*

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】2日目(新潟豊栄‐象潟)道の駅豊栄、道の駅神林、瀬波温泉龍泉、道の駅温海、立岩海底温泉、酒田南郊、象潟駅、象潟松籟館

公開日: : 最終更新日:2024/04/13 旅話, 旅話 2000年

車旅日記2000年5月4日
2000・5・4 8:09 7号国道-豊栄(道の駅)
路上で夜を明かすと肝も座る。

いつもこんな感じでいたのだろうか。
丸2年ものブランクがあり、路上で過ごす気持ちを忘れていた。

昨夜、会津からここまでの旅程はなかなかきつかった。
しかしそのおかげと言っていいかどうか分からないが、夜は周辺の雑音に邪魔されずによく眠れた。

ビールも煙草も美味い。
体調がいい証だ。
特に問題も見当たらない。

いつも思うが、こうして路上で夜を明かすと、同じような朝を迎える人の多さに驚く。
かえって心強く思うこともあるけど。

初めて路上で夜を明かした最上川畔のドライブインじゃ、オレひとり。
怯えながら目を閉じたものだ。

今日は象潟で宿をとりたいと思っている。
その前に瀬波温泉で風呂にありつけるとうれしい。

何よりオレは日本海が見たくてここまで来た。

9:20 7号国道‐神林(道の駅) 477㎞
若干の眠気と気怠さと、ジミー・ロジャースのブルース。

特に理由もなく立ち寄ったわけだが、ちょっと地図を見たかった。

オレが見たい海はもうそこにある。
目の前の田園を突っ切ればすぐそこ。
いつか夕焼けを見たところ。
想う女性がいたんだ、あの時は。

単線のレールが目の前にある。
線路を見るのが好きなんだ。
どこまで続いているのか興味がある。

理由あってオレはこの身を車で運んでいる。
いつかのんびりと列車に揺られて旅をするのもいいだろう。

今日は2日目ということもあってか、昨日よりはリラックスしている。
東北圏内に入ったことも影響していそうだ。

関東ではぎすぎすして居心地がよくなかった。
まるで逃げているみたいだったよ。
ゆとりも何もなくてさ。

ブルース・スプリングスティーンがこんなことを歌っていた。

逃げるには一人がいい。
でも旅は二人の方がいい。

10:47 345号国道‐瀬波温泉 龍泉 485㎞
万事計画通りに進行している。
今回は想う存在がいないせいか、ノスタルジックな感慨に浸ることが多い。

ここでもそう。
5年前の同じ5月に寄っている。
日本海を前に彼女への想いをつづった時の話さ。

気づけばオレのような独り者も見かける。
それぞれの旅を楽しみながら、その反面不安に苛まれることもあるだろう。

露天風呂ではじっくりと腰を据えて湯に浸かっているひとりの青年がいた。
つられるようにオレも、おそらく人生で一番の長風呂を楽しんだ。
おかげで体がとても軽い。

焦る旅じゃない。
のんびりいけばいい。

それにしても、この雨とはいつまで付き合うことになる。

12:23 7号国道‐温海(道の駅) 539㎞
一度覗いた青空は消えて、雨は降り止まない。

以前にもここでは雨に濡れた。
そう言えば、今日の目的地の象潟でも多くのケースで雨に降られている。
雨は決してキライじゃない。

ここではかつて満天の星も見ている。
想いを寄せていた女性にこけしを購入したこともある。
そうした所縁の場所でもある。

ルートには間断なく車が続いている。
今日まではちょっぴり冷たい黄金週間。

少し眠ったらさっぱりした。
とても満足しているよ。

13:17 7号国道‐立岩海底温泉パーキング 記録不明
晴れたよ。
本番を思わせる青空が広がり始めている。

カモメが旋回し、海は適当に荒れて、真の日本海を思わせる。
少し激しい波の音も耳に心地いい。

今食べてきた1100円の刺身定食だが、驚くほど美味い。
久々に本当に美味しいものを食べた気にさせられたよ。
いつも海の近くに来ながら、刺身に手を伸ばしたことはなかった。

これまでだってよかったけど、これからはもっとよくなる。
そう確信している。

14:18 7号国道‐酒田市南郊 586㎞
ようやく晴れた空の下で風にあたる。
とても気持ちがいい。

こういう時の気分をうまく表現できないことをいつも残念に思う。

カモメの声。
鳥のさえずり。
トラクターの音。
素晴らしい景色を目にしている。

こうしたものに接したくてここまで車を走らせてきた。

一歩踏み出せば、そこはあぜ道。
誰もいない田園を前にすると、まるで定めのようにここに立つオレのために整地されているかのような感覚にもなる。

関西からやってきた二人のライダーも驚嘆しながら同じようにこの景色に接している。

目的地が近い。
時間配分も申し分ない。

15:40 象潟駅 634㎞
大好きな土地にやってきた。

何度目になるのだろう。
いつ来ても心が安らいでいくのが分かる。

駅前の喫茶店も変わらずそのまま。

宿の斡旋を頼んだ観光案内の女性はとても親切だった。
したがって今夜この町で過ごせることになった。

2000・5・5 8:10 象潟 松籟館 635㎞
滞在型の一日だった。

この町で素晴らしい宿を得て、夕方の町を散歩できたのは幸運だった。

オレを虜にした数々の史跡を、これまでとは違った視点から眺めることもできた。
九十九島は広大な面積にわたって点在していることを知った。

蚶満寺の便所に備え付けられている箱には確か150円をいれたはず。
その時17:00を告げる心地いいメロディが聞こえた。

象潟は夕日の町ともいう。

線路を横切り海辺へと下る。
海岸線が夕日を浴びている。

延々と歩いていく。
夏には海水浴場として賑わうビーチには少なからず人が出ている。
波打ち際で一様にはしゃいでいる。

オレも波が打ち寄せるところで飽かずに日本海を眺めた。

心中を去来したものを覚えていない。
無心にそこにいられる喜びに浸っていたのだろう。

この町で一番気に入ったのは、駅へと向かう坂道から眺めた象潟海岸だった。

どこの海に行っても、海辺に下りる道から似たような風景に出くわす。
いつも胸が高鳴る。

そして帰り際にはもう一度振り返る。
バックミラー越しにも眺める。

去りがたい思いにとらわれた後に、祭りの後のような寂しさに見舞われる。
でもその寂しさは、そこで喜びを味わった証。

いつもあんな坂道を探す。
約2時間の散歩だった。

夕食がまた素晴らしかった。
刺身、煮魚、焼き魚、ビールを2本。

テレビはつけず、窓から見える景色だけを友に豪華な食事を楽しんだ。

町は暮れていく。
やがて海が空と同化して、一軒前の屋根もまた同化していく。
一部始終を見ていたよ。

部屋に戻ると野球が気になっていたからテレビをつけたけど、そのまま眠りに落ちた。

そして朝。
昨日あれだけきれいに晴れた空はどんよりしている。
この先はどうだろうか。

これから秋田へ向かうと言ったオレを、宿の先代女将がまぶしそうに見てくれる。

さあこれから鳴子温泉へはどの道を行こうか。

まだはっきりとは決めていない。

関連記事

「鉄旅日記」2012年晩秋【休日おでかけパスで、相模線途中下車旅】保土ヶ谷、大船、香川、北茅ヶ崎、厚木、社家、相武台下、原当麻、下溝、片倉、八王子、猿橋、西八王子、武蔵小金井、東小金井(横須賀線、東海道本線、相模線、横浜線、中央本線)

鉄旅日記2012年11月17日・・・保土ヶ谷駅、大船駅、香川駅、北茅ヶ崎駅、厚木駅、社家駅、相武台下

記事を読む

「車旅日記」1998年夏【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】最終日(鳴子温泉-高畠ー郡山-東京)-鳴子サンハイツ、潟沼、瀬見駅、道の駅むらやま、羽前中山駅、高畠、道の駅七ヶ宿、道の駅安達、郡山文化センター前、須賀川駅、西那須野三島セブンイレブン、与板ラーメンとん太、築地電通前、東京町田

車旅日記1998年8月14日 1998・8・16 8:26 鳴子サンハイツ 5日目。 一番遅い

記事を読む

「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】最終日(武生-東京)その3‐西金沢、新西金沢、野町、鶴来、金沢、上野(北陸鉄道石川線/北陸新幹線)

鉄旅日記2020年11月23日・・・西金沢駅、新西金沢駅、野町駅、鶴来駅、金沢駅、上野駅(北陸鉄道

記事を読む

「鉄旅日記」2013年如月【休日おでかけパスで、上総下総途中下車旅&習志野シンフォニックブラス(NSB)演奏会】その1-我孫子、東我孫子、新木、湖北、布佐、小林、木下、安食、下総松崎、成田空港、酒々井、物井、東千葉、本千葉、西千葉、新検見川、幕張、東船橋、津田沼(成田線、総武本線)

鉄旅日記2013年2月17日その1・・・我孫子駅、東我孫子駅、新木駅、湖北駅、布佐駅、小林駅、木下駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩夏【近くまでぶらっと】金町、新松戸、西国分寺、立川、青梅、奥多摩、御岳、武蔵五日市、拝島、高麗川、川越、武蔵浦和、南浦和(常磐線、武蔵野線、青梅線、五日市線、八高線、川越線、埼京線)

鉄旅日記2009年9月5日・・・金町駅、新松戸駅、西国分寺駅、立川駅、青梅駅、奥多摩駅、御岳駅、武蔵

記事を読む

「車旅日記」1997年梅雨明け【疲れきっていた若き日々。またしても向かうのは北でございました。】(東京-鳴子温泉-東京)2日目~最終日-いわき久ノ浜パーキング、亘理、名取、松山町、鳴子サンハイツ、町田

車旅日記1997年7月20日 7:03 6号国道‐いわき久ノ浜パーキング 太陽光線で目が覚める。

記事を読む

「鉄旅日記」2005年秋【軽井沢で挙式する身内を祝うために、初めて鉄道で旅をいたしました。ここから鉄旅が始まったのでございます。】2日目(名古屋-塩尻-小淵沢-小諸-中軽井沢)-名古屋、高蔵寺、多治見、中津川、木曽平沢、塩尻、小淵沢、中込、小諸、中軽井沢(中央本線/小海線/しなの鉄道)

鉄旅日記2005年11月6日・・・名古屋駅、高蔵寺駅、多治見駅、中津川駅、木曽平沢駅、塩尻駅、小淵沢

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】最終日(JR難波-東京)その1-JR難波、八尾、奈良、笠置、伊賀上野、上野市、伊賀神戸、伊勢中川、近鉄長島、長島(関西本線/伊賀鉄道/近鉄大阪線/近鉄名古屋線)

鉄旅日記2017年3月20日・・・JR難波駅、八尾駅、奈良駅、笠置駅、伊賀上野駅、上野市駅、伊賀神戸

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】最終日(神島-鳥羽港-伊良湖岬-三河田原-豊橋-東京)その2-中之郷駅、伊勢湾フェリー乗場、道の駅伊良湖クリスタルボルト(伊勢湾フェリー)

鉄旅日記2018年12月24日・・・中之郷駅、伊勢湾フェリー乗場、道の駅伊良湖クリスタルボルト(伊勢

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】3日目(高松)その2 ‐金刀比羅宮、善通寺駅、高松港公園、八十場駅、白峰宮、天皇寺、磯禅師墓

車旅日記2020年9月21日・・・金刀比羅宮、善通寺駅、高松港公園、八十場駅、白峰宮、天皇寺、磯禅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その3 ‐しんざ、十日町、越後鹿渡、津南、戸狩野沢温泉(北越急行ほくほく線/飯山線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・しんざ駅、十日町駅、越後鹿渡駅、津

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その2 ‐湯檜曽、水上、越後湯沢、六日町(上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・湯檜曽駅、水上駅、越後湯沢駅、六日

「鉄旅日記」2021年夏【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】初日(東京-上田)その1 ‐金町、上野、高崎、水上(常磐線/高崎線/上越線)

鉄旅日記2021年7月10日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、水上駅(常

「鉄旅日記」2021年皐月【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】最終日-勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線/いすみ鉄道/小湊鉄道)/養老渓谷2階建てトンネル

鉄旅日記2021年5月23日・・・勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野

「鉄旅日記」2021年皐月【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】初日-浜金谷駅、金谷港、勝浦駅、遠見岬神社、旅館松の家(内房線/外房線)

鉄旅日記2021年5月22日・・・浜金谷駅、金谷港、勝浦駅、遠見岬神

→もっと見る

    PAGE TOP ↑