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「鉄旅日記」2011年秋【再びみちのくひとり旅】最終日(長井-東京)-長井、荒砥、赤湯、羽前千歳、作並、東照宮、槻木、角田、福島、飯坂温泉、本宮、宇都宮、雀宮(山形鉄道/仙山線/阿武隈急行/福島交通飯坂線/東北本線)

公開日: : 最終更新日:2018/12/31 旅話 * 結婚後2011年

冒険家志望のあなたへ【1話】

 

鉄旅日記2011年11月6日
2011・11・6 7:35 長井(ながい)駅(山形鉄道 山形県)
自動扉が設置されている長井駅。そうだったよ。昨夜はほんの少しだけびっくりした。
文化遺産のような長井小学校の木造校舎、広大な河川敷を従え流れる最上川。通りで目が合えば挨拶を交わす。そんな日本のよき文化を残した街だ。あやめ公園は城跡なんだろう。素敵な日本庭園に紅葉が映える。脇の河原で市民が憩う姿はきっと微笑ましい。「とらや旅館」の女将さんが今日はイベントだと言ってチラシを見せてくれた。幸いにして雨は上がっている。

8:08 荒砥(あらと)駅(山形鉄道 山形県)
かつて夜闇の中で到着した終着駅。あたりに目を引くものはなかったからよく覚えている。きれいな駅舎だ。最上川と共に生き、同じ生き方をする左沢までの延伸が悲願だったと知った。昨日あるいはそうじゃないかと思ったんだ。
蚕桑駅に干し柿が吊られている様をどこか別世界の風景のように見ていた。オレは今そんなところを旅しているけど、戦争もどこかで起きている。なんてさ。
かつて国道から眺めた長井方面の灯を思い出している。そして長井に戻っている。

9:25 赤湯(あかゆ)駅(山形新幹線/奥羽本線/山形鉄道 山形県)
適度に暖房の効いた車内で眠りに落ちる。素晴らしい眠りだった。最近じゃ記憶にない。
赤湯駅前の木々は十分に紅かった。山形鉄道側もJR側も駅前に見るべきものはない。この駅に新幹線が停車するということが冗談ではないかと思えるが、秋田と山形を走っているのは新幹線というより在来線の線路を走る特急なんだと思えば納得がいく。
米沢盆地を離れていく絶景を眺めながら、とりとめのないことを思っている。

10:40 羽前千歳(うぜんちとせ)駅(奥羽本線/仙山線 山形県)
山形で降りて、また2つ先の駅へ。ここで奥羽本線と仙山線は分かれる。ビッグウイングや総合スポーツセンターへ誘う表示があるが、そこへ行くのにどんな手段があるというのだろうか。味のある駅を期待していたけど、跨線橋しかない冷たい造りで、当然のように駅前には1軒の商店もない。

11:22 作並(さくなみ)駅(仙山線 宮城県)
仙山線の車窓風景は素晴らしかった。山寺、面白山高原、奥新川と見事な紅葉と渓谷美を楽しませてくれた。
ここ作並には寄ったことがある。大型観光バスが入口を塞ぐように止まり、山小屋風の駅舎にはあたたかな灯が点っている。旅館の番頭が出迎え、仙台からやってきたたくさんの乗客が下りた。そう言えばあの時も駅前はあまり長くいられるような雰囲気じゃなかった。有名な温泉場で、きっといつ降りても駅前には変わらぬ光景が待っているだろう。それでいいんだ。

北仙台(きたせんだい)駅(仙山線 宮城県)にて

12:19 東照宮(とうしょうぐう)駅(仙山線 宮城県)
北仙台から伊達家東照宮へ。タバコの吸殻を持って歩いていたら老人に一喝された。オレの言い訳は見苦しかったけど、火はきちんと消していたんだよ。
仙台の隣駅にしては簡素な造りかつ重要文化財以外には何もない駅前に呆然としたけど、東照宮あたりの雅な雰囲気は心を打った。
北仙台からはかつて私鉄が走っていたという。通行量の多い通りに面した賑やかな駅前風景だった。
さて、仙台に到着して発車を待っている。雨は止まないが今日も傘はいらない。仙台は人が多いな。幕末仙台兵が新政府軍相手にどこまでやったのか。知らなかった歴史を「会津士魂」で読み進んでいる。

13:05 槻木(つきのき)駅(東北本線/阿武隈急行 宮城県)
阿武隈急行に乗り換え。
槻木駅前を通ったのは何年前になるのか。賑やかな駅だったという印象を持ったが、当時感じた通行量はなく、寂れた商店街が駅から曲線を描いて伸びていた。

14:00 角田(かくだ)駅(阿武隈急行 宮城県)
おもちゃのちゃちゃの時報。このメロディーを聞くのはいつ以来だろう。東北100選駅だけど駅前風景に特筆すべきものはない。ここじゃ県議会選挙の発声も聞こえない。外は本降りの雨。たいして美味くはなかったが、駅そばがあってよかった。阿武隈急行沿線はこの天気じゃどこに行っても暗く沈んで見えるだろう。仕方がないよな。
何やらロケットに関係している街で近くに実物大の模型が置かれているらしい。

15:25 福島(ふくしま)駅(東北新幹線/山形新幹線/東北本線/奥羽本線/阿武隈急行/福島交通飯坂線 福島県)
福島交通に乗り換える。
阿武隈川に沿うあたりの車窓風景は秀逸だった。丸森あるいは阿武隈で降りればよかったと後悔している。そしてこれから最後の路線に入る。大丈夫。福島は元気だ。

16:07 飯坂温泉(いいざかおんせん)駅(福島交通飯坂線 福島県)
十綱の渡しを眺めている。十綱橋はライトアップされ、袂を芭蕉が歩く。温泉街は先かと思っていたが、その真ん中に突っ込む形で線路は絶えた。沿線風景は退屈だったが、素敵な終着駅に着いた。ここじゃパチンコ屋までが粋だ。廃墟になったホテルも見られるが、このまま留まりたいと思わせる町だ。温泉街のたたずまいに何かを感じるのが日本人なのかもしれない。

17:47 本宮(もとみや)駅(東北本線 福島県)
開催を危ぶんでいた祭が元気に執り行われたことを新聞で知ったよ。「会津士魂」にも登場する本宮。街道筋らしい古い家並やささやかな飲み屋横丁を歩き、コンビニで酒をあっためてもらって、心から体からすべてをあたためた。やっぱり酒だよ。缶コーヒーなんかじゃダメだ。あったまらない。
飯坂温泉、本宮。誰とも親しく会話を交わしたわけじゃないが、福島のあたたかさには確かに触れた。若者も訛り丸出しで向き合う。素朴という言葉を褒め言葉として使って差し支えないのであれば、その言葉を使いたい。素朴だ。そして愛すべき人々が暮らしている。その代表例として挙げるのに相応しい人が、友人として郡山にいる。
本宮にはビジネスホテルが2軒あった。この町に荷物を置くことをほんの少しだけ想像してみた。小降りになったが雨は止まず、嫌いじゃない冷気が本宮を包んでいる。だから熱燗が美味かったんだよ。

20:33 宇都宮(うつのみや)駅(東北新幹線/東北本線/日光線/烏山線 栃木県)
読書に夢中だった。メシは酒と握り飯で済ませた。どっちも美味かったよ。宇都宮は3年振りになるのか。ごく最近の記憶を時系列に並べ直すのが苦手になってる。言いたかったのは、宇都宮の明かりがこんなにも眩しかったのかということ。雨が上がった関東平野の端から冷気は去り、やはり11月にしてはあたたかい空気に入れ替わっていた。

20:54 雀宮(すずめのみや)駅(東北本線 栃木県)
新幹線が絨毯爆撃のような音を残して通り過ぎる。ふもとの小さな駅では精一杯の灯を燈しているが、どちらの出口も下りた客を迎える店の灯はない。ここから小山までの間に町はあっただろうか。
これでおしまいだ。オレの顔は笑ってる。

22:47 西武線内練馬付近
もうすぐ帰ると伝えてある。関東平野に戻ってきてから眠気は去り、昨日から読み始めた長編を今しがた読了した。この旅の記憶と共に残るものだ。やりつくして、東京も雨が上がった。今夜は長い。本宮にいたのが昨日のことのように思えるよ。250kmを移動するということはそういうことだし、そうあるべきだ。その間にはたくさんの町があるのだから。

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