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「車旅日記」2004年誕生月 【沖縄ひとり旅】初日-那覇国際通り、コザ、万座ビーチ、名護城址、辺戸岬、楚洲、東村ふれあいヒルギル公園

公開日: : 最終更新日:2018/12/31 車旅話 *結婚前2004年

冒険家志望のあなたへ【1話】

 

車旅日記2004年2月14日
2004・2・14 5:59 羽田空港14番ゲート
 夜明け前。55分後に楽園に飛ぶ便を待っている。滑走路ではこれから空に上がる人々を迎える準備が着々と進められている。乾ききったオレの肌も暖かい沖縄では潤いを取り戻して快適な一日を送れそうな気がする。
朝の車中は空いていていい。金町を歩く者は10人内外。駅で一番列車を待つ者もおおよそ同じ。この人たちはどこに行くのだろうと思いながら、沖縄への旅は始まった。北千住での乗り換えはスムーズで、茨城、千葉からやってきた人々を乗せた列車がすぐにやってくる。上野からは京浜東北線。上野発4:58に乗ると座席はすでにほぼ埋まっており、黒々とした初老の男たちが陰気にうずくまり、表情は一様にくたびれている。早朝の人間界には詳しくないが、確か夏もそうだった。まるで明るい世界で居場所を失った男たちが夜明け前に精一杯の存在の主張を試みているような一種の異空間だった。
読書が進んだ。搭乗手続きは至極簡単に終わり、このゲートには二番目に着いた。まだ閉まっていた店も開き、次に煙草を吸いに行く頃には大勢の人々でゲート前は埋まっているだろう。離陸まで45分。

11:58 万座ビーチ 那覇空港より48km
 何て色をしているんだ。
海の話しだ。話しに聞いていた万座ビーチにいる。右手にANAホテル。正面にエメラルドグリーンの海。空もいい色をしている。ただしこの空ならどこかで見ているが、こんな色の海は初めてだ。白いビーチは南紀白浜の白良浜でも見たが、規模が違う。これが沖縄なんだな。
今オレは南の楽園にいる。冷静さを失いだしたのは海が見えてからだ。こんな海が見たくて日本中を旅してきた。願いが叶ったわけだ。とても幸せな気持ちでいる。
沖縄の国道は広く、車の流れもいい。嘉手納基地の横を通り、嘉手納ロータリー周辺の店先に沖縄を感じ、読谷村を通り過ぎた。初恋の女性はあの村出身だったはずだ。地図上で見かけた読谷高校は彼女の母校かもしれない。寄ってみようか。そんな気分になったけど、よしたよ。理由は特にない。
18歳まであの村で暮らしていた彼女をいま想っている。卒業式にメリケン粉を投げ合った話や、愛らしい笑顔まで何から何まで思い出した。実は空港ロビーを歩く頃からすでにそうだった。この国でオレに縁のない場所なんてないのかもしれない。彼女と大学時代に出会い、オレの卒論のテーマは沖縄になった。
ショボくれた東京での生活は忘れ、半袖シャツでビーチを歩いた。この島の夏は2月から始まっている。

13:02 名護城址 那覇空港より70km
 季節外れの夏の日。屋台村では沖縄のポップミュージックが流れ、大汗をかきながら沖縄そばを食べた。城跡に続く階段の登りはきつく、たどり着いた地点が城跡だったか定かじゃないが、そこから見えた名護の街は白く整然としていて、その背後に広がる海の先は日本というより世界を連想させる。
公園を子供連れの米人夫婦や米人女性が散歩している。土地の男は一様に日焼けしていて精悍に見える。例えば佐世保あたりもこんな感じだろうか。故尾崎豊さんの「米軍キャンプ」を口ずさむ。

14:32 辺戸岬 那覇空港より125km
 北へ向かう車は少なく、集落は途切れ、最北端の岬へ。18歳まで沖縄にいた彼女はこの北の岬に立つ機会を持っただろうか。
岬の風景は言ってみればどこも変わらない。岩壁は厳つく、打ち寄せる波は荒い。店先のラジオが気温24度と言っている。景色の中に思い描いていた沖縄を十分に発見できていないけど、2月に夏のような過ごし方をしていることが、沖縄にいるっていうことなんだろう。夏の日は続いている。
石組の白い家々や墓石が独特だ。頻繁にやってくる台風対策の結果だろう。国道を黒い蝶が横切る。これはオレの中じゃ沖縄の風景だ。

15:09 県道70号パーラー楚洲廃屋跡 那覇空港より141km
 ノラ・ジョーンズの甘い声に眠りを誘われ、今朝3:30起床による疲れと友情を育み、人気のない海辺に車を止めた。どこの土地でも廃屋を見ると淋しい気持ちになる。さらに人気のない海。万座のようにきれいなビーチとは言えず、砂利も混ざるがやはり白い。そしてオレにつられるように、同じく休憩を求める人々が次々と車を止めだした。
街に戻るのは日暮れ時で、これから原生林に敷かれた道を往く。今夜のビールはきっと美味い。

16:15 県道70号 東村ふれあいヒルギル公園 那覇空港より189km
 名もなき美しい海岸を見て、美しいと声を洩らし、佐野元春さんの懐かしい楽曲を聴きながら南へ下っている。このアルバムは得意先でしばらく担当者だった香港出身のティナさんに贈ったものだ。またひとつ美しい記憶が蘇った。あのスレンダーな彼女は今頃どうしているだろう。国に帰ってボランティアをしているという便りを最後に10年が経つ。
これが沖縄なのだろうか。空港や空港道路に植わっていた南国椰子は道に見られず、途方もなく海がきれいなことを除けば、ごくありきたりな風景を眺めながら南へ下ってきた。回りは辺戸岬で見かけた人々ばかりで、まるで団体のバス旅行だ。その中に若い恋人同士が混じっているのは、二人だけになりたくて人気のない美しい場所を目指した結果だろう。オレはひとりになりたくてそうしている。オレも変わったよ。是非には及ばない。
街の明かりが楽しみだ。ただ楽園の日はなかなか落ちそうにない。

22:20 アネックスエッカホテル712号 那覇空港より282km
 那覇の夜。国際通りは思っていたほど国際的な通りじゃなかったけど、たまに米兵を見かけ、多くの路上ミュージシャンが集い、無法者のバイカーが行き来している。ホテルのフロントマンに紹介されたビヤ・バーの居心地はよく、窓際の席を所望した関係上ほんの少し気取った様子で4杯のビールと料理を平らげる。
オレと同じ年の頃と思しき米兵を見かけた。オレとほぼ行き違いで店に入ってきた松葉杖をついたGIカットの大男。おそらく見知らぬ街にやってきてまだ日が浅いんだろう。心許なげに店先に置かれたメニューを見てから入ってきて、ひとりカウンターに座りビールを飲んでいた。彼のことが気になった。レイモンド・チャンドラーの小説によく気のいい大男が登場するが、そんな人物を彼に投影したのかもしれない。オレにマシな英語力があれば、足は平気か?と聞いてやりたかったよ。彼はあれからどうしただろう。店を出て通りをしばらく歩いて店の前に戻ると彼の姿は店の中にはなかったが、少し前を覚束なげに歩く姿があった。
日暮れ前に休んでから長いこと走った。街中の混雑はある程度予想していて、ふとバックミラーを覗くと米兵が恋人を横に乗せて眩しげにしてる。やがて甲子園に出場したことから名を知った宜野座を通り、キャンプ・ハンセンを横目に沖縄市に入る。コザという地点ではできれば車を降りたかった。そこは米軍キャンプの匂いが濃厚で、やがて広大な嘉手納基地に出た。基地内に目を向けると金網の内側で子供たちが走り回り、母親が乳母車を引いている。当たり前だが、そこには生活があった。
米軍がいることによって起こるトラブルはこの島のどこでも起こりうるのか。今日行った最北端には米兵はおろか地元民の姿もなかった。沖縄市はかつてコザ市と呼ばれていたことを知っている。オレは憂歌団がカバーして知ったんだが、バタやんこと故田端義夫さんが「十九の春」で歌った風景と、「男はつらいよ」第25作で浅丘ルリ子さん演じる松岡リリーが仕事を探して歩いた一帯が、たぶんさっきオレが車を止めたかった辺りだろうと思う。以前スクリーンの中でみたオレの沖縄がそこにあった。明日はこの島が戦場だった記憶を留める一帯に向かう。今日オレが走った300kmには悲惨なことが起きた形跡を見ることはなかった。
今日はバレンタインデー。京都の彼女に撮りたての写真を送ってほしいとメールで伝えたけど、まだ届いていない。オレと彼女の関係はおかしなものだけど、始まったのがちょうど3年前。正確には今年の誕生日は明後日に東京で迎えるけど、彼女と出会ってからこうしてオレは誕生日を東京以外の街で過ごしていて、今年は沖縄。思えば、東京以外で最初に興味を持ったのが沖縄だった。ただ、あの頃は本気でここに来る気はなかったけど、歳月は流れ今日に至る。すべては過去に起きたことが発端だけど、どうにか生き抜いてきたオレが今こうしてここにいることを喜びたい。計画通りとは言えない人生だけど、どうしようもないものでもなかった。今夜はオリオンビール。たいして美味いわけじゃないが、ここではこれを飲むってもんだ。昨日までのしけた暮らしが幻みたいだ。
話を少し戻す。
嘉手納基地の先に海が見えた。
那覇の夜景はとても美しかった。

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