「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄
車旅日記2000年5月3日
15:12 293号国道‐足利郊外ポテチーノ 108㎞
繁華街を抜けると文化的な匂いが漂い、足利はやはり歴史の重みを有していることを確認できて少し見直す気持ちになった。
この喫茶店を選んだのは、この街にいい印象を持って離れたかったから。
仮に彼女がこの街に戻っているのだとしたら、この店の女性のようにひっそりと慎ましく暮らしていてほしい。
でもやっぱり、彼女はこの街にはいないのだろう。
17:26 下今市駅 174㎞
黒い雨雲の下、関東平野をひたすら走った。
稲妻の光るサンダー・ロードを走ってきた。
日光杉並木は水捌けの悪い道で油断できない。
対向車のトラックが容赦なく撥ねた水を浴びせてくる。
ハンドルをしっかり握り、ただ前だけを見てここにたどり着いた。
雨雲はとうとう雨を落とし、代わりに空は明るくなった。
道中特に考えることもなく、状態の悪い路面とずっと闘っていた。
闘いはおそらく今夜いっぱい続くだろう。
ルートはこれから山間へと至る。
日光でのんびりするのも悪くないと思ったけど、この雨だ。
暗くならないうちに鬼怒川に着きたい。
温泉がオレの到着を待ちわびている。
それにしても栃木県もなかなか大きい。
佐野、足利、今市。
それぞれ別の顔を持っている。
18:50 鬼怒川ホテルニュー岡部 188㎞
今日の最大の懸案をクリアーした。
つまり入浴のことだ。
温泉地はどこも変わらないが、この鬼怒川には心なしか少しのゆとりを感じる。
道幅も広いし、湯も温い。
荷物の心配さえしなければ、もっと浸かっていたかった。
料金は少し高かったけれど。
ところで天気の予想がつかない。
ここに着いた時は確か晴れていたはずなのが、戻ってみれば雨。
雨との付き合いは明日まで続きそうだ。
これから会津まで。
ここまでは計画通りといっていい。
19:47 上三依塩原駅 221㎞
予想通りの難所だった。
地元の連中に煽られながら喘ぐようにここにたどり着いた。
まるでオアシスのように静かな明かりを灯しながら、山間に浮かぶように列車を待っている。
暗闇の中で駅らしきものを発見した時は狂喜した。
音楽は貴重だった。
忌野清志郎は最高だった。
旅に出る前に手に入れておいてホントによかった。
真っ暗だったけど肩の力を抜いていられたよ。
2年というブランクの中で経験したものも役立っていたのかもしれない。
だけどもうちょっと違う道を走りたい。
夜を走るにはこのルートはタフでハードだ。
あたりは暗闇に閉ざされている。
でも心細さは感じていない。
いずれ明るい時間帯にまたここを通って再評価したい。
いつになるかはもちろん分からない。
21:23 会津若松駅 292㎞
駅へと歩いていく気分はなぜかいいものだ。
かつて来たことがあるような、見覚えがあるような駅で、ごく自然に街に溶け込んでいた。
なんかほっとしたよ。
夜の走り方を知ったようで、特に疲れは感じていない。
大体時速70㎞で走っていれば誰も文句は言わない。
東北はやっぱりいい。
他の地域と比較して圧倒的に親しみを感じる。
駅は優しい明かりを放ち、見ているだけで安心する。
集まっている人々に悪意は感じられず、電話ボックスで泣き崩れていた女性は大丈夫だろうか。
かわいそうに。
よほど悲しいことを告げられたのだろう。
悪い男がいたものだ。
ところで今夜のオレだ。
まだ眠くない。
そりゃそうだろう。
時計の針は21:30を指している。
このまま新潟まで走らせよう。
眠る場所にアテがある。
22:32 49号国道‐津川町 346㎞
広大な会津圏内を抜けると予想通り車通りは少なくなり、後続車とのほぼ二人旅の様相を呈していた。
山間に来ると雨は激しくなり、一瞬霧が襲い、雹に見える雨が降った。
気温は9度。
にわかに寒くなった。
新潟まではそう遠くない。
日付が変わる前に到着できるだろう。
ここに車を止めたのは疲れてというよりも、音楽を変えたかったから。
25:13 7号国道‐豊栄(道の駅) 436㎞
ここに到着してビール2本とカロリーメイト。
それが今夜の食事。
まるで大残業した夜のような粗末なメニュー。
気分はずいぶん落ち着いている。
最後は新潟県という巨大な存在にはめられたかのような苛立ちを覚えながらの走行だった。
激しい雨だった。
目をくらませるほどの降りだった。
馴染みの場所には居心地の良さを感じる。
寝る時間になるとそこかしこにタフな人を見かける。
孤独なライダーはベンチでシェラフにくるまっている。
その横ではひとりじゃ何もできなさそうな連中が騒いでいる。
そうした手合いもまたそこかしこに見かける。
今いるここの少し後方にも、バカしか聞かないような音楽をかけた同じような連中が大声で喋っている。
困ったものだな。
49号国道は阿賀野川を横切ったり、寄り添ったりしながら続く思い出のルート。
いくつもの橋を渡る。
あれは5年前のことになる。
その時が初めてのツアーだった。
あの日のことはよく覚えている。
だからオレには見えた。
暗闇の中の阿賀野川の雄大な流れが。
おやすみ。
今日はよく走った。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】3日目(肥前鹿島-門司港)その5‐肥前山口、久保田、西唐津、博多、門司港(佐世保線/唐津線/筑肥線/福岡市地下鉄空港線/鹿児島本線)
鉄旅日記2020年8月15日・・・肥前山口駅、久保田駅、西唐津駅、博多駅、門司港駅(佐世保線/唐津
-
-
「鉄旅日記」2016年春【下北半島から東日本大震災被災地へ】最終日(石巻-東京)その2-久田野、新白河、豊原、白坂、黒磯、西那須野、那須塩原、矢板(東北本線)
鉄旅日記2016年3月21日その2・・・久田野駅、新白河駅、豊原駅、白坂駅、黒磯駅、西那須野駅、那須
-
-
「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、鶴見線・伊豆・駿河途中下車旅】その1-扇町、浅野、海芝浦、国道、大川、保土ヶ谷、東戸塚、網代、伊豆多賀、宇佐美、熱海(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線)
鉄旅日記2012年4月8日その1・・・扇町駅、浅野駅、海芝浦駅、国道駅、大川駅、保土ヶ谷駅、東戸塚駅
-
-
「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】4日目(隼人-岩国)その2-熊本、久留米、鳥栖、吉塚、長者原、古賀、東郷、赤間、幡生(鹿児島本線、山陽本線)
鉄旅日記2013年8月13日その2・・・熊本駅、久留米駅、鳥栖駅、吉塚駅、長者原駅、古賀駅、東郷駅、
-
-
「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その3-稚内サンホテル
車旅日記2004年5月4日・・・稚内サンホテルにて 21:39 稚内サンホテル325号 素敵な部屋
-
-
「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】2日目(新大宮-大阪難波)その2-生駒、鳥居前、宝山寺、生駒山上、布施、俊徳道、JR俊徳道、河内山本、信貴山口、高安山(生駒ケーブル/奈良線/大阪線/信貴線/西信貴ケーブル)
鉄旅日記2017年3月18日・・・生駒駅、鳥居前駅、宝山寺駅、生駒山上駅、布施駅、俊徳道駅、JR俊徳
-
-
「鉄旅日記」2014年冬【ふらっと両毛 東武フリーパスで、両毛ローカル旅】初日(東京-桐生)-小菅、五反野、梅島、田島、渡瀬、県、東武和泉、福居、野州山辺、韮川、東小泉、藪塚、阿左美、岩宿、新桐生、下新田(東武スカイツリーライン/東武佐野線/東武伊勢崎線/東武桐生線)
鉄旅日記2014年12月28日・・・小菅駅、五反野駅、梅島駅、田島駅、渡瀬駅、県駅、東武和泉駅、福居
-
-
「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その2-掛川、磐田駅、浜松、音羽町、岡崎、知立、名古屋渋滞、佐屋町、弥冨町
車旅日記1996年5月3日 6:25 1号国道‐掛川 あれから1時間か。 始まるよ、これか
-
-
「鉄旅日記」2012年初冬【週末パスで、上越途中下車旅&高田で友人の結婚式に参加】初日(東京-長野)-吹上、北鴻巣、長野、豊野、新井、高田、春日山(高崎線、長野新幹線、信越本線)
鉄旅日記2012年12月8日・・・吹上駅、北鴻巣駅、長野駅、豊野駅、新井駅、高田駅、春日山駅(高崎線
-
-
「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】4日目(鳴子温泉‐米沢‐猪苗代‐郡山)鳴子サンハイツ、道の駅むらやま、金渓ワイン、日布峠、こたかもりドライブイン、郡山スターホテル
車旅日記2000年5月6日 2000・5・6 7:19 鳴子サンハイツ 1011㎞ 低調な朝だ。