*

「鉄旅日記」2016年夏 3日目(小樽-富良野)その2-深川、増毛、留萌、北一已、深川、旭川、美瑛、千代ヶ丘、富良野(留萌本線/函館本線/富良野線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】

公開日: : 最終更新日:2025/05/27 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年8月12日・・・深川駅、増毛駅、留萌駅、北一已駅、深川駅、旭川駅、美瑛駅、千代ヶ丘駅、富良野駅(留萌本線/函館本線/富良野線)

12:49 深川(ふかがわ)駅(函館本線/留萌本線 北海道)
かつての5月と同じ駅前風景。

広場には盆踊りの櫓が立ち、街を歩けばパチンコ屋の宣伝がスピーカーから聞こえてくる。

碁盤状に組まれた街の商い部分はごく僅かで、出ていったままの空き家も目立つ。
最近じゃどこに行ってもそうだ。
去年の美祢は凄まじかった。

「駅そば」はなく、キオスクも出ていってもう戻らない。
かつては朱鞠内へも向けて鉄路が延びていた鉄道駅も寂しい限りだ。
行末が心配だ。
もう、地方都市を讃える機会は訪れないのだろうか。

ついついマイナス的なことを記してしまうが、クラーク記念国際高校の甲子園初出場を祝う垂れ幕が街中に目立ち、ファイターズの大谷投手のポスターは道内どこでも見かける。

うんざりするほど暑くて、駅前から石狩川に架かる橋が見えたけど、あそこまで歩く気はどうしても起きなかった。

若干の後悔はある。
だけど、石狩川はさっき滝川で見たしな。

15:24 増毛(ましけ)駅(留萌本線 北海道)
留萌増毛間の廃線報道に接して、夏休みを利用して全国から鉄道ファンが押し寄せている。

警備員を配置するなど厳戒態勢を思わせる処置が取られ、車両は増結された。

高倉健さんと倍賞千恵子さんの悲しい結末「駅⁻STATION」の舞台、増毛。

風待食堂が観光案内所として健在なのは知っていた。
根津甚八さん扮する犯人が線路を伝って舞い戻り、捕まったのも映画ではここだが、実際の風景との間で誤差を感じた。
もっと線路が敷かれていたような気がしたけど、あれから剥がされたのかもしれない。

町に出ると人が多くて面食らった。
かつて漁で賑わった面影を伝える「にしん蔵」や蔵造りの建物などがレトロ感を醸し、昭和を体現したような町だった。

あんなに青い日本海も記憶にない。

映画の風景は現在より廃れていた。
今の方が廃れてなくてよかったよ。

それにしても暑い。
さすがのオレも音を上げかけているけど、元気でいる限り不屈の男でいることを誓ったばかりだ。

ビールで涼む。
増毛が廃駅になるのもそう遠い先の話じゃない。

だからオレもその前にと思ってここにきた。
何よりオレは健さんが好きなんだよ。


増毛駅周辺風景



16:16 留萌(るもい)駅(留萌本線 北海道)
数分の停車。

留萌海岸は海水浴客であふれている。
みんな自前のテントを用意していたり、20年前とはビーチの風景も変わった。

北の大地も夏を待っていたようで陽気に楽しむ道民の姿が見えた。

かつての5月にはまだ雪の気配があった。

映画「駅⁻STATION」で高倉健さんと倍賞千恵子さんは、ここ留萌で映画を見てショッピングを楽しんでいる。
でももうそんなことはこの街ではできないのだろう。

その頃は留萌からも鉄路は北へ延びていて、遠く宗谷海峡までつながっていた。

古びていく街は救えないのだろうか。

美学を持った増毛には救いがあった。
でももう鉄路はいらないらしい。

悲しいけれど。

17:15 北一已(きたいちやん)駅(留萌本線 北海道)
肥料臭い駅に降りた。

稲穂が光っている。
トウモロコシが背を伸ばしている。
水路が涼しげに水をたたえている。

強烈な日差しもいくぶん和らぎ、風は爽やか。
何気ない交差点にケータイを向ける。

人のいない大地を深川に向けて歩いている。

昨日の野田生八雲間はきつかった。
足も痛み出した。

でもこれがオレの男道。
旅人としての道。

今は満ち足りた気持ちで風に吹かれ、前方の山を眺めている。

通りすがりの若者たちが挨拶をくれた。

北一已~深川間(徒歩)


18:10 深川(ふかがわ)駅(函館本線/留萌本線 北海道)
思いがけず時間がかかった。
発車まで20分を切った時点で深川駅2㎞の表示が現れ、仰天した。
それから走ったり歩速を早めたりしてまたもやぎりぎり間に合った。

余計にビールを飲ませないように本当にうまくできている。
誰が図ってるんだ?(笑)

おかげで、暑さに負けた昼間の借りを返すように、深川一番の繁華街も歩くことができた。
たいした規模じゃないけれど店の数はそこそこあり、街の真ん中にかつて深川で宿を調べた時にヒットしたホテルがあった。

今は清々しい気持ちでいる。
外は暗くなってきている。

クラーク国際高校はまだ甲子園にいるのだろうか?

19:20 旭川(あさひかわ)駅(函館本線/宗谷本線/石北本線/富良野線 北海道)
日本のメダルラッシュは続いているらしい。
頼もしい若者たちだ。
日本人もなかなかやる。

旭川駅は一変していた。

イオンモールが併設された駅前に、かつて2度にわたり車から降り立った頃の面影はなく、脇にあったテレビ塔も撤去されていた。

高架化された駅の改札内に入ると和の「おもてなし」テイストに彩られ、床もきれいで、まるでホテルだ。

忠別川に面した一帯はオープンテラスになっていて、夕暮れを楽しむ人々が穏やかな時間を過ごしていた。

これはいい。
市民が心から憩える誇り高き駅だと思う。

偉大なる再生だ。


20:26 美瑛(びえい)駅(富良野線 北海道)
日本が、北の大地が誇る美しい一帯に足を踏み入れている。

美瑛は丘のまち。

自慢の丘はここから遠く、これから先もおそらく見に行く機会を作ることは難しいだろうが、この美しい駅に降りたことは、重ねてきた記録に箔をつけることになる。

今夜泊まる富良野がどんな街か知らないが、格は同じだ。

駅前通りに暖色の灯が続いている。

別に何があるわけじゃない。
たいていの店は閉まっていて、歩道でちんまりと花火に興じる若い家族の姿がある。

ふらふら歩いて駅に戻る途中、あるお宅から子供の笑い声が響いた。
無邪気な声。
大人はあんなふうに笑えない。
だから子供の声が必要なんだ。

子供が心底無邪気に笑っているのなら、それを平和と幸福を意味する。

美しい土地でそんなことを考えた。



20:54 千代ヶ丘(ちよがおか)駅(富良野線 北海道)
2駅戻る。

237号国道に面して明治から生きてきた大木が4本植わっている。

鉄道開業に際して沼地だった土地を住民自ら埋めて駅の誘致に成功し、大木は開拓の象徴として残された。

町に駅に歴史あり。
今オレが暮らしているあたりに、そんな昔から生きている存在があるとは聞いたことがない。

星がきれいだけど、かつて最上川のドライブインで驚愕したほどの空はここにはなかった。

富良野(ふらの)駅(根室本線/富良野線 北海道)にて

22:51 民宿むつかり1階和
中国人の一団が浴室を占拠している。

富良野が美しいという認識は日本人にもあるが、だからと言ってすぐにホテルを予約したりはしない。

だからこそ「北の国から」で有名になった今も、楽天トラベルで検索してヒットした数は決して多くない。
駅前にビジネスホテルはなかった。

他に所もあろうに不思議な行動を続ける民族だ。

しかもその行動力が侮れない。
アジア諸国と海を争い、ふてぶてしい態度をとる。

歴史が証明してきた事実に照らせば、今の政治体制が永遠に続くことは100%あり得ない。
北朝鮮にも同じことが言える。

そこに暮らす人々の態度も褒められたものじゃない。
太古の「礼の国」はいつしかそんな概念を忘れてきたらしい。
他国に占領された過去が促した作用なのかもしれない。

やっと風呂に入ることができた。

富良野は滝川についで最後に辿り着いたターミナルの街。

迎えの明かりはあまりにも暗かった。

駅前の様子から察すると観光の拠点は美瑛なのかもしれない。

二日前に二人のメガネ美人に遇ったことを書いたけど、まだ顔を思い出すことができる。
その内のひとり、早稲田の先生の名が「あかりさん」だったことを不意に思い出した。
鞄に記された名にたまたま目がいったのだ。

他意はない。
ただし数多の子どもたちのように、この旅に欠かせない大きな存在ではある。

関連記事

「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 初日(東京-紀伊田辺)その2-滝原、三野瀬、尾鷲、宇久井、田並(紀勢本線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月2日・・・滝原駅、三野瀬駅、尾鷲駅、宇久井駅、田並駅(紀勢本線) 14:14

記事を読む

2018年秋 最終日(松戸-五井-大原-安房鴨川-松戸)その3-安房鴨川、江見、君津、千葉、西船橋(内房線/総武本線) 【サンキューちばフリーパスでめぐる上総下総安房旅】

鉄旅日記2018年9月23日・・・安房鴨川駅、江見駅、君津駅、千葉駅、西船橋駅(外房線/内房線/総武

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3 初日(東京-多治見)その2-西小坂井、三河三谷、愛知御津、三河安城、共和(東海道本線) 【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月23日・・・西小坂井駅、三河三谷駅、愛知御津駅、三河安城駅、共和駅(東海道本線

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始 初日(東京-一ノ関)その1-金町、上野、高崎、六日町、長岡、見附(常磐線/高崎線/上越線/信越本線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月5日・・・金町駅、上野駅、高崎駅、六日町駅、長岡駅、見附駅(常磐線/高崎線/上

記事を読む

「車旅日記」2000年春 初日(東京‐足利‐鬼怒川‐会津若松‐新潟豊栄)その2‐足利郊外ポテチーノ、下今市駅、鬼怒川ホテルニュー岡部、上三依塩原駅、会津若松駅、津川町、道の駅豊栄 【一年のブランクを経て、旅再開。出発場所は東京町田から、下町葛飾へと変わっております。】

車旅日記2000年5月3日 15:12 293号国道‐足利郊外ポテチーノ 108㎞ 繁華街を抜ける

記事を読む

「鉄旅日記」2013年夏 2日目(徳山-南宮崎)その2-津久見、日代、浅海井、狩生、佐伯、直見、宗太郎、南延岡、南日向、東都農、佐土原、南宮崎(日豊本線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】

鉄旅日記2013年8月11日その2・・・津久見駅、日代駅、浅海井駅、狩生駅、佐伯駅、直見駅、宗太郎駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年睦月 初日(東京-湯沢)その3‐小牛田、一ノ関、北上、柳原、江釣子(東北本線/北上線) 【秋田内陸縦貫鉄道に乗りにいきました。五能線の名所も歩いた旅初めでございます。】

鉄旅日記2020年1月11日・・・小牛田駅、一ノ関駅、北上駅、柳原駅、江釣子駅(東北本線/北上線)

記事を読む

「鉄旅日記」2019年如月 初日(東京-安中)その1-金町、熱海、城ヶ崎海岸、伊豆熱川、伊豆稲取、今井浜海岸、河津(常磐線/東海道本線/伊東線/伊豆急行線) 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】

鉄旅日記2019年2月9日・・・金町駅、熱海駅、城ヶ崎海岸駅、伊豆熱川駅、伊豆稲取駅、今井浜海岸駅、

記事を読む

「鉄旅日記」2021年師走 最終日(古川-東京)その1 ‐古川、岩出山、有備館(陸羽東線)/岩出山城址(城山公園) 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】

鉄旅日記2021年12月5日・・・古川駅、岩出山駅、有備館駅(陸羽東線)/セレクトイン古川/岩出山

記事を読む

「鉄旅日記」2009年秋 4日目(佐賀-松浦)その2-大村、竹松、早岐、佐世保、佐世保中央、中佐世保、左石、佐々、たびら平戸口、松浦(大村線/佐世保線/松浦鉄道) 【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】

鉄旅日記2009年9月21日・・・大村駅、竹松駅、早岐駅、佐世保駅、佐世保中央駅、中佐世保駅、左石駅

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その3 ‐南甲府、金手、甲府、八王子、京王八王子(身延線/中央本線)/甲府城跡 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・南甲府駅、金手駅、甲府駅、八王子駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その2 ‐十島、鰍沢口、甲斐住吉、国母、常永(身延線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・十島駅、鰍沢口駅、甲斐住吉駅、国母

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その1 ‐新静岡、静岡、由比、富士、芝川(東海道本線/身延線)/駿府城址 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・新静岡駅、静岡駅、由比駅、富士駅、

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 2日目(焼津-静岡)その3 ‐尾盛、千頭、金谷、静岡(大井川鐡道井川線/大井川鐡道本線/東海道本線)/くれたけインプレミアム静岡駅前 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

2022年3月20日・・・尾盛駅、千頭駅、金谷駅、静岡駅(大井川鐡道

→もっと見る

    PAGE TOP ↑