*

「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、ダム湖に水没する鉄路へ】その2-川原湯温泉、岩島、群馬藤岡、高麗川、拝島、昭島、中神、武蔵溝ノ口、武蔵中原、鹿島田、尻手(吾妻線、八高線、青梅線、南武線)

公開日: : 最終更新日:2023/06/29 旅話, 旅話 2012年

鉄旅日記2012年4月1日その2・・・川原湯温泉駅、岩島駅、群馬藤岡駅、高麗川駅、拝島駅、昭島駅、中神駅、武蔵溝ノ口駅、武蔵中原駅、鹿島田駅、尻手駅(吾妻線、八高線、青梅線、南武線)
14:07 川原湯温泉(かわらゆおんせん)駅(吾妻線 群馬県)
巨大な鉄塔が2本突忽と聳える。

それがこの一帯をダム底に沈める悪魔の装置。

数年前にここを訪ねた時からそこにあった。

一旦中断した工事は民主党政権の正体を露わにする形で復活した。
住民の移動が終了したのだろうか。

旅行者の他に人気はなく、温泉の方向を示す朽ちた表示板だけが目を引いた。

14:19 岩島(いわしま)駅(吾妻線 群馬県)
東京じゃ桜の開花くらいでしか春を目視できないが、雪の消えつつあるここ「執念谷」ではその美しい姿を発見できる。

日差しに満ちてあたたかく、草木が風にそよいでいる。

こういった一帯を沈めてしまおうと言い出したのは誰なんだ。

吾妻川と145号国道。
駅を出て体を伸ばしながら見ていたものはそれだけだけど。

16:37 群馬藤岡(ぐんまふじおか)駅(八高線 群馬県)
高崎駅で八高線に乗り換え。

西日の入る待合室にいる。

外にいてもいいが、空っ風が冷たくて。

これが上州。
雪をかぶった赤城山が見える。
あそこからの風だ。
浴びることができてオレはうれしいよ。

鬼瓦を冠した威厳のある駅舎が美しくもあり、上州武士の武骨さも感じさせる。

くすの木病院とビジネスホテルの他に何もない駅前だが、県道まで歩くと町の歴史が見えた気がしたよ。

かつて車で碓氷峠を越えなきゃならなかった者たちにとって、藤岡という地名はは馴染み深いものだった。

18:25 高麗川(こまがわ)駅(八高線/川越線 埼玉県)
26分待ちで駅前で一杯。

寒いから熱燗で。
お通しの煮込みになす、マカロニサラダ。

味のあるおばちゃんに客の男たち。
オレの他に3人いたよ。
早い時間なのにたいしたもんだ。

「乗り遅れたらまた戻ってくればいいよ。」そう言ってオレを送り出してくれた。

東京との県境だが、夕暮れの光景といい、立派な旅先での風景だ。

東飯能から西武線に乗ればオレの家も近いが、まだ4時間帰るつもりはない。

高麗川は3年振りくらいになるのか。
こうして思い出の町になってうれしい。

秩父山脈の稜線がぼんやり見える。
心に沁みる夜景だ。

19:01 拝島(はいじま)駅(八高線/青梅線/五日市線/西武拝島線 東京都)
またひとつ記憶を塗り替える。

夜の拝島に前回と変わったところを発見するのは困難な作業だったが、駅構内にはいくつもの店が入り、行き交う人の数も多い。

東京西部の大ターミナル駅なんだ。
これくらいたくさんの人がいないとさ。
だから、ああ良かったなって思ったよ。

この感覚がオレの平和観にもっとも近い。

19:13 昭島(あきしま)駅(青梅線 東京都)
南北口とも似たような明かりを放つ街。
ヨーカ堂のネオンは他じゃちょっと見かけない高級感を醸している。

青梅まで好きな女性を送り迎えしていた時代がある。

そんな頃があったから、この街で下りたかったんだ。

旅人として生きているオレの必然がそこにある。

19:24 中神(なかがみ)駅(青梅線 東京都)
東京にもあったんだよ。
そんなフレーズが頭に浮かぶ。

実際こんな駅を持っている市町村は東京にもいくらもあるが、このあたりの空気が吸いたくなったのだろう。
だから降りてみた。

町田で暮らしていた時代もオレの中では歴史になった。

都会を離れると魚民グループ、ヤマザキショップの進出が目につく。
駅を下りて、狭い道が延びていく口では寒風の中を人々が家路を急ぎ、広いロータリーの方では若い男女がためらいがちに唇を合わせていた。

20:14 武蔵溝ノ口(むさしみぞのくち)駅(南武線/東急田園都市線 神奈川県)
立川で南武線に乗り換え。

友人が暮らすような街に旅で訪れた。

東急2線と交わるこの街の賑わいは想像を絶し、この街に縁のなかった人生を不思議に思った。

子供の頃には溝ノ口のオバサンなる人物の名をよく耳にしていたけれど。

丸井が建つ現在のような姿はしていなかっただろうが、10分で事を済ますには大き過ぎる街だった。

20:27 武蔵中原(むさしなかはら)駅(南武線 神奈川県)
沿線に競馬場や競輪場を持つ南武線。
ギャンブル好きの知人は賭博電車と呼んでいた。

川崎へ。

高層団地が建ち並ぶこれといった特徴の見当たらない駅前風景だった。

オレが生まれたのは川崎市。
それを強く思ったことはないし、この旅程を選んだ理由としても挙げられない。

多摩川に沿ったいくつかの町に降りたかっただけなんだ。

20:42 鹿島田(かしまだ)駅(南武線 神奈川県)
踏切のある町と駅。

古街道を思わせる道のカーブを曲がり踏切を渡ると「かしまだ」と書かれた電飾看板を潜る。
夜の明かりはあれくらいがちょうどいい。

ふと郷愁に誘われた。

このあたりは工場の匂いがする町だと思っていたんだ。

20:54 尻手(しって)駅(南武線/南武線浜川崎支線 神奈川県)
ガード下の道は何度も通っている。
この時間じゃコンビニしか開いていない両側のアーケードの線路沿いに僅かに連なる赤提灯。

車の流れはひっきりなしで新装された南武線の駅の中で古い姿を留めている川崎下町。

川崎は工都としての道を選んでいる。

さあ帰ろう。
そう言えば、ここ尻手の脇を今年に入って2度も車で往復したよ。

関連記事

「車旅日記」2004年春【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】最終日(稚内-旭川空港)走行距離353㎞その1-稚内サンホテル、稚内公園、ノシャップ岬、サロベツ原生花園、サロベツ河畔、パンケ沼、下沼駅、幌延駅、雄信内駅

車旅日記2004年5月5日 2004・5・5 8:03 稚内サンホテル325号室 とうとう4日目

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、銚子へ、房総へ。】その2-猿田、旭、八日市場、八街、成東、本納、茂原、千倉、佐貫町、姉ヶ崎、市川(総武本線、東金線、内房線、外房線)

鉄旅日記2012年3月12日その2・・・猿田駅、旭駅、八日市場駅、八街駅、成東駅、本納駅、茂原駅、千

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】5日目(松浦-若松)その2-宇美、西戸崎、香椎、福間、赤間、折尾、若松(鹿児島本線/香椎線/筑豊本線)

鉄旅日記2009年9月22日・・・宇美駅、西戸崎駅、香椎駅、福間駅、赤間駅、折尾駅、若松駅(鹿児島本

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏【私鉄王国で過ごす夏】2日目(大垣-姫路)その1-大垣、能登川、栗東、草津、石部、三雲、甲南、油日、甲賀、柘植(東海道本線/草津線)

鉄旅日記2017年8月12日・・・大垣駅、能登川駅、栗東駅、草津駅、石部駅、三雲駅、甲南駅、油日駅、

記事を読む

「車旅日記」1998年春【下北半島を目指した春。男の旅は北を目指すものと思っていた20代後半。高倉健さんの影響でございましょうか。】初日(東京-岩手山SA)-町田、蓮田SA、都賀西方PA、黒磯PA、阿武隈PA、吾妻PA、菅生PA、前沢PA、岩手山SA

車旅日記1998年5月1日 1998・5・1 11:53 東京町田 出発を前にして空が晴れてきた

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【名鉄電車2DAYフリーきっぷで行く、中京旅】初日その3(東京-岩倉)-太田川、常滑、中部国際空港、上小田井、西春、岩倉(名鉄常滑線/名鉄空港線/名鉄犬山線)

鉄旅日記2015年3月7日その3・・・太田川駅、常滑駅、中部国際空港駅、上小田井駅、西春駅、岩倉駅(

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】3日目(小樽-富良野)その1-小樽、発寒中央、琴似、石狩当別、石狩月形、新十津川、滝川、茶志内、美唄(函館本線/学園都市線)

鉄旅日記2016年8月12日・・・小樽駅、発寒中央駅、琴似駅、石狩当別駅、石狩月形駅、新十津川駅、滝

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】2日目(盛岡-宮古)その3-陸中野田、久慈、陸中八木、八戸(三陸鉄道リアス線/八戸線)

鉄旅日記2019年9月22日・・・陸中野田駅、久慈駅、陸中八木駅、八戸駅(三陸鉄道リアス線/八戸線)

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】3日目(鹿児島中央-西鉄柳川)その1-指宿、枕崎、入野、開聞、山川、喜入、瀬々串、慈眼寺、南鹿児島、郡元(指宿枕崎線)

鉄旅日記2015年8月14日その1・・・指宿駅、枕崎駅、入野駅、開聞駅、山川駅、喜入駅、瀬々串駅、慈

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】2日目(西舞鶴-魚津)その1-西舞鶴、東舞鶴、若狭高浜、小浜、上中、十村、木ノ本、余呉、高月、永原、敦賀(舞鶴線/小浜線/北陸本線/湖西線)

鉄旅日記2014年3月22日その1・・・西舞鶴駅、東舞鶴駅、若狭高浜駅、小浜駅、上中駅、十村駅、木ノ

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年睦月【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】初日(東京-湯沢)その1‐金町、北千住、上野、宇都宮、黒磯(常磐線/東北本線)

鉄旅日記2020年1月11日・・・金町駅、北千住駅、上野駅、宇都宮駅、

2019年師走~2020年弥生【SNSへの投稿より】大晦日、正月、誕生日、菜の花の頃。

【Facebookへの投稿より2019年12月31日】 【今年も暮れ

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】最終日(酒田-東京)その4‐水上、高崎、籠原(上越線/高崎線)

鉄旅日記2019年12月8日・・・水上駅、高崎駅、籠原駅(上越線/高崎

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】最終日(酒田-東京)その3‐押切、帯織、長岡(信越本線)

鉄旅日記2019年12月8日・・・押切駅、帯織駅、長岡駅(信越本線)

「鉄旅日記」2019年師走【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】最終日(酒田-東京)その2‐小波渡、五十川、府屋、あつみ温泉(羽越本線)

鉄旅日記2019年12月8日・・・小波渡駅、五十川駅、府屋駅、あつみ温

→もっと見る

    PAGE TOP ↑