「鉄旅日記」2008年皐月【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】4日目(徳島-甲浦-徳島-善通寺)その2-海部、桑野、阿南、穴吹、佃、琴平、善通寺(牟岐線/徳島本線/土讃本線)
鉄旅日記2008年5月5日
13:16 海部(かいふ)駅(牟岐線/安佐海岸鉄道 徳島県)にて
14:35 桑野(くわの)駅(牟岐線 徳島県)
甲浦で冷たいビールを飲み、彼女にささやかな土産を購入した。
邪魔にはならないものだ。
きっとそばに置いてくれるだろう。
あたりには銃声のようなものが定期的に聞こえていた。
海部、牟岐と、待ち時間なく乗り継いで、再びの阿南が近い。
若い女性ばかりの巡礼者たちが乗り込んできた以外に、車内に特筆すべき変化はない。
ここで行き違い待ち8分の停車。
雨は上がり、低い山並からは盛んに雲が湧きだしている。
15:11 阿南(あなん)駅(牟岐線 徳島県)
車両連結のために32分の停車。
ビールとハンバーガー2個。
ワルくない。
ほんのわずかでも街に金を落とせてよかった。
駅員さんに聞くと、今日は休みの店が多いとのこと。
つまり観光客相手の街じゃない。
そう言えば最近、新日本プロレスが阿南にやってきたことを思い出した。
徳島で時間があれば、うどんでも食おう。
空が明るくなってきた。
17:56 穴吹(あなぶき)駅(徳島本線 徳島県)
徳島で徳島本線に乗り換える。
清流のような少女が降りていった。
四国一の清流穴吹川、剣峡観光、うだつのついた家並、そして吉野川。
素敵な駅に着いた。
剣山といえば、少年の頃に読んだ本に「剣山の大蛇」とあったのを思い出すが、観光案内板には大蛇の絵が描かれていた。
18時の鐘の音が聞こえた。
もはや空に雨の気配はなく、蝶や燕が乱れ飛んでいる。
徳島ではずいぶん遊んだ。
これから池田まで吉野川に沿う。
そして、ボブ・ディランを聞きながら池田から徳島までの道を走った、かつての夏を思い出す。
18:49 佃(つくだ)駅(徳島本線/土讃本線 徳島県)
無人の廃れた分岐駅で待っている。
にわかに体を冷たくさせる風が吹いてきた。
この風情は孤独な男に似つかわしい。
これから往く方向を眺めている。
琴平行がきた。
20:16 琴平(ことひら)駅(土讃本線 香川県)
別世界にきたような気がする。
陽気な神様がいる町だ。
大正12年建設の三代目駅舎、琴電琴平駅、金倉川の灯にソープランド、神域に入り込んだスナック、浴衣姿の湯治客。
想像していた繁華さはなかったが、まるでおとぎの国に入ったかのようだ。
時間がゆるやかに止まった。
出雲でも伊勢でも感じることのなかった神を身近に思う。
神聖だが、どこか可笑しみのある町だった。
この町の神様と酒を酌み交わしたい。
20:28 善通寺(ぜんつうじ)駅(土讃本線 香川県)にて
22:45 ステーションホテル善通寺507号
四国霊場第七十五番札所、総本山善通寺のある街はとても静かだった。
車通りもなく、金髪少年たちも穏やか。
遥かなる弘法大師に気兼ねをしてか風俗店もない。
わずかにスナックの灯が洩れる。
琴平からはひと駅の距離だが、「こんぴらさん」の町との違いが際立っている。
100年の昔に四国健児が集まった第11師団本部が置かれていたのが、現在の陸上自衛隊基地だったのだろう。
この街への憧れは司馬遼太郎の「坂の上の雲」による。
20年越しの夢が叶った。
最近は甲子園でその姿を見ることはないが、尽誠学園を駅の反対側に見る。
彼等は善通寺からきていたのか。
次に登場する際は応援しよう。
雨は完全に上がり、今は星空の下でこうしている。
厳つい大将がやっている店は信用できる。
居酒屋の酒と料理に満足してホテルに戻り、この旅日記に彼女を登場させるために、「おやすみ」の便りを出す。
やがてすぐに、うれしくさせるような返信を寄越してくれる。
オレのいない東京は中途半端な雨に濡れているとのこと。
そしてこの旅の記憶は彼女へも受け継がれた。
夜の善通寺は神々しく、五重塔はライトアップされている。
弘法大師が何を伝えたのか詳しくは知らないが、数あるありがたい教えの中には、こんなオレでもひとつくらいは実行していることがあるだろう。
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