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「車旅日記」1998年夏 3日目(秋田-北上ー遠野)-道の駅西目、道の駅東由利、ほっとゆだ駅、北上駅、遠野徳田屋旅館 【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】

公開日: : 最終更新日:2025/05/10 旅話, 旅話 1998年

車旅日記1998年8月14日

1998・8・14 7:17 7号国道‐西目(道の駅)
自由な日々、3日目。
遠野へ向かう。

ここにきてようやく晴れた。

風は秋のもの。
雲の状態ももう秋。

これから日が上がっていくにつれて夏が盛り返すかもしれないけれど、しかし昨夜はよく眠れた。
ツアー中では、あるいは一番よく眠れたかもしれない。
オレも旅慣れたものだ。

バイクや自転車で移動している連中はなかなかタフだ。
空の下で、壁に寄り添うようにシェラフにもぐり込んでいる者もいる。
危険ともいえるけど、限りなく気持ちよさそうだ。

オレもああすればよかった。
みんなそれぞれの旅を楽しんでいる。

夢に彼女が登場した。
にんまりするような内容ではなかったけど、ちょうど彼女の顔を見たいと思っていたところだ。

会えなくても、会いたいと思えば何とかなるものだ。
そう、夢の中では。

8:15 107号国道‐東由利(道の駅) 1216㎞
小さな町に似つかわしくない大きな休憩所だ。

地図を見ると、ここには線路は敷かれていない。
完全な車社会の町だ。

そうすると。
あぁそうか。
車が集まる駅が必要になるわけだ。

なるほど。
そういうことか。

気分はいい。
天気もいい。
最高だ。

10:07 ほっとゆだ駅 1270㎞
こういう駅があると便利だ。
200円で入れる温泉がついている。

100㎞走って朝風呂に浸かる。
こんなにも素晴らしい。

空には入道雲が浮かび、ここにきてようやく夏がその存在感を露わにしてきた。
でも蝉の声は聞こえず、トンボが飛んでいる。
さっきまで車の中を蝶が飛んでいた。

何だか分からないけど、いいなぁ。
時折入ってくる風がまた気持ちいい。

秋田からやってきて、イーハトーブに入った。

今日はこの土地で遊ぶ。

11:14 北上駅 1307㎞
北の街はどこも澄んでいる。
やっぱり空気がいい。

昼時、街に出ている人々を見かけない。
みんな家で高校野球でも見ているのだろう。

気の利いた土産でもないかと寄ってみたが、駅の売店は商売熱心には見えない。

まぁいいだろう。
オレには行くアテがある。

ここに来るまではずっと川に沿っていた。
岩手ナンバーは結構飛ばす。
ハイウェイでも感じたけど、それが車社会というものなのだろう。

川は泥色をしていた。
つい最近集中豪雨に見舞われたという話は聞かない。
きっとダムのせいなのだろう。

オレのようにいい加減なヤツは、そういう風景をそれなりに受け止めて「スゴイ」などと言うが、実際のところはどうなのだろう。

今、空気のきれいな街にいる。

北の国はいつ来ても魅力的だ。

21:38 遠野-徳田屋旅館 1375㎞
遠野に落ち着いてから9時間が経つ。

以前ここに来た時は他に5人の友人がいた。
あれ以来あのメンバーでの旅行は実現していない。
とてもノスタルジックな気持ちで駅へと向かう道を走った。

2年前の黄金週間は閑散としていたけど、今日の駅の賑わいはここが観光地であることを知るのに十分なものだった。

駅のパーキングに車を止めて、しばらく戸惑いがちに歩いた。
こんなにも人がいるとは思っていなかったから。

駅の観光係の女性に声をかけることもできず、しばらくぶらぶらした後に同じ場所に戻ると、大柄な青年が宿の斡旋を依頼していた。

いい人間だと思いはしたものの、その話しぶりが気になって声はかけなかったが、予想通りオレが泊まることになったのは彼と同じ宿だった。
そうして彼とは後で会うことになる。

観光係の女性はとても親切で、横柄なところはひとつもなく、オレも気分も上向いた。
あとは昼めしだ。

駅に隣接するように「遠野ビール園」という洒落た内装の店がある。
気持ちが大きくなった分、足はそこへ向き、接客の女性に「いいお店ですね」と言葉をかける余裕も生まれた。
その女性はとても魅力的な笑顔の持主だった。

駅前にパラソルを置いたビール園に他に客はなく、通りに面した席に座って3杯のビールと枝豆、焼鳥。

オレが座るとさっきの女性がBGMをサザンオールスターズに変えた。
「サザンか。ありきたりだな。」と思って耳にしていると、実はあのヒットメドレーがオレたちの世代の懐メロであることに気づいた。

思えばいろいろな場所で聴いてきたものだ。
そしてそれは夏に集中している。
それ以外に何も考えずに美味しいビールを飲みながら駅にやってくる人々を眺めていた。

県外からくる人。
父親を迎えに来たロン毛の青年。
いろいろだ。

オレを見て店に入ってくる客はひとりしかいなかった。
どうやらオレの顔はサクラに向いていないらしい。
もっともオレは他に客なんかいない方がよかったけれど。

見かけた店の女性は3人で、みんな素晴らしい対応をしてくれたけど、合間には外に出てケータイで彼氏に電話していた。
その光景を微笑ましく見ていた。

最初に出てきた女性に勧められるままに3杯のビールを飲み、立ち上がる時その女性を意識した。
「ごちそうさま」だけでも言って帰りたかった。

そしてまさにそれだけを言って店を出た。
それだけだけど、いい思い出になった。

土産物屋に行って少し高めのこけしを購入した。
運が良ければ彼女に渡すつもりで。

宿に着くとすぐに眠ってしまった。
3時間の眠りだ。
疲れはそこで大方とれた。

テレビをつけると甲子園が映り、平塚学園が9点差をひっくり返すような勢いの猛烈な反撃を見せていた。
その結果は見ずに車を走らせ、以前友人たちと回った旧跡をたどった。

懐かしい場所にひとりで来ると感傷だけが生まれる。
そしてそうして生まれる感傷が、実はとても好きだ。

暗くならないうちに宿に引き上げて、近くの神社にいった。
通りがかりの地元のご婦人が軽く会釈してくれた。

そこで見た茜色の入道雲を一生忘れないだろうと思った。
夏はやっぱり夕暮れだな。

夕食時、駅で見かけた大柄な男と一緒になった。
そうなるだろうと思っていたよ。

彼は今朝、群馬の伊勢崎から列車を乗り継いでここに来たとのこと。
様々な旅の話ができてよかった。

ひとりで旅に出る男はどこか似ている。
彼と接してそう思った。

彼が酒を飲めれば、外に飲みに行ってもよかったけれど。
彼の旅の幸運を心から祈る。

そうしてまたひとりの時間がやってきた。
500缶のビールを2本並べながらこれを書いている。

灰皿にたまった煙草は6本。
今日はよく吸ったな。
癖にならなきゃいいが。

あまりテレビを見ないオレも野球は観る。
今夜は巨人阪神戦で、最後まで分からないが、9-3で巨人が9回表の守備についた。

あのまま終わるのだろうな。
ただしその試合の正確な結果は永遠に知ることはないだろう。
旅先で起こったことはそういうものだ。

結末もない。
ずっと継続している。
それがオレの旅。

平塚学園は結局9-11で負けた。
その結果も終生忘れないだろう。

そして夕暮れ時の神社からの帰り道に彼女を思い出して、叶うものならもう一度この道を彼女と歩きたいと思ったことも忘れないだろう。

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