*

「鉄旅日記」2012年春 その2-川原湯温泉、岩島、群馬藤岡、高麗川、拝島、昭島、中神、武蔵溝ノ口、武蔵中原、鹿島田、尻手(吾妻線、八高線、青梅線、南武線) 【青春18きっぷで、ダム湖に水没する鉄路へ】

公開日: : 最終更新日:2025/06/17 旅話, 旅話 2012年

鉄旅日記2012年4月1日その2・・・川原湯温泉駅、岩島駅、群馬藤岡駅、高麗川駅、拝島駅、昭島駅、中神駅、武蔵溝ノ口駅、武蔵中原駅、鹿島田駅、尻手駅(吾妻線、八高線、青梅線、南武線)

14:07 川原湯温泉(かわらゆおんせん)駅(吾妻線 群馬県)
巨大な鉄塔が2本突忽と聳える。

それがこの一帯をダム底に沈める悪魔の装置。

数年前にここを訪ねた時からそこにあった。

一旦中断した工事は民主党政権の正体を露わにする形で復活した。
住民の移動が終了したのだろうか。

旅行者の他に人気はなく、温泉の方向を示す朽ちた表示板だけが目を引いた。

14:19 岩島(いわしま)駅(吾妻線 群馬県)
東京じゃ桜の開花くらいでしか春を目視できないが、雪の消えつつあるここ「執念谷」ではその美しい姿を発見できる。

日差しに満ちてあたたかく、草木が風にそよいでいる。

こういった一帯を沈めてしまおうと言い出したのは誰なんだ。

吾妻川と145号国道。
駅を出て体を伸ばしながら見ていたものはそれだけだけど。

16:37 群馬藤岡(ぐんまふじおか)駅(八高線 群馬県)
高崎駅で八高線に乗り換え。

西日の入る待合室にいる。

外にいてもいいが、空っ風が冷たくて。

これが上州。
雪をかぶった赤城山が見える。
あそこからの風だ。
浴びることができてオレはうれしいよ。

鬼瓦を冠した威厳のある駅舎が美しくもあり、上州武士の武骨さも感じさせる。

くすの木病院とビジネスホテルの他に何もない駅前だが、県道まで歩くと町の歴史が見えた気がしたよ。

かつて車で碓氷峠を越えなきゃならなかった者たちにとって、藤岡という地名はは馴染み深いものだった。

18:25 高麗川(こまがわ)駅(八高線/川越線 埼玉県)
26分待ちで駅前で一杯。

寒いから熱燗で。
お通しの煮込みになす、マカロニサラダ。

味のあるおばちゃんに客の男たち。
オレの他に3人いたよ。
早い時間なのにたいしたもんだ。

「乗り遅れたらまた戻ってくればいいよ。」そう言ってオレを送り出してくれた。

東京との県境だが、夕暮れの光景といい、立派な旅先での風景だ。

東飯能から西武線に乗ればオレの家も近いが、まだ4時間帰るつもりはない。

高麗川は3年振りくらいになるのか。
こうして思い出の町になってうれしい。

秩父山脈の稜線がぼんやり見える。
心に沁みる夜景だ。

19:01 拝島(はいじま)駅(八高線/青梅線/五日市線/西武拝島線 東京都)
またひとつ記憶を塗り替える。

夜の拝島に前回と変わったところを発見するのは困難な作業だったが、駅構内にはいくつもの店が入り、行き交う人の数も多い。

東京西部の大ターミナル駅なんだ。
これくらいたくさんの人がいないとさ。
だから、ああ良かったなって思ったよ。

この感覚がオレの平和観にもっとも近い。

19:13 昭島(あきしま)駅(青梅線 東京都)
南北口とも似たような明かりを放つ街。
ヨーカ堂のネオンは他じゃちょっと見かけない高級感を醸している。

青梅まで好きな女性を送り迎えしていた時代がある。

そんな頃があったから、この街で下りたかったんだ。

旅人として生きているオレの必然がそこにある。

19:24 中神(なかがみ)駅(青梅線 東京都)
東京にもあったんだよ。
そんなフレーズが頭に浮かぶ。

実際こんな駅を持っている市町村は東京にもいくらもあるが、このあたりの空気が吸いたくなったのだろう。
だから降りてみた。

町田で暮らしていた時代もオレの中では歴史になった。

都会を離れると魚民グループ、ヤマザキショップの進出が目につく。
駅を下りて、狭い道が延びていく口では寒風の中を人々が家路を急ぎ、広いロータリーの方では若い男女がためらいがちに唇を合わせていた。

20:14 武蔵溝ノ口(むさしみぞのくち)駅(南武線/東急田園都市線 神奈川県)
立川で南武線に乗り換え。

友人が暮らすような街に旅で訪れた。

東急2線と交わるこの街の賑わいは想像を絶し、この街に縁のなかった人生を不思議に思った。

子供の頃には溝ノ口のオバサンなる人物の名をよく耳にしていたけれど。

丸井が建つ現在のような姿はしていなかっただろうが、10分で事を済ますには大き過ぎる街だった。

20:27 武蔵中原(むさしなかはら)駅(南武線 神奈川県)
沿線に競馬場や競輪場を持つ南武線。
ギャンブル好きの知人は賭博電車と呼んでいた。

川崎へ。

高層団地が建ち並ぶこれといった特徴の見当たらない駅前風景だった。

オレが生まれたのは川崎市。
それを強く思ったことはないし、この旅程を選んだ理由としても挙げられない。

多摩川に沿ったいくつかの町に降りたかっただけなんだ。

20:42 鹿島田(かしまだ)駅(南武線 神奈川県)
踏切のある町と駅。

古街道を思わせる道のカーブを曲がり踏切を渡ると「かしまだ」と書かれた電飾看板を潜る。
夜の明かりはあれくらいがちょうどいい。

ふと郷愁に誘われた。

このあたりは工場の匂いがする町だと思っていたんだ。

20:54 尻手(しって)駅(南武線/南武線浜川崎支線 神奈川県)
ガード下の道は何度も通っている。
この時間じゃコンビニしか開いていない両側のアーケードの線路沿いに僅かに連なる赤提灯。

車の流れはひっきりなしで新装された南武線の駅の中で古い姿を留めている川崎下町。

川崎は工都としての道を選んでいる。

さあ帰ろう。
そう言えば、ここ尻手の脇を今年に入って2度も車で往復したよ。

関連記事

「鉄旅日記」2009年晩秋 2日目(倉敷-和田山)その1-倉敷、足立、生山、上菅、伯耆溝口、伯耆大山、赤碕、浦安、松崎、浜村、末恒、湖山、鳥取(伯備線/山陰本線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】

鉄旅日記2009年11月22日・・・倉敷駅、足立駅、生山駅、上菅駅、伯耆溝口駅、伯耆大山駅、赤碕駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2006年如月 初日-佐倉、成東、大網、上総一ノ宮、上総興津、安房鴨川、館山、安房勝山(常磐線/成田線/総武本線/東金線/外房線/内房線) 【鉄道旅に目覚め、1泊2日で房総半島にまいりました。】

鉄旅日記2006年2月4日・・・佐倉駅、成東駅、大網駅、上総一ノ宮駅、上総興津駅、安房鴨川駅、館山駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩秋 初日(東京-倉敷)その1-東京、円町、園部、安栖里、山家、市島、柏原、谷川、西脇市、粟生(東海道新幹線/山陰本線/福知山線/加古川線) 【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】

鉄旅日記2009年11月21日・・・東京駅、円町駅、園部駅、安栖里駅、山家駅、市島駅、柏原駅、谷川駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年卯月 最終日(新津-東京)その1‐新津、馬下、津川、喜多方(磐越西線) 【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】

鉄旅日記2020年4月5日・・・新津駅、馬下駅、津川駅、喜多方駅(磐越西線) 2020・4・5 5

記事を読む

「鉄旅日記」2015年夏 2日目(新南陽-鹿児島中央)その1-新南陽、新山口、阿知須、宇部新川、小野田港、下関、八幡、陣原(山陽本線/宇部線/小野田線/鹿児島本線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】

鉄旅日記2015年8月13日その1・・・新南陽駅、新山口駅、阿知須駅、宇部新川駅、小野田港駅、下関駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 2日目(湯沢-鷹ノ巣)その3‐驫木、風合瀬、大戸瀬、千畳敷、北金ヶ沢(五能線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】

鉄旅日記2020年1月12日・・・驫木駅、風合瀬駅、大戸瀬駅、千畳敷駅、北金ヶ沢駅(五能線) 13

記事を読む

「鉄旅日記」2007年如月 最終日(奈良-東京)-奈良、亀山、桑名、弥冨、富士、沼津(関西本線/東海道本線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】

鉄旅日記2007年2月12日・・・奈良駅、亀山駅、桑名駅、弥冨駅、富士駅、沼津駅(関西本線/東海道本

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春 その1-扇町、浅野、海芝浦、国道、大川、保土ヶ谷、東戸塚、網代、伊豆多賀、宇佐美、熱海(鶴見線、海芝浦支線、大川支線、東海道本線、伊東線) 【青春18きっぷで、鶴見線・伊豆・駿河途中下車旅】

鉄旅日記2012年4月8日その1・・・扇町駅、浅野駅、海芝浦駅、国道駅、大川駅、保土ヶ谷駅、東戸塚駅

記事を読む

「鉄旅日記」2011年秋【再びみちのくひとり旅】最終日(長井-東京)-長井、荒砥、赤湯、羽前千歳、作並、東照宮、槻木、角田、福島、飯坂温泉、本宮、宇都宮、雀宮(山形鉄道/仙山線/阿武隈急行/福島交通飯坂線/東北本線)

鉄旅日記2011年11月6日・・・長井駅、荒砥駅、赤湯駅、羽前千歳駅、作並駅、東照宮駅、槻木駅、角田

記事を読む

「鉄旅日記」2016年夏 2日目(弘前-小樽)その2-赤井川、姫川、東森、渡島砂原、森、野田生、山越、八雲、長万部、ニセコ、小樽(函館本線/渡島砂原支線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

鉄旅日記2016年8月11日・・・赤井川駅、姫川駅、東森駅、渡島砂原駅、森駅、野田生駅、山越駅、八雲

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その5 ‐青森、三沢(青い森鉄道)/ホテル天水 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・青森駅、三沢駅(青い森鉄道)/ホテル

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その4 ‐板柳、川部、撫牛子、大釈迦、鶴ヶ坂(五能線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・板柳駅、川部駅、撫牛子駅、大釈迦駅、

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その3 ‐川部、五所川原、木造(五能線)/神武食堂 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・川部駅、五所川原駅、木造駅(五能線)

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その2 ‐東大館、大館、弘前(花輪線/奥羽本線) 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・東大館駅、大館駅、弘前駅(花輪線/奥

「鉄旅日記」2022年新春 2日目(湯瀬温泉-三沢)その1 ‐湯瀬温泉、鹿角花輪、十和田南(花輪線)/和心の宿姫の湯 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】

鉄旅日記2022年1月9日・・・湯瀬温泉駅、鹿角花輪駅、十和田南駅(

→もっと見る

    PAGE TOP ↑