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「鉄旅日記」2009年晩夏【近くまでぶらっと】金町、新松戸、西国分寺、立川、青梅、奥多摩、御岳、武蔵五日市、拝島、高麗川、川越、武蔵浦和、南浦和(常磐線、武蔵野線、青梅線、五日市線、八高線、川越線、埼京線)

公開日: : 最終更新日:2020/08/29 旅話 2009年

鉄旅日記2009年9月5日
2009・9・5 8:53 金町(かなまち)駅(常磐線 東京都)
気持ちいいなぁ。

ケータイの予報は雨混じりだったが、何度目かの目覚めの時、空には雲ひとつなく、理想的な秋晴れだった。
蝉はまだ鳴いているが、風にはもはや夏を感じない。

「風立ちぬ」。
今朝の朝刊別刷でその文字に接した。松田聖子さんの流行歌が蘇る。
今は秋。

今週のオレはクソみたいだった。
もっと潔く生きたいと思う。

9:11 新松戸(しんまつど)駅(常磐線/武蔵野線 千葉県)
東京に向かう人々が向かいのホームに列をなしている。
向かう先は東京じゃなく、あるいは浦安か。
幕張もあるか。

仲間は今朝そっちにいるようで、それから相模原に戻ってサッカーの練習をする。
行こうと思いはしたけど、昨日のオレにその決断は下せなかった。

どうしようもなく参ってたんだ。

そしてここにいる。
仲間たちと合流することを見合わせて、こうしていることに罪悪感があるけど、ひとりで家にいたくなかった。

10:25 西国分寺(にしこくぶんじ)駅(中央本線/武蔵野線 東京都)
埼玉東京の県境がトンネルで繋がれていたことに新鮮な驚きを持つ。
関東平野にもトンネルがあったのか。

国分寺に馴染みはなく、駅を出た時の気分は新鮮だった。

これからさらに未知と言っていい地域を往く。

空から雲は消え、今日は少しばかり暑くなりそうだが、風が心地いい。

西国分寺の駅前はごく簡素で、繁華街は見当たらず、すぐに駅に引き返した。

10:44 立川(たちかわ)駅(中央本線/青梅線/南武線/多摩都市モノレール 東京都)
国立を過ぎて立川。
この駅に降りたのは大学時代の友人Tの結婚式以来になる。
あの頃はAもKも輪の中にいた。
みんなどうしているのか。

Kは親父さんの会社を継いで末は社長になると言っていたけど、表情は苦渋に満ち、不安以外の何物も持っていなくて、みんなで励ましたんだった。

下手な冗談ばかり言う陽気で繊細な男だった。
海外に行く機会もあるというから手広くやっている会社なのだろう。

あの頃はまだ20代。
今頃は立派になっているかもしれないな。

そこへ行くと相変わらずオレは気楽なもんだ。
いろいろあるけど、人から見ればそういう存在だ。
否定はしない。

今着ている「RealBvoice」というブランドを教えてくれたSさんが立川に暮らしていたのは、もう20年前になるのか。
高校時代サッカーで選抜チームのメンバーになった身体能力抜群の人だった。

2度ほど泊まりに行ったな。
家に他人を上げるのを好まない人だったけど、オレは許された存在だった。
彼は地元の福井からたまに便りをくれる。

あれから立川には新たに多摩都市モノレールが開通している。
町田で暮らしていたオレにとって近いようで、なかなか縁遠いところだと思っていたけど、よくよく思い出せばこうして縁のひとつやふたつどこにでも持っているのかもしれない。

街には下りず先にいく。

12:19 青梅(おうめ)駅(青梅線 東京都)
懐かしげな街に着いた。

昭和の街を謳う青梅。

街には天才赤塚不二夫の逸話に触れたポスターや古い映画の看板が目立つ。
青梅街道をここではシネマ通りと称している。

青梅マラソンのコースはどのあたりか。
暑くなってきて、レトロな街の優しげな風情に打たれ、かつての夏を想う。
現代的な街に安らぎがない理由がここにきて分かった。

社会人になってからフラれた彼女はひとつ手前の東青梅に住んでいた。
よく通ったよ。
列車から眺めた駅前風景は記憶と違わず、たちどころに懐かしさが込み上げる。
彼女は母親になり、今は立川で暮らしている。

ここ青梅では人の存在感が圧倒的で、みんな昭和の香りをまとっている。
オレはそもそもそういう人間だが、目の前で体育の授業を受けている小学生とて例外じゃない。

夏と秋の虫が同時に鳴いた。

駅の発着音は「秘密のあっこちゃん」だった。

13:44 奥多摩(おくたま)駅(青梅線 東京都)
来てよかったと心から思う。

熊避け鈴を売っている駅前から氷川渓谷に架かる橋を渡り青梅街道を次の橋まで歩く。

ご婦人が渓谷を眺め、オレは東京の涯の空を眺め立ち止まる。

何か爽やかなものに心を満たされ、店のおかみさんが美味しいですよと薦めてくれた東京の酒を、彼女にと買った。

彼女の喜ぶ顔が見たい。
オレの想いはいつか彼女に伝わるだろうか。
最近はまたあやふやな関係になりつつある。
だからオマエはダメなんだよ。

昔家族で奥多摩湖に行ったよな。
この駅に寄ったかどうかは記憶にない。
地図を見るとちょっと離れている。
御嶽の宿に泊まったことは覚えている。

14:40 御嶽(みたけ)駅(青梅線 東京都)
駅前の記憶はなかったが、さっきの家族旅行ではここからバスで移動したのだろう。

今日この地に集まった人々の装いは一様で、目的地まで歩くことを楽しみにしている。
トウモロコシをかじる者。
オレのようにビールを飲む者。
日常の続きをしてる者はいない。

山の神を感じる土地だ。
僅かな時間だがその支配下に入って、きっとオレもこんなところから出てきたんじゃないかと思う。

生まれた土地は川崎の外れだけど、そういうことではなく、もっと根源的な話だ。

16:06 武蔵五日市(むさしいつかいち)駅(五日市線 東京都)
東京の涯にある終着駅は高架駅だった。

高校時代に剣道部の催しで毎夏川遊びに降りていたのはたぶんこの駅だったのだろう。
秋川で遊んできた若い連中が大勢乗り込んでくる。

線路をくぐって川辺に下りていく道に既視感がない。
変わったのか、あれは実は別の場所だったのか判断がつかない。

まあいいや。
そもそもそれを確認しにきたわけじゃない。
懐かしい気分に浸りたかったわけでもない。

周辺は緑に覆われているものだと思っていたが、意外にも拓けていて視界は広かった。
駅前に商店は見られない。

16:48 拝島(はいじま)駅(青梅線/五日市線/八高線/西武拝島線 東京都)
米軍キャンプの臭いを嗅いだような気がしたかつての拝島。
駅は変わっていた。
まるで戦後の混乱期を形に残したような一帯だと思っていたけど、きれいになっていたよ。

30年近く前、親父に連れられて所沢に西武ライオンズを見に行った時にもここを通っている。

オレは、後に2000本安打を達成した山崎裕之選手のファンだった。
彼がロッテにいた頃からだから結構長い。
巨人との日本シリーズで定岡投手から売ったホームランを今も鮮明に覚えている。
今でも野球は好きでよく見るけど、彼ほどの思い入れを持って応援する選手はいない。

当時、まさしく昭和真っ盛りの拝島駅は古くて暗く、大きかった。
僅かな待ち時間に親父がオレンジジュースとトマトジュースを買ってきてくれてどっちか選べと言う。
小学生がトマトジュースなんか飲むかよ。

懐かしくてあったかい記憶だ。

駅前通りは変わっていない。
狭い通りに商店が並び、路地を入ると昭和からの飲食店舗がさも当然といった風情で存在している。
パチンコ屋で働く少女たちが屋上駐車場を掃く背後に開発された住宅街が見えた。

3本のJRローカル線に西武拝島線が通る大鉄道駅だが都心は遠い。
多摩地域を地元に持つオレには、この東京のバックストリートは永遠に懐かしい。

17:35 高麗川(こまがわ)駅(八高線/川越線 埼玉県)
小学生の頃に兄貴と長野の田舎から帰った懐かしの八高線はここで川越線と分かれる。

15分ほどの停車で町に下りたら、僅かな飲食店の他に見るものはない。
ひとつ手前の東飯能と比較すると、かなり寂しく感じる。
人の往来は少なくない。

赤い屋根の小さな日本家屋的駅舎。
ターミナル駅だけあって改札を入ると大鉄道駅の風格が備わっている。

18:30 川越(かわごえ)駅(川越線/東武東上線 埼玉県)
例えば、同じ県内の大宮のように大きな街だと感じた。

途中まで歩いてやめてしまったが、あのクレアモールを抜けたところに西武線の終点本川越駅があり、そこから大正浪漫ロードが、観光地として有名な「時の鐘」まで延びている。
行きたかったけどそこは遠く、線路を挟んで反対側には何があるかとうろうろしているうちに暗くなってきた。
じきに日が暮れる。

また今度、次は西武線に乗ってこよう。

武蔵浦和(むさしうらわ)駅(埼京線/武蔵野線 埼玉県)にて

19:49 南浦和(みなみうらわ)駅(京浜東北線/武蔵野線 埼玉県)
埼京線に乗って武蔵浦和で降りて、ここまで歩く。

浦和を知らないオレに、浦和の実力を示すものは道中になく、やたらに長い道程だった。

武蔵浦和も南浦和もターミナル駅だけあって大きく、両駅とも接続する武蔵野線ホームは交差し、乗り替えに時間を要する。

街がこじんまりしているところも似ている。
南浦和の好ましげな街灯は商店街の入口から50メートルほどで不意に途切れ、丸広の灯は街に着いた時から消えていた。

すでに帰り道。
目の前に内田有紀さん似の美人がすらっと立っている。

夏に戻ったような素晴らしい休日。
真夏の選挙で夏休みのなかったオレに、褒美のようなきれいな月が出てるじゃないか。

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