*

「鉄旅日記」2012年夏【青春18きっぷで、北海道途中下車旅】3日目(室蘭-岩見沢)-室蘭、苫小牧、鵡川、静内、様似、追分、夕張、新夕張、清水沢(室蘭支線、室蘭本線、日高本線、石勝線、夕張支線)

公開日: : 最終更新日:2025/06/24 旅話, 旅話 2012年

鉄旅日記2012年8月13日・・・室蘭駅、苫小牧駅、鵡川駅、静内駅、様似駅、追分駅、夕張駅、新夕張駅、清水沢駅(室蘭支線、室蘭本線、日高本線、石勝線、夕張支線)

2012・8・13 6:12 室蘭(むろらん)駅(室蘭本線室蘭支線 北海道)
鉄の町にお別れを。

昨夜は営業を終了していた室蘭。
行き交う車もなく、店の灯も落ち、オレの腹の具合もよくはなかった。
隣の母恋駅から歩こうかとも思っていたが、断念した。

そんないくつかの諦めがあった室蘭での夜。
この街には申し訳ないけど、気分的に少しくさっていたよ。

大漁旗が掲げられた中央商店街。
前回寄った回転寿司屋。

地球岬からの眺めは忘れてしまったけど、街並は覚えていた。
ホテルミリオンの向かいに聳えるペンキの剥がれた建物に既視感を抱いた。
即座に子供の友人家族が暮らしていた町一番のコーポと記憶がつながり、懐かしさでしばし仰いだ。

ホテルの働き者のおかみさんには世話になった。
朝食の時間を繰り上げてオレのために別メニューを用意してくれたんだ。
洗面所周りがひどく狭く、窓のない殺風景な部屋を割り当てられたが気にしない。

今朝は小雨のスタート。
すでに汽車の中。

3両編成でワンマン運転とはJR北海道の苦闘の様子が垣間見えるようだ。

8:00 苫小牧(とまこまい)駅(室蘭本線/日高本線/千歳線 北海道)
全国制覇の街だ。

そう言えば昨日、オレが最も応援する京都代表、龍谷大平安は旭川工業相手に9回裏ツーアウトランナーなしから2点差を追いつき延長戦の末に初戦を突破した。

苫小牧は王子製紙の街でもある。
室蘭でも苫小牧でもテレビじゃロンドン五輪の閉会式。

最終日。
ボクシング、レスリングで金メダルを獲得して日本勢は大会を締めた。
メダル獲得総数は38。
やるもんだ。
しかし政治が恥ずかしい。

閑散としているかと思いきや日高本線の座席は埋まっている。
旅行者が多い。
その大半とはおそらく行き帰りとも呉越同舟となるだろう。

小雨の街を錆びた階段を上がり駅への連絡橋に足を踏み入れると、そこには無人の通路。
繁華街はどこにあるのか。

旅が続くのならやがてまた訪れて宿をとることがあるだろう。

原野を往くが如く日高へ。

8:35 鵡川(むかわ)駅(日高本線 北海道)
牧場が見え、背後の広大な土地を認めるとそこは北海道。

かつて鵡川から甲子園に行った少年たちがいたことをオレは覚えている。

駅前に商店などの営業施設はなく、苫小牧行を待つ人の列は決して短くない。

雨はやまない。

9:51 静内(しずない)駅(日高本線 北海道)
苫小牧から終点の様似までは3時間かかる。
羽田那覇間に匹敵する時間だ。

静内には寄ったことがある。
清潔なカフェはそのままで乗客もかなり下りた。

雨は強くなり涼しいがビールが飲みたくなり一本。
どうでもいいが、村上春樹さんが描く小説の登場人物はよくビールを飲む。

同席の紳士はラフななりをしているが、どこかの企業でそれなりの地位を得ている人物のような知性を表情に浮かべている。
ミスター・ビーンにとてもよく似ている。
海辺の絶景ポイントでカメラを構え、舌打ちするかのように顔を歪めるところなどそっくりだ。
とても豊かな表情の持ち主だ。

静内が海辺の町だったという認識はなかった。

町を離れると海と牧場。
おそらく今までの人生で目にしてきた馬の数と同等の頭数を刻んで東京に帰ることになるだろう。

11:57 様似(さまに)駅(日高本線 北海道)
海と馬と牛と草原と。

馬という動物に馴染みのない人生だったが、あれだけ多くの立ち姿に接して、美しく凛々しい姿であることを知った。
人類が手本とすべき姿を有する愛すべき存在だ。

かつて襟裳岬に行ったのも真夏だった。
じりじり焼けてくるような日差しを浴びた記憶がある。

そのあとにここに寄ったんだ。
駅そのものの印象も違う。
今日は生憎の雨だが、当時ざわついていたように記憶している駅に人の姿はなく、周囲にやたらと廃屋が並ぶひどくうらぶれた駅だった。

アボイ岳も姿を隠している。
ビールだけは美味かった。

白川道さんの小説「天国の階段」に描かれた絵笛の景色は秀一だった。
目に鮮やかな黄色の花が目に焼き付いている。

苫小牧に戻る汽車はすでに動き出している。

16:33 追分(おいわけ)駅(室蘭本線/石勝線 北海道)
苫小牧に戻り、室蘭本線岩見沢方面へ乗り換え。

本降りの雨。
歪んだ道に溜まりができている。
東京じゃ同じような場所を年に一度は掘り返しているが、全国共通の現象ではないようだ。

雨だと虫がいなくていい。
こんな日に連中はどうしているのか。

接続がうまくいっていない。
この駅の発車は10分遅れ。
また降りるべき駅をひとつ失いそうだ。

道内ではおそらく本州ほど時刻遅れは深刻な事態ではないのだろう。
理解に苦しむほどじゃない。

開業120周年の追分駅は大鉄道駅だった。
下りた町は、町と呼ぶことに疑問符はつくが、本州のありふれた駅のようで、ホテルが一軒あったのと交差点のムコウに函館を思わせる坂が伸びていたことを除けば印象に残ったものはない。

あと、川を渡ったな。
川の名は忘れた。

18:08 夕張(ゆうばり)駅(石勝線夕張支線 北海道)
雨はやまない。

ただ明日は道内全域晴れだと酒屋の亭主が断言してくれた。

2度目の夕張。
そうだったよ。
冗談みたいな小さな駅を出るとホテルマウント・レースイがある。
一昨年だったかの「全国おかみさんサミット」はあそこでやったのだろう。
さぞかし騒々しい一日だったことだろうが、会の主旨には賛同している。

財政破綻で騒がせた旧炭鉱の都。
国が負った負の遺産そのものだが、責任の所在をくらます例の手法がとられ、誰が悪いのか皆目分からない。

同じような犠牲は今後も増えるだろう。
責任者が明確なら罰を与えるべきだ。
迷惑を被るのは増税くらいにとどめてほしい。

駅横の屋台村には気持ちをそそられた。
でもオレは紅葉山に行くよ。

夕張は雰囲気のある土地だ。
紅葉山、沼ノ沢、清水沢、鹿ノ谷と谷だの沢だのと、どこかおどろおどろしい地名が続く。

清水沢ではもうすぐ祭だ。
温泉旅館のような駅横に舞台が整いつつある。

流れる雲、豪壮な水の流れ。
人類以外の何者かが支配していそうな土地だ。
それはおそらく神でもない。

かつて訪れて人ひとりいない場所に車を止めて外に出た際、得も言われぬ恐怖を感じてすぐに車に戻ったことがあるんだ。
思い出したよ。

夕張には引き寄せられる。
これが最後じゃないだろう。

たぶん、
おそらく、
きっと。

18:49 新夕張(しんゆうばり)駅(石勝線/夕張支線 北海道)
紅葉山で記憶を紐解き、当時感じた雄大さを再び収める。

祭は夕張全山同時開催のようだ。
階段下にやはり舞台ができている。

アナウンスに誘われ再び夕張への道を引き返す。

満足をひとつ取り戻す。


19:33 清水沢(しみずさわ)駅(夕張支線 北海道)
再び夕張方面の列車に乗る。

旅にクライマックスは必ずある。
清水沢で下りてそんな感慨に耽っている。

列車を待っていると振興会館から「ばちさばき」の音が聞こえてくる。

構内には夕張と室蘭の関係についての展示があり、日本人として知っておくべきことがそこには記されていた。

川崎のように室蘭も工場夜景を売りにしているらしい。
製鉄は昼夜操業か。
リスペクトはある。

時代が終わった夕張清水沢で酒屋を求め歩き、見つけところにたまらなく好きな通りがあった。

お孫さんを連れた老婦人が「おばんです」と挨拶をしてくれる。
酒屋の亭主が「お盆が過ぎたら涼しくなるからねえ」と笑いかける。

人懐っこい夕張人に触れて足取りも軽く祭の音がする方へと歩いていった。
そのドンツキに大きな宴会酒場があった。
スナックも灯を入れている。

きっと車寅次郎も何度となく商売をしに訪れたことだろう。
そんな町だったよ。

この旅でのマイナス要素はすべて忘れた。
夕張には必ず戻る。
酒を飲みに必ず戻ってくるよ。



関連記事

「車旅日記」2004年夏 初日(佐賀空港-別府)走行距離254㎞その2-田川後藤寺駅、豊前川崎駅、宝珠山駅、日田駅、豊前中村駅、鳥栖駅、別府・ホテル清風屋上ビヤガーデン【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】

車旅日記2004年8月11日・・・田川後藤寺駅、豊前川崎駅、宝珠山駅、日田駅、豊前中村駅、鳥栖駅、別

記事を読む

「鉄旅日記」2021年秋 最終日(飯坂温泉-東京)その2 ‐峠(奥羽本線)/力餅商店/峠の力餅売り/峠駅今昔物語 【4度目の緊急事態宣言明け。これ以降そのようなものが発令されることはございませんでした。阿武隈急行、峠駅、立石寺。お宿は飯坂温泉。秋の東北を満喫すべく常磐線に乗りました。】

鉄旅日記2021年10月10日・・・峠駅(奥羽本線)/力餅商店/峠の力餅売り/峠駅今昔物語

記事を読む

「鉄旅日記」2022年如月 初日(東京-常陸大子)その3 ‐鹿島神宮(鹿島線)・・・その1‐天狗党墓/鹿島神宮西の一之鳥居/大船津稲荷神社/鎌足神社/龍神社/鹿島神宮 【十二橋駅~潮来駅、鹿島神宮西の一之鳥居~鹿島神宮、棚倉を歩く旅。】

鉄旅日記2022年2月5日・・・鹿島神宮駅(鹿島線)/天狗党墓/鹿島神宮西の一之鳥居/大船津稲荷神

記事を読む

「鉄旅日記」2019年弥生Part.3 初日(東京-多治見)その4-古虎渓、釜戸、美乃坂本、多治見(中央本線) 【明知鉄道、名鉄築港線。その2線に乗るために、東海道を下っていったのでございます。】

鉄旅日記2019年3月23日・・・古虎渓駅、釜戸駅、美乃坂本駅、多治見駅(中央本線) 18:23

記事を読む

「鉄旅日記」2018年如月 最終日(直江津-六日町-大前-東京)その3-金島、中之条、川原湯温泉、大前、羽根尾、高崎問屋町(吾妻線) 【冬の町を見たくて、週末パスを買いました。】

鉄旅日記2018年2月11日・・・金島駅、中之条駅、川原湯温泉駅、大前駅、羽根尾駅、高崎問屋町駅(吾

記事を読む

「鉄旅日記」2019年長月 2日目(盛岡-宮古)その3-陸中野田、久慈、陸中八木、八戸(三陸鉄道リアス線/八戸線) 【三陸鉄道、八戸線に乗りにいきました。区界、吉里吉里など、駅旅の者として見過ごせない駅にも寄りましてございます。】

鉄旅日記2019年9月22日・・・陸中野田駅、久慈駅、陸中八木駅、八戸駅(三陸鉄道リアス線/八戸線)

記事を読む

「鉄旅日記」2008年初夏 2日目(和歌山-松阪)その2-串本、新宮、尾鷲、紀伊長島、三瀬谷、多気、松阪(紀勢本線)【まほろばの路から紀州へ。紀伊半島で過ごした短い夏の記憶でございます。】

鉄旅日記2008年7月20日・・・串本駅、新宮駅、尾鷲駅、紀伊長島駅、三瀬谷駅、多気駅、松阪駅(紀勢

記事を読む

「車旅日記」1996年黄金週間【友を訪ねて大阪へ。そして約束の地、金沢へ。夢を見ながら国道を走った日々でございます。】3日目 いよいよ金沢へ‐その2(R8→北陸道)敦賀、尼御前SA、金沢駅

車旅日記1996年5月5日 18:11 8号国道‐敦賀 琵琶湖ともお別れ。 8号国道を飛ばした。

記事を読む

「鉄旅日記」2016年春 初日(東京-水沢)その1-郡山、杉田、五百川、高城町、矢本、野蒜、陸前赤井、石巻、女川(東北本線/仙石線/石巻線) 【東日本大震災被災地へ】

鉄旅日記2016年3月5日その1・・・郡山駅、杉田駅、五百川駅、高城町駅、矢本駅、野蒜駅、陸前赤井駅

記事を読む

「鉄旅日記」2019年年始 初日(東京-一ノ関)その3-米沢、福島、仙台、一ノ関(奥羽本線/東北本線) 【雪が見たくて北へ向かいました。そして初めて仙台空港線に乗ったのでございます。】

鉄旅日記2019年1月5日・・・米沢駅、福島駅、仙台駅、一ノ関駅(奥羽本線/東北本線) 17:34

記事を読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 最終日(熱海-東京)その1 ‐熱海、五百羅漢、大雄山、緑町、小田原(東海道本線/大雄山線)/北条氏政・氏照の墓 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、御殿場線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月6日・・・熱海駅、五百羅漢駅、大雄山駅、緑町駅

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その6 ‐谷峨、山北、足柄、沼津、熱海(御殿場線/東海道本線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、横須賀線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・谷峨駅、山北駅、足柄駅、山北駅、熱海

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その5 ‐逗子、北鎌倉、平塚、国府津(横須賀線/東海道本線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・逗子駅、北鎌倉駅、平塚駅、国府津駅(

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その4 ‐鎌倉、久里浜、京急久里浜、衣笠、東逗子(横須賀線) 【金沢シーサイドライン、根岸線、湘南モノレール、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・鎌倉駅、久里浜駅、京急久里浜駅、衣笠

「鉄旅日記」2022年弥生vol.1 初日(東京-熱海)その3 ‐洋光台、港南台、本郷台、大船、湘南江の島、片瀬江ノ島、江ノ島(根岸線/湘南モノレール) 【金沢シーサイドライン、横須賀線、御殿場線、大雄山線、鶴見線、南武線etc.駅旅人本領発揮の旅でございます。】

鉄旅日記2022年3月5日・・・洋光台駅、港南台駅、本郷台駅、大船駅

→もっと見る

    PAGE TOP ↑