「鉄旅日記」2007年如月 最終日(奈良-東京)-奈良、亀山、桑名、弥冨、富士、沼津(関西本線/東海道本線) 【初日天王寺、2日目奈良。宿泊地だけを決めて、心のままに移動した記録でございます。】
鉄旅日記2007年2月12日・・・奈良駅、亀山駅、桑名駅、弥冨駅、富士駅、沼津駅(関西本線/東海道本線)
2007・2・12 東京葛飾金町
素っ裸で目覚めた朝。
いくら何でもこんな朝はかつてなかった。
シャワーを浴びたかどうかも定かじゃない。
そんな奈良の朝だった。
歴史的な旧奈良駅が使用されていた時代を知っている。
その旧駅舎は工事中の新駅の横に移されている。
昨夜のおでん屋での話じゃ、奈良に相応しくない駅舎が出来上がると噂されていた。
それはいつの頃だろう。
平城山あたりでは、近鉄列車はJRよりも高所を走る。
いくつか見られたJRと私鉄の差がそこにも表れていた。
木津から加茂へ。
待ち時間はなく、すぐに亀山行に乗り込む。
峡谷を進む関西本線。
駅間はとても長い。
閑散とした車内に日差しがこぼれる。
半袖姿になって目を細める。
勤王の聖地、笠置あたりは深い山で、おそらく後醍醐天皇が御座所を置かれた頃からたいして変わっていないのだろう。
由緒を持ちそうな無人駅にたんたんと止まっていく。
月ヶ瀬あたりで住宅街が現れた。
そこまでが京都府。
右手から単線の近鉄線路が近づいてくると伊賀上野。
去年の7月の記憶はまだ近い。
柘植でしばらく停車。
煙草を吸う。
一昨日の記憶は遠かった。
追憶の関駅は2駅先。
東海道関宿にオレの旅の原点がある。
懐かしい。
あの日に旅情を高めてくれたススキは季節から外れている。
亀山に往時をしのぶ。
でも時間はなかった。
駅前の大鳥居の先はどこの神社の神域だったのか。
次は名古屋行。
桑名もまた遠い街だった。
去年の7月にもたどり着けなかった。
駅前は車で通ったことがある。
でも記憶とは違っていた。
あるいはあれは桑名駅じゃなかったのかもしれない。
会津、長岡、庄内、そして桑名。
旧幕府軍として最後まで抵抗した気骨のある武士がいた街。
以前からずっと来たいと思っていた。
日露戦争で弘前師団を率いた立見尚文将軍は桑名藩の出身で、戊辰戦争では北越から会津、庄内まで転戦して、最後まで時代に対して頑強に逆らった。
古い商業ビルの中に食堂が並び、蕎麦屋に入ってビールときしめん。
7月に寄った阿下喜を終着駅に持つ三岐鉄道の始発駅、西桑名駅は健気にも独立した駅舎を持っていた。
揖斐、大垣、養老とたどる近鉄養老線もここ桑名が終点となる。
桑名には1時間ばかりいただろうか。
次の名古屋行で弥冨まで。
揖斐川、長良川を続けざまに渡り、そして木曽川。
愛知県の始点、弥冨は小さな町だった。
名鉄の一路線がここで終点を迎え、駅前には廃墟となった商店が、かつて確実にそこにあった時代を見せつけるように残っている。
2分ほど歩くと、町にはそぐわない立派な近鉄駅があった。
町は進化したのか。
それとも止まってしまったのか。
そんなことを考えながら暖かな日差しの下で次の名古屋行を待った。
やってきたのはわずかに2両を連ねたものだった。
名古屋からの豊橋行は4両編成。
蒲郡の競艇場の先に見える三河湾。
東海の景色を見直し、豊橋からは浜松行の4両編成。
弁天島に浜名湖。
遠州鉄道駅も確認した。
遠鉄は百貨店も持っていたのか。
どうやらオレは浜松をよくは知らないらしい。
浜松も今じゃ静岡に次いで政令指定都市。
その静岡に行く列車も4両編成だった。
大井川、安倍川。
馴染みの風景は次いで大都会に変わる。
浜松静岡間は約70分。
このあたりの東海道はとても長く感じる。
熱海行はすぐにきた。
清水からは富士山が覗き、何度も隠れては姿を現し、楽しませてくれる。
風光明媚な由比海岸に富士川。
いつか月が見えた橋からは富士山が見えた。
富士駅では赤富士になっていて、思わず降りる。
富士山に向かって商店街が続く様に旅の素晴らしさを感じていた。
おあつらえ向きの沼津行がやってきた。
夕食は沼津駅でとると決めていた。
ホームのおでん屋で熱燗をひっかけるんだよ。
さらに味をよく知る美味い「駅そば」。
沼津は「駅そば」発祥地とのこと。
おでん屋のオバチャンは陽気で、「今日のこの気候はおかしいね」と真面目な顔で言い、「日本人なら一度は富士山に登るべき」で、「富士山はこのあたりから見るのが一番いい」とも。
「富士宮に行ってみな。近すぎて怖いよ。」
いい夜だった。
熱海行から東京行。
小田原の手前で彼女にメールを送る。
そして彼女からは今までで一番長いメールが届いた。
都内の高級ホテルでヴァカンス気分を味わっているらしい。
記録的な暖冬下の2月は、伊吹山と富士山にだけ雪を残していた。
関連記事
-
-
「鉄旅日記」2003年冬 最終日(博多-宇部)その1-博多そして小倉 【ご縁と別れがあり、34歳の誕生日を北九州で迎えた日の記憶でございます。】
鉄旅日記2003年2月16日 2003・2・16日の記憶 日曜日の朝だった。 34歳の誕生日に目覚
-
-
「鉄旅日記」2013年夏 2日目(徳山-南宮崎)その2-津久見、日代、浅海井、狩生、佐伯、直見、宗太郎、南延岡、南日向、東都農、佐土原、南宮崎(日豊本線) 【青春18きっぷで、鹿児島県志布志へ】
鉄旅日記2013年8月11日その2・・・津久見駅、日代駅、浅海井駅、狩生駅、佐伯駅、直見駅、宗太郎駅
-
-
「鉄旅日記」2022年新春 最終日(三沢-東京)その1 ‐三沢、八戸、滝沢、巣子、盛岡(青い森鉄道/IGRいわて銀河鉄道)/薬師神社/岩手山 【巨大な土偶が貼りつく木造駅を見たくて冬の東北を旅しました。】
鉄旅日記2022年1月10日・・・三沢駅、八戸駅、滝沢駅、巣子駅、盛岡駅(青い森鉄道/IGRいわて
-
-
「車旅日記」2004年秋 最終日(城崎-京都)走行距離256㎞-レイセニット城崎、城崎駅、豊岡駅、久美浜駅、宮津駅、西舞鶴駅、東舞鶴駅、福知山駅、京都駅 【瀬戸内から山陰へ。そんな旅がしたかったのでございます。】
車旅日記2004年11月21日・・・レイセニット城崎、城崎駅、豊岡駅、久美浜駅、宮津駅、西舞鶴駅、東
-
-
「鉄旅日記」2019年如月 初日(東京-安中)その1-金町、熱海、城ヶ崎海岸、伊豆熱川、伊豆稲取、今井浜海岸、河津(常磐線/東海道本線/伊東線/伊豆急行線) 【週末パスで東京から伊豆。そして上州、信州へ。友人は言ったものでございます。何気に大層な移動距離だと。】
鉄旅日記2019年2月9日・・・金町駅、熱海駅、城ヶ崎海岸駅、伊豆熱川駅、伊豆稲取駅、今井浜海岸駅、
-
-
「鉄旅日記」2016年春 最終日(石巻-東京)その2-久田野、新白河、豊原、白坂、黒磯、西那須野、那須塩原、矢板(東北本線) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】
鉄旅日記2016年3月21日その2・・・久田野駅、新白河駅、豊原駅、白坂駅、黒磯駅、西那須野駅、那須
-
-
「鉄旅日記」2021年春 初日(東京-米内沢)その2‐小牛田、瀬峰、田尻、新田(東北本線)/伊豆沼 【大人の休日倶楽部パスで東北へ。新幹線、在来線特急乗り放題でございます。続くコロナ禍ではございますが、約半年の辛抱の時を過ぎて、天候にも苛まれながら秋田内陸縦貫鉄道に乗りに行きました。】
鉄旅日記2021年4月17日・・・小牛田駅、瀬峰駅、田尻駅、新田駅(東北本線)/伊豆沼 8:
-
-
「鉄旅日記」2016年春 2日目(下北-石巻)その1-大湊、野辺地、浅虫温泉、小湊、東青森、上北町、小川原湖、下田、八戸(大湊線、青い森鉄道) 【下北半島から東日本大震災被災地へ】2日目(下北-石巻)
鉄旅日記2016年3月20日その1・・・大湊駅、野辺地駅、浅虫温泉駅、小湊駅、東青森駅、上北町駅、小
-
-
「鉄旅日記」2018年春 初日(東京-飯田)その1-国立、高尾、宮田、伊那八幡、三河東郷、新城、三河一宮(中央本線/飯田線)【伊那谷へ。長篠へ。安曇野へ。木曽へ。青春18きっぷを握ったそんな旅でございます。】
鉄旅日記2018年4月7日・・・国立駅、高尾駅、宮田駅、伊那八幡駅、三河東郷駅、新城駅、三河一宮駅(
-
-
「鉄旅日記」2019年弥生Part.1 初日(東京-紀伊田辺)その2-滝原、三野瀬、尾鷲、宇久井、田並(紀勢本線) 【和歌山電鐵に乗るために、青春18きっぷで紀伊半島一周を思い立ったのでございます。】
鉄旅日記2019年3月2日・・・滝原駅、三野瀬駅、尾鷲駅、宇久井駅、田並駅(紀勢本線) 14:14