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「鉄旅日記」2014年冬【フリー切符で行く、両毛ローカル旅】最終日(桐生-東京)-間藤、足尾、通洞、神戸、水沼、大間々、相老、桐生、西桐生、新里、膳、大胡、江木、中央前橋、治良門橋、三枚橋、太田(わたらせ渓谷鐵道/上毛電鉄/東武伊勢崎線)

公開日: : 最終更新日:2020/09/03 旅話 2014年

鉄旅日記2014年12月29日
2014・12・29 9:16 間藤(まとう)駅(わたらせ渓谷鐵道 栃木県)
桐生からわたらせ渓谷鐵道に乗り、足尾銅山の果てへの再訪。
前回は寒い9月だった。
当時、駅舎内で手工業に従事していた人々の姿は見えない。

終点間藤駅は教会のような駅舎だった。
今、冷たい雪が降っている。

閉山した山へと向かう車、そして下りてくる車が時折人工的な音をもたらす。
カモシカが下りてくる町だが、彼らは眠っていて春まで起きない。

9:34 足尾(あしお)駅(わたらせ渓谷鐵道 栃木県)
寒い場所だ。

昭和の赤いポストが迎えてくれた駅で、かつて旅先のポストに用があった時代を思い出した。
時代の変化は早く、やがて手紙からメールへと想いを伝える手段は変わったが、とてもおかしな話だが、大切なメールは駅という場所から送ってきた。
長浜で。
そして観音寺で。
節目や自分の中でケジメをつける場所は、最近じゃずっと駅だった。

外は雪でとても寒いが、人々が活動する音が聞こえる。
厳しい環境の中で生き続けていく者たちが発する音が聞こえる。

足尾銅山の閉山により忘れられたような地域だが、この国で教育を受けた者は、必ず一度は近代に入ってから足尾で何があったのかを教わる。
渡良瀬川に染み込んだ毒はなかなか消えないと、確かな筋からではないかもしれないが聞いたことがある。
鉄道はそんな山深い地域に対して渓谷鉄道を謳い、日々僅かな乗客との付き合いを繰り返している。

靄が立ち込める山々を見てひとつ伸びをする。

足尾~通洞間(徒歩)


10:34 通洞(つうどう)駅(わたらせ渓谷鐵道 栃木県)
足尾の中心地通洞地区のことは以前から気になっていた。
行かなきゃいけないと思いながら生きてきた。

足尾駅から国道に沿って歩いてきた。
今や300人ほどの人口しか持たない風化した町で、寺や教会が町の歴史を伝え、打ち捨てられた商店が衰退を伝える。

人が訪れることのない冬だが、銅山観光は客引きアナウンスのスイッチを入れたままで、人気のない薄ら寒い町に足尾銅山の歴史をとつとつと伝える女性の声が聞こえてくる。

リュックに酒が入っている。
駅横の公園で開けて、ぼんやりと景色を眺めている。

ここに暮らす人々を想うことはできないし、そうすることにたいした意味があるとは思わない。
ただ、歴史に翻弄され打ちひしがれた町があったことを知って、何かの機会に訪ねてみるのは悪くない。
毒に冒された山には本物の緑が戻らず、そのことに対して声を上げる人々が貼ったポスターを見た。

崇高な願いだと思う。
そしてその事実を知ったことには大きな意味がある。

そんなことを考えた雪降る足尾。
目の前には雪だるまの飾り物がぶら下がっている。

11:34 神戸(ごうど)駅(わたらせ渓谷鐵道 群馬県)
数分の停車。
誰もいない駅舎にはとてもいい香りが漂っていた。

小さな猿の群れが線路に出ていた。
接近するまで正体は分からず、オレは狸かと思っていた。
御影石が雪化粧した様は渓谷美と相まって美しい。

この車両には「わたらせ渓谷鐵道」の社長が乗り込んでいる。
牧歌的ななりをした普通のおじさんだった。

この駅に併設されている列車のレストラン「清流」は仕事納めを済ませて謹賀新年の札が貼られ、人の姿は消えていた。

駅前旅館があったけど、おそらくもう営業はしていないと思われる。

11:59 水沼(みずぬま)駅(わたらせ渓谷鐵道 群馬県)
数分の停車。
駅の温泉を求めて多くの人々が集まってくる。
施設はとても清潔そうで十分な時間をとってさえいれば、是非オレも浸かりたい。

ああ、ここだったのだな。
各地からライダーが集まってくる渓谷の保養地は。
以前に隣接する街道を車で通った時にそんな場所があったことを覚えていた。
近くにダムもあった筈だが、古い記憶だからアテにはならない。

駅前食堂の窓には布団やら何やらたくさんの物が詰め込まれゴミ屋敷のようになっていた。

12:22 大間々(おおまま)駅(わたらせ渓谷鐵道 群馬県)
数分の停車。
「わたらせ渓谷鐵道」の本社が置かれた駅だった。
かつて社員旅行で乗ったトロッコ列車ではここで降ろされたし、駅には様々な客車が止まっていた。

沿線の駅を描いた絵葉書を買い求めた。
足尾での時間がとても貴重なものに思えたから記念品が欲しくなった。

駅前のローソンが見えた時、ようやく町に下りてきたことを知った。

12:32 相老(あいおい)駅(わたらせ渓谷鐵道/東武桐生線 群馬県)
数分の停車。

複数の鉄路が交差する桐生市内に下りてはきたものの駅前には何もなく、ブラジル人の声が多く聞こえる。

この秋に小山で、停車している列車の行き先をオレに尋ねてきた、同じくブラジル人と思われる少女たちは、伊勢崎に行くと言っていた。
生憎その列車はここ桐生までしかいかないのだと伝えたら、ひどくがっかりしていた。
そんな光景を思い出した。
彼女たちはあれから次のが発車するまで30分ほど待たなきゃいけなかった。

桐生(きりゅう)駅(両毛線/わたらせ渓谷鐵道 群馬県)にて

13:12 西桐生(にしきりゅう)駅(上毛電鉄 群馬県)
停車場で列車を待つにはこんな場所がいい。
始発駅でもあり、終着駅でもある開放感のある待合室には開業当初からのものと思われる運賃表が掲げられ、驚きのため息を漏らす。
レトロ好きなオレだから言うわけじゃないが、ここ西桐生駅はドラマの舞台になる。
例えば地元ローカルの番組とかで、あるいはすでにそんな機会も持ったのではないだろうか。

土日祝日は列車内への自転車の持ち込みが認められていて、地元利用者の反応も良さそうだ。

オレが駅に入っていた時は食事中だった切符切りのおねえさんの愛想はとても良かった。
地元から愛されている鉄道を初めて見る思いでいる。

新里(にいさと)駅(上毛電鉄 群馬県)にて

13:58 膳(ぜん)駅(上毛電鉄 群馬県)
強烈な肥料の臭いが鼻を突いた新里駅。
そこからひと駅を歩く。
車通りの多い県道で咳ばかりしていた。

干した大根がぶら下がった農家、雑草の生えた集合住宅、一斉取り壊しの憂き目を見た旧家、登りつけなかった膳城跡。
そんな道程だった。

戦国時代には武田氏、上杉氏、北条氏の武力がぶつかり合う地域で、途中で見かけた案内板には、膳城を巡る攻防戦にしばしば武田勝頼の名前が登場するようだった。

赤城南麓の空に青が戻った。

大胡(おおご)駅(上毛電鉄 群馬県)にて

大胡~江木間(徒歩)

14:55 江木(えぎ)駅(上毛電鉄 群馬県)
大胡は町だった。
またひと駅の距離を歩く。

赤城山に麓に日差しが戻り、多く車が行き交う。
街道沿いの商店では迫り来る新年を祝う準備に余念はなく、そば屋が多く目についた。
道中で赤城山のいい写真は撮れなかったが、時代劇のロケに使われそうな古い祠が印象深い。

幸せな気持ちでいよいよ江木駅に近づいたら踏切が鳴り出した。
大急ぎで走って、どうにか列車に乗り遅れずに済んだ。

そして車中、赤城山はかつての豪傑の名を冠した上泉駅の手前でその全貌を現した。

15:14 中央前橋(ちゅうおうまえばし)駅(上毛電鉄 群馬県)
終着駅に着いた。

過去に一度だけ歩いたことのある前橋は意外にも大きく感じた。
脇を流れる小川のことは覚えていて、駅は記憶よりもまた大きかった。

前橋の都市としての顔を見た今回の旅。
10分程度で折り返しの列車に乗らなきゃならないのが惜しい。

正月にはまたこの街で最高峰の駅伝大会が開催される。

車窓から見る赤城山

治良門橋(じろえんばし)駅(東武桐生線 群馬県)にて
上毛電鉄で赤城駅まで引き返し、東武桐生線に乗り換える。

17:02 三枚橋(さんまいばし)駅(東武桐生線 群馬県)
暗くなってきた治良門橋で降りて、駅前では気づかずに猫の集団を蹴散らして南へひと駅歩くこと30分。
蛇川の名を道路標示に見かけたが治良門橋、三枚橋と二駅続けて橋の名がついているのに川がない。
まさか開発で埋められたわけじゃあるまいし解せない。
治良門橋に近づく頃に駅脇を流れていた川に架かっていた橋の名だろうか。
ここで耳をすましたら、せせらぎの音を聞いた気がしたけれど。

たこ焼き酒場が一軒光を灯す三枚橋駅前はすっかり暮れている。
歩いてきた県道では「おっ、こんなところに」と思わせる店をいくつか見かけた。

17:27 太田(おおた)駅(東武伊勢崎線/東武桐生線 群馬県)
時間があったからビールを飲みに降りてみる。
北口も南口も明かりは少なく、地域FMのDJがオンエアで喋っている。
きれいな女性だ。
その彼女の声はごく控えめに構内に流れている。

さして寒さを感じずに済む喫煙所で、夜の訪れと共にライトに浮かび上がる駅前の新田義貞像を眺めていた。

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