「鉄旅日記」2020年盛夏 2日目(防府-肥前鹿島)その2‐厚狭、美祢、長門湯本、長門市(美祢線) 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月14日・・・厚狭駅、美祢駅、長門湯本駅、長門市駅(美祢線)
7:34 厚狭(あさ)駅(東海道・山陽・九州新幹線/山陽本線/美祢線 山口県)
美祢線に乗り換え。滞在3分。

かつて厚狭から次の湯ノ峠駅へと歩いたものだ。その道を目で追っていた。
当時オレの帰る家は下町じゃなかった。そこでは家族もできたし、愛した人もいた。
宇部に着く頃に何の気なしにつらつらと思い返していた。よくあることだ。
確かに縁はあったが、続かなかった。最愛の存在を得たのに続かなかった。
仮に続いていたとすれば、今オレはここにはいない。
考えたところで悟りに近づくわけでもないが、人とはそうしたもの。
朝に金蓮院で祈る度に最近は菩薩様が現れる。必然と受け止めるとすべてが腑に落ちる。
湯ノ峠を過ぎて厚保まで人跡まれな峡谷を往く。しばらく集落の姿を見なかった。
やがて四郎ヶ原。この駅にも降りたことがある。これまでよくも呆れるほど旅をしてきたものだとつくづく思う。
本州最西端の野球小僧たちはマスクをしていない。それでいい。若者が恐れる対象はウイルスなどであってはいけない。
現在に至るまでオレは人生を恐れ、そして敬っている。
8:12 美祢(みね)駅(美祢線 山口県)
10分の停車。様々なものが出ていってしまった後のような駅前風景はそのままに、駅舎には新たな施設ができていた。



懐かしくもある美祢駅での時間。かつて美祢にいた日も夏。沿線を車窓から眺めながら、あの日よくも四郎ヶ原から南大嶺、美祢と歩いたものだと我がことながら驚く。
1916年開業当時の駅名は美祢ではなく、吉則(よしのり)。秋芳洞への最寄り駅にあたる。
秋吉台には高校の修学旅行で行って、強い印象を残している。宇部に恋をしに行ったかつての車の中で、秋吉台で行われる花火大会に行った話を聞いたよ。へ~っ、そんな花火大会があるんだ。

夏の風景は活力にあふれている。夏草の萌えたつ匂いをかいだのは確か岩国でのことだったか。
9:21 長門湯本(ながとゆもと)駅(美祢線 山口県)
音信川は恋の聖地。そんな温泉場での傷を癒す時間。図らずもそんな時間を得た。
子供たちは水と戯れ、大人たちは日影で談笑。オレは人の去った足湯場でビールを飲んでいたよ。温泉場には酒屋があるもので、酒を購入できることは疑っていなかった。








美祢線を完全乗車するのは今回が初めてで、さらに足跡を残しておこうと思い、計画ではひと駅先の板持駅からここまで歩くつもりでいたが、次の列車が着くまでに歩ききれるか危ぶむ気持ちからこうした時間が生まれた。
長門湯本には以前の夏に宿泊する予定を立てて、実際に予約までしたが、鉄道事情によりキャンセルしたことがある。最近は夏前に雨雲が各地を移動して線路を流す事態が続いている。そうした過去が今回下りるべき駅としてここを選ばせた。




時間は止まらないが、止まったような時間の中で温泉場を眺めていた。日常の焦燥はない。これも温泉効果か。つかったのは足だけだが。
日本が誇る美にひたる夏。夏空を歓迎して、アマテラスに感謝した。

9:55 長門市(ながとし)駅(山陰本線/仙崎支線/美祢線 山口県)
11年振りに降りた。


廃れているというか味わい深い駅前のステーションホテルは営業を続けていて、1階の土産物売場で買い物。

ご店主から「どこから?」と聞かれ、正直に「評判の悪い東京から」と答えると、彼は苦笑いしながらも「小池さん、脅かしすぎや。あれじゃ商売できん」とこぼす。
ホテルの脇からささやかな繁華街が続く。最初の角で立ち止まった。この街に似つかわしい建物がそこにあったから。



長門市駅は正明市(しょうみょういち)駅として当初開業している。1924年のこと。正明市は町の名であり、駅近くの交差点にもその名がある。
山陰本線に乗り換える。下関まで。
列車は動き、夏草が繁り風に揺れる様を眺めている。時に見える日本海の青は濃く、そして美しい。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2021年師走 初日(東京-古川)その3 ‐千徳、宮古、盛岡、古川(山田線/東北新幹線)/蛇の目寿司 【特急乗り放題の大人の休日倶楽部パスで冬の国へ。山田線完全乗車と鳴子温泉郷を始めとした陸羽東線沿線を歩くことが目的でございました。】
鉄旅日記2021年12月4日・・・千徳駅、宮古駅、盛岡駅、古川駅(山田線/東北新幹線)/蛇の目寿司
-
-
「鉄旅日記」2016年夏 4日目(富良野-大館)その1-富良野、滝川、岩見沢、白石、新札幌、北広島、恵庭、千歳、新千歳空港(根室本線/函館本線/千歳線/石勝線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】
鉄旅日記2016年8月13日・・・富良野駅、滝川駅、岩見沢駅、白石駅、新札幌駅、北広島駅、恵庭駅、千
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その3 ‐洋光台、港南台、本郷台、大船、湘南江の島、片瀬江ノ島、江ノ島(根岸線/湘南モノレール) 【金沢シーサイドライン、横須賀線、御殿場線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】
鉄旅日記2022年3月5日・・・洋光台駅、港南台駅、本郷台駅、大船駅、湘南江の島駅、片瀬江ノ島駅、
-
-
「鉄旅日記」2008年初夏 2日目(和歌山-松阪)その1-和歌山市、和歌山、海南、西御坊、御坊、紀伊田辺、白浜(紀勢本線/紀州鉄道) 【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】
鉄旅日記2008年7月20日・・・和歌山市駅、和歌山駅、海南駅、西御坊駅、御坊駅、紀伊田辺駅、白浜駅
-
-
「鉄旅日記」2003年冬 最終日(博多-宇部)その1-博多そして小倉 【ご縁と別れがあり、34歳の誕生日を北九州で迎えた日の記憶でございます。】
鉄旅日記2003年2月16日 2003・2・16日の記憶 日曜日の朝だった。 34歳の誕生日に目覚
-
-
「車旅日記」2004年春 4日目(旭川-稚内)走行距離428㎞その1-藤田観光ワシントンホテル、愛別駅、上川駅、白滝駅、丸瀬布駅、遠軽市太陽の丘公園 瞰望岩、遠軽駅、オホーツク氷紋の駅 【旭川に下りて、思う存分に北の大地を走った旅の記録でございます】
車旅日記2004年5月4日・・・藤田観光ワシントンホテル、愛別駅、上川駅、白滝駅、丸瀬布駅、遠軽市太
-
-
「鉄旅日記」2020年文月 2日目(香住-東萩)その3‐末恒、浦安、米子、揖屋(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】
鉄旅日記2020年7月24日・・・末恒駅、浦安駅、米子駅、揖屋駅(山陰本線) 10:39&n
-
-
「鉄旅日記」2014年春 その2-瓜連、静、山方宿、袋田、西金、下小川、後台、常陸津田、常陸青柳、神立、高浜、牛久(水郡線/常磐線) 【ときわ路パスで、常陸ローカル旅】
鉄旅日記2014年4月27日その2・・・瓜連駅、静駅、山方宿駅、袋田駅、西金駅、下小川駅、後台駅、常
-
-
「鉄旅日記」2018年師走 2日目(津-松阪-伊勢奥津-鳥羽-神島)その3-神島にて・・・八代神社、神島灯台、監的哨、ニワの浜、神島山海荘あじさい 【伊勢のいくつもの終着駅に降りまして、神島で2018年最後の満月を眺めたのでございます。】
鉄旅日記2018年12月23日・・・八代神社、神島灯台、監的哨、ニワの浜、神島山海荘あじさい 14
-
-
「鉄旅日記」2020年盛夏 2日目(防府-肥前鹿島)その1‐防府、新山口、宇部、小野田(山陽本線)/防府天満宮 【コロナ禍の内緒旅VOl.2。宮島へ。錦帯橋へ。筑豊へ。島原へ。千綿駅へ。そして若松~戸畑の渡船。日本晴れの4日間の記録でございます。】
鉄旅日記2020年8月14日・・・防府駅、新山口駅、宇部駅、小野田駅(山陽本線)/防府天満宮
