「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】初日(東京-三ノ宮)-金町、東京、静岡、浜松、弁天島、大垣、美濃赤坂、石山寺、膳所、尼崎、西宮、芦屋、三ノ宮(東海道本線、東海道本線美濃赤坂支線、京阪石山坂本線)
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最終更新日:2023/04/25
旅話 2009年
鉄旅日記2009年5月1日
2009・5・1 4 :26 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都)
眠れぬ夜が明けた。
じきに明るくなって、5月1日はどうやら晴天を連れてくる。
始発電車がやってくる。
いつものことだが、旅立ち前の不安に包まれている。
5:11 東京(とうきょう)駅(東海道新幹線/東北新幹線/上越新幹線/長野新幹線/東海道本線/中央本線/横須賀線/山手線/東京メトロ 東京都)
北千住、日暮里、東京。
東京の朝は早い。
ホームの人影こそ少ないが、移動する人の数は少なくない。
やがてこの列車も埋まるだろう。
北千住で、そこに暮らす彼女に想いを飛ばし、日暮里では跨線橋から見えた空を美しく思った。
次に降りるのは静岡。
湘南海岸が見えるあたりが好きなんだが、オレは起きていられるだろうか。
8:44 静岡(しずおか)駅(東海道新幹線/東海道本線 静岡県)
暁の列車は終点静岡へ。
席は埋まっている。
東海路は変わらず平穏らしい。
強い日差しに何度も眠りに落ちた。
金町で感じていた不安はすでにない。
国府津だったか。
ひなびた海沿いの町に教会が見えた。
美しい風景だった。
10:03 浜松(はままつ)駅(東海道新幹線/東海道本線 静岡県)
東海道を半分きた。
方々から集まった駿河人はこの街で多くは降りたが、ここ遠州を越えて、さらに三河を目指す者が少なくない。
今日は平日だが、このあたりじゃ勤め人を見かけない。
メーデー会場にでも動員されているのか。
駿河娘はなかなか美しい。
10:36 弁天島(べんてんじま)駅(東海道本線 静岡県)
浜名湖にはいくつか思い出がある。
潮干狩りの看板を見て思い出したよ。
ああ、そうだった。
両親が、まだ子供だったアニキとオレを新幹線に乗せるために潮干狩りに連れてきてくれたんだ。
その日、昼に入った食堂のテレビでついていた大河ドラマ「草燃える」で木曽義仲の死を知った。
車がある頃には重要な通過地点だった。
当時、最も大切だと思われた記憶が中田島砂丘をはじめこのあたりで生まれた。
浜名湖は縦横に手足を広げ、マリーナが生まれ、島には船が出ている。
風はほんの少しだけ冷たいが、湖畔はあたたかな光に照らされ、うららかな風景が続いている。
サザンオールスターズが大規模な野外Liveを行った場所は駅のムコウか。
弁天島の大鳥居が見える船着き場で、同じような皺を顔に刻んだ男たちが無言のまま座っていた。
12:43 大垣(おおがき)駅(東海道本線/東海道本線美濃赤坂支線/樽見鉄道/養老鉄道 岐阜県)
中京地域に差し掛かる頃はいつも眠くてかなわない。
三河湾が尽きる蒲郡あたりから眠りに落ちた。
必ず起こるといっていい現象で、実は予定に入っている。
ダメだな、これじゃ。
名古屋駅周辺の東京とも他の都会とも違う、巨大な鉄骨やら橋脚が目に飛び込んでくる、どことなく場末を思わせる風景には懐かしさを感じている。
木曽川、長良川、揖斐川を越えて大垣。
美濃赤坂に向かう車中にいる。
美濃赤坂(みのあかさか)駅(東海道本線美濃赤坂支線 岐阜県)にて
荒尾(あらお)駅(東海道本線美濃赤坂支線 岐阜県)にて
北大垣(きたおおがき)駅(養老鉄道 岐阜県)にて
14 :31 大垣(おおがき)駅(東海道本線/東海道本線美濃赤坂支線/樽見鉄道/養老鉄道 岐阜県)
美濃赤坂駅から大垣の裏街道を歩いて1時間。
大垣に戻ってビールとおでん。
腹は満ちた。
東京的感覚じゃ随分寂しいあたりを歩いてきたが、そこには間断のない暮らしがあった。
北大垣駅の近くで小学生の少女がきちんとした挨拶をしてくれたよ。
赤坂ではきれいな美濃娘が降りていった。
かつて関ヶ原合戦の前夜まで徳川家康率いる東軍が陣を張り、何事かで栄えたのであろう一帯に延びる線路はまだ生きていて、今もそこで生きている男の力強い姿を見た。
3年前は雨だったよ。
赤坂の背後に削られた山が見える。
あれは鉱山か。
いくつか廃線となった鉄路を跨いだが、あの町は現在も生き続けている。
次の荒尾駅の背後は小学校で子供たちの弾けるような歓声が耳に心地好かった。
あの環境を維持するのが大人の役目だ。
今そんなことを思っている。
4両編成の米原行きの席は埋まっている。
石山(いしやま)駅(東海道本線/京阪石山坂本線 滋賀県)にて
16:31 石山寺(いしやまでら)駅(京阪石山坂本線 滋賀県)
瀬田川の存在には気づいていなかった。
マヌケだったが、今回の旅の唐突な喜びとなった。
石山駅からスナック街を抜けて瀬田川畔へ。
遠くに近江大橋が見え、向かった先には唐橋が架かっている。
そして渋滞している。
ボート競技の若者は眩しく、一帯の清楚なたたずまいに魅せられた。
京阪電車に乗って膳所に向かっている。
京阪膳所(けいはんぜぜ)駅(京阪石山坂本線 滋賀県)にて
16:54 膳所(ぜぜ)駅(東海道本線 滋賀県)
琵琶湖は遠かった。
かつて近江大橋を渡り終えた時に見た湖畔の灯を探していたんだ。
今回だけじゃない。
2003年の春に今は大津京と駅名が変更された西大津駅から浜大津に向けて歩いた時もそうだった。
でも、あれから幻のように姿を見せない。
石山、膳所は思っていたような町で降りてよかった。
木曽義仲終焉の地、粟津を冠した駅は住宅街の中に小さく存在していた。
興味の尽きない一帯だった。
18:10 尼崎(あまがさき)駅(東海道本線/福知山線/東西線 兵庫県)
深田恭子さんが圧倒的なまでにカワイイ、映画「下妻物語」でジャージの街として登場し、タイガースが優勝した際には騒動を待つマスコミ連中が張り込む俗に言う尼崎は阪神駅を指すらしい。
ここは海からは離れ、六甲側は未完成で、梅田の高層ビルが微妙な距離を置いて見える。
沿線の風景にも駅前にも都会は感じられない。
18:28 西ノ宮(にしのみや)駅(東海道本線 兵庫県)
六甲が迫ってきた。
海も近づいてきたのだろう。
オレが二十歳前までは阪急野球団の本拠地があった。
駅近くに繁華街らしきものは見当たらない。
集合住宅だけが目立つ姿は尼崎の事情と変わらない。
ただ夜になれば実力以上の輝きを放つ街。
かつて阪神高速から六甲に沿って広がるきれいな光の連なりを見た。
この街はその珠玉の夜景に参加している。
18:52 芦屋(あしや)駅(東海道本線 兵庫県)
高級住宅街の玄関口に相応しい品を備えた駅前だった。
人の流れは多くない。
たぶんこの街の有名校なのだろう。
そこの学生に絡んでいるオッサンがいて気分を害した。
絡まれていた3人から、後ろで何かひそひそと言われたのだろう。
ヤツはオレと同年齢くらいだろうと思われるが、情けない身なりをしていた。
関西や浅草に行くといつもああいうのがいる。
さて、西国も日暮れの時間だ。
神戸に泊まるのは初めてだ。
周囲で交わされている関西弁に耳を傾ける。
懐かしくて優しい響きだ。
21:54 スーパーホテル神戸410号
三ノ宮で降りる。
甘いパンの香りに包まれていた。
海側に下りていった。
阪神電鉄三宮駅が入った百貨店を過ぎて2号線に出るあたりへ。
繁華街と呼べる一帯じゃなかった。
肉が食いたくてビヤレストランの看板を出している店に入り、神戸人に紛れた。
居心地は悪くなかったけど、家族連れが多く少し遠慮した。
ふとラーメンが食べたくなった。
神戸ラーメンってあったっけ。
店を出てネスレ本社前を通り、ポートライナー駅の脇を抜けて三ノ宮駅に戻る。
このホテルに行く道は歩いたことがある。
上り詰めると新神戸駅に出る。
そこからさらに上がればハーブ園。
いい思い出しか残っていない街だ。
途中にラーメン屋くらいあるだろうと思い元町方面に目を向けると、人であふれている。
どれほどかと見に行ったら、その繁華さに驚いた。
これが神戸かと。
縦横に路地が走り、スナックの看板に飲み屋、食べ物屋。客引きの男が大勢出て、ヤクザやホステスが行き交う。
イキイキとしていたよ。
遠くない過去にこの街は最悪の震災に見舞われている。
すれ違った大半の人々があの悲惨な光景の当事者もしくは目撃者なのかと思うと、神戸人に向ける目は優しくなる。
問題は残しているだろうが、復興したのだろう。
かつての恋人が選んだ大手ゼネコン勤めの男は社命で復興要員に選ばれ、彼女も東京を離れた。
そんなことを思いながらここにきた。
神戸娘も魅力的だ。
そして彼女たちも震災を知っている。
途方もない悲しみを知った神戸人に敬意を払い、明日の朝ここを離れる。
新神戸駅に向かう坂を上がっていて思い出したこと。
何年前だか正確に思い出すつもりはないが、オレの誕生日の翌日だった。
京都に行って、冷たい彼女に苦い思いをして、あてもなく神戸にやってきてぶらぶら歩いたんだ。
今日と同じですれ違う女性が素敵で、ちょっとした妄想と遊んで、元気になって帰った。
今回も同じだ。
オレは北千住に暮らす彼女と、遠く離れたここ神戸でばったり行き逢う光景を浮かべながら、繁華な街をどこまでも歩いていった。
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