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「鉄旅日記」2016年夏【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】3日目(小樽-富良野)その2-深川、増毛、留萌、北一已、深川、旭川、美瑛、千代ヶ丘、富良野(留萌本線/函館本線/富良野線)

公開日: : 最終更新日:2023/04/26 旅話, 旅話 2016年

鉄旅日記2016年8月12日
12:49 深川(ふかがわ)駅(函館本線/留萌本線 北海道)
かつての5月と同じ駅前風景。

広場には盆踊りの櫓が立ち、街を歩けばパチンコ屋の宣伝がスピーカーから聞こえてくる。

碁盤状に組まれた街の商い部分はごく僅かで、出ていったままの空き家も目立つ。
最近じゃどこに行ってもそうだ。
去年の美祢は凄まじかった。

「駅そば」はなく、キオスクも出ていってもう戻らない。
かつては朱鞠内へも向けて鉄路が延びていた鉄道駅も寂しい限りだ。
行末が心配だ。
もう、地方都市を讃える機会は訪れないのだろうか。

ついついマイナス的なことを記してしまうが、クラーク記念国際高校の甲子園初出場を祝う垂れ幕が街中に目立ち、ファイターズの大谷投手のポスターは道内どこでも見かける。

うんざりするほど暑くて、駅前から石狩川に架かる橋が見えたけど、あそこまで歩く気はどうしても起きなかった。

若干の後悔はある。
だけど、石狩川はさっき滝川で見たしな。

15:24 増毛(ましけ)駅(留萌本線 北海道)
留萌増毛間の廃線報道に接して、夏休みを利用して全国から鉄道ファンが押し寄せている。

警備員を配置するなど厳戒態勢を思わせる処置が取られ、車両は増結された。

高倉健さんと倍賞千恵子さんの悲しい結末「駅⁻STATION」の舞台、増毛。

風待食堂が観光案内所として健在なのは知っていた。
根津甚八さん扮する犯人が線路を伝って舞い戻り、捕まったのも映画ではここだが、実際の風景との間で誤差を感じた。
もっと線路が敷かれていたような気がしたけど、あれから剥がされたのかもしれない。

町に出ると人が多くて面食らった。
かつて漁で賑わった面影を伝える「にしん蔵」や蔵造りの建物などがレトロ感を醸し、昭和を体現したような町だった。

あんなに青い日本海も記憶にない。

映画の風景は現在より廃れていた。
今の方が廃れてなくてよかったよ。

それにしても暑い。
さすがのオレも音を上げかけているけど、元気でいる限り不屈の男でいることを誓ったばかりだ。

ビールで涼む。
増毛が廃駅になるのもそう遠い先の話じゃない。

だからオレもその前にと思ってここにきた。
何よりオレは健さんが好きなんだよ。


増毛駅周辺風景



16:16 留萌(るもい)駅(留萌本線 北海道)
数分の停車。

留萌海岸は海水浴客であふれている。
みんな自前のテントを用意していたり、20年前とはビーチの風景も変わった。

北の大地も夏を待っていたようで陽気に楽しむ道民の姿が見えた。

かつての5月にはまだ雪の気配があった。

映画「駅⁻STATION」で高倉健さんと倍賞千恵子さんは、ここ留萌で映画を見てショッピングを楽しんでいる。
でももうそんなことはこの街ではできないのだろう。

その頃は留萌からも鉄路は北へ延びていて、遠く宗谷海峡までつながっていた。

古びていく街は救えないのだろうか。

美学を持った増毛には救いがあった。
でももう鉄路はいらないらしい。

悲しいけれど。

17:15 北一已(きたいちやん)駅(留萌本線 北海道)
肥料臭い駅に降りた。

稲穂が光っている。
トウモロコシが背を伸ばしている。
水路が涼しげに水をたたえている。

強烈な日差しもいくぶん和らぎ、風は爽やか。
何気ない交差点にケータイを向ける。

人のいない大地を深川に向けて歩いている。

昨日の野田生八雲間はきつかった。
足も痛み出した。

でもこれがオレの男道。
旅人としての道。

今は満ち足りた気持ちで風に吹かれ、前方の山を眺めている。

通りすがりの若者たちが挨拶をくれた。

北一已~深川間(徒歩)


18:10 深川(ふかがわ)駅(函館本線/留萌本線 北海道)
思いがけず時間がかかった。
発車まで20分を切った時点で深川駅2㎞の表示が現れ、仰天した。
それから走ったり歩速を早めたりしてまたもやぎりぎり間に合った。

余計にビールを飲ませないように本当にうまくできている。
誰が図ってるんだ?(笑)

おかげで、暑さに負けた昼間の借りを返すように、深川一番の繁華街も歩くことができた。
たいした規模じゃないけれど店の数はそこそこあり、街の真ん中にかつて深川で宿を調べた時にヒットしたホテルがあった。

今は清々しい気持ちでいる。
外は暗くなってきている。

クラーク国際高校はまだ甲子園にいるのだろうか?

19:20 旭川(あさひかわ)駅(函館本線/宗谷本線/石北本線/富良野線 北海道)
日本のメダルラッシュは続いているらしい。
頼もしい若者たちだ。
日本人もなかなかやる。

旭川駅は一変していた。

イオンモールが併設された駅前に、かつて2度にわたり車から降り立った頃の面影はなく、脇にあったテレビ塔も撤去されていた。

高架化された駅の改札内に入ると和の「おもてなし」テイストに彩られ、床もきれいで、まるでホテルだ。

忠別川に面した一帯はオープンテラスになっていて、夕暮れを楽しむ人々が穏やかな時間を過ごしていた。

これはいい。
市民が心から憩える誇り高き駅だと思う。

偉大なる再生だ。


20:26 美瑛(びえい)駅(富良野線 北海道)
日本が、北の大地が誇る美しい一帯に足を踏み入れている。

美瑛は丘のまち。

自慢の丘はここから遠く、これから先もおそらく見に行く機会を作ることは難しいだろうが、この美しい駅に降りたことは、重ねてきた記録に箔をつけることになる。

今夜泊まる富良野がどんな街か知らないが、格は同じだ。

駅前通りに暖色の灯が続いている。

別に何があるわけじゃない。
たいていの店は閉まっていて、歩道でちんまりと花火に興じる若い家族の姿がある。

ふらふら歩いて駅に戻る途中、あるお宅から子供の笑い声が響いた。
無邪気な声。
大人はあんなふうに笑えない。
だから子供の声が必要なんだ。

子供が心底無邪気に笑っているのなら、それを平和と幸福を意味する。

美しい土地でそんなことを考えた。



20:54 千代ヶ丘(ちよがおか)駅(富良野線 北海道)
2駅戻る。

237号国道に面して明治から生きてきた大木が4本植わっている。

鉄道開業に際して沼地だった土地を住民自ら埋めて駅の誘致に成功し、大木は開拓の象徴として残された。

町に駅に歴史あり。
今オレが暮らしているあたりに、そんな昔から生きている存在があるとは聞いたことがない。

星がきれいだけど、かつて最上川のドライブインで驚愕したほどの空はここにはなかった。

富良野(ふらの)駅(根室本線/富良野線 北海道)にて

22:51 民宿むつかり1階和
中国人の一団が浴室を占拠している。

富良野が美しいという認識は日本人にもあるが、だからと言ってすぐにホテルを予約したりはしない。

だからこそ「北の国から」で有名になった今も、楽天トラベルで検索してヒットした数は決して多くない。
駅前にビジネスホテルはなかった。

他に所もあろうに不思議な行動を続ける民族だ。

しかもその行動力が侮れない。
アジア諸国と海を争い、ふてぶてしい態度をとる。

歴史が証明してきた事実に照らせば、今の政治体制が永遠に続くことは100%あり得ない。
北朝鮮にも同じことが言える。

そこに暮らす人々の態度も褒められたものじゃない。
太古の「礼の国」はいつしかそんな概念を忘れてきたらしい。
他国に占領された過去が促した作用なのかもしれない。

やっと風呂に入ることができた。

富良野は滝川についで最後に辿り着いたターミナルの街。

迎えの明かりはあまりにも暗かった。

駅前の様子から察すると観光の拠点は美瑛なのかもしれない。

二日前に二人のメガネ美人に遇ったことを書いたけど、まだ顔を思い出すことができる。
その内のひとり、早稲田の先生の名が「あかりさん」だったことを不意に思い出した。
鞄に記された名にたまたま目がいったのだ。

他意はない。
ただし数多の子どもたちのように、この旅に欠かせない大きな存在ではある。

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