらさきの)駅(東北本線/岩手県)
一ノ関で乗り継ぎ、さらに北へ。

この懐かしさの正体が分かった。
どんな経緯を辿ったかは物語によるが、この町のどこかに「健さん」がいるような気がする。

だだっ広くて何もなく、空だけが広い。
北海道に似た風景を持つここはかつての蝦夷だ。
同じ文化圏になる。

こんな場所にいて寂しさを感じる者もいるだろうが、オレはそうじゃない。
もしも暮らすようなことにでもなれば、「健さん」のように生きることを目指すさ。

シネマ的アメリカ世界はここでも感じることができる。
オレの想像上のアメリカとはマンハッタンや西海岸などではなく、こんな片田舎の風景が広がる場所だったなのだとあらためて気づく。

今年の大統領選挙でトランプ氏は結局負けるんだろ?
彼に面白さを感じているような連中が世界の中心に席を置いたら、かつてはヒスパニック・ヒーローも誕生させたアメリカ最大のプロレス団体WWEは、これからどんなストーリーを世界に発信していくのだろう。

ロングシートの混雑した車内で、酒を飲みながら二人分の席を占めた人相の良くない南部人がいた。
オレは本に目を落としていたから何があったのか知らないが、その男に対して真向かいの旅行中の若者が非難の目を向けたのだろう。

男は食ってかかり大人の恥を臆面もなく見せつける。
若者の対応はなかなか立派だった。

男は降り際に空き缶を投げつけ、降りてからも窓に顔をつけ睨みを効かせていた。

最近思うが、大人が病んでいる。
どうしようもなく病んでいる。
東京じゃ毎日のように人身事故で列車が止まる。

雄大な北上川に感嘆したあとだったから失望は大きかった。

村崎野駅前風景

17:06 六原(ろくはら)駅(東北本線/岩手県)
上り列車に乗って2駅戻る。

がっしりとした雪国駅舎ではストーブが焚かれている。

駅前の集合住宅は米軍キャンプのようでもあり病院にようにも見える。

活気のない生活風景だ。

商店は廃墟になって久しく、駅を降りると懐かしいとも言える鼻につく便所の臭いを嗅いだ。

果てしのない空が地と交わるあたりにカメラを向けた。


盛岡(もりおか)駅(東北新幹線/東北本線/田沢湖線/山田線/IGRいわて銀河鉄道 岩手県)にて
IGRいわて銀河鉄道に乗り継ぐ。

20:22 八戸(はちのへ)駅(東北新幹線/八戸線/青い森鉄道 青森県)
車寅次郎が降り立った頃の旅情が残っているはずもないが、新幹線開業が八戸駅にもたらした作用はオレの気に入るものじゃなかった。

駅として生まれ変わった清潔さは、まるで街が辿ってきた歴史を消す役割を負わされたかのようだ。
駅を出て夜の街を望んだら違和感の理由が分かった。

広大な闇の中に飲み屋やスナックの灯がぽつりぽつりと浮かんでいる。
酒場から演歌が聞こてきそうな街の玄関風景。
でもあれが港町八戸の本来の風景なんだよ。

駅はそんな街に溶けこむことはなく、滑稽なまでに孤高の姿を晒している。

そして愛すべき八戸出身の友人Sさんには申し訳ない表現になるが、すれ違った八戸人の運転態度はどれも好きになれなかった。

21:16 野辺地(のへじ)駅(大湊線/青い森鉄道 青森県)
オレの野辺地の記憶は比較的新しい。
それでも10年以上前にはなる。

世界王者になる前のリック・フレアーが未来の大物としての風格を漂わせて、この町でジャンボ鶴田のUN王座に挑戦したのは38年前。

野辺地は、大正の頃に由来を持つ常夜灯の町だという。
明日、明るい時間にまた降りる。

下北半島を北上する最北列車に揺られている。
車窓には白が目立つ。
本州最北端には雪が残っているんだ。

ただ野辺地に吹いていた風に、刺すような冷たさはなかった。

下北(しもきた)駅(大湊線 青森県)にて

23:06 民宿鈴谷菊の間
方角も分からないような闇の中に雪と時折の町明かり、駅灯が浮かび上がる。

なぜこんな時刻にこんな最果て列車に乗る羽目になっていたのか。
オレにもたまに分からなくなることがある。

まるで割り当てられた義務を遂行するかのように下北駅で降りた。
駅員の迎えはなかった。

古めかしい駅を想像していたが、ロータリーから何から新装を終えていて、もとより闇の中ゆえに探すことは困難だが、廃止されて久しい下北線の跡も最早コンクリートの下だろうと思わせる。

最果ての道は広く、遅い時間にもかかわらず車通りはないわけじゃない。
歩いている人の姿も見かける。

違和感の正体は想像していた情景との誤差に起因している。

ここに特別な風景があるとは思っていなかったが、あってもおかしくない数少ない町だ。

150年の昔に精強を誇った会津士族を哭かせ、霊場恐山の麓町として多分に土俗的な僻地だが、コンビニもマクドナルドもあり、はてはヤマダ電機さえ集う町角があることに安心と失望を感じている。

特別なものがありそうでいて、探し物は見つからない。
海峡に行けば荒々しい風と波がある。
でもほんの少し内陸に入っただけで町は虚構を帯びる。
かつて北海道の根室でも感じた違和感だ。

だからどうしたというわけじゃないが、いつかきっとオレは今感じていることを最適な言葉に置き換えるだろう。
思えば、この違和感は南国にはなかった。

雪国としての調和を欠いた風景。
言ってみれば、青森を旅していていきなりハワイが現れたような。
大袈裟に言えばそういうものをオレは感じている。

関連記事

「車旅日記」2000年夏Part.1 最終日(小千谷-桐生-下妻-東京)道の駅おぢや、塩沢らーめんショップ、月夜野情報サービスセンター、旅の駅桐生、道の駅しもつま、柏市あけぼの2丁目、葛飾金町 【信濃、飛騨、そして能登島。帰りは北陸路。この国の美しさをあらためて感じました夏旅でございます。】

車旅日記2000年7月23日 2000・7・23 2:09 17号国道‐おぢや(道の駅) 都合3時

記事を読む

「車旅日記」2003年晩秋 3日目(伊勢志摩-京都)走行距離239㎞ -大王崎、御座港、鵜方駅、飯高駅、天誅組終焉之地、吉野駅、吉野神宮駅、吉野口駅、京都ホーユウコンフォルト二条城 【紀伊半島に焦がれる日々。南海道を往くのは2度目でございます。】

車旅日記2003年11月24日・・・大王崎、御座港、鵜方駅、飯高駅、天誅組終焉之地、吉野駅、吉野神宮

記事を読む

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(花輪線)/和心の宿姫の湯

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春 2日目(西舞鶴-魚津)その2-南条、今庄、北鯖江、鯖江、大土呂、福井、春江、丸岡、芦原温泉、動橋、石動、小杉、越中大門、魚津(北陸本線) 【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】

鉄旅日記2014年3月22日その2・・・南条駅、今庄駅、北鯖江駅、鯖江駅、大土呂駅、福井駅、春江駅、

記事を読む

2020年如月【水上温泉につかりにいったある週末の記憶をSNSへの投稿より振り返ります。】-土合、水上、後閑、沼田(上越線)

鉄旅日記2020年2月8日~9日・・・土合駅、水上駅、後閑駅、沼田駅(上越線) 水上に投宿する前に

記事を読む

「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その4‐多治見、坂祝、美濃太田(太多線/高山本線)【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】

鉄旅日記2020年3月20日・・・多治見駅、坂祝駅、美濃太田駅(太多線/高山本線) 14:19 多

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その2-釜石、津軽石、宮古、田野畑、堀内(三陸鉄道リアス線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月22日・・・釜石駅、津軽石駅、宮古駅、田野畑駅、堀内駅(三陸鉄道リアス線)

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋 最終日(和田山-東京)その1-和田山、福知山、丹波竹田、石生、篠山口、三田、神鉄三田、宝塚、阪急宝塚、川西池田、川西能勢口、伊丹、阪急伊丹(山陰本線/福知山線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】

鉄旅日記2009年11月23日・・・和田山駅、福知山駅、丹波竹田駅、石生駅、篠山口駅、三田駅、神鉄三

記事を読む

「鉄旅日記」2013年春【青春18きっぷで、関東途中下車旅】その1-赤羽、岡本、烏山、大金、宝積寺、氏家、石橋、自治医大、小金井、小山(東北本線、烏山線)

鉄旅日記2013年3月31日その1・・・赤羽駅、岡本駅、烏山駅、大金駅、宝積寺駅、氏家駅、石橋駅、自

記事を読む

「鉄旅日記」2005年初冬 その2-外川、犬吠、本銚子、観音、仲ノ町、銚子、千葉(銚子電鉄/総武本線) 【鉄旅に目覚め、銚子へと向かったのでございます。】

鉄旅日記2005年12月10日・・・外川駅、犬吠駅、本銚子駅、観音駅、仲ノ町駅、銚子駅、千葉駅(銚子

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その4 ‐鎌倉、久里浜、京急久里浜、衣笠、東逗子(横須賀線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・鎌倉駅、久里浜駅、京急久里浜駅、衣笠

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その3 ‐洋光台、港南台、本郷台、大船、湘南江の島、片瀬江ノ島、江ノ島(根岸線/湘南モノレール) 【金沢シーサイドライン、横須賀線、御殿場線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・洋光台駅、港南台駅、本郷台駅、大船駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その2 ‐八景島、金沢八景、杉田、新杉田(金沢シーサイドライン/京浜急行本線) 【根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・八景島駅、金沢八景駅、杉田駅、新杉田

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その1 ‐金町、桜木町、関内、新杉田(常磐線/京浜東北・根岸線) 【金沢シーサイドライン、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・金町駅、桜木町駅、関内駅、新杉田駅(

「鉄旅日記」2022年如月 最終日(常陸大子-東京)その3 ‐土浦、荒川沖、藤代、柏(常磐線) 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】

鉄旅日記2022年2月6日・・・土浦駅、荒川沖駅、藤代駅、柏駅(常磐

→もっと見る

    PAGE TOP ↑