「鉄旅日記」2019年長月 最終日(宮古-東京)その1‐宮古、岩手船越、浪板海岸、吉里吉里(三陸鉄道リアス線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】
鉄旅日記2019年9月23日・・・宮古駅、岩手船越駅、浪板海岸駅、吉里吉里駅(三陸鉄道リアス線)
2019・9・23 4:56 宮古(みやこ)駅(山田線/三陸鉄道リアス線 岩手県)
幕末函館戦争の一局面。
新政府軍が持つ装甲艦「甲鉄」を奪い去ろうと、函館を出港した土方歳三をはじめとした旧幕府軍。
紆余曲折の末、旗艦「回天丸」単独で宮古港に進入。
「甲鉄」に接舷して甲板に飛び降りる旧幕府軍は撃たれ、「回天丸」艦長の甲賀源吾もこめこみを撃ち抜かれる。
作戦は失敗。
だが「回天丸」は危地を脱し、函館に帰り着く。
宮古湾海戦を伝えるポスターが街に貼られていた。
列車が走り出せばすぐに海は見えてくるだろうが、駅からは少し距離があるようだ。
そんな距離をあの津波は街中まで侵入してきて、駅前は水浸しになった。
昨夜飲んだ寿司屋で聞いたよ。
その海から恵みをもらった。
肉厚の刺身盛りはホントに美味しかったよ。
夜明け前の駅前は閑散としていた。
食事ができる店は多くなく、思えば宮古駅の「駅そば」は、かつて車旅で立ち寄ったオレのように、鉄道に乗るためにやってきた者以外にも重宝されているのではないかと思う。
三陸宮古は今日も雨。
5:02発の釜石行。
明るくなりだした空の下、海はまだ見えてこない。

5:55 岩手船越(いわてふなこし)駅(三陸鉄道リアス線 岩手県)
回送車両切り離しで12分の停車。
鮭と鯨の村だ。
駅前を写す。


宮古からオレともうひとりの男だけを乗せてここまできた。
途中駅での乗降もなかった。
沿線の中核の町、陸中山田駅前では東日本大震災からの復興が進み、更地にも区画整理が施されていたが、家屋が建つのはいつの日か。
ブルドーザーが点々と置かれる光景に復興はまだ先なのだと思う。
海が見えるとあの日を思い出す。
この駅で女子高生2名が乗客に加わった。
6:10 浪板海岸(なみいたかいがん)駅(三陸鉄道リアス線 岩手県)にて



6:57 吉里吉里(きりきり)駅(三陸鉄道リアス線 岩手県)
浪板海岸駅から歩いてきたよ。
2.9kmとのこと。
あの日、津波は駅まで押し寄せ、ここ大槌町では1,200もの方々が亡くなっている。
海岸は津波と地盤沈下で奥行き50メートルもの砂浜が消えたとある。
その海で、サーファーが雨の中ストレッチをしていた。



あの防波堤が役に立つのか。
津波の到達地点を思い茫茫となる。


天照大神を祀る天照御祖神社にお詣り。

参道を掃く紳士と挨拶を交わす。
「東京からきました。」
「上で祀られていたのは男根ですか?」
「大事なものだからね。笑」
コンビニで酒を調達。
念のため駅の場所を聞く。
答えはあやふやなもの。
駅や列車とは無縁に過ごしている人々。
吉里吉里国は近かった。

井上ひさしさんが書いた「吉里吉里人」。
日本からの分離独立を宣言した吉里吉里国がある日忽然と出現。
世界中に混乱をもたらし、数日のうちに儚く消滅してしまう独立国の悲喜劇。
夢中で読み進んだよ。
実際の吉里吉里国はここではなく、東北本線沿線の宮城岩手県境あたりの平野部が設定されているが、かつて訪ねた際には駅近くのお宅の門灯に「吉里吉里国」の文字を見かけた。
あの道、そしてホームへ上がる階段。
みんな覚えているよ。
2006年の5月だった。
あの階段を何度も登り降りしたものだ。
同じ夜、女川駅でもそうした。
ひとり旅の大切な思い出だ。
当時あった駅舎はあの日の津波で流され、階段は時代を生きた分だけ汚れていた。






海辺で遊んでいた雀や鳥、そしてこの階段。
すべてが愛しい。
列車がくるまで、階段の上からかつてオレがいた場所を眺めていた。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2014年冬 初日(東京-鬼怒川温泉)-下今市、新藤原、川治湯元、川治温泉、湯西川温泉、龍王峡、鬼怒川公園、新高徳、鬼怒川温泉(東武鬼怒川線/野岩鉄道) 【まるごと日光・鬼怒川 東武フリーパスで、野州旅】
鉄旅日記2014年12月6日・・・下今市駅、新藤原駅、川治湯元駅、川治温泉駅、湯西川温泉駅、龍王峡駅
-
-
「車旅日記」2005年春 初日(松本-富山)走行距離317㎞ その1-新宿駅、松本駅、明科駅、聖高原駅、冠着駅、姨捨駅、篠ノ井駅、川中島駅、飯山駅 【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】
車旅日記2005年4月29日・・・新宿駅、松本駅、明科駅、聖高原駅、冠着駅、姨捨駅、篠ノ井駅、川中島
-
-
「車旅日記」2000年春 2日目(新潟豊栄‐象潟)道の駅豊栄、道の駅神林、瀬波温泉龍泉、道の駅温海、立岩海底温泉、酒田南郊、象潟駅、象潟松籟館 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】
車旅日記2000年5月4日 2000・5・4 8:09 7号国道-豊栄(道の駅) 路上で夜を明かす
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.2 その1-天王台、植田、泉、いわき、富岡(常磐線) 【青春18きっぷ常磐旅。この当時、常磐線は富岡止まりでございます。そしてこの季節、臨時駅の偕楽園駅に列車が止まります。】
鉄旅日記2019年3月10日・・・天王台駅、植田駅、泉駅、いわき駅、富岡駅(常磐線) 2019・3
-
-
「鉄旅日記」2020年弥生 初日(東京-高山)その5‐飛騨金山、下呂、禅昌寺、飛騨萩原、上呂(高山本線) 【富山地方鉄道に乗りにまいりました。太多線、高山本線に乗るのも楽しみにしていたのでございます。】
鉄旅日記2020年3月20日・・・飛騨金山駅、下呂駅、禅昌寺駅、飛騨萩原駅、上呂駅(高山本線) 1
-
-
「車旅日記」1998年夏 最終日(志賀高原湯田中-中込-東京)-湯田中、菅平湖、中込ローソン、竜王駅、道の駅甲斐大和、藤野駅、東京町田【伊那、木曽から志賀高原へ。気乗りのしない旅で選んだ行き先は、初夏の信濃路でございました。】
車旅日記1998年7月20日 1998・7・20 7:25 湯田中‐某クラブ志賀高原 486㎞ こ
-
-
「鉄旅日記」2018年師走 最終日(神島-鳥羽港-伊良湖岬-三河田原-豊橋-東京)その2-中之郷駅、伊勢湾フェリー乗場、道の駅伊良湖クリスタルボルト(伊勢湾フェリー) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】
鉄旅日記2018年12月24日・・・中之郷駅、伊勢湾フェリー乗場、道の駅伊良湖クリスタルボルト(伊勢
-
-
「車旅日記」2004年春 4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その3-稚内サンホテル 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】
車旅日記2004年5月4日・・・稚内サンホテルにて 21:39 稚内サンホテル325号 素敵な部屋
-
-
「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その2 ‐湯檜曽、水上、越後湯沢、六日町(上越線/北越急行ほくほく線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】
鉄旅日記2021年7月10日・・・湯檜曽駅、水上駅、越後湯沢駅、六日町駅(上越線/北越急行ほくほく
-
-
「鉄旅日記」2018年卯月 その3-佐和、友部、下館、騰波ノ江、下妻、石下(常磐線/水戸線/関東鉄道常総線) 【ときわ路パスでめぐる常陸旅でございます。】
鉄旅日記2018年4月25日・・・佐和駅、友部駅、下館駅、騰波ノ江駅、下妻駅、石下駅(常磐線/水戸線
