「鉄旅日記」2009年秋 最終日(新庄-東京)その1-新庄、最上、鳴子温泉、岩出山、北浦、小牛田、鹿又、石巻(陸羽東線/石巻線) 【女川を目指した旅。ここには震災前の女川の姿が残されております。】
鉄旅日記2009年10月11日・・・新庄駅、最上駅、鳴子温泉駅、岩出山駅、北浦駅、小牛田駅、鹿又駅、石巻駅(陸羽東線/石巻線)
2009・10・11 5:53 新庄(しんじょう)駅(山形新幹線/奥羽本線/陸羽東線/陸羽西線 山形県)
素晴らしい朝。
新しい朝だ。
仮にこの旅に何らかの瑕疵があるとするならば、そのすべてが雲散霧消するような朝。
奥羽の山並にはそういう効能がある。
「あけぼの町」は昨夜から静まりかえっていたが、それでも祭りの後の寂しさはあり、カラスが啄む。
時に汽笛がぽっと聞こえる。
ここも有数の鉄道の町と言える。
宮脇俊三さんが書いていた「駅そば」はもうないが、終着駅の貫禄が漂う駅構内だった。
鳴子温泉行は発車。
そして次の南新庄に着く。
奥羽本線とはまだ寄り添っている。

2012年8月15日撮影
新庄にて


6:41 最上(もがみ)駅(陸羽東線 山形県)
稲田は輝き、幽谷に靄が立つ。
雨上がりの道もまた輝き、素晴らしい一日が訪れていることを知る。
瀬見温泉、赤倉温泉を有する最上町。
義経弁慶から芭蕉が辿った道。
ここで数分の停車。
タクシー会社が目についた駅前は、とても小さな観光町だった。


7:14 鳴子温泉(なるこおんせん)駅(陸羽東線 宮城県)
中山平温泉から鳴子峡へ。
鳴子峡とはトンネルを抜けた先の一瞬の再会だった。
そして、かつて東北のベースキャンプにしていた鳴子駅と温泉街とも再会。
古川方面からやってきた高校生たちが、狭いホームに溢れんばかりの勢いで、新庄へと折り返していくこの列車の到着を待ち構えていた。
降りたら硫黄の匂いが鼻を刺激する。
すべてが懐かしい。
何度も訪れ、笑い、歩き、駅前のポストに用があったこともある。
そんな思い出の町に、今度は列車に乗って再訪できたことがうれしい。
すべてを覚えていたけれど、すべてが新鮮だった。
小牛田行はすでに発車していて、鳴子御殿湯を過ぎて、川渡温泉に着く。

鳴子温泉駅前風景

7:45 岩出山(いわでやま)駅(陸羽東線 宮城県)
ひとつ手前の有備館とあわせて、奥州の小京都を謳う伊達政宗所縁の地。
ここで数分の停車。
かつて何度も車を走らせた追憶のルート47号国道は、駅前から外れているため、この駅に寄る機会を持たなかったが、馴染みの地だ。
列車は西大崎を過ぎて、東大崎に着く。
伊達政宗が扇動したと言われる葛西大崎一揆が起きた地で、鎮圧後彼は米沢から岩出山への移動を命じられた。
日曜日の列車はとても空いている。

8:16 北浦(きたうら)駅(陸羽東線 宮城県)
列車の遅れで思わぬ数分の停車。
ススキの原に列車は止まっている。
瀬見温泉、赤倉温泉、中山平温泉、鳴子温泉、川渡温泉と続いた陸羽東線温泉ラインも次の小牛田で終わる。

8:35 小牛田(こごた)駅(東北本線/陸羽東線/石巻線 宮城県)
鉄道の町だ。
古くから陰陽を結ぶ交通の要衝だったのだろう。
ここを通る列車は東西上下とも、大抵ここで一旦役目を終える。
ただ、外に出ると何もないと言いたくなるほど、目につくものは少ない。
歴史を持ちそうな旅館が数軒に、焼鳥屋とスナックが入居したバラック小屋。
駅前通りには水路が設けられ、流れは清い。
この駅にはかつて仲間と立ち寄ったことがあるが、小牛田という地名は当時聞いたことがなかった。
鉄道で旅をしない限り、その名を知る機会はないだろう。
ターミナル駅だが、全国チェーンのホテルの進出は見られない。
備後落合駅などの、よほどの山間のターミナル駅でもない限り、そんな駅は稀なのではないか。
石巻に向かう列車は田園地帯を走っている。
このあたりの空は広い。
何のイベントかは知らないが、揃いのジャンパーを着た人々が走ったり、号令を聞いたりしている。
刈り入れを終えた田には、蓑でできた人形が並び、中には4、5人から成る大軍団もいる。

2018年11月3日撮影
9:07 鹿又(かのまた)駅(石巻線 宮城県)
遠くに白煙を上げる工場の煙突が見える。
あれが石巻か。
あと2駅の距離になる。
ここで5分の停車。
駅前にはタクシーが1台停まり、石巻の市民会館で開催される演歌興行のポスターが貼られていた。

9:48 石巻(いしのまき)駅(石巻線/仙石線 宮城県)
立町大通りから橋通り、寿町通りまでを歩く。
かつて車を走らせた繁華街は、きっとあのあたりだったのだろう。
あともう少し歩けば旧北上川まで出ることができたわけか。
この街に全国チェーンのホテルの進出が見られないのは意外で、「駅そば」がないのも意外だ。
宮脇俊三さんの本で駅舎が2つあると聞いていたが、2つの建物が並んでいるように見えるのがそうなのだろうか。
一方は使用されているようには見えず、入口もない。
あるいは30年前の事情は、どこかで清算されたのかもしれない。
3年前の5月に訪ねた石巻。
あの旅を終えてから何の気なしに彼女の店に行ったことから、現在のオレの事情がある。
そんなことを思いながら駅のカフェで、何の催しで流れているのか知らないが、映画「インディージョーンズ」のテーマ曲を聴いている。
女川行にはそこそこの人数が乗った。
朝からカメラをぶら下げた男たちをよく見てきたが、彼等は石巻を出て次の陸前稲井駅で降りた。
彼等はそこで1時間後に到着する特別列車を待つようだ。

2016年3月21日撮影
関連記事
-
-
「車旅日記」2006年初夏 2日目(岐阜-近江八幡) その1-東横イン名鉄岐阜、大垣駅、養老駅、阿下喜駅、西藤原駅、湯の山温泉駅、四日市駅、鈴鹿サーキット稲生駅 【これが最後の車旅でございます。鈴鹿山脈を回るように、終着駅を探して走ったのでございます。】
車旅日記2006年7月16日・・・東横イン名鉄岐阜、大垣駅、養老駅、阿下喜駅、西藤原駅、湯の山温泉駅
-
-
「鉄旅日記」2019年霜月 初日(東京-五所川原)その3‐小牛田、一ノ関、盛岡、八戸、野辺地(東北本線/IGRいわて銀河鉄道/青い森鉄道) 【津軽鉄道、弘南鉄道に乗りにいきました。羽州街道を歩いた晩秋の旅でございます。】
鉄旅日記2019年11月2日・・・小牛田駅、一ノ関駅、盛岡駅、八戸駅、野辺地駅(東北本線/IGRいわ
-
-
「鉄旅日記」2019年師走 初日(東京-酒田)その3‐新潟、村上、羽後本荘(信越本線/白新線/羽越本線) 【由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗りにいきました。初冬の日本海は荒々しく、美しゅうございました。】
鉄旅日記2019年12月7日・・・新潟駅、村上駅、羽後本荘駅(信越本線/白新線/羽越本線) 11:
-
-
2020年水無月【緊急事態宣言から解放された週末。石和温泉につかりにいった記憶をSNS風に綴ります。】-甲府、善光寺、酒折、石和温泉、大月(中央本線/身延)
鉄旅日記2020年6月20日~21日・・・甲府駅、善光寺駅、酒折駅、石和温泉駅、大月駅(中央本線/
-
-
「鉄旅日記」2021年皐月 最終日-勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線/いすみ鉄道/小湊鉄道)/養老渓谷2階建てトンネル 【ツレと房総に出かけました。宿泊地は勝浦でございます。房総横断鉄道に乗り、養老渓谷でも思い出深い時を過ごしたのでございます。】
鉄旅日記2021年5月23日・・・勝浦駅、大原駅、大多喜駅、上総中野駅、養老渓谷駅、五井駅(外房線
-
-
「鉄旅日記」2014年春 初日(東京-西舞鶴)その1-西岐阜、京都、二条、日吉、胡麻、下山、和知、綾部、高津(東海道本線/山陰本線) 【青春18きっぷで、丹後若狭から北陸、信州へ】
鉄旅日記2014年3月21日その1・・・西岐阜駅、京都駅、二条駅、日吉駅、胡麻駅、下山駅、和知駅、綾
-
-
「鉄旅日記」2003年冬 初日(宇部-博多)その1-山口宇部空港、宇部新川、宇部、下関、小倉、折尾、飯塚、博多(宇部線/山陽本線/鹿児島本線/筑豊本線/篠栗線) 【ご縁と別れがあり、34歳の誕生日を北九州で迎えた日の記憶でございます。】
鉄旅日記2003年2月15日・・・山口宇部空港、宇部新川駅、宇部駅、下関駅、小倉駅、折尾駅、飯塚駅、
-
-
「鉄旅日記」2016年夏 2日目(弘前-小樽)その1-弘前、蟹田、津軽二股、奥津軽いまべつ、木古内、札苅、桔梗、新函館北斗、大中山(奥羽本線/津軽線/北海道新幹線/道南いさりび鉄道/函館本線) 【じきに廃線を迎える留萌~増毛に用がありました】
鉄旅日記2016年8月11日・・・弘前駅、蟹田駅、津軽二股駅、奥津軽いまべつ駅、木古内駅、札苅駅、桔
-
-
「鉄旅日記」2015年夏 初日(東京-新南陽)-はりま勝原、阿品、島田、新南陽(山陽本線) 【日本最南端の終着駅、枕崎までの往復旅】
鉄旅日記2015年8月12日・・・はりま勝原駅、阿品駅、島田駅、新南陽駅(山陽本線) 2015・8
-
-
「鉄旅日記」2008年皐月 4日目(徳島-善通寺)その1-徳島、中田、旧小松島駅、南小松島、阿南、牟岐、海部、甲浦(牟岐線/安佐海岸鉄道) 【旅は京都から始まり、山陰から下関へ。そして四国へと渡ったのでございます。】
鉄旅日記2008年5月5日・・・徳島駅、中田駅、旧小松島駅、南小松島駅、阿南駅、牟岐駅、海部駅、甲浦
