「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】3日目(小樽-富良野)その1-小樽、発寒中央、琴似、石狩当別、石狩月形、新十津川、滝川、茶志内、美唄(函館本線/学園都市線)
鉄旅日記2016年8月12日・・・小樽駅、発寒中央駅、琴似駅、石狩当別駅、石狩月形駅、新十津川駅、滝川駅、茶志内駅、美唄駅(函館本線/学園都市線)
2016・8・12 5:32 小樽(おたる)駅(函館本線 北海道)
駅前のドーミーイン小樽カプセルフロアの5号室にいたよ。
そんな形態の「ねぐら」だから、オレ以上に朝早い者がいる。
気は遣うが朝晩とも水風呂にも入れたし、酒も過ごさずに済んだし、これでいいのだろう。
中国人夫婦に風呂場のドアが開かないと尋ねられた。
旦那の方は責めるような表情だ。
フロントに問い合わせて解決したオレに、彼らから礼の言葉はなかった。
悪気はないようだが、どこに行ってもあの民族はそうらしい。
小樽は坂の街なんだな。
駅を降りるとすぐにそんな地形を目にする。
初めて来た時にはあの坂を下って港に出たんだ。
昨夜、かつて車寅次郎がリリーとパパを連れて一夜を明かした塩谷での2分の停車の際、いつものように改札を出て駅を写して戻る勇気が持てず、痛恨の思いで街の入口にあたる一帯を見極めようとした。
3度目の小樽。
あそこに見える商店街を歩きたかったよ。
今日も日本晴れだ。
きっとビールが進む。
6:25 発寒中央(はっさむちゅうおう)駅(函館本線 北海道)
日本海が消えると町並が変わり札幌文化圏に入る。
駅間は短く、碁盤の目に整地された町。
何か特色を持つわけじゃなく、高層マンションが見えて、東京で言えば葛飾荒川あたりといった地域の駅周辺を思わせる。
都会的街並が途切れた一帯から高層物を見る風景に見覚えがある。
つまりここはもう都市の一角だ。
6:35 琴似(ことに)駅(函館本線 北海道)
駅前にイトーヨーカドー堂がドンと座り、町が大きくなった。
発寒中央から見えた高層マンションはここのものだった。
山が見えなければ東京の風景としても通用しそうだ。
桑園で学園都市線に乗り換える。
ここは完全に高層マンションに取り囲まれている。
こんな一帯は東京にはない。
札幌とはたいした街だ。
7:28 石狩当別(いしかりとうべつ)駅(学園都市線 北海道)
高架線路から海も山もない北の大地を眺めていた。
見渡すかぎりの住宅街。
この風景に違和感を覚えるのは内地人の感覚でしかない。
暴風防雪壁に視界を遮られた石狩川を渡るととたんに風景が変わった。
広大な田野が広がりトラクターが行き来する。
川ひとつでこれほどの文化圏の違いが識別できる例はそうはないだろう。
学園都市線は大抵ここ石狩当別止まりになる。
公園があって古びたホテルがあって、駅の町案内にはたいしたことが記されていない平凡な郊外風景の中にいる。
ここに北海道の特色を伝えるものを見るには、雪の季節を待たなければならない。
8:27 石狩月形(いしかりつきがた)駅(学園都市線 北海道)
吉村昭さんの小説「赤い人」の舞台がここだった筈だ。
原野をえんえんと拓いていく囚人たちの話だ。
道に樺戸博物館の表示がある。
そこが監獄跡だ。
大河ドラマ「獅子の時代」で菅原文太さん演じる平沼錢次が一年の苦渋に満ちた歳月を過ごし、大脱走を果たしたのもここだ。
北の大地とは言え、さすがに当時を偲ぶことはできない。
皆楽公園、月形温泉を眺めて駅に戻る。
住宅が続く風景の中で、普段日本一の関東平野で暮らしていることを想わないように、石狩平野を想像することは難しい。
その中で炭住を思わせるような長屋を見かけると「男はつらいよ」や高倉健さん的世界に戻される。
是非には及ばないが、まだあったのだなという茫々とした気持ちになる。
9:30 新十津川(しんとつがわ)駅(学園都市線 北海道)
勤皇の志に厚い十津川郷士。
彼等の存在は平家物語にも現れる。
その末裔が拓いた終着駅に空知中央病院が聳えている。
もっと何もないところだと思っていた。
普段はろくでもない虫にしかまとわりつかれることのないオレの周りを、珍しく蝶々がひらひら舞い、さっき駅に着いたら地元のかわいい子どもたちが出迎えてくれた。
また来てほしいというポストカードを、到着した者たちひとりひとりに手渡していたんだ。
泣けてくるよ。
頭を撫ぜて駅を後にする。
再訪は約束できないが、どうか線路を絶やさないようにしてほしい。
目の前に座っていた若くて仲のいいカップルはひとつ手前の鄙びた駅で降りていった。
駅前に赤い車が止まっていた。
たぶん女の子の家に行くのだろう。
彼女は飛ぶように駅舎へ向かい、男の子は控えめな笑みを浮かべながら駅舎のドアをそっと閉めた。
その姿はオレの顔にも笑顔を残した。
石狩国の穀倉地帯が見える月形からの車窓風景は素晴らしかったよ。
新十津川~滝川間(徒歩)
10:15 滝川(たきかわ)駅(函館本線/根室本線 北海道)
石狩川の畔でハングライダーが飛んでいる。
橋の上から滝川駅はあのあたりかと、スマイルビルという赤い看板を遠望して見当をつける。
発車ぎりぎりの頃に着いたよ。
この街を描くのは明日になる。
学園都市線は新十津川まで座席が埋まるだけの鉄道気違いを乗せていた。
彼らは何らかの手段で滝川に向かうものだと思っていた。
新十津川から滝川まで、オレの足で約40分の距離だった。
でもそんなことをしたのはオレだけで、ことごとくが石狩国へと折り返していく。
これはオレの旅人としての誇りについて話しているとも言える。
函館本線車窓風景
10:36 茶志内(ちゃしない)駅(函館本線 北海道)
今はもう色褪せてしまったけど、パステルのかわいらしい駅が当時この広大な平野に誕生したことを喜びたい。
たまに絵画教室が開かれているらしい。
そんな人の営みがオレは好きだ。
神社に茶志内屯田工兵隊の碑が立っていた。
もはや21世紀だが、開拓民という言葉はそう古くない時代にここでは普通に使用されていた。
不意に古い歴史に出会ったという感慨がオレの中に湧くこともない。
空知国道を美唄に向かっている。
かつて広大な天地に感動しながら車を走らせた追憶国道だよ。
その道を歩いている。
茶志内~美唄間(徒歩)
11:24 美唄(びばい)駅(函館本線 北海道)
あのホテルはおそらく閉鎖されていたのだろうが、街中へと入った空知国道は若干の賑わいを見せた。
あぁ街に着いたのだと、国道を挟む街並を見て安心した。
左折して100メートルも行ったところにガランとして暑くて現代的な駅がある。
周囲にコンビニはなく、ビールを売る店もない。
茶志内から歩いてきて、結果的にはよくできた旅程になっている。
ビールを探しにいく時間的余裕が持てないまま列車は発車する。
つまり必要以上にビールを飲まずに済んでいるわけだ。
道路標示に見た「旭川」に郷愁を感じた。
旭川には今日到着するが、18:00頃を予定している。
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