「鉄旅日記」2016年夏 2日目(弘前-小樽)その2-赤井川、姫川、東森、渡島砂原、森、野田生、山越、八雲、長万部、ニセコ、小樽(函館本線/渡島砂原支線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】
鉄旅日記2016年8月11日・・・赤井川駅、姫川駅、東森駅、渡島砂原駅、森駅、野田生駅、山越駅、八雲駅、長万部駅、ニセコ駅、小樽駅(函館本線/渡島砂原支線)
13:21 赤井川(あかいがわ)駅(函館本線 北海道)
思いがけず特急の通過待ちで数分の停車。
ここには民家らしきものは見当たらない。
七飯を出てからはずっと人煙稀なところに線路が敷かれていた。
躾のために男の子が置き去りにされる事件が起きたのが確か七飯のあたりだった。
無事に保護されたと聞いた時は心からほっとしたよ。
大沼と駒ケ岳は絶景と言っていい。
車中から素晴らしい写真が撮れてうれしい。
日差しが強くなってきた。
13:48 姫川(ひめかわ)駅(函館本線 北海道)
列車の行き違い待ち5分の停車。
なるほど夏だ。
特別列車でも走らせたのだろう。
事前に見ていた時刻表の運行とは違っている。
ここ周辺にも民家は見えず、舗装されていない道が駅まで通じていた。
駅舎までは線路を渡らなきゃならない。
踏切が下りているところを渡ったら、5歳くらいのかわいらしい男の子から「いけないんだよ」とたしなめられた。
彼の頭を撫ぜて誤魔化すしかなかったよ。
森~東森間(徒歩)
14:31 東森(ひがしもり)駅(函館本線渡島砂原支線 北海道)
港町森にさっきの男の子の元気な声が響く。
微笑ましくも輝かしい人類の未来を想う。
ビール片手に線路に沿って歩く。
こんな上天気なら駒ケ岳はいつもそこにある。
そんな暮らしを少しだけ想像したけど、その意味を見出せずに止めた。
物音が少ない分カラスの声がよく響く。
それにしてもここ東森駅への案内表示がないのはなぜなのか。
長年の経験からくる「あれが駅に違いない」という勘がなければ、ここには辿り着けなかった。
東森には一日に上下12本しか列車は止まらない。
15:30 渡島砂原(おしまさわら)駅(函館本線渡島砂原支線 北海道)
東森からさらに歩いてこの駅に辿り着く計画を立てていた。
列車に乗ってみて、その計画がいかに無謀だったか分かった。
それよりも絶妙のタイミングで函館に戻る列車があってよかった。
ここは降りるべき駅だった。
海辺へと坂道を下りていく。
波打ち際に行く道が見つからず、しばらく歩くとお稲荷さんがあった。
石段を上がるにつれて駒ケ岳が頭頂部から姿を現してくる。
駒ケ岳がより身近に感じられた。
石段を下りてビールを買う。
商店の奥さんはやけにオレの来訪に驚いていた。
他所の人間が降りる駅じゃないのだろう。
海の先には大陸が見える。
あれはどうやら室蘭で、その先は日高らしい。
空も海も青く、駅には内地では見かけない飛族が存在を音に表しながら飛んでいる。
寄ってこないのがありがたい。
土地土地の違いをあらためて感じている。
何より4年前に思いを残したこの駅にこれてうれしい。
さっきの男の子のことを思い出している。
ニューヨークもハワイもいいけど、北海道もいいよな。
いろいろある人生だけど、
オマエ負けるなよ。
踏みとどまれよ。
どうにか持ちこたえろよ。
そんな内なる声が聞こえた。
渡島砂原駅周辺風景
森(もり)駅(函館本線/函館本線渡島砂原支線 北海道)にて
17:07 野田生(のだおい)駅(函館本線 北海道)
森駅前の気温表示は16時を過ぎて36度を示していた。
壊れてないか?
ただ暑いには暑い。
ものすごく暑い。
遠慮会釈なく焼かれた首筋や腕が不満を訴えている。
リュックにはTシャツしか入っていないんだ。
どうしてやることもできない。
森駅で30分以上停車したためビールと名物いかめしを買い込んだ。
いかめし650円。
味はワルくない。
ただ、似たようなイカの煮物を口にしたことがある。
つまりもう二度と食べる機会が訪れないとしても、オレはがっかりすることはないだろう。
小さな男の子連れの家族を気にかけつつ眠り、無人駅で降りて5号国道を北上している。
右に見える大陸は室蘭だという。
なるほど北の大地。
海の向こうにまでその姿を誇示するとは何という大きさか。
ところでオレの行動のおかしさよ。
五稜郭桔梗間では部活で走る学生とすれ違ったけど、都市から外れ、大型トラックが行き交う幹線国道を歩いていく酔狂なヤツは、オレ以降なかなか現れることはないだろう。
右手には太平洋と大陸。
行けども風景に変化はない。
強い日差しに焼かれ続け、眩しく歩いている。
野田生~山越間(徒歩) 関所跡の夜泣き石
18:04 山越(やまこし)駅(函館本線 北海道)
あれから行けども風景に変化はない。
西日がだいぶ傾いたくらいだ。
道を往く者1名とすれ違い、たった今蜘蛛の巣に引っかかった。
いかに歩道が利用されていないかが分かる。
ただしどうでもいい。
「山越内」という最北の関所があったという歴史的な場所に通りかかった。
当時の井戸や夜泣き石などが残る野田生にかけての一帯は、江戸時代に蝦夷との境界線だったという。
路傍にカラスが眠るように死んでいた。
山越~八雲間(徒歩)
19:09 八雲(やくも)駅(函館本線 北海道)
北の大地で5駅間を歩いた日。
そりゃ足は痛む。
挑戦の最終地八雲駅前は4年前より人気は少ないが、人の声は絶えない。
跨線橋を2度越えて辿り着いた八雲市街。
旅館や飲食店、コンビニなどが集まる、森以降初めて現れた町だ。
新日本プロレスも数年前に興行を打っている。
もう少し余裕があれば海辺に出たかったけど、次の下り列車に乗るにはぎりぎりだった。
特急「北斗」に乗りこんでいる。
特急の乗り心地はやっぱりいいな。
でも函館本線の時刻表係には、もう少し接続よく組んでほしいと思う。
長万部(おしゃまんべ)駅(函館本線/室蘭本線 北海道)駅前風景
21:21 ニセコ駅(函館本線 北海道)
長万部で乗り継ぐ。
ここで数分の停車。
蕨岱、昆布などアイヌ語の駅名が続く区間。
道内屈指のリゾート地に着くと、どやどやと乗り込んでくる人たちがいる。
長万部小樽間は乗車3時間に及ぶ区間で、生活圏はいくつかに分かれているだろうが、ここはそのひとつか。
この先の倶知安は間違いなくそういう町だ。
旅行者は等しく小樽までいくだろう。
木古内あたりで見かけた男の姿がこの車中にある。
母親が幼い姉妹を連れている。
あぁかわいいなあ。
外に出て振り返って駅を眺めるとメルヘン的な建物が闇に浮かび、ロータリー横の広場には盆踊りの櫓が組まれていた。
駅舎の入口では若い男が2人向かい合って話に夢中だった。
ああいう時代が誰にでもある。
東京にいたオレたちはその場所として駅は選ばなかったけど。
次の比羅夫に着く頃に車内に特別なアナウンスが流れた。
比羅夫には公共、タクシー合わせ交通機関が存在しないから次の倶知安で降りるようにと。
その比羅夫駅のホームに入線して駅舎を眺めると、仄かな灯に2人の男の姿が影のように浮かび上がっている。
駅舎を利用してBARでもやっているのだろうか。
倶知安に着くと多くが席を立ち、入れ替わりにまた多くが乗ってくる。
さっきの母娘も降りていった。
日曜日に神宮球場でご一緒したKさんを見るまでもなく、女の子の父親という立場に羨望に近い思いを持っている。
言葉を交わすでもなく様々な巡り合いが人生を通過していく。
小樽(おたる)駅(函館本線 北海道)にて
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