「車旅日記」2004年夏【九州を一周してみよう。そう思いたった、真夏の日々でございます。】2日目(別府-阿蘇-宮崎)走行距離337㎞その1-別府日名子、大分駅、菅尾駅、三重町駅、豊後竹田駅、阿蘇駅
車旅日記2004年8月12日
2004・8・12 8:27 別府日名子
別府は素敵な街だった。
窓を開けると低く雲が連なり、昨日の鶴見岳が背中を見せている。
海側に目を向けると別府湾。
別府タワーを中心に据えた繁華な街が見える。
別府は海辺の街。
5月の北海道。
やっぱり海辺の町でオレの居場所を探した。
そこにはそんなものはなかったけど、ここ別府にはそれがあった。
潮っぽい夜風にあたった時の清々しい気持ちは忘れたくない。
まずは大分まで。
少しばかり2年前に戻ろうと思う。
9:08 大分駅(8月11日の佐賀空港より266㎞)
10号国道別府大分間。
いい気分でいられる九州の道に戻ってきた。
それにいい朝だ。
最高だよ。
胸の内で、連中に散々自慢してやったよ。
ランク付けをするのは好まないが、胸のすくような海辺の道ということじゃ、オレの中で別府海岸は、5月の網走知床間の244斜里国道と王座を争うことになるだろう。
所々に植わっている椰子の木が南国情緒を盛り上げる。
交通量も多い。
大分駅は2年前から変化はない。
美味い団子汁を食わせてくれる店もそのままだった。
大分駅は日豊本線、久大本線、豊肥本線が合流する大鉄道基地で、駅は賑わい、大きな時刻表を見上げ、急ぎ足で改札口に消える人々をちょくちょく見送る。
九州も美人が多い。
その多くは博多をはじめ都会に行ってしまったものと勝手に思い込んでいたが、そんなことはない。
昨日も今日もよく見かける。
2009年9月20日撮影
10:41 菅尾駅(8月11日の佐賀空港より305㎞)
大分は大都会のたたずまい。
大分港まで車を走らせ、その街の象徴的な高層建造物を探す。
あれは全日空ホテルか。
そして10号国道を下り、阿蘇へと続く道。
鉄道線路と並走し、中判田行のワンマンカーに抜かされ、追いかける。
やがて大野川沿いの断崖道路。
鉄道は川向うに消え、また追いかけるように橋を渡る。
小さな村の狭い道を縫うように走り、犬飼へ。
2、3度行きつ戻りつしたけど満足に駐車できるスペースはなく、やがて離れた。
犬飼は川沿いの味のある村だった。
牛と鮎の料理が自慢で、大きな橋の袂には立派な割烹があった。
風景は鄙び、瓦屋根の駅舎では待ち人がひとり。
上品な中年女性だ。
九州は日本の原風景を想うにはいい地域だ。
そしてその九州ももはやオレの手の内。
こうした名の知られていない村に着いて、ぶらぶらしているとそんな気になる。
駅前には食料品店が2軒。
煙草の品揃えはよかったよ。
11:05 三重町駅(8月11日の佐賀空港より311㎞)
道が混み始めた。
気が付けば、沿道に町が迫っている。
小ぎれいな商店、ホテル。
ホテルの屋上ではビヤガーデンも営業している。
町の中心地に近づくにつれてさらに賑わい、そこに確かな町の存在を見た。
阿蘇への道と日向街道が交差する町。
豊肥本線は特急も含め、すべての列車がここに停車する。
市政が敷かれていない割には大きく活気がある。
駅には提灯が下がり、その下に置かれたベンチに、若くて綺麗な女性が行儀よく腰かけている。
待合室には待ち人が5、6人。
夜にはあのビヤガーデンに明かりが灯る。
きっとネオンも素敵だろう。
11:57 豊後竹田駅(8月11日の佐賀空港より336㎞)
岩窟に大穴を開けたトンネルを抜けると、時代を超えた鉄橋が架かる。
豊肥本線の車窓からは見ることのできない、線路のある風景を眺めていた。
途中、原尻の滝に寄る。
水量は多くなく、規模も壮大なものではないが、涼しげな場所だった。
そして子守唄の町、竹田へ。
近くの岡城址が「荒城の月」に詠われた場所だという。
険しく狭い道が城跡に通じていて、何台かの車がそこを上がっていった。
いつか月の出ている時分に、あの坂を上がってみたい。
駅は川べりに位置していて、駅舎はまるでお城のようで、威厳に満ちている。
残念ながら「駅そば」はない。
車を止めた場所から駅に向けて歩いていくと、見知らぬ少年が「こんにちは」と頭を下げる。
ここはそういう町か。
歴史的な品のある町はいい。
竹田の子守唄が聞きたくなる。
確かオフコースが昔歌っていた。
2009年9月20日撮影
12:59 阿蘇駅(8月11日の佐賀空港より374㎞)
竹田を離れる際、町に「荒城の月」が流れた。
あれは正午を伝える時報だったのだろう。
57号国道に入ると道幅が広くなり、随分と飛ばした。
阿蘇との再会は坂の上から。
広大な外輪山を従えてその姿を現した。
今は線路のムコウに広がる北外輪山を眺めている。
阿蘇には19年前に修学旅行で訪ねたことがある。
町田の実家を探せば、その時に撮った集合写真が出てくるだろう。
購入した火山岩なら、今の借家に置いてある。
でも記憶はない。
そんな時代だ。
ガキの頃のオレは、風景にまるで興味を示さなかった。
そして時は流れ、阿蘇へと続く道を延々と走り、平らな北外輪山の独特な姿を目にして何事かを感じている。
うまくは言えないけれど、見事な風景に接していることだけは確かだ。
阿蘇とはしばらく一緒だ。
大正の頃から建っている風格のある駅舎。
以前は「坊中駅」と言ったと、宮脇俊三さんの本に教えられた。
ここを訪ねる旅行者は少なくないだろうが、駅前旅館も食堂も土産物屋も営業を停止し、駅の食堂は賑わっている。
その食堂で、会社で毎日顔を合わす女性に似た人を見かけ、待合室の話し声に肥後弁が聞けるかと近づくと、中国語が聞こえた。
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