「鉄旅日記」2009年晩秋【陰陽を行き来した3日間。この国の秋は美しゅうございました。】初日(東京-倉敷)その1-東京、円町、園部、安栖里、山家、市島、柏原、谷川、西脇市、粟生(東海道新幹線/山陰本線/福知山線/加古川線)
鉄旅日記2009年11月21日・・・東京駅、円町駅、園部駅、安栖里駅、山家駅、市島駅、柏原駅、谷川駅、西脇市駅、粟生駅(東海道新幹線/山陰本線/福知山線/加古川線)
2009・11・21 6:04 東京(とうきょう)駅(東海道山陽新幹線/東北新幹線/上越・長野新幹線/東海道本線/中央本線/山手線/京浜東北線/総武線快速/横須賀線/京葉線/東京メトロ丸の内線 東京都)
のぞみ1号、3号とも自由席は満席。
席を求めてさまよう者がまだ暗い空の下でたくさん見られる。
騒ぎはすでに金町から始まっていた。
真っ黒な人々がどこかへ向けて列を作っていた。
若干の遅れが勝敗を分ける。
オレみたいなヤツはさっさと寝床を抜け出すべきだ。
ひとつひとつ小さな現実を繰り返し経験して、焦り、疲れ、次第に小さくなっていく希望を遠くに見て、その途方もなさに挫け、今ある生活に結局はしがみつく。
だけど今朝のオレは自由だ。
そして人々も多少の不自由さを味わいながらも、遠くを目指すことに高揚感を覚えながら新幹線に乗り込んでいる。
変わりやすい天気が続いていた。
だけど今日の列島はどこも晴れだ。
9:06 円町(えんまち)駅(山陰本線 京都府)
世界の国々から毎日のように人々が訪れる、世界が身近な街、京都。
この街と、ここで暮らしていたひとりの女性に恋した頃は、もうすっかり過去のものになったのだと、新幹線ホームから八条口を眺めた時に思う。
あの頃は、その風景を眺めるたびに帰ってきたと思ったものだ。
西ノ京円町。
京都らしい地名に憧憬の念を覚える。
西大路と丸太町通りが交差する町に繁華街はなく、ただ多くの車が行き交っている。
金閣寺に天龍寺と、世界文化遺産の案内表示がある町。
三沢光晴×川田利明、スタン・ハンセン×スティーブ・ウイリアムスのチャンピオン・カーニバル公式戦に、リック・フレアー、リック・マーテルの世界王者コンビの実現と、数々のビッグ・マッチが組まれた京都府立体育館もここにある。
嵐山がほんのりと紅い。
そこを目指す一団を乗せた列車が間もなく来る。
9:57 園部(そのべ)駅(山陰本線 京都府)
保津峡で紅葉を楽しみ、列車は丹波の国へ。
南丹市という見知らぬ町を名乗るようになったのはいつからか。
かつてこの町を眺めた9号国道は近くを流れている。
木々は紅く染まり、風景は平板になった。
城跡が残り、同和地区から代議士を国政に導いた町。
西口に「リーズナブル」という冗談みたいな名のビジネスホテルと、ショーケースの中がすかすかな食堂を入れたステーションビルがある。
利用者がいないのか、入口付近の明かりはすべて消えていた。
10:40 安栖里(あせり)駅(山陰本線 京都府)
数分の停車。
駅舎はなく、商店が一軒。
外からじゃ、ここが駅かどうか判別がむずかしい。
風が冷たい。
山深い丹波の里を見下ろすように、山陰本線は福知山に向かっている。
その福知山まで、綾部を除いてすべて無人駅らしい。
10:57 山家(やまが)駅(山陰本線 京都府)
谷間の集落に冷たい風が吹き、どこかで聞いたことのありそうな名を持つ駅には、ごく簡素な味気ない駅舎が建つ。
ここでも数分の停車。
だだっ広い広場に止まる車は1台もなく、古い平屋の前で老婆が冷たい路上に座り込んで話し込んでいる。
色づく里をひた走り、次は綾部。
隙間風が入る列車に乗っている。
11:35 市島(いちじま)駅(福知山線 兵庫県)
福知山で福知山線に乗り換える。
数分の停車。
丹波の国にいる。
ここは丹波市を名乗っている。
大きく汽笛が鳴った。
丹波に入ってからは現在的な構造物を見ていない。
目の前に丹波高地が立ちはだかってきた。
11:55 柏原(かいばら)駅(福知山線 兵庫県)
石原を「いさ」。
石生は「いそう」。
丹波の地名は難解だ。
ここは織田信長所縁の地という。
八上城の悲劇をはじめ多くの血が流れ、その後丹波人は明智光秀に率いられて信長を本能寺に襲った。
柏原は城下町とのこと。
山の駅を併設した立派な駅で、歩いてみたい商店街が駅から続いていた。
ここで数分の停車。
12:09 谷川(たにかわ)駅(福知山線/加古川線 兵庫県)
1両のワンマンカーの座席はお年寄りで埋まり、弁当の匂いが充満している。
丹波山南地区のターミナル駅で乗り換えて、加古川に向かう車内にいる。
谷川は小さな町で、駅前には1軒の旅館。
丹波の寂びた旅情は味わい深い。
丹波で宿をとるとしたら、どこが適当か。
明後日もこの道を往く。
そこで答えが出るだろう。
やはり天空の城を持つ篠山か。
12:45 西脇市(にしわきし)駅(加古川線 兵庫県)
「日本のへそ」西脇。
ここはもう播磨の国か。
加古川に沿った旅はここで杉原川と合流して平野に出た。
この線区の中核の街だが、駅前はひっそりとして、1軒のお好み焼き屋を除いて商店もない。
かつてこの駅は野村を名乗り、ここから鍛冶屋線が延びていた。
その鍛冶屋線がまだ走っていた当時、この街で王者ブルーザー・ブロディが、挑戦者ジャンボ鶴田を迎えたインター王座戦が組まれたのは26年前。
全日本プロレスはそれから京都に向かいシリーズを締めた。
おそらくそれ以来そうした類の興行が西脇に行ったことはないだろう。
13:09 粟生(あお)駅(加古川線/北条鉄道/神戸電鉄粟生線 兵庫県)
播磨のターミナル駅に着いて北条鉄道に乗り換える。
加古川はここでさらに万願寺川を吸収して明石海峡に向かう。
南欧を思わせる白亜の駅舎を持つ粟生駅前には何もなく、昼食は山陽路に出るまで期待できそうにない。
神戸鉄道も乗り入れ、ここを終点としている。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】初日(東京-水沢)その2-前谷地、柳津、気仙沼、一ノ関、水沢(石巻線/気仙沼線/大船渡線/東北本線)
鉄旅日記2016年3月5日その2・・・前谷地駅、柳津駅、気仙沼駅、一ノ関駅、水沢駅(石巻線/気仙沼線
-
-
「鉄旅日記」2016年春【東日本大震災被災地へ】最終日(水沢-東京)その2-気仙沼、一ノ関、小牛田、大河原、福島、安積永盛、久喜(大船渡線、東北本線)
鉄旅日記2016年3月6日その2・・・気仙沼駅、一ノ関駅、小牛田駅、大河原駅、福島駅、安積永盛駅、久
-
-
「車旅日記」1996年夏【再び北を目指した夏。不慮の事故に遭い、打ち切らざるを得なくなったのでございます。】最終日 事故から帰京を振り返って。
車旅日記1996年8月15日 1996・8・15 東京 望郷の思いとは別に昨日家に帰り着いた。
-
-
「鉄旅日記」2018年如月【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】最終日(直江津-六日町-大前-東京)その2-八色、浦佐、五日町、水上、後閑、上牧、八木原(上越線)
鉄旅日記2018年2月11日・・・八色駅、浦佐駅、五日町駅、水上駅、後閑駅、上牧駅、八木原駅(上越線
-
-
「鉄旅日記」2020年晩秋【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】2日目(砺波-武生)その2‐倶利伽羅、森本、宇野気、高松(IRいしかわ鉄道/七尾線)
鉄旅日記2020年11月22日・・・倶利伽羅駅、森本駅、宇野気駅、高松駅(IRいしかわ鉄道/七尾線
-
-
「鉄旅日記」2009年秋【遅い夏休みをとり、長崎までの切符を買いました。】3日目(大分-佐賀)その1-大分、中判田、豊後竹田、宮地、肥後大津、水前寺、辛島町、熊電上熊本、上熊本(豊肥本線/熊本市電)
鉄旅日記2009年9月20日・・・大分駅、中判田駅、豊後竹田駅、宮地駅、肥後大津駅、水前寺駅、辛島町
-
-
「車旅日記」2006年皐月【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】初日(東京葛飾-黒磯)-天王台駅、水海道駅、下妻駅、真岡駅、益子駅、烏山駅、黒磯駅、道の駅明治の森黒磯
車旅日記2006年5月2日・・・天王台駅、水海道駅、下妻駅、真岡駅、益子駅、烏山駅、黒磯駅、道の駅明
-
-
「鉄旅日記」2007年皐月【夜汽車に乗って東京を離れ、山陰山陽へ。鉄旅最初の長旅でございました。】3日目(福山-岡山)-福山、三原、呉、広島、三次、備後落合、東城、岡山(山陽本線/呉線/芸備線/伯備線)
鉄旅日記2007年5月5日・・・福山駅、三原駅、呉駅、広島駅、三次駅、備後落合駅、東城駅、岡山駅(山
-
-
「鉄旅日記」2013年夏【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】3日目(南宮崎-隼人)その2-宮崎、清武、田野、山之口、西都城、餅原、都城、京町温泉、えびの、吉松(日豊本線、吉都線)
鉄旅日記2013年8月12日その2・・・宮崎駅、清武駅、田野駅、山之口駅、西都城駅、餅原駅、都城駅、
-
-
「鉄旅日記」2008年初夏【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】初日(東京-和歌山)その2-畝傍、高田、大和高田、近鉄郡山、郡山、王寺、五条、和歌山(桜井線/近鉄大阪線/近鉄橿原線/和歌山線)
鉄旅日記2008年7月19日・・・畝傍駅、高田駅、大和高田駅、近鉄郡山駅、郡山駅、王寺駅、五条駅、和