*

「車旅日記」1998年夏【20代最後の旅でございます。青森港から北海道上陸を目指して北へ向かったのでございますが・・・。】3日目(秋田-北上ー遠野)-道の駅西目、道の駅東由利、ほっとゆだ駅、北上駅、遠野徳田屋旅館

公開日: : 最終更新日:2024/04/13 旅話, 旅話 1998年

車旅日記1998年8月14日
1998・8・14 7:17 7号国道‐西目(道の駅)
自由な日々、3日目。
遠野へ向かう。

ここにきてようやく晴れた。

風は秋のもの。
雲の状態ももう秋。

これから日が上がっていくにつれて夏が盛り返すかもしれないけれど、しかし昨夜はよく眠れた。
ツアー中では、あるいは一番よく眠れたかもしれない。
オレも旅慣れたものだ。

バイクや自転車で移動している連中はなかなかタフだ。
空の下で、壁に寄り添うようにシェラフにもぐり込んでいる者もいる。
危険ともいえるけど、限りなく気持ちよさそうだ。

オレもああすればよかった。
みんなそれぞれの旅を楽しんでいる。

夢に彼女が登場した。
にんまりするような内容ではなかったけど、ちょうど彼女の顔を見たいと思っていたところだ。

会えなくても、会いたいと思えば何とかなるものだ。
そう、夢の中では。

8:15 107号国道‐東由利(道の駅) 1216㎞
小さな町に似つかわしくない大きな休憩所だ。

地図を見ると、ここには線路は敷かれていない。
完全な車社会の町だ。

そうすると。
あぁそうか。
車が集まる駅が必要になるわけだ。

なるほど。
そういうことか。

気分はいい。
天気もいい。
最高だ。

10:07 ほっとゆだ駅 1270㎞
こういう駅があると便利だ。
200円で入れる温泉がついている。

100㎞走って朝風呂に浸かる。
こんなにも素晴らしい。

空には入道雲が浮かび、ここにきてようやく夏がその存在感を露わにしてきた。
でも蝉の声は聞こえず、トンボが飛んでいる。
さっきまで車の中を蝶が飛んでいた。

何だか分からないけど、いいなぁ。
時折入ってくる風がまた気持ちいい。

秋田からやってきて、イーハトーブに入った。

今日はこの土地で遊ぶ。

11:14 北上駅 1307㎞
北の街はどこも澄んでいる。
やっぱり空気がいい。

昼時、街に出ている人々を見かけない。
みんな家で高校野球でも見ているのだろう。

気の利いた土産でもないかと寄ってみたが、駅の売店は商売熱心には見えない。

まぁいいだろう。
オレには行くアテがある。

ここに来るまではずっと川に沿っていた。
岩手ナンバーは結構飛ばす。
ハイウェイでも感じたけど、それが車社会というものなのだろう。

川は泥色をしていた。
つい最近集中豪雨に見舞われたという話は聞かない。
きっとダムのせいなのだろう。

オレのようにいい加減なヤツは、そういう風景をそれなりに受け止めて「スゴイ」などと言うが、実際のところはどうなのだろう。

今、空気のきれいな街にいる。

北の国はいつ来ても魅力的だ。

21:38 遠野-徳田屋旅館 1375㎞
遠野に落ち着いてから9時間が経つ。

以前ここに来た時は他に5人の友人がいた。
あれ以来あのメンバーでの旅行は実現していない。
とてもノスタルジックな気持ちで駅へと向かう道を走った。

2年前の黄金週間は閑散としていたけど、今日の駅の賑わいはここが観光地であることを知るのに十分なものだった。

駅のパーキングに車を止めて、しばらく戸惑いがちに歩いた。
こんなにも人がいるとは思っていなかったから。

駅の観光係の女性に声をかけることもできず、しばらくぶらぶらした後に同じ場所に戻ると、大柄な青年が宿の斡旋を依頼していた。

いい人間だと思いはしたものの、その話しぶりが気になって声はかけなかったが、予想通りオレが泊まることになったのは彼と同じ宿だった。
そうして彼とは後で会うことになる。

観光係の女性はとても親切で、横柄なところはひとつもなく、オレも気分も上向いた。
あとは昼めしだ。

駅に隣接するように「遠野ビール園」という洒落た内装の店がある。
気持ちが大きくなった分、足はそこへ向き、接客の女性に「いいお店ですね」と言葉をかける余裕も生まれた。
その女性はとても魅力的な笑顔の持主だった。

駅前にパラソルを置いたビール園に他に客はなく、通りに面した席に座って3杯のビールと枝豆、焼鳥。

オレが座るとさっきの女性がBGMをサザンオールスターズに変えた。
「サザンか。ありきたりだな。」と思って耳にしていると、実はあのヒットメドレーがオレたちの世代の懐メロであることに気づいた。

思えばいろいろな場所で聴いてきたものだ。
そしてそれは夏に集中している。
それ以外に何も考えずに美味しいビールを飲みながら駅にやってくる人々を眺めていた。

県外からくる人。
父親を迎えに来たロン毛の青年。
いろいろだ。

オレを見て店に入ってくる客はひとりしかいなかった。
どうやらオレの顔はサクラに向いていないらしい。
もっともオレは他に客なんかいない方がよかったけれど。

見かけた店の女性は3人で、みんな素晴らしい対応をしてくれたけど、合間には外に出てケータイで彼氏に電話していた。
その光景を微笑ましく見ていた。

最初に出てきた女性に勧められるままに3杯のビールを飲み、立ち上がる時その女性を意識した。
「ごちそうさま」だけでも言って帰りたかった。

そしてまさにそれだけを言って店を出た。
それだけだけど、いい思い出になった。

土産物屋に行って少し高めのこけしを購入した。
運が良ければ彼女に渡すつもりで。

宿に着くとすぐに眠ってしまった。
3時間の眠りだ。
疲れはそこで大方とれた。

テレビをつけると甲子園が映り、平塚学園が9点差をひっくり返すような勢いの猛烈な反撃を見せていた。
その結果は見ずに車を走らせ、以前友人たちと回った旧跡をたどった。

懐かしい場所にひとりで来ると感傷だけが生まれる。
そしてそうして生まれる感傷が、実はとても好きだ。

暗くならないうちに宿に引き上げて、近くの神社にいった。
通りがかりの地元のご婦人が軽く会釈してくれた。

そこで見た茜色の入道雲を一生忘れないだろうと思った。
夏はやっぱり夕暮れだな。

夕食時、駅で見かけた大柄な男と一緒になった。
そうなるだろうと思っていたよ。

彼は今朝、群馬の伊勢崎から列車を乗り継いでここに来たとのこと。
様々な旅の話ができてよかった。

ひとりで旅に出る男はどこか似ている。
彼と接してそう思った。

彼が酒を飲めれば、外に飲みに行ってもよかったけれど。
彼の旅の幸運を心から祈る。

そうしてまたひとりの時間がやってきた。
500缶のビールを2本並べながらこれを書いている。

灰皿にたまった煙草は6本。
今日はよく吸ったな。
癖にならなきゃいいが。

あまりテレビを見ないオレも野球は観る。
今夜は巨人阪神戦で、最後まで分からないが、9-3で巨人が9回表の守備についた。

あのまま終わるのだろうな。
ただしその試合の正確な結果は永遠に知ることはないだろう。
旅先で起こったことはそういうものだ。

結末もない。
ずっと継続している。
それがオレの旅。

平塚学園は結局9-11で負けた。
その結果も終生忘れないだろう。

そして夕暮れ時の神社からの帰り道に彼女を思い出して、叶うものならもう一度この道を彼女と歩きたいと思ったことも忘れないだろう。

関連記事

「鉄旅日記」2020年卯月【緊急事態宣言発令直前のことでございます。常磐線全線運転再開を祝して人知れず旅に出たのでございます。】初日(東京-新津)その2‐水戸、いわき、原ノ町、鹿島(常磐線)

鉄旅日記2020年4月4日・・・水戸駅、いわき駅、原ノ町駅、鹿島駅(常磐線) 7:40 水戸(みと)

記事を読む

「車旅日記」2000年春【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄

車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊外ポテチーノ 108㎞ 繁華街を抜け

記事を読む

「空旅日記」1997年弥生【若き日に高知に出張に行った記録が残っておりました。】-羽田空港内カフェテリア、市電グランド通り駅前オリエントホテル

空旅日記1997年3月11日 1997・3・11 羽田空港内カフェテリア 17:00を待っている。

記事を読む

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、北海道途中下車旅】3日目(室蘭-岩見沢)-室蘭、苫小牧、鵡川、静内、様似、追分、夕張、新夕張、清水沢(室蘭支線、室蘭本線、日高本線、石勝線、夕張支線)

鉄旅日記2012年8月13日・・・室蘭駅、苫小牧駅、鵡川駅、静内駅、様似駅、追分駅、夕張駅、新夕張駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】最終日(新庄-東京)その2-女川、渡波、松島海岸、本塩釜、仙台、駒ヶ嶺、原ノ町、桃内、いわき、石岡(石巻線/仙石線/常磐線)

鉄旅日記2009年10月11日・・・女川駅、渡波駅、松島海岸駅、本塩釜駅、仙台駅、駒ヶ嶺駅、原ノ町駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】初日(東京-多治見)その3-笠寺、熱田、熱田神宮、神宮前、大江、名古屋東港、金山(東海道本線/名鉄常滑線/名鉄築港線/名鉄名古屋本線)

鉄旅日記2019年3月23日・・・ 笠寺駅、熱田駅、神宮前駅、大江駅、名古屋東港駅、金山駅(東海道本

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】5日目(松浦-若松)その1-松浦、有田、伊万里、唐津、筑前前原、姪浜、天神、西鉄福岡、博多(松浦鉄道/筑肥線/福岡市地下鉄空港線)

鉄旅日記2009年9月22日・・・松浦駅、有田駅、伊万里駅、唐津駅、筑前前原駅、姪浜駅、天神駅、西鉄

記事を読む

「鉄旅日記」2014年春【青春18きっぷで、紀伊半島へ】初日(東京-紀伊勝浦)その2-山田上口、宮川、川添、伊勢柏崎、尾鷲、新鹿、熊野市、紀伊勝浦(参宮線、紀勢本線)

鉄旅日記2014年3月8日その2・・・山田上口駅、宮川駅、川添駅、伊勢柏崎駅、尾鷲駅、新鹿駅、熊野市

記事を読む

「車旅日記」2003年夏【北海道初上陸。2,300㎞を移動した5日間の記録でございます。】初日(函館-上ノ国-札幌)走行距離471㎞ -知内駅、道の駅上ノ国もんじゅ、瀬棚町、道の駅いわない、小樽駅、札幌東急イン

鉄旅日記2003年8月13日・・・知内駅、道の駅上ノ国もんじゅ、瀬棚町、道の駅いわない、小樽駅、札幌

記事を読む

「鉄旅日記」2017年春【近鉄に乗る日々】初日(東京-新大宮)その2-宇治山田、東青山、青山町、名張、大和八木、大和西大寺、新大宮(山田線/大阪線/橿原線/奈良線)

鉄旅日記2017年3月18日・・・宇治山田駅、東青山駅、青山町駅、名張駅、大和八木駅、大和西大寺駅、

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】最終日(三次-東京)その1‐三次、上下、府中(福塩線)

鉄旅日記2020年7月26日・・・三次駅、上下駅、府中駅(福塩線)

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その5‐備後落合、備後庄原、三次(芸備線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・備後落合駅、備後庄原駅、三次駅(芸

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その4‐宍道、加茂中、出雲横田、出雲坂根(木次線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・宍道駅、加茂中駅、出雲横田駅、出雲

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その3‐黒松、仁万、出雲市、荘原(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・黒松駅、仁万駅、出雲市駅、荘原駅(

「鉄旅日記」2020年文月【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】3日目(萩-三次)その2‐益田、三保三隅、浜田、波子(山陰本線)

鉄旅日記2020年7月25日・・・益田駅、三保三隅駅、浜田駅、波子駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑