*

「車旅日記」2000年春 2日目(新潟豊栄‐象潟)道の駅豊栄、道の駅神林、瀬波温泉龍泉、道の駅温海、立岩海底温泉、酒田南郊、象潟駅、象潟松籟館 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/10 旅話, 旅話 2000年

車旅日記2000年5月4日

2000・5・4 8:09 7号国道-豊栄(道の駅)
路上で夜を明かすと肝も座る。

いつもこんな感じでいたのだろうか。
丸2年ものブランクがあり、路上で過ごす気持ちを忘れていた。

昨夜、会津からここまでの旅程はなかなかきつかった。
しかしそのおかげと言っていいかどうか分からないが、夜は周辺の雑音に邪魔されずによく眠れた。

ビールも煙草も美味い。
体調がいい証だ。
特に問題も見当たらない。

いつも思うが、こうして路上で夜を明かすと、同じような朝を迎える人の多さに驚く。
かえって心強く思うこともあるけど。

初めて路上で夜を明かした最上川畔のドライブインじゃ、オレひとり。
怯えながら目を閉じたものだ。

今日は象潟で宿をとりたいと思っている。
その前に瀬波温泉で風呂にありつけるとうれしい。

何よりオレは日本海が見たくてここまで来た。

9:20 7号国道‐神林(道の駅) 477㎞
若干の眠気と気怠さと、ジミー・ロジャースのブルース。

特に理由もなく立ち寄ったわけだが、ちょっと地図を見たかった。

オレが見たい海はもうそこにある。
目の前の田園を突っ切ればすぐそこ。
いつか夕焼けを見たところ。
想う女性がいたんだ、あの時は。

単線のレールが目の前にある。
線路を見るのが好きなんだ。
どこまで続いているのか興味がある。

理由あってオレはこの身を車で運んでいる。
いつかのんびりと列車に揺られて旅をするのもいいだろう。

今日は2日目ということもあってか、昨日よりはリラックスしている。
東北圏内に入ったことも影響していそうだ。

関東ではぎすぎすして居心地がよくなかった。
まるで逃げているみたいだったよ。
ゆとりも何もなくてさ。

ブルース・スプリングスティーンがこんなことを歌っていた。

逃げるには一人がいい。
でも旅は二人の方がいい。

10:47 345号国道‐瀬波温泉 龍泉 485㎞
万事計画通りに進行している。
今回は想う存在がいないせいか、ノスタルジックな感慨に浸ることが多い。

ここでもそう。
5年前の同じ5月に寄っている。
日本海を前に彼女への想いをつづった時の話さ。

気づけばオレのような独り者も見かける。
それぞれの旅を楽しみながら、その反面不安に苛まれることもあるだろう。

露天風呂ではじっくりと腰を据えて湯に浸かっているひとりの青年がいた。
つられるようにオレも、おそらく人生で一番の長風呂を楽しんだ。
おかげで体がとても軽い。

焦る旅じゃない。
のんびりいけばいい。

それにしても、この雨とはいつまで付き合うことになる。

12:23 7号国道‐温海(道の駅) 539㎞
一度覗いた青空は消えて、雨は降り止まない。

以前にもここでは雨に濡れた。
そう言えば、今日の目的地の象潟でも多くのケースで雨に降られている。
雨は決してキライじゃない。

ここではかつて満天の星も見ている。
想いを寄せていた女性にこけしを購入したこともある。
そうした所縁の場所でもある。

ルートには間断なく車が続いている。
今日まではちょっぴり冷たい黄金週間。

少し眠ったらさっぱりした。
とても満足しているよ。

13:17 7号国道‐立岩海底温泉パーキング 記録不明
晴れたよ。
本番を思わせる青空が広がり始めている。

カモメが旋回し、海は適当に荒れて、真の日本海を思わせる。
少し激しい波の音も耳に心地いい。

今食べてきた1100円の刺身定食だが、驚くほど美味い。
久々に本当に美味しいものを食べた気にさせられたよ。
いつも海の近くに来ながら、刺身に手を伸ばしたことはなかった。

これまでだってよかったけど、これからはもっとよくなる。
そう確信している。

14:18 7号国道‐酒田市南郊 586㎞
ようやく晴れた空の下で風にあたる。
とても気持ちがいい。

こういう時の気分をうまく表現できないことをいつも残念に思う。

カモメの声。
鳥のさえずり。
トラクターの音。
素晴らしい景色を目にしている。

こうしたものに接したくてここまで車を走らせてきた。

一歩踏み出せば、そこはあぜ道。
誰もいない田園を前にすると、まるで定めのようにここに立つオレのために整地されているかのような感覚にもなる。

関西からやってきた二人のライダーも驚嘆しながら同じようにこの景色に接している。

目的地が近い。
時間配分も申し分ない。

15:40 象潟駅 634㎞
大好きな土地にやってきた。

何度目になるのだろう。
いつ来ても心が安らいでいくのが分かる。

駅前の喫茶店も変わらずそのまま。

宿の斡旋を頼んだ観光案内の女性はとても親切だった。
したがって今夜この町で過ごせることになった。

2000・5・5 8:10 象潟 松籟館 635㎞
滞在型の一日だった。

この町で素晴らしい宿を得て、夕方の町を散歩できたのは幸運だった。

オレを虜にした数々の史跡を、これまでとは違った視点から眺めることもできた。
九十九島は広大な面積にわたって点在していることを知った。

蚶満寺の便所に備え付けられている箱には確か150円をいれたはず。
その時17:00を告げる心地いいメロディが聞こえた。

象潟は夕日の町ともいう。

線路を横切り海辺へと下る。
海岸線が夕日を浴びている。

延々と歩いていく。
夏には海水浴場として賑わうビーチには少なからず人が出ている。
波打ち際で一様にはしゃいでいる。

オレも波が打ち寄せるところで飽かずに日本海を眺めた。

心中を去来したものを覚えていない。
無心にそこにいられる喜びに浸っていたのだろう。

この町で一番気に入ったのは、駅へと向かう坂道から眺めた象潟海岸だった。

どこの海に行っても、海辺に下りる道から似たような風景に出くわす。
いつも胸が高鳴る。

そして帰り際にはもう一度振り返る。
バックミラー越しにも眺める。

去りがたい思いにとらわれた後に、祭りの後のような寂しさに見舞われる。
でもその寂しさは、そこで喜びを味わった証。

いつもあんな坂道を探す。
約2時間の散歩だった。

夕食がまた素晴らしかった。
刺身、煮魚、焼き魚、ビールを2本。

テレビはつけず、窓から見える景色だけを友に豪華な食事を楽しんだ。

町は暮れていく。
やがて海が空と同化して、一軒前の屋根もまた同化していく。
一部始終を見ていたよ。

部屋に戻ると野球が気になっていたからテレビをつけたけど、そのまま眠りに落ちた。

そして朝。
昨日あれだけきれいに晴れた空はどんよりしている。
この先はどうだろうか。

これから秋田へ向かうと言ったオレを、宿の先代女将がまぶしそうに見てくれる。

さあこれから鳴子温泉へはどの道を行こうか。

まだはっきりとは決めていない。

関連記事

「鉄旅日記」2020年盛夏 2日目(防府-肥前鹿島)その4‐企救丘、志井公園、小倉、黒崎、黒崎駅前、筑豊中間(北九州モノレール/鹿児島本線/筑豊電気鉄道) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年8月14日・・・企救丘駅、志井公園駅、小倉駅、黒崎駅、黒崎駅前駅、筑豊中間駅(北

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏 3日目(姫路-十三)その3-高速神戸、湊川神社、神戸三宮、甲陽園、夙川、西宮北口、宝塚、箕面、石橋、北千里、十三(阪急電鉄神戸高速線/神戸本線/甲陽線/今津線/宝塚本線/箕面線/千里線) 【私鉄王国で過ごす夏】

鉄旅日記2017年8月12日・・・高速神戸駅、神戸三宮駅、甲陽園駅、夙川駅、西宮北口駅、宝塚駅、箕面

記事を読む

「車旅日記」2000年夏Part.2 3日目(福山-宇部)尾道西PA、奥屋PA、温品PA、玖珂PA 【友を訪ねて備後福山へ。長門宇部へ。2000㎞に及ぶ長大な旅路でございました。】

車旅日記2000年8月14日 3日目(福山-宇部)尾道西PA、奥屋PA、温品PA、玖珂PA 200

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月 初日(東京-天王寺)-東京、名古屋、大垣、米原、草津、柘植、京都、木津、京橋、天王寺(東海道新幹線/東海道本線/草津線/奈良線/学研都市線/大阪環状線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】

鉄旅日記2007年2月10日・・・東京駅、名古屋駅、大垣駅、米原駅、草津駅、柘植駅、京都駅、木津駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 最終日(三次-東京)その4‐二条、大宮、四条大宮、北野白梅町、帷子ノ辻(山陰本線/京福電鉄嵐山本線/京福電鉄北野線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月26日・・・二条駅、大宮駅、四条大宮駅、北野白梅町駅、帷子ノ辻駅(山陰本線/

記事を読む

「鉄旅日記」2018年師走 2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その2-多気、伊勢神宮外宮、伊勢市、鳥羽、鳥羽マリンターミナル(参宮線/鳥羽市営定期船) 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】

鉄旅日記2018年12月23日・・・多気駅、伊勢神宮外宮、伊勢市駅、鳥羽駅、鳥羽マリンターミナル(参

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 2日目(香住-東萩)その1‐香住、柴山、餘部(山陰本線)/余部鉄橋 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月24日・・・香住駅、柴山駅、餘部駅(山陰本線)/余部鉄橋 2020・7

記事を読む

「鉄旅日記」2018年如月 初日(東京-直江津)その3-梓橋、姨捨、北長野、三才、直江津(大糸線/篠ノ井線/しなの鉄道/えちごトキめき鉄道)【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】

鉄旅日記2018年2月10日・・・梓橋駅、姨捨駅、北長野駅、三才駅、直江津駅(大糸線/篠ノ井線/しな

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春 最終日(水沢-東京)その2-気仙沼、一ノ関、小牛田、大河原、福島、安積永盛、久喜(大船渡線、東北本線) 【東日本大震災被災地へ】

鉄旅日記2016年3月6日その2・・・気仙沼駅、一ノ関駅、小牛田駅、大河原駅、福島駅、安積永盛駅、久

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春 最終日その1(岩倉-東京)-岩倉、御嵩、犬山、新鵜沼、鵜沼、名電各務原、各務ヶ原、新那加、那珂、名鉄岐阜(名鉄犬山線/名鉄広見線/名鉄各務原線) 【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】

鉄旅日記2015年3月8日その1・・・岩倉駅、御嵩駅、犬山駅、新鵜沼駅、鵜沼駅、名電各務原駅、各務ヶ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その4 ‐アプトいちしろ、川根小山、千頭、金谷、焼津(大井川鐡道井川線/大井川鐡道本線/東海道本線)/焼津温泉やいづマリンパレス 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・アプトいちしろ駅、川根小山駅、千頭

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その3 ‐新金谷、千頭、アプトいちしろ、長島ダム(大井川鐡道本線/大井川鐡道井川線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・新金谷駅、千頭駅、アプトいちしろ駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その2 ‐静岡、金谷、新金谷、代官町、日切、合格、門出(東海道本線/大井川鐡道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・静岡駅、金谷駅、新金谷駅、代官町駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 初日(東京-焼津)その1 ‐金町、東京、三島(常磐線/東海道本線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月19日・・・金町駅/東京駅/三島駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その6 ‐向河原、津田山、久地、宿河原、中野島、稲城長沼、府中本町(南武線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、相模線、鶴見線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・向河原駅、津田山駅、久地駅、宿河原駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑