「鉄旅日記」2012年春【青春18きっぷで、ダム湖に水没する鉄路へ】その1-上尾、桶川、鴻巣、行田、岡部、神保原、新町、群馬総社、中之条、郷原、長野原草津口、万座・鹿沢口(高崎線、吾妻線)
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最終更新日:2020/08/28
旅話 2012年
鉄旅日記2012年4月1日その1
2012・4・1 6:10 上尾(あげお)駅(高崎線 埼玉県)
中山道上尾宿。
東にまるひろ、西にイトーヨーカ堂が構える。
西にマンシェリーという煉瓦造りの洒落た一角があるが、入居している顔ぶれはどれもありふれたものばかりだった。
とても近代的で賑やかな駅で、降りれば街が待ち構えていそうで期待したが、駅周辺から広がりは見られない。
かつて勤め人による反抗といった意味合いの重大事件が起きた街だ。
詳細は知らない。
ドカベン香川、牛島を擁した浪商相手に一歩も引かなかった上尾高校はその後甲子園で姿を見る機会を失くし、この街に故郷を置くかつての同僚からの消息も絶えた。
6:38 桶川(おけがわ)駅(高崎線 埼玉県)
紅はなの街、中山道桶川宿。
桶川臙脂(エンジ)か。
江戸時代に名を馳せた名産だという。
狭い駅そば屋に早朝から大勢が肩を寄せ合ってそばを啜っていた。
駅通りを旧中山道に向かって歩く。
古い道だった。
寂れたと言ったら地元の人は怒るだろうか。
旧中山道まで行き着けばいくつか史跡があったのか。
街の案内板は結構賑やかだったよ。
7:01 鴻巣(こうのす)駅(高崎線 埼玉県)
中山道宿場巡りだな。
駅そばの屋号も中山道。
ひな人形と花のまち。
ひな人形の方は有名で先日は知人からその様子を聞いた。
街にも駅にも特色がなくなってきた。
上尾からずっと似たような街にいる。
7:24 行田(ぎょうだ)駅(高崎線 埼玉県)
トレーニングウェアにリュック姿の男女が大勢下りる。
鉄剣マラソン開催日でバスが彼等を待っている。
ラーメン屋くらいしか見当たらない駅前に歴史文化に出会うまちの看板があって、そこには安っぽく見える城の写真が描かれている。
ここから見えている堤には興味がある。
荒川か。
8:00 岡部(おかべ)駅(高崎線 埼玉県)
渋沢栄一と岡部藩。
藩主の安部市は徳川家臣で三河以来のお家柄だが、陣屋を持つのみの小さな所帯だったらしい。
中山道は歴史の街道だが、東海道を行く華やかさはない。
飲み屋、本屋、食堂、喫茶店が一軒ずつ。
そろそろ関東平野が尽きる頃。
視界には山並みが常にある。
8:31 神保原(じんぼはら)駅(高崎線 埼玉県)
駅名の由来を示す案内はない。
1番線ホームには七福神が鎮座している。
あたたかい日差しの中を駅前の一本道を歩く。
妙義山が見え、富士と見まがうような頂を有する名峰が見える県境でしばしの時を過ごした。
8:52 新町(しんまち)駅(高崎線 群馬県)
17号国道が走る駅前は賑やかに見えたが、見渡せば商店はなく、ステーションホテルがある。
はなみずき通、新町の花火。
戦国時代、争いに明け暮れた関東の兵乱はこの地にも及び、駅から1キロ地点に神流川(かんながわ)古戦場がある。
本能寺の変で横死した織田信長から、関東制覇のために派遣されていた滝川一益と、関八州の覇者、小田原北条氏直による戦いで、滝川軍の敗走で幕を閉じたが、双方ともかなりの戦死者を出した規模の大きな戦いだったようだ。
ここは中山道11番目の宿場町。
上州に入った。
9:37 群馬総社(ぐんまそうじゃ)駅(上越線/吾妻線 群馬県)
高崎で上越線に乗り換える。
山がきれいに見えてきたのと古い駅舎に惹かれて下りる。
勝山城跡と古墳が地図に見える。
ちっぽけな飲み屋が一軒の駅前だった。
オレが見てる右手の山は赤城山か。
裾野があるのは富士に限った話じゃない。
美しい。
ただひたすら美しい。
行く手の奥に見える白い峰が谷川岳だろう。
健大高崎は夏に続きセンバツも甲子園に現れ今日ベスト8を闘う。
11:18 中之条(なかのじょう)駅(吾妻線 群馬県)
群馬総社の2駅先の渋川から吾妻線に入る。
使われなくなった町のビルに食堂が数軒。
町に六連銭の印しを見かける。
145号国道に面してスナックの混ざった商店が並ぶ。
四万・沢渡温泉口として観光客の姿も少なくない町だが、90分という時間を費やせる町じゃなかった。
上野行特急の到着に合わせて1車両を埋めるほどの待ち人が1番線に溢れている。
この駅から逆方向、「執念谷」に向かおうとしている者は今のところオレひとりだけだ。
春はここにも訪れている。
11:56 郷原(ごうばら)駅(吾妻線 群馬県)
太陽と緑と清流の吾妻。
海音寺潮五郎さんが小説で描いた「執念谷」の小駅で交換待ちで3分の停車。
列車が動き出し、やがて小高い場所に祠のある矢倉という駅に着く。
12:38 長野原草津口(ながのはらくさつぐち)駅(吾妻線 群馬県)
特急列車到着で驚くべき数の人々が押し寄せた。
草津とはそういう場所か。
10数年前が懐かしい。
駅前にはバス発着所の他には何もなく、雪の残る間近の山から吹き下ろす冷たい風に肩をすくめた。
13:35 万座・鹿沢口(まんざ・かざわぐち)駅(吾妻線 群馬県)
思い出の駅前だが、現実と記憶の間でいくつか相違点がある。
ともあれ、このあたりには何度もきている。
恋人と、そして仲間と。
雪のない季節にもきているが、雪のない景色の記憶はない。
凍えた駅には人がたくさんいた。
今年もそんな光景が見られたのだろう。
食堂に土産物屋。
駅前の道は145号国道。
吾妻川の存在にも当時は気づいていなかった。
当然駅の背後にそそり立つ丘陵にも。
あんなことこんなこと、オレの過去から何がほとばしり出てくるかと期待していたが、ろくに顔も出さず、駅から見える嬬恋の春をただ眺めていた。
その景色はとても美しいものだったよ。
終着駅はこの先の大前だが、ここから引き返す。
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