*

「鉄旅日記」2019年長月 最終日(宮古-東京)その1‐宮古、岩手船越、浪板海岸、吉里吉里(三陸鉄道リアス線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/07 旅話, 旅話 2019年

鉄旅日記2019年9月23日・・・宮古駅、岩手船越駅、浪板海岸駅、吉里吉里駅(三陸鉄道リアス線)

2019・9・23 4:56 宮古(みやこ)駅(山田線/三陸鉄道リアス線 岩手県)
幕末函館戦争の一局面。

新政府軍が持つ装甲艦「甲鉄」を奪い去ろうと、函館を出港した土方歳三をはじめとした旧幕府軍。

紆余曲折の末、旗艦「回天丸」単独で宮古港に進入。
「甲鉄」に接舷して甲板に飛び降りる旧幕府軍は撃たれ、「回天丸」艦長の甲賀源吾もこめこみを撃ち抜かれる。

作戦は失敗。
だが「回天丸」は危地を脱し、函館に帰り着く。

宮古湾海戦を伝えるポスターが街に貼られていた。

列車が走り出せばすぐに海は見えてくるだろうが、駅からは少し距離があるようだ。

そんな距離をあの津波は街中まで侵入してきて、駅前は水浸しになった。
昨夜飲んだ寿司屋で聞いたよ。

その海から恵みをもらった。
肉厚の刺身盛りはホントに美味しかったよ。

夜明け前の駅前は閑散としていた。

食事ができる店は多くなく、思えば宮古駅の「駅そば」は、かつて車旅で立ち寄ったオレのように、鉄道に乗るためにやってきた者以外にも重宝されているのではないかと思う。

三陸宮古は今日も雨。

5:02発の釜石行。
明るくなりだした空の下、海はまだ見えてこない。

5:55 岩手船越(いわてふなこし)駅(三陸鉄道リアス線 岩手県)
回送車両切り離しで12分の停車。

鮭と鯨の村だ。
駅前を写す。

宮古からオレともうひとりの男だけを乗せてここまできた。
途中駅での乗降もなかった。

沿線の中核の町、陸中山田駅前では東日本大震災からの復興が進み、更地にも区画整理が施されていたが、家屋が建つのはいつの日か。
ブルドーザーが点々と置かれる光景に復興はまだ先なのだと思う。

海が見えるとあの日を思い出す。

この駅で女子高生2名が乗客に加わった。

6:10 浪板海岸(なみいたかいがん)駅(三陸鉄道リアス線 岩手県)にて


6:57 吉里吉里(きりきり)駅(三陸鉄道リアス線 岩手県)
浪板海岸駅から歩いてきたよ。
2.9kmとのこと。

あの日、津波は駅まで押し寄せ、ここ大槌町では1,200もの方々が亡くなっている。

海岸は津波と地盤沈下で奥行き50メートルもの砂浜が消えたとある。
その海で、サーファーが雨の中ストレッチをしていた。


あの防波堤が役に立つのか。
津波の到達地点を思い茫茫となる。

天照大神を祀る天照御祖神社にお詣り。

参道を掃く紳士と挨拶を交わす。

「東京からきました。」
「上で祀られていたのは男根ですか?」
「大事なものだからね。笑」

コンビニで酒を調達。
念のため駅の場所を聞く。

答えはあやふやなもの。
駅や列車とは無縁に過ごしている人々。

吉里吉里国は近かった。

井上ひさしさんが書いた「吉里吉里人」。

日本からの分離独立を宣言した吉里吉里国がある日忽然と出現。
世界中に混乱をもたらし、数日のうちに儚く消滅してしまう独立国の悲喜劇。
夢中で読み進んだよ。

実際の吉里吉里国はここではなく、東北本線沿線の宮城岩手県境あたりの平野部が設定されているが、かつて訪ねた際には駅近くのお宅の門灯に「吉里吉里国」の文字を見かけた。

あの道、そしてホームへ上がる階段。
みんな覚えているよ。
2006年の5月だった。

あの階段を何度も登り降りしたものだ。
同じ夜、女川駅でもそうした。
ひとり旅の大切な思い出だ。

当時あった駅舎はあの日の津波で流され、階段は時代を生きた分だけ汚れていた。





海辺で遊んでいた雀や鳥、そしてこの階段。
すべてが愛しい。

列車がくるまで、階段の上からかつてオレがいた場所を眺めていた。

関連記事

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】3日目 金沢を後にして‐その3(R8→北陸道)小矢部、富山駅、有磯海SA

車旅日記1996年5月5日 22:15 8号国道‐小矢部 恋する女よ。 あれからオレはまだ走ってい

記事を読む

「鉄旅日記」2017年秋 その3-腰越、江ノ島、湘南江の島、片瀬江ノ島、新宿(江ノ島電鉄/小田急電鉄江ノ島線)/龍ノ口寺 【湘南へ向かう休日。江ノ電に乗りに行ったのでございます。】

鉄旅日記2017年11月12日・・・腰越駅、江ノ島駅、湘南江の島駅、片瀬江ノ島駅、新宿駅(江ノ島電鉄

記事を読む

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その2 ‐十島、鰍沢口、甲斐住吉、国母、常永(身延線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・十島駅、鰍沢口駅、甲斐住吉駅、国母駅、常永駅(身延線) 1

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 最終日(上田-東京)その1 ‐上田、滋野、長野(しなの鉄道/信越本線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月11日・・・上田駅、滋野駅、長野駅(しなの鉄道/信越本線) 2021・

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 初日(東京-新津)その3‐仙台、北山、葛岡、山形(仙山線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月4日・・・仙台駅、北山駅、葛岡駅、山形駅(仙山線) 12:25 仙台(せんだ

記事を読む

「鉄旅日記」2018年神無月 2日目(越前大野-福井-米原-名古屋-松本)その2-平田、松本、食蔵BASARA(篠ノ井線) 【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】

鉄旅日記2018年10月7日・・・平田駅、松本駅(篠ノ井線) 16:43 平田(ひらた)駅(篠ノ井

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その1-近鉄奈良、新田辺、三山木、JR三山木、狛田、下狛、新祝園、祝園、学園前、学研奈良登美ヶ丘(奈良線/京都線/けいはんな線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・近鉄奈良駅、新田辺駅、三山木駅、JR三山木駅、狛田駅、下狛駅、新祝

記事を読む

「鉄旅日記」2020年盛夏 2日目(防府-肥前鹿島)その2‐厚狭、美祢、長門湯本、長門市(美祢線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月14日・・・厚狭駅、美祢駅、長門湯本駅、長門市駅(美祢線) 7:34&

記事を読む

「鉄旅日記」2019年師走 最終日(酒田-東京)その4‐水上、高崎、籠原(上越線/高崎線) 【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】

鉄旅日記2019年12月8日・・・水上駅、高崎駅、籠原駅(上越線/高崎線) 18:36 水上(みな

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走 2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その3-神島にて・・・八代神社、神島灯台、監的哨、ニワの浜、神島山海荘あじさい 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

鉄旅日記2018年12月23日・・・八代神社、神島灯台、監的哨、ニワの浜、神島山海荘あじさい 14

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その4 ‐関都、猪苗代湖畔、上戸、磐梯熱海(磐越西線)/志田浜~上戸浜/伊東園ホテル磐梯向滝【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・関都駅、猪苗代湖畔駅、上戸駅、磐梯熱

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

→もっと見る

    PAGE TOP ↑