「鉄旅日記」2013年夏 2日目(徳山-南宮崎)その2-津久見、日代、浅海井、狩生、佐伯、直見、宗太郎、南延岡、南日向、東都農、佐土原、南宮崎(日豊本線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】
鉄旅日記2013年8月11日その2・・・津久見駅、日代駅、浅海井駅、狩生駅、佐伯駅、直見駅、宗太郎駅、南延岡駅、南日向駅、東都農駅、佐土原駅(日豊本線)
15:25 津久見(つくみ)駅(日豊本線 大分県)
そうか。
ここが伊勢正三さんの「なごり雪」の街だったか。
オレが子供の頃、この街から甲子園に行った少年たちがいて、彼らは確か歴史的な名勝負を残してその夏を終えた。
それ以前には確か全国制覇もしているはずだ。
以来、その遺伝子を甲子園で見る機会はなくなってしまった。
海沿いの工業の街で、駅を出ると左手に昭和通りというささやかな商店街が伸びていた。
列車に乗って、街を通り過ぎる。
水辺にステキな野球場があった。

15:50 日代(ひしろ)駅(日豊本線 大分県)
漁港の町。
突堤に行って海を眺めることの他にやることがあるとすれば、こうしてただ汗を流していることだけだ。
しかし蝉時雨とはよく言ったものだ。
こんな夏をオレは欲していた。
ヒグラシの声が聞こえなくなった東京では、夕暮れ近くなっても一向に涼しくならなくなった東京では、もう二度と味わえないであろう夏。
一体世界は何に巻き込まれ、そして知らず知らずのうちにこのオレに一体何が起きて、こんなふうにかつての夏を懐かしむようなことをしているのだろうか。


16:22 浅海井(あざむい)駅(日豊本線 大分県)
小さな入江で海水浴を楽しんだ人々が引き上げにかかる頃、オレはこの駅に降りた。
大分延岡間は完全なる未踏の地で初めて足を踏み入れている。
しばらく海が付き合ってくれそうだ。
このあたりは日が傾いてくると涼しくなる。
だからかつての夏を感じることができる。
山林に覆われている日本の本来の夏がここにはある。
そんな風景の中で気づけば微笑んでいる。


16:44 狩生(かりう)駅(日豊本線 大分県)
豊後の国は美男美女が多い。
水田の緑がまぶしい県道沿いの駅に降りた。
乗降客はなく、若者の集団が青春を謳歌している。
暗い時代と言うが、実際に暗い時代だが、彼等の元気で清潔な姿を見ると安心する。
若者とはそういった存在でもあるらしい。
それにお洒落だ。
大丈夫だよ。
オレも常に不安を抱え、まれに何の不安もない状態がやってくると、かえって不安が増幅するという不合理も抱えながら人生を重ねているけど、40歳を過ぎてから所帯を持てて、こうしてどうにかやっていられるんだ。
大丈夫だよ。


17:10 佐伯(さいき)駅(日豊本線 大分県)
1983年に全日本プロレスの「世界最強タッグ決定リーグ戦」がやってきて、やがて常盤貴子さんをマドンナに据えた「釣りバカ日誌」がやってきた魚の美味い街。
大相撲の嘉風関の出身地でもあるようだ。
市の中心部は駅から離れていて、駅前に繁華街は見られない。
待合室では高校野球を放送している。
宇佐、大曲・・・。
そんな一コマから思い出す街の記憶がある。
それはやっぱりステキなことだ。
今夏の大分県代表はどこの高校だったかな。

17:29 直見(なおみ)駅(日豊本線 大分県)
数分の停車。
駅舎かと思えば便所だった。
日向との県境に向けて山間を登るディーゼル音が時に響く。
大分は今も戦国時代を生きた大友宗麟の国で、臼杵城址、津久見駅前で彼の銅像が見られた。
豊後の覇王で、キリシタン大名としてヨーロッパに使節を派遣した殿様だが、やがて南からの薩軍に地位を脅かされ、豊臣秀吉に助けを乞うに至る。
彼に継ぐ男が見当たらなかったことが、大分の今の地位に大きく影響を与えているのかもしれない。


18:05 宗太郎(そうたろう)駅(日豊本線 大分県)
数分の停車。
ここにも駅舎はない。
跨線橋を上りきったところで蜘蛛の巣にまともに顔から突っ込んでしまい、駅前のお宅で山の水をお借りして洗い落とした。
何とも言えない体験だ。
何を記念したのか今となっては不明の石碑が跨線橋の脇に立ち、列車を降りて聞こえたのはヒグラシの声。
低い場所にはせせらぎのある深い山の中にいる。


18:50 南延岡(みなみのべおか)駅(日豊本線 宮崎県)
夏の甲子園の宮崎代表は延岡学園か。
がんばれっ。
佐伯延岡間は午後の運行がない閑散区間。
悪いがタイクツしてしまった。
延岡の街に出て風景が開けた。
当り前だが、ひとつ手前の延岡駅では高千穂鉄道の駅は撤去され、線路は剥がされていた。
かつて訪れた際はまだ動いていたんだよ。
延岡には1980年に全日本プロレス「世界最強タッグ決定リーグ戦」がやってきて夢の対決が実現して以来、興行は打たれていない。
オレの家にある九州地図はこの街で手に入れたものだ。
ここ南延岡には2軒の旅館と寿司屋、大鉄道基地があった。
昼の熱気はすでに収まっている。

19:22 南日向(みなみひゅうが)駅(日豊本線 宮崎県)
数分の停車。
跨線橋から海が見える。
夜の帳が降りた日向の街に現代的な機能性を持たされた鉄筋の駅舎がポツネンと光っている。
閉ざされた部屋には清掃用具が雑然と置かれていた。
線香花火の先っぽのような真赤な太陽が延岡に落ちてからしばらく経つ。
外は涼しくなり、車窓はたんなる闇になった。

19:38 東都農(ひがしつの)駅(日豊本線 宮崎県)
数分の停車。
闇に包まれた秘境駅。
行き違いの上り列車を待つ、足のきれいな女性がひとり読書に耽っている。
リニアの実験場跡が闇の中に微かに白く、そして忘れられた物として存在し続けている。

20:33 佐土原(さどわら)駅(日豊本線 宮崎県)
この駅にはかつて車で寄ったことがある。
そしてここが今日の旅の終わりの地になる。
鹿児島からやってきた好漢に声をかけられる。
青春18きっぷを持つ似たもの同士だ。
これが鉄道旅というものか。
お互いの旅の無事を祈って別れる。
幕末佐土原藩は小藩ながら存在感を示して各地を転戦し、この町の球児は甲子園にも何度か顔を見せている。
10号国道は流れ、ホテルや旅館が充実した町だが、残念なことに駅前に酒を売る店はなかった。

22:38 南宮崎レマンホテル
南宮崎駅からレマンホテルは遠かった。
結果随分街を歩くことができた。
高い椰子の木が聳え、広い通りを歩くと大きな街にいる実感が湧いてきたが、ラーメンに焦がれていたオレを招く店は見当たらず、今はホテルの鏡で日焼けした顔を眺めている。
元お得意先のHさんは元気でいるだろうか?
彼女は市内の出身なんだ。
顔を見なくなって1年以上が経過している。
次に会える機会が訪れることはもはや期待していない。
ともあれ、こうしてここ宮崎でも、この地に縁を持つ、かつては身近だった人を思い出すことができる。
この国を旅する幸せをそんなことにも感じている。
ところで、オレの田舎から出来てきた長野県代表の上田西高校は負けたのか。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2009年秋 5日目(松浦-若松)その2-宇美、西戸崎、香椎、福間、赤間、折尾、若松(鹿児島本線/香椎線/筑豊本線) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】
鉄旅日記2009年9月22日・・・宇美駅、西戸崎駅、香椎駅、福間駅、赤間駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本
-
-
「鉄旅日記」2019年霜月 初日(東京-五所川原)その1‐金町、北千住、上野、宇都宮、黒磯、新白河(常磐線/東北本線) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】
鉄旅日記2019年11月2日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、宇都宮駅、黒磯駅、新白河駅(常磐線/東北
-
-
「鉄旅日記」2009年秋 3日目(大分-佐賀)その1-大分、中判田、豊後竹田、宮地、肥後大津、水前寺、辛島町、熊電上熊本、上熊本(豊肥本線/熊本市電) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】
鉄旅日記2009年9月20日・・・大分駅、中判田駅、豊後竹田駅、宮地駅、肥後大津駅、水前寺駅、辛島町
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 初日(東京-紀伊田辺)その2-滝原、三野瀬、尾鷲、宇久井、田並(紀勢本線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】
鉄旅日記2019年3月2日・・・滝原駅、三野瀬駅、尾鷲駅、宇久井駅、田並駅(紀勢本線) 14:14
-
-
「鉄旅日記」2020年如月 初日(東京-大船渡)その5‐奇跡の一本松、陸前高田、大船渡(大船渡線)/居酒屋膳/やきとり香善 【東日本大震災で被害を受けた大船渡に泊まりにまいりました。山田線完全乗車も目指しておりましたが・・。】
鉄旅日記2020年2月22日・・・奇跡の一本松駅、陸前高田駅、大船渡駅(大船渡線)/居酒屋膳/やきと
-
-
「車旅日記」2003年夏 2日目(札幌-北見)走行距離431㎞ -岩見沢駅、砂川駅、旭川駅、白滝PA、遠軽駅、サロマ湖、網走刑務所、網走駅、北見東急イン 【北海道初上陸。2,300㎞を移動した5日間の記録でございます。】
鉄旅日記2003年8月14日・・・岩見沢駅、砂川駅、旭川駅、白滝PA、遠軽駅、サロマ湖、網走刑務所、
-
-
「鉄旅日記」2016年夏 2日目(弘前-小樽)その2-赤井川、姫川、東森、渡島砂原、森、野田生、山越、八雲、長万部、ニセコ、小樽(函館本線/渡島砂原支線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】
鉄旅日記2016年8月11日・・・赤井川駅、姫川駅、東森駅、渡島砂原駅、森駅、野田生駅、山越駅、八雲
-
-
「鉄旅日記」2014年春 2日目(西舞鶴-魚津)その1-西舞鶴、東舞鶴、若狭高浜、小浜、上中、十村、木ノ本、余呉、高月、永原、敦賀(舞鶴線/小浜線/北陸本線/湖西線) 【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】
鉄旅日記2014年3月22日その1・・・西舞鶴駅、東舞鶴駅、若狭高浜駅、小浜駅、上中駅、十村駅、木ノ
-
-
「鉄旅日記」2018年如月 最終日(直江津-六日町-大前-東京)その3-金島、中之条、川原湯温泉、大前、羽根尾、高崎問屋町(吾妻線) 【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】
鉄旅日記2018年2月11日・・・金島駅、中之条駅、川原湯温泉駅、大前駅、羽根尾駅、高崎問屋町駅(吾
-
-
「鉄旅日記」2022年新春 最終日(三沢-東京)その2 ‐一ノ関、松山町、鹿島台、仙台(東北本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】
鉄旅日記2022年1月10日・・・一ノ関駅、松山町駅、鹿島台駅、仙台駅(東北本線) 11:5
