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「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】初日(東京-弘前)-福島、仙台、北山形、新庄、秋田、井川さくら、大館、弘前(東北本線/仙山線/奥羽本線)

公開日: : 最終更新日:2020/09/11 旅話 2016年

鉄旅日記2016年8月10日
2016・8・10 10:35 福島(ふくしま)駅(東北・秋田山形新幹線/東北本線/奥羽本線/阿武隈鉄道/福島交通飯坂線 福島県)
暑く寝苦しい夜だった。眠りは浅く目は冴えていた。

今回ほど気持ちの乗らない旅もない。
でもオレには男としての道がある。

計画は立派なのができている。
チケットも宿の予約も済んでいる。
やっぱり出かけなきゃな。

明けかける練馬の朝はどんよりと重かった。

北池袋駅、赤羽八幡神社、「私本太平記」。。
やがて3月の風景の中で眠りに落ちた。
那須あたりから乗ってきた若い母親と小さな男の子が、郡山からはひとつ手前の席にいることに気付いた。

その郡山でビールを補充して、ここ福島では十分な時間を得ている。

あの5月の日にEさん夫妻と歩いたのはこの通りで間違いない。
あの日の人の多さや泊まったホテルやら、還らぬ記憶に折り合いをつけて、駅前通りの先を塞ぐ信夫山を一枚撮った。

そうこうして福島を離れてすでに10分以上が経過して仙台行に乗っている。

12:06 仙台(せんだい)駅(東北・秋田山形新幹線/東北本線/常磐線/仙山線/仙石線/仙台市営地下鉄/仙台空港アクセス線 宮城県)
眠りこけていてロングシートにタオルを置き忘れたことに気付いて、上りかけていた階段を戻ると人波に揉まれた。

「うわっ、人多すぎっ」
「東京みたいっ」。
そんな声を耳が拾う。

再び階段を上って通路に出ると人波は東京のそれと比べるまでもない。
それが仙台という街。

今度こそ「萩の月」を買って帰るべく、売場を物色して仙山線ホームへ。

駅の外観はオレが知っているままだったよ。

13:36 北山形(きたやまがた)駅(奥羽本線/仙山線/左沢線 山形県)
山形人の坩堝に巻かれている。
多くは学生だ。
終点新庄までこのままはないだろうが、この事態は予想外。

ただ次の列車が到着するのは約2時間後。
そういうものか。

おかげで少女たちの山形訛りが聞ける。

奥羽本線と左沢線とで駅舎もホームも別になっていて移動には時を要する。
表に出たのは左沢線駅舎で街中の外れの風景を見たが、急いでいてあまり覚えていない。

奥羽本線駅舎は改装中だった。

15:21 新庄(しんじょう)駅(山形新幹線/奥羽本線/陸羽東線/陸羽西線 山形県)
最近のオレは若者が好きになった。

先輩、同僚と酔った挙句に入ったキャバクラで横についたキャバ嬢にそんなことを言った。
あの店で覚えているのはそれくらいのものだ。

その思いを、爽やかな若者が多く乗りこんでいた山形線の車中で感じていた。

追憶の13号国道に沿った山形道中には馴染みがある。
あれから知識が積もり、馴染みの風景にも違った側面が存在することを知り、感じていた。

神町、東根には古い駅舎が残り、乗客の多くは学生だから小さな駅にも降車時の人だかりが発生していた。
その光景を微笑ましく眺めた。

もうこれ以上どこにも廃れてほしくないんだ。

かつての一宿新庄。
ふらふらと足に任せて歩いてみた。

向かったのは城跡公園じゃない。
そっちには行ったことがない。

酒場の入場門をもう一度見たくて足に尋ねた。
門は今も残っていたけど、広告板は外され外枠のみの姿で脇に追いやられ役目を終えていた。

駅に戻りビール。
発車を控えて秋田行の乗車率が上がりやがて満席になった。

18:26 秋田(あきた)駅(秋田新幹線/奥羽本線/羽越本線/男鹿線 秋田県)
5年ぶり。

お得意との電話で費やしてしまった再会の時。
一見賑やかそうだが、駅前はホテルメトロポリタンと僅かな商業施設しか存在しないという街の事情に変化はなかった。

奥羽本線車中、目の前で隣り合わせに並んだ二人のメガネ美人に目を奪われていた。
まるで挑発するかのように惜しげもなくさらした足はとてつもなく艶かしく、眩しく、ずっと魅了され続けていた。

ひとりは大曲、もうひとりは刈和野で降りていってしまい、残されたオレは彼女たちが去った風景をぼんやりと眺める。
そこにあった空は青く美しかった。

通り過ぎて行く駅はどれも古く、周辺風景に溶け込んでいる様は名優を眺める心情に似ている。

19:20 井川さくら(いかわさくら)駅(奥羽本線 秋田県)
追憶の7号国道を渡ったところにローソンが見えて微笑む。
ビールを飲まなきゃな。

とにかく桜の名所らしい。

駅名の由来を記したものは見当たらないが、元は単なる井川駅だったのだろうな。

夕日に輝く稲穂を写した。
一緒に写った背後の山は男鹿半島だろうか。

見えないけれど手前には八郎潟がある。
子供と夕涼みに出ていた母親の声は慈愛に満ちている。

21:12 大館(おおだて)駅(奥羽本線/花輪線 秋田県)
車中の路線図を見るまで大館が秋田犬の本場であることを忘れていた。

経緯には及んでいないが忠犬ハチ公は大館駅から渋谷駅に贈られたのだという。
ホームに置かれたハチ公神社は二代目を数えている。

きりたんぽも大館が本場らしい。
5年前には鹿角花輪で鍋セットを友人のEさんのと合わせて買って帰って、夏の鍋を囲んだ。

ところで大館駅周辺の夜の様子に不安を覚えていた。
というのは3日後の23時過ぎにここに泊まるために戻ってくるわけだが、その時間の食料調達が可能かどうか疑わしい。

そこで4年振りの街歩きに出た。
相変わらず暗い駅前だ。

3日後に泊まるホテルの存在はすでに掴んでいて、雑草が茂る空地に囲まれた姿が駅からも見える。
脇に24時間営業のコンビニがあって、あっさりと不安は解消した。

ビールを買ってホテルの前を通り、大館での記憶と現実との間で一悶着があって、街に毒づきながら駅に戻る。

相変わらず薄暗くて人気のない駅前だ。
そんな駅に何度も降りる人生や、でもコンビニを見つけた安心感もあってか、実はこの風情が嫌いじゃないことを感じて笑った。

3日後にあのコンビニに寄って、忘れていなかったら土産用きりたんぽセットがあるか探してみるよ。

22:51 弘前プリンスホテル417号
津軽訛りが聞こえた駅前。

人通りはほぼ絶え、田舎の街中へと向かう道が放射状に見える。
地図を見る限りでは迷いそうな街だ。

ホテルへの途中「ねぷた」が光っていた。
駅から3分と歩かない地点はかび臭い一画だ。

桜とお城の弘前だけど、明日の出発は早く、この3分地点の往復で街を離れることになる。

駅から城にかけては一度車で往復したことがある。
もう10年も前の肌寒い黄金週間だった。

県庁所在地クラスの街並を思い描いていたオレに肩透かしを食わせた当時の弘前。
あの印象を凌駕するものはおそらく望めないだろう。

弘前には済まないと思う。
きちんと歩けば違ったものがオレの中に残る筈だが、あの5月に宿がどこもいっぱいで弘前にフラれて青森に泊まる羽目になり、微妙になったオレと弘前の関係。
さらに皮肉なものになってしまって、今夜はもうまとめることはできない。

フロントに置いてあったマッサージ機が効いた。
この時間には多過ぎるか思いながら買ってきた酒も全部飲めた。

カーテンを開けたら駅が見えた。
この部屋をオレは気に入っている。

やがてオレと弘前の拗れも解消するだろう。

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