*

「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-松本)その3 ‐小淵沢、甲斐大泉、中込、三岡、小諸(小海線) 【週末パスで信濃へ。妙高高原駅で引き返し、松本の友人を訪ね、大糸線を旅して思い出の白馬へ。先の旅から一週間後のことでございました。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/03 旅話, 旅話 2021年

鉄旅日記2021年4月24日・・・小淵沢駅、甲斐大泉駅、中込駅、三岡駅、小諸駅(小海線)

10:05 小淵沢(こぶちざわ)駅(中央本線/小海線 山梨県)

2年前に降りた際は時間がなく、変貌した駅舎への失望を記したはずだ。以前の日本家屋風のこじんまりとした駅舎への郷愁は相当なものだった。

24分の猶予がある今日。展望台に上がり富士山、南アルプス、八ヶ岳。

下りれば駅舎を写せる場所を探した。

今夜会う友へは信玄餅を購入し、小諸までの酒は2本。1本は出発前に飲んじゃった。

ハイカラな駅舎内で「駅そば」の湯気が上がっていた。この鉄道文化を手放さなかった小淵沢駅を称える。うん、なかなか素敵な駅舎だよ。

小諸に向けて発車した八ヶ岳高原線は、八ヶ岳の周囲を衛星のように回り、やがて離れた。

10:26 甲斐大泉(かいおおいずみ)駅(小海線 山梨県)

 列車行き違い4分の停車。高原駅に相応しい駅舎に感嘆して、高原へ下りていく坂道を見下ろす。

盆地の底のような土地柄の多い山梨県内では屈指の景観と言える。そして春の風景を写す。

列車は動きだし、清里やがて野辺山。帰る家が家庭だった頃に降りて、味わい深い時を過ごした冬の夜を思い出している。

今の家というか部屋では、名前のついた2鉢と一緒に暮らしている。

11:51 中込(なかごみ)駅(小海線 長野県)

あれからまたたっぷりと眠りに落ちる。「春眠暁を覚えず」の諺とおり、春の眠りには魔法がかかる。

沿線の中核中込。駅前の風情に変化はなく、賑わいを感じさせ、列車を求めて走る姿もある。

この国にはまだこんな町があるのかと感嘆した15年前。当時は知らない町の方が多かった。

あれから様々を経験して、また同じように同じ駅に降りる。旅は時空を越える。

右手には、活火山としての存在を桜島と共に定期的に訴えてくる浅間山の荒々しい姿が見えている。

12:12 三岡(みつおか)駅(小海線 長野県)

 列車行き違い3分の停車。2年前にもこうして降りている。だから今日はいいかと思いはした。

でも前回は冬。今は春。駅前は小さな花園だった。

発車した列車はしばらくして、しなの鉄道に沿う。

12:53 小諸(こもろ)駅(小海線/しなの鉄道 長野県)

 「千曲川旅情の歌」を詠んだ明治の文豪、島崎藤村旧宅を境に引き返す。街を歩ける時間を持てたことがうれしい

オレの血はここにある。道理のつかないこの街への思いはそう理解するより他にない。

そして駅を写し、愛すべき駅前を写す。何度でも写すよ。

この街出身の漫画家、故小山田いくさんの「すくらっぷ・ブック」を夢中になって読んだ10代前半。作品にも描かれた小諸駅に、当時やもっと幼い時代にここにいた記憶を探す。

街並に惹かれ、土産物屋のおかみさんのご親切に打たれ、酒屋のご夫婦の素朴さにもまた打たれ、今はあたたかな列車で心まであたたまって酒を飲んでいる。

過去を思えば尽きねど、小諸とは未来も共にいく。近々親戚筋になにか祝いでもあればいいけれど。

もとより36分の滞在など人生を思えばないに等しいが、記憶の回路は時空の流れに比例しない。

今日また愛すべき記憶が加わった。

関連記事

「鉄旅日記」2018年弥生 最終日(会津若松-新潟-吉田-三条-東京)その2-新潟、白山、内野、巻、吉田、燕(越後線/弥彦線) 【青春18きっぷを握り、目指したのはまたしても会津。練馬から旅立つ最後の旅でございます。】

鉄旅日記2018年3月4日・・・新潟駅、白山駅、内野駅、巻駅、吉田駅、燕駅(越後線/弥彦線) 11

記事を読む

「鉄旅日記」2018年秋 初日(松戸-流山-潮来-銚子-東金-松戸)その3-笹川、外川、犬吠、犬吠埼、銚子、椎柴、松岸(成田線/銚子電鉄)【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】

鉄旅日記2018年9月22日・・・笹川駅、外川駅、犬吠駅、銚子駅、椎柴駅、松岸駅(成田線/銚子電鉄)

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その3-陸中野田、久慈、陸中八木、八戸(三陸鉄道リアス線/八戸線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月22日・・・陸中野田駅、久慈駅、陸中八木駅、八戸駅(三陸鉄道リアス線/八戸線)

記事を読む

「鉄旅日記」2017年冬 最終日(喜多方-東京)その1-会津若松、笈川、堂島、喜多方、会津若松(磐越西線) 【会津へ。会津へ行きたかったのでございます。】

鉄旅日記2017年12月3日・・・会津若松駅、笈川駅、堂島駅、喜多方駅(磐越西線) 2017・12

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その1 ‐金町、上野、高崎、水上(常磐線/高崎線/上越線) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月10日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、水上駅(常磐線/高崎線/上越線)

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 初日その3(東京-岩倉)-太田川、常滑、中部国際空港、上小田井、西春、岩倉(名鉄常滑線/名鉄空港線/名鉄犬山線) 【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】

鉄旅日記2015年3月7日その3・・・太田川駅、常滑駅、中部国際空港駅、上小田井駅、西春駅、岩倉駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月 初日(東京-天王寺)-東京、名古屋、大垣、米原、草津、柘植、京都、木津、京橋、天王寺(東海道新幹線/東海道本線/草津線/奈良線/学研都市線/大阪環状線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】

鉄旅日記2007年2月10日・・・東京駅、名古屋駅、大垣駅、米原駅、草津駅、柘植駅、京都駅、木津駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏 3日目(姫路-十三)その2-新開地、湊川、鈴蘭台、三木上の丸、三木城址、三木、粟生、神鉄三田、ウッディタウン中央、横山、有馬口、有馬温泉、鵯越(神戸電鉄有馬線/粟生線/三田線/公園都市線) 【私鉄王国で過ごす夏】

鉄旅日記2017年8月13日・・・新開地駅、湊川駅、鈴蘭台駅、三木上の丸駅、三木駅、粟生駅、神鉄三田

記事を読む

「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その4 ‐長野、御代田、小諸、上田(信越本線/しなの鉄道) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】

鉄旅日記2021年7月10日・・・長野駅、御代田駅、小諸駅、上田駅(信越本線/しなの鉄道)

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 最終日その3(岩倉-東京)-津島、須ヶ口、神宮前、豊明、岡崎公園前、中岡崎、東岡崎、国府、豊川稲荷、豊川(名鉄津島線/名鉄本線/名鉄豊川線) 【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】

鉄旅日記2015年3月8日その3・・・津島駅、須ヶ口駅、神宮前駅、豊明駅、岡崎公園前駅、中岡崎駅、東

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 2日目(焼津-静岡)その1 ‐焼津、金谷、千頭、井川(東海道本線/大井川鐡道本線/大井川鐡道井川線)/焼津温泉やいづマリンパレス 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月20日・・・焼津駅、金谷駅、千頭駅、井川駅(東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その4 ‐アプトいちしろ、川根小山、千頭、金谷、焼津(大井川鐡道井川線/大井川鐡道本線/東海道本線)/焼津温泉やいづマリンパレス 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・アプトいちしろ駅、川根小山駅、千頭

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その3 ‐新金谷、千頭、アプトいちしろ、長島ダム(大井川鐡道本線/大井川鐡道井川線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・新金谷駅、千頭駅、アプトいちしろ駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その2 ‐静岡、金谷、新金谷、代官町、日切、合格、門出(東海道本線/大井川鐡道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・静岡駅、金谷駅、新金谷駅、代官町駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その1 ‐金町、東京、三島(常磐線/東海道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・金町駅/東京駅/三島駅(常磐線/東

→もっと見る

    PAGE TOP ↑