「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その1-町田、御殿場、道の駅富士川、静岡駅、掛川
車旅日記1996年5月3日
1996・5・3 0:36 東京町田
旅が始まる。
今はそれ以外の感慨は浮かんでこない。
今夜、確かに彼女と約束した。
3日後の21:00に金沢駅で会うと。
さっきまで、あるいは彼女は3日後に現れないのではないかと落ち込んでいた。
でも彼女は電話をくれたんだ。
もう一度、約束の時間と場所を確認するために。
あらためてとても幸運な約束が交わされた。
本当言うと、このまま今夜は酒を飲んで幸福な気持ちのまま眠ってしまいたい。
しかし西へ旅立たなければならない。
3日後に西の空の下で彼女に会うために。
遠くで暮らす大切な友人夫婦に会うために。
「これで旅の喜びがひとつ増えた。」
震える声で彼女にそう伝えた。
そして「おやすみ」と電話を切った。
こんなにも幸せな旅立ちは初めてだ。
行ってきます。
2:39 246号国道‐御殿場手前
ツアーに出ると、ツアー自体を楽しめる心地になるには少しばかり時間が必要なんだ。
秋から国道を選んでいる。
ハイウェイじゃないんだ。
途中マトモな休憩場所なんてないんだよ。
だから地図を見ながらどこか適当な駅を見つけて立ち寄るわけだけど、夜とはいえ駅にも数人の人影が見える。
大方は帰れなくなるまで飲んでいた連中か、昼間の時間帯は世間からはみ出している連中。
つまりマトモな精神状態でいるヤツはひとりもいないってわけだ。
そんな場所で、心の底からのんびりと休憩することなんてできないんだよ。
たいていは追い立てられるようにその場を去るんだ。
オレからすれば連中は変なヤツ等だけど、連中からすればオレも奇妙なヤツだろう。
多摩ナンバーの男がこんな時間に一体何の用があるんだ。
連中はマトモじゃない。
危害を加えてこないとも限らない。
そうなったらそうなったで用意がないわけじゃないが、そうなる前にいなくなるんだよ。
だから疲れが癒えることはない。
なかなかタフなもんだろう?
かろうじて月が出ている。
今夜もオレが走るべき夜だ。
この前と違うところは、もうこの道が確実に大阪へ続いていることを知っていることだ。
気分は悪くないよ。
最初の煙草も美味かったしね。
警報ではこの後しばらく行くと濃霧が立ち込めているらしい。
それもいいだろう。
500㎞走っていくうちにはいろんなことがあるさ。
さあ、行こうか。
どこか適当な便所を見つけよう。
久保田利伸で旅が始まり、ここからはボブ・ディランの30周年記念LIVE。
3:41 1号国道‐富士川(道の駅)
箱根を行かなくてよかったよ。
今夜はあの焦燥を感じずに済んでいるんだ。
富士川の手前に「道の駅」っていうのがある。
深夜でもそこは安心していい。
オレのように何らかの理由があって、こんな時間に車を走らせる連中が休憩できる場所なんだ。
煙草とタオルを持って外に出る。
顔を洗って一服。
煙草は相変わらず美味いし、もう少し行けそうな気がするよ。
じき、夜も明けるんだろう?
4:20 静岡駅
ボブの仲間たちとうまいことやっているよ。
このまま彼等と朝を迎えよう。
展開としては悪くない。
今夜はたいして意味のある夜じゃない。
行けるところまで行ければ、それでいい。
さっき富士川に差しかかった時の月はきれいだったな。
秋にも箱根越えのオレを優しく照らしてくれた。
あのまま道を行けば天国へたどり着くんじゃないかと思ったよ。
とりあえず、今夜も月はオレの上にかかった。
なんかうれしかったよ。
走りながら夜明けを待つ。
5:09 1号国道‐掛川
朝がきたよ。
トム・ペティ&ハートブレイカーズの演奏が始まるところでテープは止めた。
オレの家から196㎞の地点。
疲れたよ。
先は長い。
ぼちぼち休憩にして、浜松で朝飯ってところだ。
この場所の特定はできない。
1号バイパス上に路側帯があり、数台のトラックが停まっている。
彼等はいつもあんなふうに夜を明かしている。
オレが言う路上の生活とはこういうやつだよ。
今夜オレは彼等の仲間になった。
車を停めて外に出た。
タオルを肩に引っかけて、車に両手をつきながらアキレス腱を伸ばす。
路上からは数軒の暮らしが見える。
思考は完全に停止した。
つまり、もう寝た方がいいってことだ。
ニワトリが鳴いた。
車に戻って目を閉じよう。
一年に1度か2度くらいしか訪れない長い一日が、夜明けを迎えて終わった。
関連記事
-
-
鉄旅日記」2012年初冬 最終日(長野-東京)その2-小諸、岩村田、佐久平、中込、臼田、小海、野辺山、清里、大月(小海線、中央本線) 【週末パスで、甲信越途中下車旅】
鉄旅日記2012年12月9日その2・・・小諸駅、岩村田駅、佐久平駅、中込駅、臼田駅、小海駅、野辺山駅
-
-
「鉄旅日記」2019年如月 最終日(安中-東京)その1-安中、松井田、西松井田、横川、軽井沢、大屋(信越本線/しなの鉄道) 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】
鉄旅日記2019年2月10日・・・安中駅、松井田駅、西松井田駅、横川駅、軽井沢駅、大屋駅(信越本線/
-
-
「鉄旅日記」2021年夏 初日(東京-上田)その4 ‐長野、御代田、小諸、上田(信越本線/しなの鉄道) 【4度目の緊急事態宣言前。飯山線に乗りたくて旅を思い立ちました。湯檜曽駅で夏の第一声を聞き、信越路を歩いた記録でございます。】
鉄旅日記2021年7月10日・・・長野駅、御代田駅、小諸駅、上田駅(信越本線/しなの鉄道)
-
-
「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その5 ‐川崎新町、八丁畷、矢向、平間(浜川崎支線/南武線)/ガス橋 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、相模線、鶴見線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】
鉄旅日記2022年3月6日・・・川崎新町駅、八丁畷駅、矢向駅、平間駅(浜川崎支線/南武線)/ガス橋
-
-
「車旅日記」1996年夏【再び北を目指した夏。不慮の事故に遭い、打ち切らざるを得なくなったのでございます。】最終日 事故から帰京を振り返って。
車旅日記1996年8月15日 1996・8・15 東京 望郷の思いとは別に昨日家に帰り着いた。 後
-
-
「車旅日記」2005年春 初日(松本-富山)走行距離317㎞ その1-新宿駅、松本駅、明科駅、聖高原駅、冠着駅、姨捨駅、篠ノ井駅、川中島駅、飯山駅 【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】
車旅日記2005年4月29日・・・新宿駅、松本駅、明科駅、聖高原駅、冠着駅、姨捨駅、篠ノ井駅、川中島
-
-
「鉄旅日記」2018年春 初日(東京-飯田)その1-国立、高尾、宮田、伊那八幡、三河東郷、新城、三河一宮(中央本線/飯田線)【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】
鉄旅日記2018年4月7日・・・国立駅、高尾駅、宮田駅、伊那八幡駅、三河東郷駅、新城駅、三河一宮駅(
-
-
「鉄旅日記」2021年皐月 初日-浜金谷駅、金谷港、勝浦駅(内房線/外房線)/遠見岬神社/旅館松の家 【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】
鉄旅日記2021年5月22日・・・浜金谷駅、金谷港、勝浦駅(内房線/外房線)/遠見岬神社/旅館松の
-
-
「車旅日記」2005年春 最終日(富山-松本)走行距離218㎞ その1-アパホテル富山駅前、城川原駅、岩瀬浜駅、東富山駅、中滑川駅、滑川駅、魚津駅、石田駅、電鉄黒部駅、入善駅【松本から富山へ。今にして思えば、なぜこの旅を思い立ったのか思い出せないのでございます。】
車旅日記2005年4月30日・・・アパホテル富山駅前、城川原駅、岩瀬浜駅、東富山駅、中滑川駅、滑川駅
-
-
「鉄旅日記」2016年夏 4日目(富良野-大館)その1-富良野、滝川、岩見沢、白石、新札幌、北広島、恵庭、千歳、新千歳空港(根室本線/函館本線/千歳線/石勝線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】
鉄旅日記2016年8月13日・・・富良野駅、滝川駅、岩見沢駅、白石駅、新札幌駅、北広島駅、恵庭駅、千
