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「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】2日目(新潟豊栄‐象潟)道の駅豊栄、道の駅神林、瀬波温泉龍泉、道の駅温海、立岩海底温泉、酒田南郊、象潟駅、象潟松籟館

公開日: : 最終更新日:2023/04/29 旅話, 旅話 2000年

車旅日記2000年5月4日
2000・5・4 8:09 7号国道-豊栄(道の駅)
路上で夜を明かすと肝も座る。

いつもこんな感じでいたのだろうか。
丸2年ものブランクがあり、路上で過ごす気持ちを忘れていた。

昨夜、会津からここまでの旅程はなかなかきつかった。
しかしそのおかげと言っていいかどうか分からないが、夜は周辺の雑音に邪魔されずによく眠れた。

ビールも煙草も美味い。
体調がいい証だ。
特に問題も見当たらない。

いつも思うが、こうして路上で夜を明かすと、同じような朝を迎える人の多さに驚く。
かえって心強く思うこともあるけど。

初めて路上で夜を明かした最上川畔のドライブインじゃ、オレひとり。
怯えながら目を閉じたものだ。

今日は象潟で宿をとりたいと思っている。
その前に瀬波温泉で風呂にありつけるとうれしい。

何よりオレは日本海が見たくてここまで来た。

9:20 7号国道‐神林(道の駅) 477㎞
若干の眠気と気怠さと、ジミー・ロジャースのブルース。

特に理由もなく立ち寄ったわけだが、ちょっと地図を見たかった。

オレが見たい海はもうそこにある。
目の前の田園を突っ切ればすぐそこ。
いつか夕焼けを見たところ。
想う女性がいたんだ、あの時は。

単線のレールが目の前にある。
線路を見るのが好きなんだ。
どこまで続いているのか興味がある。

理由あってオレはこの身を車で運んでいる。
いつかのんびりと列車に揺られて旅をするのもいいだろう。

今日は2日目ということもあってか、昨日よりはリラックスしている。
東北圏内に入ったことも影響していそうだ。

関東ではぎすぎすして居心地がよくなかった。
まるで逃げているみたいだったよ。
ゆとりも何もなくてさ。

ブルース・スプリングスティーンがこんなことを歌っていた。

逃げるには一人がいい。
でも旅は二人の方がいい。

10:47 345号国道‐瀬波温泉 龍泉 485㎞
万事計画通りに進行している。
今回は想う存在がいないせいか、ノスタルジックな感慨に浸ることが多い。

ここでもそう。
5年前の同じ5月に寄っている。
日本海を前に彼女への想いをつづった時の話さ。

気づけばオレのような独り者も見かける。
それぞれの旅を楽しみながら、その反面不安に苛まれることもあるだろう。

露天風呂ではじっくりと腰を据えて湯に浸かっているひとりの青年がいた。
つられるようにオレも、おそらく人生で一番の長風呂を楽しんだ。
おかげで体がとても軽い。

焦る旅じゃない。
のんびりいけばいい。

それにしても、この雨とはいつまで付き合うことになる。

12:23 7号国道‐温海(道の駅) 539㎞
一度覗いた青空は消えて、雨は降り止まない。

以前にもここでは雨に濡れた。
そう言えば、今日の目的地の象潟でも多くのケースで雨に降られている。
雨は決してキライじゃない。

ここではかつて満天の星も見ている。
想いを寄せていた女性にこけしを購入したこともある。
そうした所縁の場所でもある。

ルートには間断なく車が続いている。
今日まではちょっぴり冷たい黄金週間。

少し眠ったらさっぱりした。
とても満足しているよ。

13:17 7号国道‐立岩海底温泉パーキング 記録不明
晴れたよ。
本番を思わせる青空が広がり始めている。

カモメが旋回し、海は適当に荒れて、真の日本海を思わせる。
少し激しい波の音も耳に心地いい。

今食べてきた1100円の刺身定食だが、驚くほど美味い。
久々に本当に美味しいものを食べた気にさせられたよ。
いつも海の近くに来ながら、刺身に手を伸ばしたことはなかった。

これまでだってよかったけど、これからはもっとよくなる。
そう確信している。

14:18 7号国道‐酒田市南郊 586㎞
ようやく晴れた空の下で風にあたる。
とても気持ちがいい。

こういう時の気分をうまく表現できないことをいつも残念に思う。

カモメの声。
鳥のさえずり。
トラクターの音。
素晴らしい景色を目にしている。

こうしたものに接したくてここまで車を走らせてきた。

一歩踏み出せば、そこはあぜ道。
誰もいない田園を前にすると、まるで定めのようにここに立つオレのために整地されているかのような感覚にもなる。

関西からやってきた二人のライダーも驚嘆しながら同じようにこの景色に接している。

目的地が近い。
時間配分も申し分ない。

15:40 象潟駅 634㎞
大好きな土地にやってきた。

何度目になるのだろう。
いつ来ても心が安らいでいくのが分かる。

駅前の喫茶店も変わらずそのまま。

宿の斡旋を頼んだ観光案内の女性はとても親切だった。
したがって今夜この町で過ごせることになった。

2000・5・5 8:10 象潟 松籟館 635㎞
滞在型の一日だった。

この町で素晴らしい宿を得て、夕方の町を散歩できたのは幸運だった。

オレを虜にした数々の史跡を、これまでとは違った視点から眺めることもできた。
九十九島は広大な面積にわたって点在していることを知った。

蚶満寺の便所に備え付けられている箱には確か150円をいれたはず。
その時17:00を告げる心地いいメロディが聞こえた。

象潟は夕日の町ともいう。

線路を横切り海辺へと下る。
海岸線が夕日を浴びている。

延々と歩いていく。
夏には海水浴場として賑わうビーチには少なからず人が出ている。
波打ち際で一様にはしゃいでいる。

オレも波が打ち寄せるところで飽かずに日本海を眺めた。

心中を去来したものを覚えていない。
無心にそこにいられる喜びに浸っていたのだろう。

この町で一番気に入ったのは、駅へと向かう坂道から眺めた象潟海岸だった。

どこの海に行っても、海辺に下りる道から似たような風景に出くわす。
いつも胸が高鳴る。

そして帰り際にはもう一度振り返る。
バックミラー越しにも眺める。

去りがたい思いにとらわれた後に、祭りの後のような寂しさに見舞われる。
でもその寂しさは、そこで喜びを味わった証。

いつもあんな坂道を探す。
約2時間の散歩だった。

夕食がまた素晴らしかった。
刺身、煮魚、焼き魚、ビールを2本。

テレビはつけず、窓から見える景色だけを友に豪華な食事を楽しんだ。

町は暮れていく。
やがて海が空と同化して、一軒前の屋根もまた同化していく。
一部始終を見ていたよ。

部屋に戻ると野球が気になっていたからテレビをつけたけど、そのまま眠りに落ちた。

そして朝。
昨日あれだけきれいに晴れた空はどんよりしている。
この先はどうだろうか。

これから秋田へ向かうと言ったオレを、宿の先代女将がまぶしそうに見てくれる。

さあこれから鳴子温泉へはどの道を行こうか。

まだはっきりとは決めていない。

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