「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、ダム湖に水没する鉄路へ】その2-川原湯温泉、岩島、群馬藤岡、高麗川、拝島、昭島、中神、武蔵溝ノ口、武蔵中原、鹿島田、尻手(吾妻線、八高線、青梅線、南武線)
鉄旅日記2012年4月1日その2・・・川原湯温泉駅、岩島駅、群馬藤岡駅、高麗川駅、拝島駅、昭島駅、中神駅、武蔵溝ノ口駅、武蔵中原駅、鹿島田駅、尻手駅(吾妻線、八高線、青梅線、南武線)
14:07 川原湯温泉(かわらゆおんせん)駅(吾妻線 群馬県)
巨大な鉄塔が2本突忽と聳える。
それがこの一帯をダム底に沈める悪魔の装置。
数年前にここを訪ねた時からそこにあった。
一旦中断した工事は民主党政権の正体を露わにする形で復活した。
住民の移動が終了したのだろうか。
旅行者の他に人気はなく、温泉の方向を示す朽ちた表示板だけが目を引いた。
14:19 岩島(いわしま)駅(吾妻線 群馬県)
東京じゃ桜の開花くらいでしか春を目視できないが、雪の消えつつあるここ「執念谷」ではその美しい姿を発見できる。
日差しに満ちてあたたかく、草木が風にそよいでいる。
こういった一帯を沈めてしまおうと言い出したのは誰なんだ。
吾妻川と145号国道。
駅を出て体を伸ばしながら見ていたものはそれだけだけど。
16:37 群馬藤岡(ぐんまふじおか)駅(八高線 群馬県)
高崎駅で八高線に乗り換え。
西日の入る待合室にいる。
外にいてもいいが、空っ風が冷たくて。
これが上州。
雪をかぶった赤城山が見える。
あそこからの風だ。
浴びることができてオレはうれしいよ。
鬼瓦を冠した威厳のある駅舎が美しくもあり、上州武士の武骨さも感じさせる。
くすの木病院とビジネスホテルの他に何もない駅前だが、県道まで歩くと町の歴史が見えた気がしたよ。
かつて車で碓氷峠を越えなきゃならなかった者たちにとって、藤岡という地名はは馴染み深いものだった。
18:25 高麗川(こまがわ)駅(八高線/川越線 埼玉県)
26分待ちで駅前で一杯。
寒いから熱燗で。
お通しの煮込みになす、マカロニサラダ。
味のあるおばちゃんに客の男たち。
オレの他に3人いたよ。
早い時間なのにたいしたもんだ。
「乗り遅れたらまた戻ってくればいいよ。」そう言ってオレを送り出してくれた。
東京との県境だが、夕暮れの光景といい、立派な旅先での風景だ。
東飯能から西武線に乗ればオレの家も近いが、まだ4時間帰るつもりはない。
高麗川は3年振りくらいになるのか。
こうして思い出の町になってうれしい。
秩父山脈の稜線がぼんやり見える。
心に沁みる夜景だ。
19:01 拝島(はいじま)駅(八高線/青梅線/五日市線/西武拝島線 東京都)
またひとつ記憶を塗り替える。
夜の拝島に前回と変わったところを発見するのは困難な作業だったが、駅構内にはいくつもの店が入り、行き交う人の数も多い。
東京西部の大ターミナル駅なんだ。
これくらいたくさんの人がいないとさ。
だから、ああ良かったなって思ったよ。
この感覚がオレの平和観にもっとも近い。
19:13 昭島(あきしま)駅(青梅線 東京都)
南北口とも似たような明かりを放つ街。
ヨーカ堂のネオンは他じゃちょっと見かけない高級感を醸している。
青梅まで好きな女性を送り迎えしていた時代がある。
そんな頃があったから、この街で下りたかったんだ。
旅人として生きているオレの必然がそこにある。
19:24 中神(なかがみ)駅(青梅線 東京都)
東京にもあったんだよ。
そんなフレーズが頭に浮かぶ。
実際こんな駅を持っている市町村は東京にもいくらもあるが、このあたりの空気が吸いたくなったのだろう。
だから降りてみた。
町田で暮らしていた時代もオレの中では歴史になった。
都会を離れると魚民グループ、ヤマザキショップの進出が目につく。
駅を下りて、狭い道が延びていく口では寒風の中を人々が家路を急ぎ、広いロータリーの方では若い男女がためらいがちに唇を合わせていた。
20:14 武蔵溝ノ口(むさしみぞのくち)駅(南武線/東急田園都市線 神奈川県)
立川で南武線に乗り換え。
友人が暮らすような街に旅で訪れた。
東急2線と交わるこの街の賑わいは想像を絶し、この街に縁のなかった人生を不思議に思った。
子供の頃には溝ノ口のオバサンなる人物の名をよく耳にしていたけれど。
丸井が建つ現在のような姿はしていなかっただろうが、10分で事を済ますには大き過ぎる街だった。
20:27 武蔵中原(むさしなかはら)駅(南武線 神奈川県)
沿線に競馬場や競輪場を持つ南武線。
ギャンブル好きの知人は賭博電車と呼んでいた。
川崎へ。
高層団地が建ち並ぶこれといった特徴の見当たらない駅前風景だった。
オレが生まれたのは川崎市。
それを強く思ったことはないし、この旅程を選んだ理由としても挙げられない。
多摩川に沿ったいくつかの町に降りたかっただけなんだ。
20:42 鹿島田(かしまだ)駅(南武線 神奈川県)
踏切のある町と駅。
古街道を思わせる道のカーブを曲がり踏切を渡ると「かしまだ」と書かれた電飾看板を潜る。
夜の明かりはあれくらいがちょうどいい。
ふと郷愁に誘われた。
このあたりは工場の匂いがする町だと思っていたんだ。
20:54 尻手(しって)駅(南武線/南武線浜川崎支線 神奈川県)
ガード下の道は何度も通っている。
この時間じゃコンビニしか開いていない両側のアーケードの線路沿いに僅かに連なる赤提灯。
車の流れはひっきりなしで新装された南武線の駅の中で古い姿を留めている川崎下町。
川崎は工都としての道を選んでいる。
さあ帰ろう。
そう言えば、ここ尻手の脇を今年に入って2度も車で往復したよ。
関連記事
-
「鉄旅日記」2019年長月【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】最終日(宮古-東京)その3‐白石、郡山、黒磯、宇都宮(東北本線)
鉄旅日記2019年9月23日・・・白石駅、郡山駅、黒磯駅、宇都宮駅(東北本線) 15:49 白石(し
-
「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】最終日(松阪-東京)-松阪、鳥羽、伊勢市、宇治山田、亀山、名古屋、豊橋、浜松、熱海(近鉄山田線/参宮線/紀勢本線/関西本線/東海道本線)
鉄旅日記2008年7月21日・・・松阪駅、鳥羽駅、伊勢市駅、宇治山田駅、亀山駅、名古屋駅、豊橋駅、浜
-
「鉄旅日記」2020年初秋【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】3日目(高松)その1 ‐片原町駅、瓦町駅、高松築港駅、玉藻公園(高松城跡)、一宮寺、滝宮天満宮、滝宮駅、満濃池
車旅日記2020年9月21日・・・片原町駅、瓦町駅、高松築港駅、玉藻公園(高松城跡)、一宮寺、滝宮
-
「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】初日(東京-河口湖-新島々-長野-直江津)その1-保谷、代々木、都留市、富士山、河口湖(西武池袋線/山手線/中央本線/富士急行)
鉄旅日記2018年2月10日・・・保谷駅、代々木駅、都留市駅、富士山駅、河口湖駅(西武池袋線/山手線
-
「JR東海&16私鉄乗り鉄☆たびきっぷ」でめぐる東海旅】初日(東京-岳南江尾-豊橋-三河田原-岡崎-尾張瀬戸-勝川-枇杷島-桑名)その3-駅前、赤岩口、井原、運動公園前、駅前大通、豊橋、岡崎、三河豊田、尾張瀬戸(豊橋鉄道市内線/東海道本線/愛知環状鉄道/名鉄瀬戸線)
鉄旅日記2018年9月15日・・・駅前停留所、赤岩口停留所、井原停留所、運動公園前停留所、駅前大通停
-
「鉄旅日記」2005年聖夜【廃線となった鹿島鉄道に乗った記録が残されておりました。】-鹿島神宮、新鉾田、鉾田、石岡(鹿島線/鹿島臨海鉄道/鹿島鉄道/常磐線)
鉄旅日記2005年12月24日・・・鹿島神宮駅、新鉾田駅、鉾田駅、石岡駅(鹿島線/鹿島臨海鉄道/鹿島
-
「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】3日目(小樽-富良野)その1-小樽、発寒中央、琴似、石狩当別、石狩月形、新十津川、滝川、茶志内、美唄(函館本線/学園都市線)
鉄旅日記2016年8月12日・・・小樽駅、発寒中央駅、琴似駅、石狩当別駅、石狩月形駅、新十津川駅、滝
-
「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】3日目(南宮崎-隼人)その1-南宮崎、伊比井、北郷、飫肥、日向大束、志布志、油津、日南、木花、田吉、宮崎空港(日南線、宮崎空港線)
鉄旅日記2013年8月12日その1・・・南宮崎駅、伊比井駅、北郷駅、飫肥駅、日向大束駅、志布志駅、油
-
「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄
車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊外ポテチーノ 108㎞ 繁華街を抜け
-
「鉄旅日記」2018年神無月【北陸へ。信州へ。友を訪ねての巡礼旅でございます】2日目(越前大野-福井-米原-名古屋-松本)その2-平田、松本、食蔵BASARA(篠ノ井線)
鉄旅日記2018年10月7日・・・平田駅、松本駅(篠ノ井線) 16:43 平田(ひらた)駅(篠ノ井