*

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その1-町田、御殿場、道の駅富士川、静岡駅、掛川

公開日: : 最終更新日:2025/05/14 旅話, 旅話 1996年

車旅日記1996年5月3日

1996・5・3 0:36 東京町田
旅が始まる。
今はそれ以外の感慨は浮かんでこない。

今夜、確かに彼女と約束した。
3日後の21:00に金沢駅で会うと。

さっきまで、あるいは彼女は3日後に現れないのではないかと落ち込んでいた。

でも彼女は電話をくれたんだ。
もう一度、約束の時間と場所を確認するために。

あらためてとても幸運な約束が交わされた。

本当言うと、このまま今夜は酒を飲んで幸福な気持ちのまま眠ってしまいたい。
しかし西へ旅立たなければならない。

3日後に西の空の下で彼女に会うために。
遠くで暮らす大切な友人夫婦に会うために。

「これで旅の喜びがひとつ増えた。」
震える声で彼女にそう伝えた。
そして「おやすみ」と電話を切った。

こんなにも幸せな旅立ちは初めてだ。

行ってきます。

2:39 246号国道‐御殿場手前
ツアーに出ると、ツアー自体を楽しめる心地になるには少しばかり時間が必要なんだ。

秋から国道を選んでいる。
ハイウェイじゃないんだ。

途中マトモな休憩場所なんてないんだよ。
だから地図を見ながらどこか適当な駅を見つけて立ち寄るわけだけど、夜とはいえ駅にも数人の人影が見える。

大方は帰れなくなるまで飲んでいた連中か、昼間の時間帯は世間からはみ出している連中。
つまりマトモな精神状態でいるヤツはひとりもいないってわけだ。

そんな場所で、心の底からのんびりと休憩することなんてできないんだよ。
たいていは追い立てられるようにその場を去るんだ。

オレからすれば連中は変なヤツ等だけど、連中からすればオレも奇妙なヤツだろう。
多摩ナンバーの男がこんな時間に一体何の用があるんだ。

連中はマトモじゃない。
危害を加えてこないとも限らない。
そうなったらそうなったで用意がないわけじゃないが、そうなる前にいなくなるんだよ。

だから疲れが癒えることはない。
なかなかタフなもんだろう?

かろうじて月が出ている。
今夜もオレが走るべき夜だ。

この前と違うところは、もうこの道が確実に大阪へ続いていることを知っていることだ。
気分は悪くないよ。
最初の煙草も美味かったしね。

警報ではこの後しばらく行くと濃霧が立ち込めているらしい。
それもいいだろう。
500㎞走っていくうちにはいろんなことがあるさ。

さあ、行こうか。
どこか適当な便所を見つけよう。

久保田利伸で旅が始まり、ここからはボブ・ディランの30周年記念LIVE。

3:41 1号国道‐富士川(道の駅)
箱根を行かなくてよかったよ。
今夜はあの焦燥を感じずに済んでいるんだ。

富士川の手前に「道の駅」っていうのがある。
深夜でもそこは安心していい。
オレのように何らかの理由があって、こんな時間に車を走らせる連中が休憩できる場所なんだ。

煙草とタオルを持って外に出る。
顔を洗って一服。
煙草は相変わらず美味いし、もう少し行けそうな気がするよ。

じき、夜も明けるんだろう?

4:20 静岡駅
ボブの仲間たちとうまいことやっているよ。
このまま彼等と朝を迎えよう。
展開としては悪くない。

今夜はたいして意味のある夜じゃない。
行けるところまで行ければ、それでいい。

さっき富士川に差しかかった時の月はきれいだったな。
秋にも箱根越えのオレを優しく照らしてくれた。
あのまま道を行けば天国へたどり着くんじゃないかと思ったよ。

とりあえず、今夜も月はオレの上にかかった。
なんかうれしかったよ。

走りながら夜明けを待つ。

5:09 1号国道‐掛川
朝がきたよ。
トム・ペティ&ハートブレイカーズの演奏が始まるところでテープは止めた。

オレの家から196㎞の地点。
疲れたよ。

先は長い。
ぼちぼち休憩にして、浜松で朝飯ってところだ。

この場所の特定はできない。
1号バイパス上に路側帯があり、数台のトラックが停まっている。
彼等はいつもあんなふうに夜を明かしている。
オレが言う路上の生活とはこういうやつだよ。

今夜オレは彼等の仲間になった。

車を停めて外に出た。
タオルを肩に引っかけて、車に両手をつきながらアキレス腱を伸ばす。

路上からは数軒の暮らしが見える。
思考は完全に停止した。
つまり、もう寝た方がいいってことだ。

ニワトリが鳴いた。
車に戻って目を閉じよう。

一年に1度か2度くらいしか訪れない長い一日が、夜明けを迎えて終わった。

関連記事

「鉄旅日記」2013年如月【休日おでかけパスで、上総下総途中下車旅&習志野シンフォニックブラス(NSB)演奏会】その1-我孫子、東我孫子、新木、湖北、布佐、小林、木下、安食、下総松崎、成田空港、酒々井、物井、東千葉、本千葉、西千葉、新検見川、幕張、東船橋、津田沼(成田線、総武本線)

鉄旅日記2013年2月17日その1・・・我孫子駅、東我孫子駅、新木駅、湖北駅、布佐駅、小林駅、木下駅

記事を読む

「車旅日記」2006年皐月 4日目(大曲-青森)その2-弘前駅、道の駅つるた、毘沙門駅、津軽中里駅、三厩駅、中小国駅、駅前ホテルニュー青森館 【東京から出かける最後の車旅。関東、東北を2,265㎞走った記録でございます。】

車旅日記2006年5月5日・・・弘前駅、道の駅つるた、毘沙門駅、津軽中里駅、三厩駅、中小国駅、駅前ホ

記事を読む

「鉄旅日記」2012年春 その1-保谷、稲毛、都賀、四街道、久住、下総神崎、松岸、銚子(総武本線、成田線) 【青春18きっぷで、銚子へ、房総へ。】

鉄旅日記2012年3月12日その1・・・保谷駅、稲毛駅、都賀駅、四街道駅、久住駅、下総神崎駅、松岸駅

記事を読む

「鉄旅日記」2020年晩秋 初日(東京-砺波)その2 ‐電鉄魚津、西魚津、新魚津、魚津、高岡(富山地方鉄道本線/あいの風とやま鉄道)/魚津城跡 【大人の休日倶楽部パスで北陸へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。魚津、雨晴をめぐり、氷見線、万葉線、城端線、七尾線、えちぜん鉄道、福武線、北陸鉄道との再会でございます。】

鉄旅日記2020年11月21日・・・電鉄魚津駅、西魚津駅、新魚津駅、魚津駅、高岡駅(富山地方鉄道本

記事を読む

「鉄旅日記」2015年春【浜名湖周辺で遊ぶ一日】その2-鷲津、新居町、浜松、新浜松、第一通り、西鹿島、遠州森、円田、遠江一宮、原谷、掛川、安倍川(東海道本線/遠州鉄道/天竜浜名湖鉄道)

鉄旅日記2015年3月28日その2・・・鷲津駅、新居町駅、浜松駅、新浜松駅、第一通り駅、西鹿島駅、遠

記事を読む

「鉄旅日記」2017年夏 (姫路-十三)その1-山陽姫路、山陽網干、飾磨、大塩、高砂、山陽垂水、垂水、滝の茶屋、山陽塩屋、塩屋、山陽須磨(山陽電車本線/山陽電車網干線) 【私鉄王国で過ごす夏】

鉄旅日記2017年8月13日・・・山陽姫路駅、山陽網干駅、飾磨駅、大塩駅、高砂駅、山陽垂水駅、垂水駅

記事を読む

「鉄旅日記」2009年皐月【四国へ、途中下車の旅】初日(東京-三ノ宮)-金町、東京、静岡、浜松、弁天島、大垣、美濃赤坂、石山寺、膳所、尼崎、西宮、芦屋、三ノ宮(東海道本線、美濃赤坂支線、京阪石山坂本線)

鉄旅日記2009年5月1日・・・金町駅、東京駅、静岡駅、浜松駅、弁天島駅、大垣駅、美濃赤坂駅、石山寺

記事を読む

「鉄旅日記」2020年初秋 初日(東京-高松)その4 ‐姫路、相生、有年、三石(山陽本線) 【時空の友を訪ねて讃州高松へ。金比羅さん、瀬戸大橋、大歩危、小歩危などを友とめぐり、義仲寺に寄り、直島に渡り、水島臨海鉄道にも乗った4日間の記録でございます。】

鉄旅日記2020年9月19日・・・姫路駅、相生駅、有年駅、三石駅(山陽本線) 14:31&n

記事を読む

「鉄旅日記」2020年文月 2日目(香住-東萩)その3‐末恒、浦安、米子、揖屋(山陰本線) 【コロナ禍でございます。内緒の旅でございました。余部鉄橋へ。萩へ。霧の街へ。東京五輪延期で浮いた4連休の記録でございます。】

鉄旅日記2020年7月24日・・・末恒駅、浦安駅、米子駅、揖屋駅(山陰本線) 10:39&n

記事を読む

「鉄旅日記」2009年晩夏【近くまでぶらっと】金町、新松戸、西国分寺、立川、青梅、奥多摩、御岳、武蔵五日市、拝島、高麗川、川越、武蔵浦和、南浦和(常磐線、武蔵野線、青梅線、五日市線、八高線、川越線、埼京線)

鉄旅日記2009年9月5日・・・金町駅、新松戸駅、西国分寺駅、立川駅、青梅駅、奥多摩駅、御岳駅、武蔵

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その3 ‐黒磯、泉崎、白河、郡山(東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・黒磯駅、泉崎駅、白河駅、郡山駅(東北

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その2 ‐文挟、鹿沼、鶴田、宇都宮(日光線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・文挟駅、鹿沼駅、鶴田駅、宇都宮駅(日

「鉄旅日記」2022年皐月 初日(東京-磐梯熱海)その1 ‐金町、上野、宇都宮(常磐線/東北本線) 【日光線全駅乗降を果たし、猪苗代湖畔に遊び、磐梯熱海の湯につかり、国定忠治を訪ねた旅でございます。】

鉄旅日記2022年5月7日・・・金町駅、上野駅、宇都宮駅(常磐線/東

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その5 ‐東浦和、東川口、吉川、吉川美南、南流山(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】/江戸川堤菜の花絶景

2022年3月21日・・・東浦和駅、東川口駅、吉川駅、吉川美南駅、南

「鉄旅日記」2022年弥生vol.2 最終日(静岡-東京)その4 ‐西国分寺、北府中、新小平、青梅街道、北朝霞、朝霞台(武蔵野線) 【念願の大井川鐡道に乗る旅。帰りは身延線経由、武蔵野線全駅下車達成でございます。】

鉄旅日記2022年3月21日・・・西国分寺駅、北府中駅、新小平駅、青

→もっと見る

    PAGE TOP ↑