「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】初日(東京-大阪茨木 R246→R1→名神高速)その2-掛川、磐田駅、浜松、音羽町、岡崎、知立、名古屋渋滞、佐屋町、弥冨町
鉄旅日記1996年5月3日
6:25 1号国道‐掛川
あれから1時間か。
始まるよ、これから。
これから始まっていくものをすべてひっくるめれば、今回は大変なもんだって今思っているところだよ。
そしてオレは行くよ。
7:03 磐田駅
オレにとっては特別な朝だけど、街には普通の朝が訪れている。
なんかホッとしたよ。
今日だって一般的には日常と呼ばれる範疇に入る一日に違いはないんだから。
最初にたどり着いた街、磐田。
Jリーグで有名になったとはいえ、静岡の一地方都市。
駅のトイレを借りるために車を降りた。
休日の駅には制服を着た中高生の姿がある。
きっとどこかの試合場に向かうんだろう。
10年前はオレもあんな集団の中にいた。
自販機の前に立ち、缶コーヒーのボタンに手を伸ばす。
横には不良じみた若者が二人だらしなくしゃがみこんでいる。
オレが警戒感を示すのはそうした連中だけだ。
軽く一瞥をくれて車に戻る。
それにしても腹減ったな。
7:58 1号国道‐浜松
天竜川を越えたら浜松。
思い出深い街だよ。
ちょうど一年前の暑い週末に、秋に別れた恋人とこの街を訪ねて、水のある風景を心ゆくまで満喫した。
そして東京に戻った二人は久しぶりに唇を重ねた。
当時オレは危うげな二人の関係に気づきながらも、彼女が「さよなら」の言葉を用意しないようにと、ただそれだけを願っていた。
前回は感傷的な思いを抱いて浜松を通過した。
そして3度この街にさしかかると、その思い出はかけがえのないものに違いないけど、完璧に過去のものになっていた。
テープはニール・ヤングの「アンプラグド」に変わっている。
そこまでの曲順は秋のツアーを踏襲している。
理由はあるようでなかった。
今回は安っぽいドライブインでそばを食うためだけに浜松に立ち寄った。
9:26 1号国道‐音羽町
1号国道の旅路は続く。
湖西の駅では旅の途中の女性二人連れを覚えている。
結構調子いいよ。
愛知県内に入ったけど気分も悪くない。
空もよく晴れている。
穏やかにいこう。
それにしてもハイウェイの混雑はひどい。
まさかこんなところまで来て渋滞60㎞なんて表示を見るとは思わなかったよ。
そんな状況だからみんな先を急いでいるように見えるんだ。
ただオレには関係ない。
ラジオのスイッチを渋滞情報に合わせる必要もない。
例えどんな状況が待ち受けていようと、オレはこの道を行くだけだよ。
もう半分以上来たことだしね。
9:51 1号国道‐岡崎
名古屋が口を閉ざし始めたよ。
友よ、君のせいじゃないけど、君に会うためにはこれからいくつもの焦燥と過ごさなければならないみたいだ。
覚悟はしているんだ。
でもイヤな思いをせずに済むことを望むのは、おかしな話じゃないだろう?
ところでさっきの渋滞は道路行政の仕業だったよ。
R&B、、、なかなか調子いいよ。
10:50 1号国道‐知立
あまりガクッとはきていないけど、渋滞は渋滞だな。
ダメージをため込まないためには、取りあえずR&Bだな。
取りあえず今日はずっと晴れだな。
名古屋に着いてもきっと晴れだな。
Hey、、、My Girl♪
12:04 1号国道‐名古屋市中川区
上空曇りだな。
道路状況もあまり芳しくないよ。
今回は地元民とうまくいっているけど、街自体には特にみるべきものはないな。
少し飽きてきたよ。
ブルースが平板に聞こえるんだ。
ひどく退屈だよ。
ブルースが空しく聞こえるんだ。
ひどく寂しく見える街だよ。
これはオレの偏見だけどね。
ただし、こんな場所で時間を奪われることに嫌悪感を覚えることは確かだよ。
走りたかったのは、こんな場所じゃないことを分かってほしい。
ところでこの先は川なのか?
くだらない時間の使い方を強いられている理由を知りたいんだ。
12:23 1号国道‐名古屋市中川区
一体どういうことなんだ。
なぜ道は開かないのか。
このオレにまた丸一日かけて大阪へ行くことを命じているのか。
天よ、いい加減オレも頭にきたよ。
見てくれ。
何らの合理性も生産性も有しないこのくだらない行列を。
残念なことに、こんな状況で聞くべき音楽は誰の手によっても作られていない。
今このオレにできることは煙草を吸うことと、気がついたツボを刺激する以外にないんだ。
友よ、こんなルートをたどっているオレを許してほしい。
今日も到着が遅くなりそうなんだ。
気に入らない割り込み方をしてきた前の車におばさんが4人乗ってるけど、なんか動物園を覗いているような気分だよ。
13:12 1号国道‐佐屋町
分かっているよ。
この先に大河が2つ横たわっているんだろう。
それで黄金週間を迎えた人間どもがどこからともなく湧いて出てきて、眉間にしわを寄せながら渡ろうとしているんだろう。
川は偉大だよ。
昔から今に至るまで、自然のままでいるだけで、目をぎらつかせて近寄ってくる人間どもを食い止めるんだから。
対して人間は愚かにも抵抗するんだよ。
しかし工事は難航を極めている。
そしてオレたちはブルドーザーが置かれた大地を見つめて首をかしげている。
何かおかしくないか。
だって見てみろよ。
バカみたいな行列を作っている人間どもをさ。
言葉も見つからないくらい無力でちっぽけなもんじゃないか。
そんな存在が束になって挑みかかってみても、どうにもなりゃしないんだよ。
ところで友よ、さっきも言ったけど今夜はきっと遅くなるよ。
大動脈が完全にマヒしちまってるんだ。
14:22 1号国道-弥富町
ぼちぼち楽しいこと考えたいんだよ。
だけどこんな異国の地で、こんな騒ぎに巻き込まれちまったらさ。。
言っても仕方のないことだけど、オレの足だったら今頃は桑名に着いてビールでも飲んでるよ。
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