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「車旅日記」2004年秋【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】2日目(宇野-下津井-新見-津山-城崎)走行距離377㎞ その1-宇野駅、児島駅、下津井港、倉敷駅、総社駅、備中高梁駅、新見駅

公開日: : 最終更新日:2023/04/27 旅話, 旅話 2004年

車旅日記2004年11月21日
2004・11・21 8:57 宇野駅
海峡の町に清々しい朝が訪れている。
ホテルを出た小路では、近くに住む小さな女の子がかわいらしい挨拶をしてくれた。
このあたりにも素晴らしい人情が残っている。

昨夜歩いた界隈を一巡して車に乗り込む。
人通りの絶えた通りにスナックの灯が点された風景は時にうらぶれて見えるが、ここじゃ歩く人よりもひょっとしたら多いのではと感じるほどのスナック、飲み屋、風俗店が連なる一角がある。

海峡に面した港町とはどんな町なのかが分かり、その名残りが今も町の顔をしている。

次に宇野を出る列車は茶屋町行。
往年の役目を終えたレストランのような小さな駅は、町の真ん中で今も色褪せることなく朝を迎え、タクシーを集合させている。

振り返りたくなるような駅だ。
いい町だったよ。

2019年8月12日撮影

宇野港

2019年8月12日撮影

9:54 児島駅(11月20日の京都駅より295㎞)
宇野を出ると海岸に沿って造船所が続いている。

連絡船は廃止されても海で生きていくしかない町の風景は、たぶん華やかなりし頃とたいして変わっていないのだろう。
海風が吹き付ける家々の日曜日の朝はひたすらに穏やかだった。

渋川海岸にはマリンホテル。
多くの釣り師が海に向かい竿を振る。
やがて瀬戸内の島々を渡していく瀬戸大橋が姿を現した。

児島は、今じゃ四国への玄関口。
高架駅として開業してからはまだ新しく、海峡を橋で渡る鉄道の玄関として新たな歴史を与えられた。

多くの客が切符売場に列を作っている。
海を渡るには、今日はいい日和だろう。

海上は霞んでいるが、上から見渡せばよく見えるだろう。

2020年9月19日撮影

10:30 下津井港(11月20日の京都駅より306㎞)
鷲羽山に上り瀬戸内を車窓から眺める。
児島にいた頃より空気は澄んできたようで、海上をすっきりと見渡せる。

視界の先、橋は続いていく。
四国の玄関口にあたる坂出はまだ遠い。

島々が四国の大地を隠すように塞がっている。
そう、「四国には簡単には渡れないよ」と言わんばかりに。

車を止めてしばらく歩く。
旧下津井駅はもはや存在しないのだろうか。

アテもなく歩く。
以前廻船問屋だったという資料館が人々を集め、古老が朗々と詩吟をうなっている。

坂の多い郷愁いっぱいの町並だが、瀬戸大橋はここでも町の役割を奪ってしまった。
江戸時代は港町として栄え、遊郭もあったという。
その遺構が「まだかな橋」として残っている。

これで瀬戸内とはおわかれ。

このあたりにいると、いつも空は晴れている。
高松でも「しまなみ海道」でも、呉や三原あたりでも。

そして今日も上天気。

11:38 倉敷駅(11月20日の京都駅より331㎞)
下津井から児島へ。

廃線跡を横切る。
かつて茶屋町と下津井を結んでいた下津井電鉄はサイクリングロードになっていた。

岡山には寄らずに倉敷へ。
街全体が旧観を残しているのかと思っていたが、それは美観地区という形で集約されているようだ。

つまり話に聞いていた倉敷とは、そのあたりに行かなきゃ分からない。

倉敷駅はホテルの機能も併せ持った巨大なもので、児島半島に向いた方向には中央通りが延び、三越が見える。
その道を進む車の数はまばらだったが、完全なる都会の風景だった。

オレが今いる反対側の出口にはメルヘン的な観覧車が回る遊園地。
暖かな日差しの下で穏やかな表情を浮かべた人々を見る。

話に聞いていた倉敷を楽しむつもりで立ち寄ったが、オレがいたのは倉敷という名の都会だった。

この街を楽しむのはまた次回。
備中へ。

2020年9月22日撮影(倉敷駅前南口)

12:12 総社駅(11月20日の京都駅より342㎞)
吉備の国へ。
鬼ヶ城という桃太郎伝説発祥の旧跡があるという。

駅は吉備線開業100周年記念事業の一環として旧駅舎の写真を展示している。
開業当初、総社駅は西総社駅といったようだ。
古めかしい白壁瓦屋根の駅舎がそこには写っていた。

現在は伯備線、吉備線、井原鉄道の3線が乗り入れる鉄道基地として生まれ変わっている。

町は静かで、駅前でタクシー運転手が歓談している光景は地方都市共通のものだ。

倉敷から向かう国道は伯備線と高梁川に沿い、ほんの少しの渋滞の隙に旅情を楽しんだ。

2014年8月14日撮影

13:11 備中高梁駅(11月20日の京都駅より360㎞)
峡谷道が日本海へと続いていく。
日本海を目指す気分はいつも特別なものがある。

やがて備北の城下町、高梁へ。
町の道はどこも狭く、踏切を渡ると不安に襲われた。
駅正面に駐車空間はなく、何もかもがこじんまりとしている。

ホームには2、3の旅人と勤め人の姿があるだけで閑散としている。

白壁に緑色の瓦屋根という駅舎は多く目にしてきたように思う。
名寄駅、鳥栖駅などがそうだったと記憶いているが、この構造物は旧国鉄的文化といったものだろうか。

それにしても静かな町だ。
映画「男はつらいよ」にも登場するが、映画の印象よりも小さく感じる。

腹も減ってコンビニ的なものを欲していたが、駅前にはなく、代わりに美味いものを出しそうな店が並んでいるが、残念だ。
時間がない。

もう少し北へ向かえば天空の城、備中松山城址がある。

14:07 新見駅(11月20日の京都駅より408㎞)
閑散とした高梁駅周辺を後にして、再度川沿いの道へ。
白壁を模した防御壁が続く。

そしてふと町に目を戻すと、かつての城下町らしい風情が目に映った。
そうか。
こんなところにオレが探していたものがあったのか。

峡谷道をさらに北へ。
高梁川と伯備線と180号国道は戯れあうように日本海へと向かう。

落葉の舞いに晩秋を想い、山水画のような峡谷美に見惚れ、一本の絹のような滝の横を掠め、北へ北へ。
山々は色づく気配を見せ始め、少し寒くなった。

芸備線、姫新線、そして伯備線の3線が乗り入れる新見駅の時刻表は賑やかなものではなく、寂しいものだった。
町役場や小学校を思わせる駅舎には温かみを感じる。

テレビ塔は空に向かい、駅前商店街はどこも閉めていない。
久し振りに見る光景にうれしくなる。
高梁川は町中で細くなり清楚に感じる。
新見は全国初の電子投票の町だという。

きれいな町だったよ。
日本海へはこのまま米子まで行けば近いが、その道は採らない。

駅前のパン屋で購入した品はどれも安くて美味かった。
優しい女性がそのパンを包んでくれた。

そして見上げれば、きれいな空。

2014年8月14日撮影


2014年8月14日撮影

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