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「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、ダム湖に水没する鉄路へ】その2-川原湯温泉、岩島、群馬藤岡、高麗川、拝島、昭島、中神、武蔵溝ノ口、武蔵中原、鹿島田、尻手(吾妻線、八高線、青梅線、南武線)

公開日: : 最終更新日:2020/08/28 旅話 2012年

鉄旅日記2012年4月1日その2
14:07 川原湯温泉(かわらゆおんせん)駅(吾妻線 群馬県)
巨大な鉄塔が2本突忽と聳える。

それがこの一帯をダム底に沈める悪魔の装置。

数年前にここを訪ねた時からそこにあった。

一旦中断した工事は民主党政権の正体を露わにする形で復活した。
住民の移動が終了したのだろうか。

旅行者の他に人気はなく、温泉の方向を示す朽ちた表示板だけが目を引いた。

14:19 岩島(いわしま)駅(吾妻線 群馬県)
東京じゃ桜の開花くらいでしか春を目視できないが、雪の消えつつあるここ「執念谷」ではその美しい姿を発見できる。

日差しに満ちてあたたかく、草木が風にそよいでいる。

こういった一帯を沈めてしまおうと言い出したのは誰なんだ。

吾妻川と145号国道。
駅を出て体を伸ばしながら見ていたものはそれだけだけど。

16:37 群馬藤岡(ぐんまふじおか)駅(八高線 群馬県)
高崎駅で八高線に乗り換え。

西日の入る待合室にいる。

外にいてもいいが、空っ風が冷たくて。

これが上州。
雪をかぶった赤城山が見える。
あそこからの風だ。
浴びることができてオレはうれしいよ。

鬼瓦を冠した威厳のある駅舎が美しくもあり、上州武士の武骨さも感じさせる。

くすの木病院とビジネスホテルの他に何もない駅前だが、県道まで歩くと町の歴史が見えた気がしたよ。

かつて車で碓氷峠を越えなきゃならなかった者たちにとって、藤岡という地名はは馴染み深いものだった。

18:25 高麗川(こまがわ)駅(八高線/川越線 埼玉県)
26分待ちで駅前で一杯。

寒いから熱燗で。
お通しの煮込みになす、マカロニサラダ。

味のあるおばちゃんに客の男たち。
オレの他に3人いたよ。
早い時間なのにたいしたもんだ。

「乗り遅れたらまた戻ってくればいいよ。」そう言ってオレを送り出してくれた。

東京との県境だが、夕暮れの光景といい、立派な旅先での風景だ。

東飯能から西武線に乗ればオレの家も近いが、まだ4時間帰るつもりはない。

高麗川は3年振りくらいになるのか。
こうして思い出の町になってうれしい。

秩父山脈の稜線がぼんやり見える。
心に沁みる夜景だ。

19:01 拝島(はいじま)駅(八高線/青梅線/五日市線/西武拝島線 東京都)
またひとつ記憶を塗り替える。

夜の拝島に前回と変わったところを発見するのは困難な作業だったが、駅構内にはいくつもの店が入り、行き交う人の数も多い。

東京西部の大ターミナル駅なんだ。
これくらいたくさんの人がいないとさ。
だから、ああ良かったなって思ったよ。

この感覚がオレの平和観にもっとも近い。

19:13 昭島(あきしま)駅(青梅線 東京都)
南北口とも似たような明かりを放つ街。
ヨーカ堂のネオンは他じゃちょっと見かけない高級感を醸している。

青梅まで好きな女性を送り迎えしていた時代がある。

そんな頃があったから、この街で下りたかったんだ。

旅人として生きているオレの必然がそこにある。

19:24 中神(なかがみ)駅(青梅線 東京都)
東京にもあったんだよ。
そんなフレーズが頭に浮かぶ。

実際こんな駅を持っている市町村は東京にもいくらもあるが、このあたりの空気が吸いたくなったのだろう。
だから降りてみた。

町田で暮らしていた時代もオレの中では歴史になった。

都会を離れると魚民グループ、ヤマザキショップの進出が目につく。
駅を下りて、狭い道が延びていく口では寒風の中を人々が家路を急ぎ、広いロータリーの方では若い男女がためらいがちに唇を合わせていた。

20:14 武蔵溝ノ口(むさしみぞのくち)駅(南武線/東急田園都市線 神奈川県)
立川で南武線に乗り換え。

友人が暮らすような街に旅で訪れた。

東急2線と交わるこの街の賑わいは想像を絶し、この街に縁のなかった人生を不思議に思った。

子供の頃には溝ノ口のオバサンなる人物の名をよく耳にしていたけれど。

丸井が建つ現在のような姿はしていなかっただろうが、10分で事を済ますには大き過ぎる街だった。

20:27 武蔵中原(むさしなかはら)駅(南武線 神奈川県)
沿線に競馬場や競輪場を持つ南武線。
ギャンブル好きの知人は賭博電車と呼んでいた。

川崎へ。

高層団地が建ち並ぶこれといった特徴の見当たらない駅前風景だった。

オレが生まれたのは川崎市。
それを強く思ったことはないし、この旅程を選んだ理由としても挙げられない。

多摩川に沿ったいくつかの町に降りたかっただけなんだ。

20:42 鹿島田(かしまだ)駅(南武線 神奈川県)
踏切のある町と駅。

古街道を思わせる道のカーブを曲がり踏切を渡ると「かしまだ」と書かれた電飾看板を潜る。
夜の明かりはあれくらいがちょうどいい。

ふと郷愁に誘われた。

このあたりは工場の匂いがする町だと思っていたんだ。

20:54 尻手(しって)駅(南武線/南武線浜川崎支線 神奈川県)
ガード下の道は何度も通っている。
この時間じゃコンビニしか開いていない両側のアーケードの線路沿いに僅かに連なる赤提灯。

車の流れはひっきりなしで新装された南武線の駅の中で古い姿を留めている川崎下町。

川崎は工都としての道を選んでいる。

さあ帰ろう。
そう言えば、ここ尻手の脇を今年に入って2度も車で往復したよ。

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